魔王の仮面

lantan2015

小説

71,911文字

シベリア。北の大地では使い物にならない子を満10歳の時に呪いの仮面をかぶせて部族追放となる。
しかし、生贄の子が選んだものは60分の1の確率となる「焔の魔王の仮面」であった。
このままでは「魔王」として退治されてしまう。そこで魔王が取った奇策とは!?
【この作品は文芸レベルに達していません。共著者を募集します。「なろう」色を消すことも求めます】

第一部

序章

シベリア

この地では生贄を捧げる風習が残っている。

もちろん人もだ。

特に出来の悪い子には呪いの仮面をかぶせて獣人にさせてしまう。もちろん部族追放だ。

農作物も何もできない病弱の上に間がどこか抜けてるサロ。

サロは10歳の時にしきたり通りに生贄に捧げられることとなった。

サロは60本ある紐から仮面に通じる紐を1つ選ぶ。

サロが引き抜いたのはこめかみから角が出ている仮面であった。皮膚は深い緑である。

「魔王じゃ……」

「魔王を引き当てたぞ~」

「お前は、今日から魔王になるのじゃ!」

「え?意味が分からないよ」

「有史以来2回。お前が3人目じゃ。お前は魔王の仮面を選んだのだ。お前は魔王の力を手にする」

タム村の村人がサロを抑え込み仮面を付けさせた。

これはシベリアの地で起きた不思議なお話。

 

第一章

 

「お前のようなものが出たのは伝承によると……」

「うん」

呪術師のロロが言うには1人目の魔王は力に溺れて最後は勇者に滅ぼされたという。

「おまえの人生、どう歩むかは自由じゃ。だがあり余る力に溺れるとこの仮面は別のものを生み出す」

「勇者じゃよ」

「仮面から発せられた白い光が少年を選び、その者は強大な力を有する」

「最後に魔王は魔王城を作って対抗したがあっけなく勇者に敗れ去った」

「魔王って弱いの?」

「力の使い方次第じゃな」

「もう一人は魔王が討伐されたことを知った後の者じゃ」

「うん」

「魔王城を作って引きこもった」

「それいいじゃん!」

「その後、どうなったと思う?」

「討伐された」

「なんで!?」

「魔王は精霊を具現化して魔物を作り出すことができる」

「人間を魔物に変えることも出来る」

「2人目の魔王はたしかに何もしなかった。部下にもそう命令した」

「だが、部下が言うこと聞く者とは限らない」

「お前の被ってる仮面は徐々に一体化する」

「そしてどんどん力がみなぎってくるはずじゃ」

「痛みに耐えて気が付いた時にはもう魔族じゃよ」

「さあ、お前は村から追放じゃ!」

サロはこうして村から追放された。

 

第二章

 

(おなかすいた……)

サロはとぼとぼと森を歩いていた。

やがて池が見えてきた。

サロは自分の顔を水面を通してみる。

なんともう仮面と皮膚が一体化していた。それだけではなかった。徐々にではあるが首の部分の皮膚が緑色になっていた。

サロが口を動かすとなんと仮面も動くようになっていた。

瞳は朱色だった。

そんな中水色の光がやって来た。

―あなたが新しく誕生した魔王様ですか?

なんと精霊が語り掛けて来た!!

「そうだけど」

―なんなりとご命令を

「とにかくおなかすいた……」

―お安い御用です

すると池に居た魚を1つに集めてなんと自分の前に持ってきた。

―軽く焔の呪を唱えると夕食出来ますよ

「どうやって?」

―念じるだけでいいのです

念じてみた。すると簡単に自分の指先から焔が出た。

―この魚を食えば今日は当面のところは大丈夫だと思われます

「ありがとう」

サロは貪るように食った。

―魔王様、ところでもう住処は決まっておりますか?

「まだだけど」

―先代と先々代の魔王城、廃墟になってますが行ってみますか

―この地は夏が短く、冬は極寒の地。まずは寒さをしのがないといけません

(そうだった)

―今日はもう遅いです。夜露が凌げる洞窟をご案内します

水色の光が案内する。

たしかに洞窟があった。

なんと自分は闇夜でも良く見えるようになっていた。

―明日、2つの魔王城をご紹介します。大丈夫です。魔王様はもう空を飛べるようになってます

(すげえな。本当かな)

―今日のところはこんな劣悪な場所ですが

「あ、ありがとう」

やっと自分は声を発した。

―いいえ、当然のことをしたまでです。

 

第三章

 

ベッドも無い場所で碌に寝れるわけが無かった。

-お目覚めですか?

「うん」

-早くお城に行きましょう

-「飛ぶ」と念じてください

するとなんと自分の体がふわっと浮かんだ。

-こちらの方向でございます。

念じるだけですっと空を飛んだ。

「すごい!!」

-魔王様のお力はこんなものではございません

しばらくして廃墟を見つけた。

-これが初代魔王の魔王城です

見事に土台しか残っていなかった。

-降りてみましょう

降りると城下町らしきものが……ない

「ねえ、このお城城下町みたいなのがないよ?」

-ありません。魔王城内に町が形成されたようなものです

-様々なデストラップがあって侵入者を殺します。もちろん軍隊の進撃も防げます。

-初代魔王は最後爆発で勇者らを巻き添えにしようとしたのです。でも勇者は見事に城から脱出しました。

「次のお城も見てみたい」

-それでは次のお城にも行きますか。

-こちらの方向でございます。

しばらく飛んで次の城に来た。

「こっちはわずかながらに城下町がある」

-ええ。

「なんか管のようなものがあるね」

-それは水道管、ガス管、電気管です。

「水道?ガス?電気?」

-先代の魔王が魔力を使って作ったものです。

「お城は小さいね。まるでお屋敷みたい」

-ええ、引きこもることが目的ですから。

-降りてみましょう。

-いかがですか?貴方様のお力でしたら数日でこの程度のお城でしたらすぐに作れます。

-ちなみに菜園に農場もございます。

「水道?ガス?電気?どうやって作ったの?」

-近所のガス田から引いたのです。

「ガス田?」

-行ってみます?

