地蔵

齋藤雅彦

小説

567文字

脳のネットワークが単純なうえに知識、経験のインプットもない田舎者である俺は、上京して数か月、ずっと孤独を噛みしめていた。

 そんな俺がある日の夜、たまには都会的な気分を味わってみようじゃないかと洒落たかまえのイタリアンレストランに入ったところ。

 女神がいた。

 後ろで束ねた長い黒髪、澄んだ瞳、豊満な乳房、豊かな腰まわり。学生ふうだが、俺好みの大人っぽいメイク。

 メニューを持って微笑む彼女を白熱光が照らす。

 ひと目で恋に落ちた。

 俺は常連になり、彼女の大学生活の話や悩みなどをきいたりするような仲になって、自然な感じで連絡先を交換した。

 のだが、何度デートに誘っても、予定がある、とかわされてしまう。

 あきらめかけたころ、夜勤明け、眠れなかった俺は、そういえばランチもやってたなと思い、店に行った。

 彼女がいた。

 俺は驚いた。

 夏休みなので、昼から入っているのだと言う。

 驚いたのは彼女が昼働いていたからではない。

 ノーメイクだった。

 そう、彼女の素顔に驚いたのだ。

 ノーメイクの彼女はまるで地蔵のようだった。

 いや、地蔵そのものだ。

 彼女が動揺している俺に追い打ちをかけるように言った。

「わたしはあなたのおじいさんの代から村にまつられている地蔵です。わたしはあなたのおじいさんに、都会に出た孫が心配なので守ってほしいと頼まれ、やってきたのです」

 じいちゃん、ありがとう。

2020年11月12日公開

© 2020 齋藤雅彦

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