第23章

根津權現裏(第24話)

焚書刊行会

小説

2,462文字

芝公園にて凍死体で発見されるという最期をむかえた「破滅型の私小説作家」藤澤淸造の代表的長編の電子化テキスト

 これは、それから四五にちしてからだ。わたしぎに、おかのところへ、はかまりにったのだ。──わたしは、れいざっようで、いしかわにいるたかはかほうもんしなければならなかったのだ。これもいままでに一二ってれば、ながしでってもいのだが、ほうもんするのがはじめてだったから、けんかんれいしたがって、せめてはかまだけなりとけていこうとおもったのだ。ところで、わたしともだちからもらってっていたセルのはかまは、にかしちれてなくなしていたから、これもれいって、おかのところからりようとおもって、がけったのだ。
 おかとおっていくと、かれじゆういっぱいに、ふるざっふるしんぶんりちらし、きちらしていた。わたしはそれをときには、かれはいよいよかねきゆうしてきたところから、こんはこれらのものくずりはらおうとするのだなあとおもった。で、わたしは、
「どうしたんだよ。こんはこれをはらっちゃおうとうのかい。」とうと、
「ああ、めんどうくさいから、らないものは、みんなくずへやろうとおもうんだ。」とあいさつだ。わたしわたしで、「なにめんどうくさいからだ。」だとおもってしくなった。
「ところで、せつかくおもいつきだが、くらにもならないなあ。まあ、せいぜいたかつもって、しきしまみっつだなあ。」
「そんなやつがあるもんか。もっとたかいよ。」
「そうさ。たかいのはやまで、これだけじゃしきしまだなあ。それをみっつッてところはいところさ。それがいやだとうなら、だん、もっとほかに、なにかござんすまいかだ。」
「つまらないことをってらあ。それはそうと、ぼく今日きようそうとおもうんだが、きみいそがしいの。」とおかうのだ。なんでもかれ調ちようると、にもそれは、きゆうようしているらしいのだ、だからかれわたしむかってった、「つまらないことをってらあ。」とうのはたんわたしったふるしんぶんふるざっばいかんいてったのではなくて、かれは、じんかれしようそうさをらずに、わたしがそうっているのにたいしてったものらしいのだ。だからかれはそうかんだんろうしているよりは、かれかれって、もっとじゆうだいてんきよもんだいなるものをきたくてならなかったらしいのだ。ところで、それをになると、ことがあまりにきゆうなので、ちょっといただけでは、ほんとうだとはおもわれなかった。
「また、どうしてすのさ。今日きようッて、これからか。」
「ああ、これからさ。で、きみいそがしくなければ、ぼくいっしよにきて、ちょっと(※りできるまい)をみてもらいたいんだ。」
「なんだい。これからをみつけるのかい。」
「そうさ。」
「で、どうしてそうとうんだい。ぼく今日きようこれから、いしかわかなきゃならないんだが……」
いしかわなにしにくの。」
たかはかのところへ、はなしきにかなきゃならないんだ。で、ちょっと、きみはかまりたいんだ。」
「ああいとも、っていきたまえ。ぐにくの。」
「ああ。なあに、ぐでなくったっていんだけれど、それよか、どうしてきみそうとうんだい。あしもとからとりつようにさ。」
「なあにね、あのおんながうるさいからさ。」
「うるさいからって、ひっすのか。いよいよれるなのか。」
「そうなんだ。もうすっかりあいきちゃった。なにしろごろはね、むこうからまいにちのようにやってくるんだからね。そしちゃ、にもつかないことばかりってるんだ。」
「『はやく、いっしよになってちようだいな』ってやつかい。」
「そうなんだよ。をどうしてけてきたもんか、さくもやってきてね、きみいまったとおり、なんてんだい、『はやいっしよになってちようだいな』ってやがるようなまつなんだ。なんでもくるみちてきたらしいんだ。ちやだんていたとか、ながばちもあったとかうんだ。またそんなことを、どうしてったのからないが、『みんなやすいのよ。』とかなんとかって、これからいだしにでもきそうなふうなんだからおどろいたよ。おどろくよりもなさけなくなっちゃったよ。で、もうこうなっちゃっちゃ、ふくやくちゆうしやだけじゃとてだから、いっのことメスでもって、せつだんしちまおうとおもうんだ。でなきゃこれからも、あいかわらずやってきちゃ、せつかれたぶんにゃたすからないからなあ。」
「じゃなにか、きみほんとうに、いやになっちゃったのかい。」
「そうさ。いやになっちゃったのに、うそほんとうもないじゃないか。まあ、わけうのは、そうわけなんだ。で、ぼくはそうめると、ままときじっとしちゃられないんだ。だから、いまうちしたいんだ。」
きみほんとういやになったとうなら、まあそうするんだなあ。ただいをのこさないようにするんだなあ。ぼくわせると、いやになったからとって、なに今日きようひっしするにはあたらないとおもうが……」
「いや、ぼくこうかいなんぞしないよ。もう今日きようからは、すっかりうまれかわったんだ。それにしちゃ、にこうしていちゃなんだ。かへさなくっちゃ。にいちゃ、くらうまいとおもったって、むこうからしかけてこられちゃ、三に一わなきゃならなくなるおそれがあるからなあ。」
きみけっしんなら、そうするんだなあ。で、なにかい。ひっしのよういのかい。つまりかねもんだいだ。はらうのと、しんにいくうちはらかねがあるのかい。」
「ああ、そりゃなんとかするつもりだ。にはっていないが、かへって、ごうしてくるつもりだ。それにしても、はやくこれから、つけなきゃいけないんだ。」
「まあ、そうだなあ。で、どのほうめんにするんだ。何方どっちみちかいわいじゃいけないんだろうから。」
「そうなんだ。で、いろいろかんがえたんだが、そうかとって、かんうしごめでは、あまりにみがなさぎるするから、ぼくおいわけあたりにしようかとおもうんだ。おいわけ西にしかたまち、でなきゃもりかわちようあたりでもいんだ。へん宿しゆくへいきたいとおもうんだ。いろいろのかんけいじよう、しもたいやなんだ。もうきちゃった。」
「じゃそうするさ。ではどうだい。ようか。ぼくはかまをちょっとしてくんないか。」とうと、かれって、しいれへしまってあった、くらはかまりだしてくれた。わたしはそれをつけて、おかいっしよそとへでた。

2020年10月7日公開 (初出 日本図書出版 大正11年発行 単行本

作品集『根津權現裏』第24話 (全60話)

© 2020 焚書刊行会

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