-こちらの方向でございます。

しばらくすると炎が見えてきた。

「すごい!!」

「勝手に燃えてる」

-そうです。人間はここを地獄の入り口と呼びます

-ここにある燃える空気を管で運んだのです

「僕にも出来るの?」

-今はまだ難しいです

-いかがですか?どちらの魔王城を再建しますか?

「両方」

-さすが偉大なるお方。承知しました。

「でもその前に自分の住む家が欲しい」

-承知しました。今日も遅いですから昨日いた洞窟に戻りましょうか?

サロは洞窟に戻ると倒れるように寝込んだ。

 

第四章

 

目覚めた。

もう服も碌に着替えていない。汚れまくっている。

-お目覚めになりましたか?

「ああ」

-じゃあ家を作りましょうか?

-どこか適当な場所を選んでください

「じゃあ今日も一緒に飛ぶよ」

-もちろんです

一緒に飛んでると池がまた見えてきた。

「ここがいい」

-承知しました

降りたって疑問がわいた。

「どうやって家なんて作るの?」

-念じるのです。そこらの樹を倒して組み立てます。

念じてみた。すると風の刃が生じて樹が次々倒れた。

さらに樹皮を剥ぎ、木材を細かくして組み立てる。

昼頃には、家が出来た。

-魔王様、その気になれば石も集めて先ほど見た魔王城も作れますよ

「その前に、ごはん……」

-承知しました

するとまたしても池中の魚を集めて来た。

早速燃やして食う。

石に囲まれた家が出来た。中身は木材だ。暖炉もある。

ベッドも作った。

「毛布がないけど」

「それから洗濯もしないと。替わりの服も必要」

-そうですね。でしたら狼とか熊とか狩ってはいかがでしょう?

「殺されちゃうよ」

-貴方は魔王なんですよ?

-そりゃそうだけど

気が引けたのでトナカイを狩った。風の刃で一撃だった。1つは毛布用、もう1つは自分の服だった。

洗濯を終えて干すと日が暮れていた。

「自分の城だね」

-城というか、ほったて小屋ですが

と、その時

体から軽快な骨の音がするとなんと自分の首筋にあった緑の皮膚の範囲が首まで広がっていた。

-魔王様のお姿にだんだんなろうとしてます

「ねえ、いつか言おうとしてたんだけど」

「君は、誰?」

-ちょうどいい機会です。暖炉で暖を取りながらお話しましょう

 

第五章

 

-私の名前はシュクラと言います

「そうなんだ」

-魔王の副官です

-本来はエルフの姿で角を持っています。

-肉体は2回も滅ぼされましたがこのように魂は残っています

-新しい魔王が誕生したら魔王を支えるのが私の使命です

-というか本当は『魔王』じゃないんですけどね

「え?」

-その仮面、本当は『ザムド』という焔の神を宿したもの

-魔王などではございません

「へ?」

-初代ザムドの器となった生贄の男の子が力に溺れたのです

-ゆえにザムドは名すら碌に言われず初代ザムド討伐後単に『魔王』と呼ばれるようになってしまいました。

-でも我々は魔族であることには変わりないし『魔王』でもいいかなと

-だって副官である私も殺戮を楽しみ、人間を喰らう事が大好物となってしまいましたから。人間を喰らう事でより強い魔族「オーガ」に進化しましたが私も力に溺れ肉体を亡ぼしました

-それに初代ザムドは周りの村々を略奪、炎で消滅、女を魔王城に連れてハーレムまで作ってましたから。魔王の子孫まで残しました。四天王ともども魔王の子孫らは討ち取られましたけど。

