―闇の中で―
漆黒の闇の中でおどろおどろしい不気味な声が広がった。
「おばばよ、今回、闇に返す者は決まったのか」
「ははっ。世は絶望と狂気がひろがっておりますゆえ、多数おられます。容易かと」
「魔は元々人なのだからな。したものにとって闇の者が増えることは望ましい。わが
友人が増えるのは喜ばしい限り」
「魔が増えれば裁きの時も近い。そのときが我々の解放の日なのだ」
魔が増えれば裁きの時に共に戦いに挑む戦友が増える。これこそが真の目的であり
、人間を闇の落とす目的でもあるのだ。
「存じております」
「お前もそうじゃった。山に捨てられすべてに絶望していたときに我と出会い闇の命
を吹き込んだのだからな。もっともこうして人の姿も取れるが」
「闇の者として開放されたときが、至福の時でございまする」
「わかっておろうが、完全に絶望しているものでないと闇の者として生きることは出
来ない。変化せずに肉片となってしまう。まあ、人間の肉は美味じゃが」
「それもよろしゅう」
闇の中から赤き目が光り、共にくくくとせせわらう声が響く。
「まずおばばよ。その水晶で占い、探し出すのだ」
おばばは黒い玉に呪文を唱えると突然玉が光だした。
水晶に光が当たり、少年の顔が映りだす
「みつけました。それでは、さっそく行動へ」
もっともその前に闇の者として人の肉を喰らいのですがよろしゅうて?」
「よかろう。充分楽しんでくるがよい」
すると突然闇から突然突風が吹きおばばのみの姿が浮かんだ。
そこは洞窟であった。闇の主は闇に同化したままだった。
おばばの体が光りだし、ローブが透明に透けて体にとりこまれていった。次にみる
みる老婆の目が赤に染まったかと思うとぞわっと全身に黒い獣毛がはえてくる。手足
や背骨が禍々しく歪んだ。顎がせり出す。どうっと前に手をひざをつき、肉が溶岩の
ように流れ、膨張し、ととうとう四肢で歩くのにふさわしい姿となった。巨大な狼の
姿になっていった。
狼は遠吠えすると涎をたらしながら洞窟を抜け草原を駆け抜ける……。
「期待しておるぞ。闇の魔女マーサよ」
闇の中で主がそう答えた。
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