第一章 第一節 絶望の時代

暗黒竜の渇望(第1話)

西向小次郎・らんた

小説

718文字

火を囲った。
そこは古代ペルシャ。常に光の神と闇の神が戦う場―

この物語が見えるか?

幻想の世界においても、人々は病に慄き、飢えに苦しみ、こうして神への怒りと諦め、反逆、背徳に耽っている。
闇の神アーリマンがこの世界を闇に変えることを人々は知っている。
それでも、光の神アフラとその一族の救いをどこかで信じている。
絶望が暗黒色に大地を染めてゆく。

「今日はもう疲れただろう。火おこしくらいは覚えておくように。
 分かったね?坊や」

その時代に一人の子が生まれた。
―その子は奴隷として生を享けた。

賦役義務のある最下層階級。
賦役という形で労働するだけではなかった。
男も女も対価に満たないものは……
その代償として、全てを売ることになった。
使えるとなれば、その全てを。

不服そうに扱う者たちへの対価とは、
階級社会の不思議、そのもの。

そう、俺には名前があった。
親がいて、毎日のように殴られた。疲れて眠った。
当たり前の光景。それも終わった。

この街の奴隷として、連れてこられた。
働くだけでなく、鎖に繋がれカラダの世話をさせられた。
逃げ場なく、俺の精神は壊れていった……
昼間から奇声を上げ、髪をむしり取り、奇行におよぶ者の中で苦しんでいた。
夜の勤め以外、こうして牢の中にいる。

それが終わる。

光の神アフラは、
いつの間にか俺に温もりだけを残した。
残酷な神だ。

光の神アフラと戦う。
それが見えるのだから。

僅かながらの安心が俺を戦いの場へといざなう。

それは常に提案。
提案の提、及び体の意味をべくして、俺は牢を出た。

限りの聾者であろうと、将又盲者であろうと、
何かしら良い困難が待ち受けている。

末端から翼が引き剥がされていくようだった。

‐闇の中で‐

 

その声は、優れた声の持ち主。

 

「婆様。現れました」

「おお。……時の終わりが、」

「衝動の内に」

「主よ、これは生命宿し者の定め。      

戸惑いの中であればこその光景に、

手出しは出来ませぬぞ?」

「分かっています。しかし、このまま放っておけば、一目散に闇の扉に向かうことでしょう。それが出来る者です。

一定数の者は、この宴を楽しみたいと思うことでしょう。分かりますか?」

「それも、よろしゅう…」

 

その問答に闇は同調し、次第と並んだ。

 

「婆様。今すぐに。これは闇の主としての指揮です」

 

お婆はソレを受け、黒水晶に呪文を唱える。

黒水晶には、その者の記録が映し出された。

闇が集いだす。

 

「簡単なこと。」

 

洞穴に闇が吸い込まれる。

「忘れるでないぞぅ」

闇の主は更闇となり、周辺全ての闇を奪った。

「به مجموعه تاریکی، تاریکی زیباست و من هوس تاریکی می کنم.」

おばばの輪郭が浮かぶ。

おばばの体は終に光り、纏ったローブも透明に透けた。

闇の者とは思えぬ輝きの中、おばばの両目は血色に輝き、かと思うと、ぞわぞわと全身が大きく歪んだ。

”……おばばが獣人化しよったわ……”

四肢で以て相応しい姿。黒い獣毛の巨大な狼になっていた。

狼はひとつ、そして、ふたつ、

遠吠えをすると、洞穴を抜け草原を駆けていった……。

 

「なんという至福。なんという快楽。なんという惨酷

 

闇の主は嗤い続けた。

 

即是闇の神。

更闇主は、残された黒水晶を拾い上げた。

能力者を失った黒水晶は、その役割を終えた。

闇の魔女マーサの生命期限に重なる出来事だった。

 

2020年11月5日公開

作品集『暗黒竜の渇望』第1話 (全5話)

© 2020 西向小次郎・らんた

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