第一章 第四節 実行

暗黒竜の渇望(第4話)

西向小次郎・らんた

小説

966文字

まず、街に着くまで挨拶代わりとして家家に炎を吐いた。みるみるうちに炎の渦と
なっていく。竜の姿になってからというもの、炎を吐くごとに飢餓感が増していく。

体力を消耗するのだ。あまりの飢餓感に人間を見ると食欲が沸いた。農民を鍵爪の手
で人間をさらい、ほおばり、咀嚼し、血を飲み干し味を堪能する。
闇の草原に大きな咀嚼の音が谺する。
街に着き、さらに空から炎を撒き散らした。
街に駐留する兵がようやくやってきた。炎を吐くと倒れる兵士達。
だが、甘くみていた。巨大ボウガンの矢がささる。街に兵士の悲鳴が谺した。
「今だ!怪物を討て!」兵士長が命令した。用意されたのは巨大な投石器だった。し
かし、ここからが地獄の始まりであった。部隊を尾でなぎ倒し、投石器を破壊した。
壁に叩きつけられ、部隊の半分が絶命した。半死している兵士の一人を無造作につか
んだ。なじみがある。街の入り口で奴隷達に石を投げつけた門兵だった。
兵士は剣を俺の手に突き立てる。しかし鱗に守られた手は浅い傷しかつけられなか
った。あまりの憎しみで俺はぐっと腕に力を込めた。
ぐしゃり、と果物が砕ける音がして兵士の動きが止まった。手にはどろりと血があ
ふれだす。特攻してきた兵士を爪でなぎ倒す。血しぶきが飛んだ。街のものどもが逃
げる。兵も。娼婦も奴隷も賄賂を要求していた役人も。
―すべてを壊す。逃すものか
舌の位置を変え、おもいっきり空気を吸い、吐いた。紫色の煙が街に充満する。そ
れは毒であった。街の人々が眠りこける。それは神経を冒す毒であったのだ。街の人
々が眠りこける。
「くっくっくっくっ」
紫色の煙を何度も吐き続けさらに翼で空に舞い上がりながら人々に炎を吐き続け、
地上に降り立っては爪でなぎ倒し、飢えをしのぐために爪と腕で掬い上げ、牙で食い
殺した。
さらに街の外に出た人間どもも空に舞い上がりながら紫の煙を吐き、
俺は……それをひとつひとつ踏み潰した。
竜はいろいろな能力を持っていることを実感した。これが闇の力……。
「これが闇の力だあ!」
思わず人間の言葉をしゃべった。
しゃべれる。
俺はしゃべれるのだ。
人間の心も知性ももっているではないか。俺は進化したのだ。これが本当の俺なの
だ。
俺は歓喜の咆哮を何度もあげた。
その後竜は街の建物をひとつ残らず破壊し、夜があけても破壊を繰り広げた。
夕闇が迫り、再び洞窟に帰った。

2020年11月21日公開

作品集『暗黒竜の渇望』第4話 (全39話)

© 2020 西向小次郎・らんた

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