第13章

根津權現裏(第14話)

焚書刊行会

小説

1,625文字

芝公園にて凍死体で発見されるという最期をむかえた「破滅型の私小説作家」藤澤淸造の代表的長編の電子化テキスト

 わたしたちばんそこで、ものの三かんばかりのみくいしてきた。
 わたしだんから、あまさけがいけないうえに、ことばんは、ちゆうされているようだったから、ほとんどさかずきかさねなかったとってもいくらいだった。──それにわたしはまだめしは、ぜんったきりなので、ひとつはくうふくおそれていたせいもあった。
 ひとんだのはおかだった。かれはまたどうしたのか、えたものしよくときのようなふうなのだ。でなければかれは、きようちゆうもんもんじようえられないものがあって、それはわずかさけにやるよりほかみちがないとったふうなのだ。で、わたしているうちに、もういくほんかのビールと、いくほんかのちようけてしまった。うえおどろいたのはかれたいだった。かれったせいもあろうが、せきにいたひとじよちゆうとらえて、おもいきりわるるのだ。
「おい、どうしてくれるんだい。ぼくきみれたんだ。」
 かれぶんひざきよせたじよちゆうに、こううことをうのだ。そうかとおもうと、ぶんかおを、じよちゆうひざせたりしながら、
あそびにこない。ええ、きみぼくのところへさ。」などともうのだ。それをけてじよちゆうは、
「おかどちがいでしょう。おどくさま。」とうと、
いやなのかい、ええ、きみいじゃないか。ぼくきみれたんだ。」
 こうってかれは、こんはまたやけにじよちゆうきよせて、あたまかみくちづけをするとふうなのだ。流石さすがわたしすこし、ぎもをぬかれたかたちだった。
「おい、げんにしろよ。きみはそれでいだろうが、おれをどうしてくれるんだい。」
 しまいにわたしも、すこしくなってきたので、こうってってやった。しかしかれは、わたしうことなどは、みみにもはいらないようなふうだった。ぶんがいものは、しんみようぼうかんしていればいのだとふうなのだ。しようには、かれわたしなどにはことかえさないで、ますますちらすのだ。わたしすこなさけなくなってきた。
 わたしは、おかあいしゆだとうことは、っていた。かれつねに、ぼくさけおやゆずりなのだとっているだけあって、さかずきにしたものだ。たとえば、かれわたしたちいっしよに、はいったとする。するとかれは、もそうときには、
ぼくいっぽんつけてくれたまえな。かわぼくすよ。」とったふうなのだ。くせかれはまた、わたしなどよりは、ずっととうなのだ。
 で、わたしはそれまでに、かれとはずいぶんいっしよのみくいしたものだ。だからわたしは、またかれさけぐせっていた。だんかれは、わたしなどとちがって、何方どちらかとえば、げんちんもくほうだったが、しかし、いったんさけくちにすると、わたしなどよりは、もっとじようぜつになったものだ。そしてともするとかれは、わるひとっかかってくるくせがあった。しかしかれは、それまでにはくらんで、うごけなくなるようなことがあっても、けっしてばんのように、じよちゆうとらえて、そうったふういやなことをしたり、またくようなきざなことをうようなことはえてなかった。
 いったいかれは、しんけいしつだった。またかれは、きよくたんなるそうしゆしやだった。したがってかれは、べてのあいに、べてのぶついて、しゆんれつげんせいたいするのをつねとしていた。たとえばいまこれをだんじよかんもんだいいてうなら、なるあいにも、おとこおんなじよくしてはならない。において、おとこおんなまえに、わいせつなるげんくちにしてはならないとうのが、かれろんだった。だから流石さすがかれは、することもまたきんげんほうだった。それがどうしたとうのだろう。ばんかぎってかれは、しやていにもおとるようなしゆうたいえてして、てんとしてずるいろのないのは。まったわたしには、ときかれたいは、いっしゅきようだった。
 かえりしなにもなおかれは、じよちゆうようして、ようとうともしなかったから、
「おい、そんなにきみしゆうしんなのならかたがない。おりめてもらって、ってかえろうよ。」とって、わたししてやったが、それにもかれは、すこしもずるいろがなかった。
じようだんっちゃいけないぜ。ひとべのこりだとおもっていやがる。」
 これが、ときったかれことだった。

2020年9月27日公開 (初出 日本図書出版 大正11年発行 単行本

作品集『根津權現裏』第14話 (全60話)

© 2020 焚書刊行会

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