-初代ザムドは特に村から出来損ないといじめられていました。生贄に選ばれたときは既に人間そのものに対して憎悪を抱いていました。

-60個ある仮面は村で蔵に保管されていることは知ってますよね

「うん」

-封印されてます。敵の部族に取られないように。それどころか呪いを発動しないよう呪術師だけしか仮面の能力を発揮できないようになってます

-2代目ザムドは女の子でした

-何をやってもダメな女の子でした

-でも初代の話をするとこういったのです。私は死にたくないと

-魔王になれば、ほかの獣人と違い人間の5倍の寿命を持てますし

「そうなの!?」

-で、人間時代の生活の理想郷を魔族の力で作ったのです

-でも四天王を形成したとき、その1人が裏で……

-略奪や殺戮をしていたのです。バロニアという元は熊の者でした

-あげくに魔王の座を乗っ取ろうとしたのです。裏切りでした

-そして初代魔王城を復活させたのです

-2代目魔王は自ら勇者の魂を送り込み

-ともに勇者と戦いバロニアを討ちました

-バロニアは様々な精霊を食い殺して取り込みもはや熊の面影など消えていました。竜に近いおぞましい姿でした

-2代目魔王はこの責任を取りたいと言って最後は勇者に懇願して自分を殺してくれと言ったのです

-勇者はその願いをかなえたのです

「ちょっと待って?なんでそんな危険な仮面なのに作ってるの?」

-いい質問ですね

-ザムドは炎の精霊です。この神が居ないとこの大地は永久に凍り付くと言われています

-ゆえに人間にとっても獣にとっても絶対になくてはならない神なのです

「そっかー。で、魔王を討ち取った勇者様はどうなったの?」

-勇者は……

-魔王に等しい力を持つ勇者は人間にとって恐るべき力なので

-毒殺されたり討ち取られます

「それって、どういう……」

-勇者なんて言ってますが次の魔王になる可能性の高い存在です。人間にとってはもう勇者とは人間じゃないのです

-そもそも魔王から分離した力を得てる存在ですからね

-初代勇者は4人で来ました

-最後は仲間ごと毒殺されました。仲間の呪術師2人も、戦士も……

-2代目勇者は3人で来ました。呪術師、行商人でしたね

-最後は人間に討ち取られました。最後2代目勇者らは宿屋で闇討ちされたのです。

-魔王は、お前だと

「……」

-ところで、貴方様が魔王の姿になれたときまだそれは標準体の姿です

「へえ」

-第二形態・第三形態と変えられることが出来ます

-めったなことで魔王様が第二形態・第三形態なんて現しませんが

-というか第二形態・第三形態を現わす時はピンチの時です

「そっかー」

-2代目勇者と一緒に戦ったときの2代目魔王も勇者の仲間である呪術師、行商人が死んだ後に自分の第二形態・第三形態を初めて知ったのです。

「一緒に戦ったの?」

-もちろんです。その時命を落としましたけど。2代目魔王様の第三形態の勇姿を見ることが出来たのは光栄でした。初代魔王様は第二形態までしか見ることが出来ませんでした。

-標準体の姿になられた時、魔王様の力で私は本来の姿に戻ることができます

-逆にそれまではまだ精霊も獣も魔族にする力は持てません

-よっぽど強い精霊じゃないと精霊すら見えない状態でしょうから

-魔王様、どうなさいます?

-引きこもってもダメです。もちろん得られた力に溺れてもダメです

-人間に害をなしたとき魔王様の体から力が出て近隣の10歳程度の子に勇者の力を授けるようにも出来てます

「人間を豊かにしちゃダメなのかな?」

-え?

「害してもダメ、何もしなくてもダメ。だったら人間によい事すればいい」

-私は副官です。魔王様の仰せのままに

-ちなみに2代目魔王の城下町に人間は居たの?

-居ませんでした。

-ガス管だっけ?水道管とか。あれを人間に与えることはできる?

-出来ますが……人間は魔王様を恐怖の対象としてしか見てないので

「僕は死にたくない!」

「僕はみじめな姿で死にたくない!」

-お気持ちは分かります

「やってみなきゃわからないよ。僕だって人間が憎い。だけど僕はそんな死に方したくない」

-仰せのままに。ではまずはこの家からやってみましょう

「それだ!」

-夜もだいぶふけて来ました。もう休みましょう

「そうだね」

「あ、そうだシュクラは寝ないの?」

-寝ますよ

「寝込みを襲われる心配は?」

-大丈夫です。精霊は人間などよりも敏感です。何かあればすぐに起きられます

「それ聞いて安心したよ」

「お休み……」

 

第六章

 

-まず樹を切ります

「うん」

魔王は樹を切り倒した。

-次に小さい木材を取り出します

-この木材を空洞にします

-最後に魔素を加えます

「魔素って?」

空気中にある魔力の元です。

-この場合の魔素は銀色になるまで念じます。

どんどん空気中に魔素が出来る。

-それを空洞の中に向かって破を唱えてください

破を出すとなにやら金属のような管になった。

-これがガス管です

-とにかくいっぱい作って繋げましょう

昼は森にいるウサギを風の刃で殺して燃やして食べた。

-焦らず。数日かけてやりましょう

こうして10日が経った。

ガス管が家に繋がった。

-これが元栓です。

-管にもいっぱい作りましたね

「うん」

-ひねってください

-点火スイッチをひねってください

すると……なんと炎が出た!

「すごい」

-消す時は反対側にひねってください

「消えた」

-魔王城ではこんなエネルギーを当たり前のように使っていたのです

動物の油で灯りを灯すことも出来た。フライパンも鍋も作った。

そんな時。

また躰から骨が軋む音が鳴り響く。

肩幅が広がり背が隆起する。深い緑色の部分は肩まで広がっていた。

-順調に元の姿に戻っています

-魔王様、今は部下が居ませんからこんなに日時がかかってしまいましたが

-魔族であれば1日がかりでこの作業は出来ます

「魔族ってすごいね」

-ガス管からガスが漏れたら大変です。そのため定期的に魔素の色を確認します。

-このガスを使って明日は電気を作りましょう

 

第七章

 

-まず、小屋を作ります

「うん」

言われるがままに小屋を作った。

-次に箱を作ります

-次に樹をたくさん切って魔素を茶色にして破を唱えます。この茶色の素材を箱に巻き付けるようにします

「こうか?」

-そうです。次に風車を作ります

-風車は銀色の魔素にします。

-次に小屋全体を銀色の魔素で染めます

-最後にガス管を引いて焔が風車に当たるようにします

-焔を付けてください

すると電撃が走るようになった。

-茶色の魔素を家に引っ張って来ます

家に引っ張ると……

-大きい箱には銀色の魔素を、小さい箱には白色の魔素を加えてください

-茶色の魔素同士とくっついたり離れたりする装置を作ってください。これを「スイッチ」と言います

-箱茶色の魔素をつなげてスイッチを入れてください

すると家じゅうが明るくなった!

