鬼ノ島

齋藤雅彦

小説

848文字

むかし、おじいさんとおばあさんがいた。

 おじいさんとおばあさんといっても、当時の平均寿命を基準としたおじいさんおばあさんであるから、せいぜい四十代後半くらいだろう。いや、おじいさんはともかくとして、おばあさんのほうはきっと、もっと若かったはずだ。なぜって、子どもができたのだから。

 子どもは男の子だった。男の子は成長すると、両親の反対を振り切り、鬼退治に向かった。どうして鬼退治なんかしようと思ったのかというと、自分のなかのもやもやを言語化することができなかったからである。とりあえず身体を動かすことにしたのだ。

 海に漕ぎ出して数時間後、男の子は遭難した。航海術の知識などまるでなかったからだ。

 漂流すること七日間。食料がつき、男の子が死を覚悟したところに。

 鴨の群れがやってきた。

 群れは船に着地すると、声をそろえて、「どうされました?」と言った。

「ご覧のとおり、遭難したのさ」

「そうなんだ」

 リーダー格らしき鴨が言った。おそらく、けっこうなおじさんなのだろう。誰も駄洒落に反応しなかった。リーダー格らしきが続けた。

「で、どちらに行こうとしてたんで?」

「鬼ヶ島だ」

「鬼ヶ島ですか? 鬼ノ島だったら近くにあるんですけどね」

「そこでいい」

「では案内します」

「なぜ俺を助ける?」

「助けるのに理由は必要ありません。さ、行きましょう」

 さあ、気を取り直し、鴨に導かれ鬼ノ島に上陸した男の子。

 鬼たちを見てすっかり戦意喪失してしまった。

 筋骨隆々、かつ、でかい。

 どの鬼も七尺以上ある。

 男の子など小人同然。

 そもそも鬼ノ島の鬼たちは、平和主義者だった。

 もちろん人間を襲ったことなどないという。

 鬼たちはみな優しかった。

 そしてイケメンだった。

 そのなかでもとりわけイケメンなのに、男の子は恋してしまった。

 恋した男の子は女の子っぽくなった。

 男の子の恋愛が成就したかどうかはわたしは知らない。

 あなたも周囲に自分よりはるかに身体が大きくて筋骨たくましい男しかいなかったとしたら、ゲイに目覚めてしまうかもしれないというお話。

 とっぴんぱらりのぷう。

2020年11月12日公開

© 2020 齋藤雅彦

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