ぼくが半年も掛けて「行きつけのバー」を作ろうと思ったのは、これからはちゃんと楽しく暮らしていこうと決意したからで、何でそう思ったかというと、3年付き合った柚佳に二股を掛けられていたことが判明してその上、ぼくの方が浮気相手で、そして彼女の友人たちにぼくは陰で「みるくくん」って呼ばれていて、何でそんな萌え萌えしい名前かっていうと、ぼくが彼女にねだられて、たびたびMILKのカバンやアクセサリーをプレゼントしていたからで。
柚佳は「ごめん、そういうつもりじゃなかったんだよ」「ユウキくんのこと好きだよ」「大事に思ってるよ」言ってたけど、それ以上付き合うことにぼくはもう耐えられず、自ら別れを告げた。
表面上はぼくがフッた形式に納まったけれど、実質めちゃめちゃに傷つけられたのはぼくの方だ。
つらい。
……つらい。
……つらたん。
そうして日々ののつらい思いを積み重ねてると、階段が出来たので、そこを駆け上がって、大空へ飛び立とうとしていた、まさにその瞬間、トラウマに触れられてぼくは墜落する。
店を出たら、外は深夜で、冷ややかな空気がぼくを包んだ。
いつの間にか電車は終わっていて、商店街を歩く人の姿はまばらだ。
こんな気持ちで家に帰っても腐るだけだから、ぼくは街を闇雲に歩く。
北口から三番街商店街へ抜けて、そこから踏切を渡って南口を一周すると高架上の連絡通路で線路をまたいで北口に戻って、雑貨屋のT字路を右に曲がった時にはもうぼくは、泣いていることを隠す気持ちがぶっ飛んでいて、「ひぐっ、うぇっ、あぁぁぅうぅぅ」と鼻水を啜りながら歩いていた。
眼球が熱を帯びて頭が痛い。
霜月終わりの冷たい空気じゃ、こんなの冷やせないよ。
もう自分が酔っているのかどうかも分からない。
ヘロヘロだった。
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