「すごい!ランプよりずっと明るい!!」

-これが魔王城の中にたくさんあったのです。敵を脅かすには黒がかった赤色にします。

-万が一漏電しないように「ブレーカー」も作ります

-茶色の線とランプのスイッチの間にまたスイッチを作ってください

-「ブレーカー」を落としてスイッチを付けてみてください

「つかない!」

-この小屋を数日以上開けるにするときはブレーカーごと切るのです

「すごい!!」

「生活が楽になった!」

-でしょう?

-明日は上下水道を作ります

-今日は鍋にしませんか?

「いいね!」

<翌日>

-ガス管を作る要領で管を作ってください。

-次に水車を管の中に入れます。水車もガス管と同じ魔素で作ってください

-この水車を電気の力で回します

-そして家に引っ張ります

-風呂場にも、トイレにも、当然炊事場にもです

-風呂場にはボイラーを付けましょう。ガス管も引っ張って来てください

-下水管は銀をまぶした色にしてください

-下水管は集めたら今度は網目状の青の魔素をいくつも作ってください

-水が浄化されます

「すごい!」

これで完成です。

北風が舞った

「もうあっという間に秋だね」

「ここも凍るよ?」

-そうです。だからガスで温める必要があるのです。

こうして、ガス・電気・上下水道が完成した!

「うくっ!」

サロの体に激痛が走った。

沸騰した鍋のごとく腕が突如泡立ち膨れ上がりとんどん深い緑色になる。

そして自分の爪が伸びていった。爪の色は深い闇色だ。

-いよいよですね。標準体になる日が近いです

-最後は菜園を作りましょう

-冬になる前に

「うん!」

 

第八章

 

冬が来る前に畑を整備する必要があった。

水道も引いて、森も開拓し一気に農地を切り開いた。

長い冬に備えないと

そう、シベリアの冬は長い。

保存食も作る必要がある。

動物も狩って塩漬けで保存する必要がある。

もちろん魚もだ。

毛皮の服も確保した。

「なんか想像してたのと全然違う魔王生活だよな」

-魔王様が標準体になればまた変わりますよ

こうして短い秋が終わった。

と、その時。

腹の肉がざわっと蠢いた。

こうして緑色の皮膚の部分は脚以外の部分にまで達した。

-いよいよですね

-標準体になったらいよいよ部下を持つことになります

-もちろん私も本来の姿に戻れます。

-ただ、この小さな家では大所帯は厳しいかもしれません

「あ……」

-小さい魔王城ですが、魔族を増やせば先代の魔王様のお城を復活できます

「ここはどうするの?」

-それなんですがここを「モデルハウス」にしたらいかがでしょうか?

「モデルハウス?」

-魔族の生活はこんなに快適なんだぞという展示場です

-人間にもご提供しますよということです

「そりゃいいや!」

-問題は人間が魔族を恐れないようにするにはどうすればいいかってことですが

-それと大所帯に備えて洗濯機も作りましょう。

-凍った水で洗濯するのは難儀でしょうし

「どうするの?」

-銀色の箱を魔素で作ります

-水車を箱の底に取り付けます

-水車を回すエネルギーを電線から取り込みます

-このボタンで水を流す、このボタンで水を排水する、このボタンで水を回すのです。

試行錯誤のうち、数日で洗濯機が完成した。

「毛皮は洗えないけどね」

-それもどうにかしましょう

 

第九章

 

冬が来た。

シベリアの冬は長い。

場合によっては一日中太陽が出ない日もある。

まさに暗黒の世、魔王が支配する刻なのだ。

そして魔王の体に異変が起きた。

最後まで人間の体を留めいた足の部分が軽やかな骨音を立てると深い緑の皮膚が浸食し、鉤爪のような黒き爪が足から伸びた。己の靴は飛び散った。さらに尾が生じた。

こうしてサロは標準体となった。

-おめでとうございます

-私めに力を込めてください

「どうやって?」

-願いだけでいいのです。願いを破で出すのです。

「こうか?」

サロは掌に青白い光をどんどん集める。

「破っ!」

真名の波動をシュクラに向かって出すとシュクラだった光がどんどん大きくなる。そしてそれは人の形に近い者となった。
皮膚は白磁を思わせる色。しかし両のこめかみから角が出ている。耳は尖っていた。長髪の白銀の髪をなびかせていた。服も白銀を思わせるような色の服を着ていた。

