悪魔

齋藤雅彦

小説

737文字

実業家と人気タレントの交際が日々、さかんに報じられる一方で、ワーキングプアはキャバクラに行くこともできず、当然ながらスポットを当てられることもなく、休日を無気力に過ごしている。それは誰? 僕。

 給料のほとんどは生活費に消える。貯金などしたくてもできない。将来どうなるのだろう。不安しかない。なんてね。わかってますよ。不安は行動することで消えるんです。臨戦態勢に入っていれば不安は起きない。

 じゃあ行動すればいいじゃないか、って思うんだけどまあね。行動すると不安は消えても不満は出てくる。行動しない人はすぐあきらめられるけど、行動する人はあきらめられないから。

 で、僕はどうしたか。まだ日が高いけど寝ることにした。

 雨音で目を覚ました。あわてて飛び起き洗濯物を取り込んでいると、悪魔が現れた。美しい、女の悪魔だった。

「あなたの願いを何でも三つかなえてあげます。ただし、三つめの願いをかなえたあとで、あなたの命をいただきます」

 ためらわず僕はこう言った。

「僕と結婚してください」

「あ、そういうのはちょっと」

「何でもかなえてくれるんでしょ?」

「違うのにしてください」

「何でもって言ったじゃない。あ、アウトローだから適当発言しても許されるだろ的な感じ? もういいよ。帰ってくれる。じゃあね。バイバイ」

 僕が挑発的な口調で言うと、悪魔はむっとした表情になり、黙ってしまった。僕は洗濯物をたたみ始めた。

「わかりました」

 僕は顔を上げ、悪魔を見た。悪魔は少し、涙目になっていた。

「結婚します。ただし家事とか一切する気ないんで」

「いいよ。ところでおなか空かない? 昨日の残りのカレー食べる?」

 テレビを見ながら、僕は悪魔とカレーを食べた。もう死んでもいいと思った。悪魔がすごく美味しそうにカレーを食べていたから。

2020年12月3日公開

© 2020 齋藤雅彦

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