大金を持って変わらない奴はいない

齋藤雅彦

小説

687文字

正直で働き者の男がいつものように畑を耕していると、野良犬が少し離れた場所で地面に向かって吠えている。

 もぐらでもいるのだろうか。作物に被害を与えられたらたまらないと鋤で掘ってみる。すると、いつの時代のものか、小判が現れる。興奮してさらに掘り進めると、大判、小判がどんどん出てくる。

 お上に届けようかと思ったが、あれこれ詮索されて濡れ衣を着せられ投獄、なんてことになる可能性もあると考え直し、結局着服することに。もちろん一般庶民が高額の貨幣をつかうことはできないから闇ルートでつかえる貨幣に換金する。手数料はたっぷり引かれたが、それでも一生遊んで暮らせる額は残ったと男は有頂天。

 さて、持ち慣れない大金を手にした男、田畑に出ることはなくなり、朝から晩まで遊廓でどんちゃん騒ぎ。かつては愛妻家であったが、そんな感情はしょせん欠落感から来るもの。満たされてしまえばブスでぱっとしない女に価値など見いだせぬ。朝帰りどころかはしごして何日も帰らないなんてこともしばしば。男に相手にされなくなった妻はさみしさから怪しい若返りの薬などに手を出したりして金をつかう。

 そんな暮らしを何年か続けていたら、いつまでも、あると思うなで、一生遊んで暮らせるどころか借金までしてしまい、田畑を売るはめに。最終的に小作人として貧乏暮らしを余儀なくされる。

 楽しかった日々を思い出しながら老骨に鞭打って労働に従事している男はある日、隣家で飼っている犬がやたらと吠えているのに気づく。何かを感じ、見に行った男がそこで目にしたものは、大判小判を掘り出している隣人の姿。

 ここからはみなさんが知っているお馴染みの話である。

2020年11月12日公開

© 2020 齋藤雅彦

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