王様は言葉を失われた

lantan2015

小説

1,120文字

むか~し、昔……言葉を徐々に失っていく王様がおりました。
※2020年4月に「小説家になろう」(退会済み)にアップした作品を再掲載。
なので今は「破滅派」オンリー作品です。

むか~し、むかしあるところに徐々に言葉を失っていく王様がおりました。
王が書状を読んでいたときのことです。
側近が異変に気が付いたのはまもなくでした。
「訂正云々(ていせいでんでん)というご指摘には当たりません」
この言葉にざわついた。
(この国は大丈夫なのか?)
(まあ人間1回や2回間違いはあるから)
この時はみんなまだ大丈夫だと思っていたのです。
しかし未曽有を「みぞうゆう」と言ったときには側近は凍り付いたのです。
「王様、それは『みぞう』でございます」
王様は次々言葉を失っていきました。「背後」を「せいご」と言ったときすらありました。
画一的という漢字には「がいちてき」と言ってまた周りを凍り付かせました。
それだけではありません。
王様に届けられる果物にいつも「甘くてジューシーですね」としか言わなくなったのです。
そこでビーフジャーキーを献上したところ「ジューシーですね」と王様は言ったのです。
「王様?ビーフジャーキーに水分はほぼございませんよ?」
そして神様に祝詞を言う時には、
「願って已(や)みません」を「願っていません」と言ってしまったのです。
国民は衝撃を受けました。
この国の王様は言葉を失われた!!
王の権力を剥奪しなければ。
しかし王様は「私が国家だ!」と言って絶対王政宣言をしたのです。
これには諸侯も怒りました。
王は浪費家で奥さんに次々金品を献上していました。
王よりも王妃はさらに浪費家で音楽家を招き入れて財政を使い放題、桜を見る会でも浪費しました。怪しい人たちを連れて。
「王妃様、国民が飢えております。国民はパンすら碌に食えておりません」
「パンがなければ菓子パンを食えばいいのですわ」
この言葉に国民は衝撃を受けました。
「王様、王妃が怪しい人たちを公費で募ってます。王様の名を使ってます」
「募ってはいるが募集はしてない」
もはや会話が成り立っていませんでした。
しかも王様は怪しい人たちの招待一覧を公文書なのにシュレッダーにかけて消しました。
王は王妃の浪費癖を直そうとせず逆に物品税を10%もかけました。
「王よ、国民は痛みで苦しんでおります」
「痛みって何だ?」
「へっ?」
「痛みに耐えてよく頑張った。感動した」
このセリフに国民はまたも凍り付いたのです。
国民はとうとう革命を起こしました。
王は逮捕直前に宮廷内で犬と戯れながら紅茶を飲んでいました。王は最後まで自分の立場が分かっていませんでした。
王と王妃は断頭台に連行されました。
「最後の望みを言え」
処刑人が言うと王は「希望は異世界に行くこと」と言ったのです。
処刑人が聞き遂げると王と王妃は処刑されました。
王のあだ名は「失語王」と名付けられました。
この国の王政はこうして終わりました。
めでたし めでたし
=終=

2020年9月10日公開

© 2020 lantan2015

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