稲荷

齋藤雅彦

小説

749文字

空気は乾燥してるし毎日嫌なことばっかだし周りは嫌な奴ばっかだし田舎だし学校遠くて通うのめんどくさいしでも行かないとお母さんうるさいからしぶしぶ荒れた唇を噛んで前歯で皮をむきながら、ぷぷぷってむいた皮を吐き出しながら雪道歩いてたら電車来てたから胸揺らしながらホームに向かって階段ダッシュしたんだけどそしたらわたしの胸はお母さんゆずりの巨乳でずっとコンプレックスでいつか絶対小さくする手術するんだって一年前から定期的に浮かんでくる強迫観念に支配されちゃってわーってなっちゃってホームにうずくまってたら大丈夫ですかって声かけられて顔上げたらトレンチコートに肩かけ鞄、ハット姿の老紳士。うつむいて大丈夫ですってこたえたら、「そんなに世のなか素晴らしい人いますか? あなたは周りにばかり求めているようですがあなたは素晴らしい人に見合うだけの人なのでしょうか……まあそんなことはいい。あなたを不愉快にさせるような人はあなたより劣った人なのです。そんな人に出会ったとき、わたしだったらほっとします。自分の劣等感を刺激されずにすみますからね」なんてぬかしやがる。

 何言ってんだこのじじいって心のなかでつぶやいてから今日はもう駄目だ。もう帰ろって思ってとりあえずベンチに座って呼吸整えてたらじじい、肩かけ鞄から稲荷寿司出してきて、「朝ごはん、食べてますか? 朝食べないから貧血起こすんですよ」って。わたしはずっとうつむいてたけどじじいがにやにやしてやがるのはわかった。

 むかついたわたしは稲荷寿司引ったくってむさぼり食って顔を上げたら地元の観光協会の作った稲荷大明神のオブジェ。

 田舎は変化しない。老化するだけだって最近きいた。あと、同じことの繰り返しがいちばん脳に悪い。単調な生活は精神病、認知症のもとだって。絶対東京行こ。

2020年11月12日公開

© 2020 齋藤雅彦

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