嫌なことを忘れるころには何もかも忘れている。嫌なことは忘れるのではなく、どうでもいいことに変換すべきである。

齋藤雅彦

小説

441文字

今年上半期の最大のニュースは、何と言っても、嫌な記憶を消す薬が開発され、馬鹿売れしたことだろう。

 嫌な記憶を消そうと薬を飲み、すっきりするかと思いきや、今度は二番目に嫌な記憶──この時点では一番嫌な記憶となっているわけだが──がわき、不快になり、薬を飲む。すると三番目の嫌な記憶がよみがえる。嫌な記憶は次から次。しまいに順番待ちの列に割り込まれた程度の記憶も異常に意識され、薬を飲み続けることになる。ストレス耐性がなくなってしまうのである。最終的に嫌な記憶は死にまつわるものとなり、死に対する恐怖がふくらみ、その恐怖感を消そうと薬を飲み、廃人になる。傷害事件に巻き込まれた等の嫌な記憶を消したため、また同じような被害にあい、今度は殺されてしまったなんてケースもあった。

 生きものは生存のため、嫌な記憶のほうを強く焼きつけるようになっている。

 嫌な記憶を消す薬は販売禁止となり、取り締まりの対象となったが、未だに手を出す者が後を絶たないという。

 困ったものだ。

 はて、こんなニュースあったっけ。

2020年11月12日公開

© 2020 齋藤雅彦

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