ファミレス

齋藤雅彦

小説

730文字

ミス・漢方#1

怒りは他者との距離を近づけるがゆえに、壁を作るもととなる。(シモネッタ)

 

 

 

 

 

 口の周りをケチャップまみれにしてナポリタンを食べる幼児。

 可愛い。

 これを大人がやったらどうだろう。

 醜い。

 可愛いと思われることもまれにあるが。

 危ないと思われることもあるね。

 子どものわがままは可愛い。

 駄々こねたりして。

 だがこれを大人がやったらどうだろう。

 そういうことである。

 子どもが可愛いのはなぜか。

 無邪気だからである。

 他者の気持ちに対する想像力が低いため、我を通すことで他者を不快にさせているということに気がつかず、いつまで経っても我を通すパターンから抜け出せない。

 そんな大人が増えてきた。

 つまり無邪気な大人。

 無邪気で語弊があったら半分無邪気。

 なぜ無邪気なままなのか。

 無邪気なほうが得することが多いからだ。

 金や物、サービスの点でね。

 物質主義者はそれでよい。

 しかしながら、豊かな人間関係が得られることはないだろう。

 もっとも、無邪気な大人は豊かな人間関係なんて言われても理解できないだろうが。

 そんなことより、注文した目玉のせチーズハンバーグ定食がまだ来ない。

 俺は店員をつかまえ、怒鳴りつけた。

 もう三〇分近く待ってる。いくらなんでも遅すぎないか、と。

 さらに、この店がいかに低レベルか、食べログに書くぞ、と。

 そしたらすぐに目玉のせチーズハンバーグ定食が来た。

 会計時、店長らしきが、大変ご迷惑をおかけしました、と言って食事券を何枚かくれた。

 店を出て、歩くうち、激しい自己嫌悪感が込み上げてきた。

 人前で負の感情をあらわにするなど失禁に等しいことだと常日ごろ思っていたこの俺が。なんということだ。

 久しぶりに、トレッキングに出かけてみようと思った。

2020年12月4日公開

© 2020 齋藤雅彦

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