「ああ……」

「実に82年ぶりです」

「82年!?」

「精霊族は、魔妖族は長生きなもんですから」

「魔王様、申し遅れました。私は魔妖族にして魔王の副官シュクラ」

「魔王様の右腕にございまする」

「シュクラ……堅苦しいから顔上げていいよ?」

「それに僕、魔王としての実感ないし」

「サロでいいよ」

「いけませぬ。それはもう人間時代の名前。魔王様は人間の体を依代にしてるだけでございます」

「先代の魔王も同じことを言っていました」

「ですがもう、人間ではないのです。人間時代の名を捨てるのが一般的です」

「ザムドとお名乗り下さい」

「僕はサロのままだ!」

「言ったはず。人間にこれらの福音を与えるのだと。そして僕は人間時代の心を忘れぬよう人間時代の名をこれからも使う」

「魔王様。承知しました」

「だから2人きりのときは『サロ』でいいって」

「ま……サロ様、承知しました」

「『様』とかも要らない」

「今日から格が上とか下とかそういうのやめよ?」

「これから動物や精霊を魔物にするんでしょ?」

「だけど『魔王様~』とか本当は辞めてほしいの」

「これは後から出来る『四天王』にも同じことを言うよ」

「四天王が裏切って先代は失敗したんだよね、シュクラ」

「そうです。サロ」

「ところで四天王って何する人?」

「一般的には特に武力・魔力の高い者を魔王の側近にして高位の官になる者の事を言います。通常4人なので『四天王』です」

「魔王城が攻められたときは4つのゲート作って守ることにもなってます」

「四天王は場合によっては1人魔王城から旅立って勇者を倒しに行く『勇者』でもあります」

「まさかと思うけどシュクラ、その4人って仲が悪くない?」

「仲が悪くない場合もありますが…‥先代を裏切った四天王バロニアは一番弱かった四天王だったのです」

「農場を作ったりガス管を作ると言ったことが苦手で武力も弱かったのです。あくまで4人の中では、ですが」

「劣等感か」

「そういう魔族も増やさない」

「側近は武力が立つとか魔力があるとかそういった人間にはしない」

「と言いますと?」

「優しさを持つ者を側近に入れる」

「了解」

「お!『承知しました』って言わなくなったね」

「そのほうがいいと思って」

「ちなみにもう仮面特有の違和感は完全に無くなってますよ」

「本当だ」

「完全に魔族の顔です」

「本当に僕は魔王なんだね?」

「そう、逃げられませんよ」

「僕をうまく支えてね」

「もちろん」

 

第十章

 

吹雪が止んだ。

シュクラもサロも毛皮のコートを着て外に出る。

サロは真名の波動を動物に次々唱える。

するとどんどん獣が獣人となっていく。トナカイ、熊、犬……

こうして一気に小屋は大所帯となった。とりあえず3匹を魔族に変えた。

「鹿魔族のギンです」

「熊魔族のポポラです」

「犬魔族のケンです」

魔族となった者は知性も格段に向上する。そして自分に名を付けるところから新しい人生がスタートする。

食料の事もあるので魔族を一気に増やすのは得策ではない。

そこで少人数ながらも小屋を拠点に吹雪が止んだ時に先代の旧魔王城を復興していく。

「本当に旧魔王城は『お屋敷』なんだね」

「ええ、それと城下町も再建しましょう」

「先代の魔王の時は城下町には何があったの?」

「鍛冶屋、薬屋、食品も売る雑貨屋、服屋ですね」

「服屋もあったんだ」

「服だけでなく防具まで売ってました」

「へえ」

「それと魔王軍の宿舎に訓練所も必要です」

「先代の魔王は引きこもるのが目的じゃないの?軍隊あったんだ」

「さすがに最低限度の軍隊は持っていました。先代の時は町民が一定時間軍隊となって訓練しました」

城下町に3軒復興させたらまた3匹を魔族にする。6軒以上となったら今度は宿舎を作った。

こうして復興スピードは速くなっていった。

直接城下町に発電所も上下水道もガス管も引いた。

ついにサロは元居た小屋から屋敷に移った。

「すげえ、これが屋敷!?」

執務室は2階にあった。

「ええ、そしてここがサロの執務室です」

「殺風景だね」

机と椅子が置かれているだけであった。

「これからいろんなものが置かれますよ」

「これが謁見の間です。ここではさすがに『魔王様』と呼ばせていただきます」

「副官の椅子もあるんだね」

「ええ、ずっと立ってるのは疲れますので」

「食堂も長いテーブルなんだね」

「はい、けっこうな所帯になってきたんで」

「お風呂は時間制なんだね」

「魔王様は一番風呂ですよ」

「トイレも多く作ったな。しかも男女別だ」

「はい、当然です」

「私もサロも男子トイレです」

「洗濯機も共用かあ」

「魔王だからと言ってここでは特別扱いは無かったんです」

「地下室です」

「ここで先代の魔王も魔法を教わりました」

「この部屋は牢屋です。めったに使いたくありません」

「最後に墓地です。墓石もボロボロだったので共同墓地としてですが復活できました」

「寿命はもちろんの事、ここで倒れた仲間のための施設がようやく作れました」

「祈ります」

「……」

「執務室に戻りましょうか」

——————–

「元居た小屋は犬魔族のケンに管理をさせております」

「モデルルームか。どうやって人間を引き込もう?」

「う~ん、私もいい案が浮かばないですね」

「拉致するという案ならすぐ浮かびますがそれじゃすぐ『勇者』が生まれてしまいます。人間を害しているので」

「とりあえず、ここを復興させたら次は先代の魔王城を復興させませんか?」

「あくまで、ここは隠れ家みたいなもんなので」

「あ、それと結界も作っておきましょう」

「万が一人間に入られたら困るので」

「結界くぐりの石も必要ですね」

「もちろんモデルルームには結界を作りませんよ」

「そうそう、街の名前を決めてほしいのです」

「前はなんて名乗ってたの?」

「『サヤカ』です」

「なんかやっぱ女の子だな」

「そりゃそうですよ。先代の魔王の執務室は人形だらけでしたし」

「へえ」

「温室にはお花も育てていたんですよ」

「へえ……」

「温室なんてあったんだ。俺は要らないかな」

「それはダメですよ。ここは冬が長いんです。野菜が不足します」

「そっかー」

「……」

「う~ん」

「ヴォルド」

どういう意味です?

