第一章 第二節 人間をやめし者の救い

暗黒竜の渇望(第2話)

西向小次郎・らんた

小説

740文字

そこに救いの手を差し伸べたものがいた。牢の中から突然闇の渦が巻き上がり老婆
が闇の渦から現れる。
「お前はこのままじゃと精神は死ぬじゃろ」
「お前はだれだ!」
「何、わたしは人の心を読むことが出来るのじゃよ。この背徳の塔と呼ばれるものを
視察しにきただけじゃ」
「ところで、お前、このままだと本当に人間を失うぞ」
「それでもいい。俺は……」
「人間を辞めたいんじゃな……?」
「どうしてそれを……」
「そなたは心の病でどの道人を意識することが出来なくなる。そうじゃろう、少年」
「そこでじゃ、どうせ人を辞めるのならこの籠に入って牢を出て、抜け出してみない
か……?」
「この憎い人全て殺すのじゃ」
「人を辞め、人を殺すのじゃよ」
「おばさん冗談を……」
「冗談などではない」
「真の神と契約し、真の姿となれば新しい命として生まれ変わる」
「そなた、人を辞める勇気はあるのか……」
「ただしそれには憎しみが必要じゃ。それも並の憎しみではない。世界そのものを憎
む強い憎しみがないとその神と同化できぬ。そして強き苦痛があるじゃろう……」
「もうどうでもいい。闇であってもそれが安らぎなら。人が人の意識であるうちに闇
に帰りたい。たとえそこがアーリマンの世であっても」
「本当じゃな?」
無言でうなずく俺。
「そなたは賢明な判断をした。今すぐに死に至るその苦しみを開放する。待っておれ
……」

すると、そのおばばの指から突然赤き霧がはきだされた……。
その霧を不意に吸ってしまい、気を失う。
老婆は少年が倒れるのを見ると籠に少年を入れた。次に何か呪文を唱えた。
「人間をやめると気が楽になるのにのお」
するとあっという間に全身に黒い獣毛が生え、肉が溶岩のごとく流れ、狼の姿に戻
った。狼は籠を背負い牢の排気口から跳躍し、あっという間に抜け出していく。

2020年11月9日公開

作品集『暗黒竜の渇望』第2話 (全39話)

© 2020 西向小次郎・らんた

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