第2章

根津權現裏(第3話)

焚書刊行会

小説

1,770文字

芝公園にて凍死体で発見されるという最期をむかえた「破滅型の私小説作家」藤澤淸造の代表的長編の電子化テキスト

 それからわたしは、はくさんて、からでんしやったのだ。するとこんは、いしざきざいざいになってきた。わばびようしてのほうもんも、かれざいあいには、ぜんぜんなものになってしまうどうだから、なによりもあい、それがになってならなかった。だからときは、ただ一ねんかれざいたくであれかしと、それのみねんさせられた。ところでってみて、さいわいかれざいたくしていてくれるのはいが、まんいちりだしてみて、そっなくきよぜつされるようなことがあったらどうしようとおもうと、たまらなくあんになってきた。ちようそれは、ぶんかんしゆしているしゆうじんとうそうされたあとの、かんしゆこころちにもあんさだった。
 いしざきうちというのは、うしごめらいだった。らいぐらざかゆう便びんきよくさきの、おながわよこちようはいっていって、ずっとひだりほうまがっていった、みぎうえだった。で、わたしはまだころは、でんしやおおしん宿じゆくきがなかったぶんだったから、ぐらざかしたでんしやをおりると、さかのぼっていった。そして、ぐらざかゆう便びんきよくまえまでくるあいだに、またたまらなくさびしいおもいをさせられた。えば、それはりようがわてつらなるふくはきものようふくとりようひんなどのてんとうると、わたしはまたに、しみじみとぶんのうびんぼうさをかんがえねばならなかったからだ。
 それに、さかのぼりつめたところから、さかなちようかどまでのあいだは、べっしてひとどおりがおおかった。おそらくはそれらのひとたちは、しよくさんをかねて、いらをおうらいしているのであろう。ひとたちようぼうたいかくにすると、にまたまた、わたしふかぶんけんこうさをおもわねばならなかった。しそうがんぼうかなえるものなら、はんとしや一ねんおそうまれてもい。わたしはもっとけんこうからだうまれつきたかった。わたしいまのようなびようしんでなかったら、にちじようきよにもこんなろうはしなかっただろう。よしびんぼうはしていても、けんこうでさえあったら、もっとたのしく、こころやすらかにおくることがただろう。のようなへいをゆくにも、なおびっこきながらあしはこばねばならぬとう、そんな便べんみにくさがあるだろうか。それをおもうとわたしは、ひたすらのろわれたようなぶんからだうらめしくなってきた。
 だがしかし、これはうんで、いまさらどうすることもないことだとうなら、わたしいさぎよくそれはあきらめもしよう。かわわたしには、ひとつのじようけんがある。それはなんだとえば、わたしばいしようとして、いっしようひんなにものたるかをらないていの、ゆうぶんにしてもらいたい。そしたらたとえいっぽうしっかんがついてまわろうとも、ときかねかしてそれぞれのてもこうぜられるだろう。またほかよくぼうも、りあまるかねって、はんたっすることがるであろう。はやはなしが、わたしが、そうぶんだったら、すくなくともこんにちこんびようしてまで、とおりをするようなさんさからまぬかれることがたであろう。そうおもうと、わたしあたまからげきろうびたように、ぜんしんどうようするのをおぼえた。どうに、ときばかりは、せいとうとさもおもさも、いっさいていしたくなってきた。それどころか、ときむしかなしさいたましさにくことのやすきをおもうのねんむねいっぱいになってしまった。だからわたしは、わたししようねんだいに、いまはもうくなってしまったあねかれてとおったことのある、いんどうひととおっているように、じっせてあるいてきた。
 やがて、ゆう便びんきよくまえとおりすぎて、みぎよこちようまがいりぐちのところへくると、こんすべてのかんがえがまたもとかえって、いしざきざいざいになってきた。それとざいたくしているとしてからが、わたししんかいだくしてくれるかどうか、それがあらたもんになってきた。
 いしざきは、何方どちらかとえば、ぜんりようにんげんにはそうない。しようには、かれわたしたちゆうじんかんでは、うてのがままものであり、たんりよいってつにんげんだ。たとえば、ることは、いのちにもえてたすかわりに、はんたいにそまないあいには、いささかりよもなく、べてあしにしなければやまなかった。かれが、わたしなどとちがって、くまでゆううちていらしいちようしよたんしよっていた。それがときことわたしづかわれてきた。だからわたしまでくると、いっさいことのせいを、かれたいだんうえけっすることにしようとおもいながらも、こころうちでは、かれいたおこしていないように、またかねろうしたあとなどでないようにとおもって、そればかりをねんさせられた。

2020年9月15日公開

作品集『根津權現裏』第3話 (全16話)

© 2020 焚書刊行会

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