「迎え入れる」

「ということはここに人間も?」

「出来ればな」

「『ヴォルドの町』になったことを知らしめましょう。さっそく町民を集めるのです」

こうしてたった20名程度の魔族ではあるが魔族の町を再建することが出来た。

食堂では町開きの祝いが行われた。

しかしその後魔王となったサロには過酷な運命が次々待っていたのであった。

<第一部 終>

 

第二部

 

序章

 

「おお!かっこいいねシュクラ」

「光栄です」

シュクラの白磁を思わせる皮膚をまとったのは美しい白銀の鎧であった。鎧の内側には毛皮を着ている。

そしてシュクラはサークレットも付けた。魔力を増大させるための基礎的な装備品だ。

「サロも鎧付けますか?」

「いいよ、僕はこの『黒闇のローブ』を気に入ってる」

それは冬のシベリアの大地を表現した夜と闇の威容を讃えたローブであった。しかも装備者の魔力を増幅させる。人間が着ると力を吸われる魔の装備だ。

もうすぐ太陽が顔を出さなくなります。

その前に初代魔王城をもっと見学しましょう

「賛成」

「では、熊魔族のポポラにヴォルド全体の留守番を頼みます」

「副官、了解しました」

「初代魔王城はずっと南にあります。南と言ってもこの時期は凍土ですよ」

「了解!」

2人は空を飛んで初代魔王城に向かった。

「ここが初代魔王城です」

「今度は降りてみましょう」

「うん」

2人は降り立った。

「本当にここは土台以外ここも残ってないね」

「ええ、ここの1階に魔王の謁見室があるのですがいざ戦いとなると地下4階の真の謁見室で戦います」

「おそらく地下は爆発に耐えて残っているでしょうけども」

「地下には電撃床・毒床・溶岩床など人間が下手すると即死するトラップも作ったのですが初代勇者らは乗り越えてしまいました。浮遊魔法で」

「だめじゃん!」

「でもバロニアが復活させた初代魔王城討伐の時はこちらも城の作りが分かってたので勇者・魔王共同軍は逆に行軍が楽だったのです」

「……」

「地上は5階まであります」

「2代目魔王と戦った勇者のために作った武器と防具はここの地下に収められています」

「実は2代目勇者の武器と防具は我々が作ったのです」

「呪いなしの装備では最強のものを作りました」

「あ、もう太陽が……」

「まもなく太陽も出ない闇の世の季節になります」

「この時期は寒波もすさまじいのでとりあえず屋敷をもっとよくしてからここを再建しましょう」

「了解、じゃあ戻るぜ」

第一章

とうとう、太陽が一切出ない季節を迎えた。

「温室は作って正解だな」

「はい」

「しかし窓の向こうは極寒の地とはね」

「あと地下室も正解だな」

「魔術の練習場になる」

「2匹の精霊を2名メイドに変えたのは正解だな」

「ええ」

「でだ、俺は羽妖精にこんな極楽な場所があると村人に知らせるという案があるんだがどうだろう」

「いいですね」

「あとは人間に夢を見させるとかそういう魔法はないの?」

「暗示の魔法ですか?ありますよ。しかも羽妖精族が覚えます」

「それだ!」

「いよいよ『モデルハウス』が始動するんだね」

「でも羽妖精が一通り紹介を終えて、そこで魔族登場ってなった時に人間はどういう反応するんだろう」

「未知数ですね」

「一番いいのは旅行者が倒れてるとこを助けるってとこだけどな」

「でもここは北の大地だし、旅行者も少ない」

「手ならあります」

「水晶で見つけ出すのです」

「空に浮かんで水晶で人々の反応を聞くことが出来ます」

「そこで旅行中に助けてという声が聞こえてくれば」

「モデルルームやここに連れて来れるのか!」

「シュクラ頭いい!」

「サロ、さて地下室で新しい魔術を覚えましょうか」

「よっしゃ!」

サロはここで<重力>グラビティ―の呪文などを覚えた。

「せっかくですからお風呂場にはシャワーも付けませんか?」

「シャワー?」

「蛇口のところに細かい穴がたくさんあるんです」

「風呂場だけでなく、温室でも使えますよ」

「そりゃいいや!」

こうしてスプリンクラーにシャワーが出来上がった。

 

第二章

 

「なあ、朝だよな」

「朝です」

「太陽の光は無いが朝なんだよな」

「水時計では7時です」

「風呂場からシャワーの音がするぞ」

「シュクラ、お前いけよ」

「ここは大将のサロでしょ?」

「2人で一斉に行くか?」

「残りの魔族は待機してろよ」

「「はい」」

風呂場に入った。

「何見てるのよ~スケベ!!」

桶が飛んでサロに、魔王に当たった。

———————-

「も、申し訳ございません。どうか私めの首を飛ばし……」

「もういいから」

土下座してるのはメイドのエステルであった。もちろん服は着ている。

「なんで風呂入ったかな?朝は禁止のはず」

「朝風呂が気持ちよくて、つい」

(ここは犬魔族のケンをモデルハウスから呼び戻してこのエステルをモデルハウスに配置させるのはいかがでしょう)

(それはいい、外見的にも人間そっくりだ。耳の部分だけエルフ族だけど)

(もう一人のメイドのサーシャはどうだ?)

(今のところマジメです。ボケもヘマもしてません。料理もまあまあです)

「おほん、お前の処遇が決まった」

「お前はモデルハウス係とする」

「あ、ありがたき幸せ」

「犬魔族のケンと交代だ」

「はっ」

こうしてエステルは鹿魔族のギンと熊魔族のポポラによってモデルハウスに連れていかれた。

替わりにギン、ポポラと共にモデルハウスからケンが戻って来た。

「ケン、申し訳ないけど風呂掃除とかになっちゃうけどいい?」

「お安い御用です、魔王様!」

「ところで魔王様。モデルハウスで生活してひらめいたのですが灰汁に動物の油脂を混ぜたところ、汚れがよく落ちました」

「こちらでございます」

「床で試していい?」

床にわざと汚れをこぼして固形灰汁を水にぬらすと汚れが簡単に落ちていった。

「これはスゴイ!」

「しかも体の汚れを落とすことにも使えます」

「おまえ、でかした!!」

「日々の清掃が楽になるぞ」

こうして初歩的な洗剤も出来上がった。

 

第三章

 

暗黒の世の地下室。

ここで魔王は水晶に向かって念じていた。

相手はあのメイド、エステルであった。

「うまいことやってそうだな」

「あいつが家燃やしたとかなったら全部計画がパーですからね」

水晶の前で手をかざすると水晶から光が消えて音も消えた。すべては暗黒に包まれた。もっともこの環境でも魔族は周りがよく見える状況なのだが。

「しかしこの射干玉(ぬばたま)の黒で水晶に向かって念じるとかまさに魔王」

「一回やってみたかったんだ~」

「そうですか」

「それでは魔法の訓練も終わりましたし地上に上がりましょうか」

「おう!電撃の術も氷撃の術もばっちり」

「シュクラはほかの住民にも魔法伝授だろ?」

「そうです。この暇な時期じゃないと逆に教えられませんからね」

(魔王になって初めて暇になった)

吹雪が収まったので外に出てみた。

宿屋も鍛冶屋も見てみた。貝貨も順調に流通していた。

城内に戻り温室も見てみた。

狭い温室。貴重な野菜である。

城内には訓練場もある。魔王を見かけると一斉に礼をする。

平和だ……

(始めて自分は誰にもバカにされずに快適で幸せな人生を手に入れたのではないだろうか)

—————————

「サロの動きはどうだ?」

「何もありません。初代魔王のような殺戮衝動はない模様」

「だとすると2代目魔王と同じコースかな」

「2代目魔王城の動きは」

「あります。結界石の反応があります」

「やはりそこにいるのか?」

「初代魔王城の動きは?」

「ありません」

「ないか。すると2代目が居たお屋敷の再建かな?」

「その可能性は大きいかと」

「仲間割れして世を乱して勇者登場というパターンかな?」

「おそらくは。魔族はそんなに倫理観高くないですし」

「魔王の仮面、出来上がったぞ」

ロロはそういうと壁にかけ封印の呪文を唱えた。

「愚かな。何もしないという選択も自滅の道」

 

第四章

 

初代魔王城の復興に取り掛かった。名前はもちろんサロ城。

精霊も次々具現化し魔族に姿を変えた。もちろん動物も。特に今まで魔族にしてなかった鳥魔族を誕生させた。

吹雪の日は2代目魔王城に身を寄せた。

やがて地下室部分を復元化することで2代目魔王城に身を寄せる必要が無くなった。

「すごい玉座の後ろに階段があるなんて」

「敵が攻めてきたら、ここに身を寄せるのです」

数の力でどんどん魔王城が復元されていく。

1階は食堂、トイレ、風呂場、謁見室、鍛錬場、宿屋、道具屋、鍛冶屋、温室などとなった。

2階は四天王と副官と魔王の居室となった。四天王の部屋はまだ空室だ。2階のトイレは居室ごとに設けられている。

3階以上は一般兵の居室だった。3階以上にトイレはない。1階に降りるのである。最上階は5階となった。

発電所も上下水道も復活させた。

地下1階からは迷路になっていた。

そして……

「あったぞ、勇者のために作った武器と防具!」

爆発の余波が及ばない地下3階を経由して地下2階の宝箱に武器と防具は収められていた。シュクラは封印を解いた。

「これは地上に持って行きましょう」

電気床や毒床などの跡地もあった。

「使いたくないものですな」

「うん」

そして地下4階……

魔王の真の玉座があった。

「ここも電気通るんだね」

「そうです」

「ここまで勇者に踏み込まれる事態にならないようにしなければなりません」

「地下4階だけ空洞みたいに広いね」

「そりゃそうです。サロが第二形態・第三形態になっても城を壊さないように出来てます」

「そんなに大きいのか。俺の真の姿」

「ええ」

「それとこちらを」

「ここは……」

「生贄の祭壇です」

「これが心臓を置く祭壇、これが腸を置く聖杯です」

「万が一人間に攻められたとき、人間を喰って魔力を増大させます」

「サロの場合1人食っただけでそこらの村や町を軽く消し飛べる力を持てます」

「私も前にお話した通り初代魔王の副官時代に人間を喰って進化し、オーガとなりました」

「あまり喰いたくはねえな。自分は元人間だしな」

「それでは守れるものも守れなくなります。人間を守るために人間を喰う時が来る可能性があります」

「どうか『魔王になった』という覚悟をお持ちください」

「そっか……」

「そうだよな」

「生贄は燃やした後、この引き出しを開けて入れます」

引き出しの音は重苦しい音だった。

「戻りましょうか」

「定期的に地下の玉座は整備してください。密談の時にも使えます」

「帰るの、めんどくさい」

「迷路ですからね」

こうして初代魔王城は復活した。

第二魔王城は「城」とはとても呼べない規模なので魔王の別邸となった。

別邸もいずれ巨大なモデルルームにする予定である。

 

第五章

 

「これはひどい」

こうしてサロは初代魔王城の墓も整備した。

「実は初代魔王もそうなのですが……」

「一度死んだ魔物を死霊系の魔物として生き返らせているんです」

「ええ?」

「もちろん、人間も」

「サロはやりますか?」

「2代目魔王は死霊系の魔物をかたくなに拒みました」

「僕も嫌だ」

即答だった。

「安らかに眠らせてあげたい」

「そうですか」

「個人的な意見ですが」

「私もその回答に正直ほっとしています」

「ちなみにほかの魔族も死霊術を覚えたら、どうします?」

「禁止する。重罪にするよ」

「では今のところ、知ってるのは私だけです。貴方を含めて死霊術は封印にしますね」

「私を見ればわかる通り魔物って実は死ぬのではなく依り代となる肉体が滅びるだけです」

「一定期間を過ぎると精霊体から元の魔族に戻れます。数十年かかりますが」

「でも死霊術で復活させられると、そしてその依り代となった骸骨や死体を破壊されると」

「永久に魂も復活できません。精霊体ごと死にます」

「そうなんだ」

「だから死霊術というのは魔族の間でも忌み嫌われる存在なんです」

「魂だけの存在になっても、精霊だけの存在に落ちても長生きしたいんです。やすらかに」

「分かったよ」

「それに人間を引き込む時に死霊とか居たら普通に引くからな」

「ごもっともです」

 

第六章

 

「いよいよですね」

「いよいよだね」

いよいよ羽妖精に夢を見させて1人、1人モデルハウスに誘導させるのである。

万が一エステルに被害が及ばないよう、いつでも逃げる指示が出来るよう水晶を持たせました。

<こうして人間たちに夢をみさせた>

モデルハウスは絶好調であった。

「よし、次はいよいよ元魔王亭だ。みんな丁重に人間を迎え入れてくれよ」

「「はい」」

モデルハウスのキャパは小さくなったので、いよいよ元第二魔王城と城下町を見せた。

人間はあっけにとられるもの、感動する者、そして「商売」を申し出る者さまざまであった。

「大成功だぜ」

モデルハウスの周りも宅地分譲を始めた。

支払いは分割でもいいとした。万が一支払いが止まったら追い出されるのだが。それだとホームレスになるので公営住宅も用意した。

人間の仕事も確保する必要が出てきた。

幸い電気もある。農産品を買うことにした。

こうして魔王城にはどんどん収入が入って行った。

「農業や漁業以外にも人間の仕事を作る必要があるな」

「麻はいかがでしょう?」

「麻か」

「温室でも育ちます」

「服を作るのです」

「織機で」

「それはいい、自動織機って作れるか?電気の力で」

「足を踏んで動かすだけですからそれは容易かと」

「素晴らしい、お前の名前は何という」

「熊魔族のカラと申します」

「今日からお前は四天王だ!」

「ええ!」

「なんだ、不満か?」

「いいえ、魔王様。あまりの感動で手が震えてます」

「そうか、期待してるぞ」

(誰か助けて~)

「今日から四天王の部屋を紹介する」

「シュクラ!」

「おお!この方が四天王第一号」

「熊魔族のカラと申します」

「では四天王の部屋に案内しようか」

こうしてカラは一般兵士の部屋から四天王の部屋に移った。

机もあり椅子もあった。ベッドもあり専用の個室もあった。トイレも付いていた。

 

第七章

 

「水晶玉を箱に埋め込んで」

「で人間の皆様、演奏して」

人間らは馬頭琴などを奏でる。

「なんて美しい音色なんだ」

「魔王城に聞こえてるか?」

「聞こえてるぞ。すげえ」

「俺たち鳥人は仲間とのやり取りで小さい水晶玉を使うからな」

「このようにペンダントにして」

「で、この水晶を片方向ににしか音声を流さないようにすれば」

「こんな娯楽の出来上がり」

「すごいよ」

「空に住む者の知恵さ」

「何やってるのかね、騒がしい」

「シュクラ様、これを聞いてください」

「なんと美しい」

「別邸から流してるんです」

「スゴイ」

「これが人間の音楽か。そうだったな」

音楽が終わった。拍手で沸いた。

「いかがですか?聴衆のみなさん!」

「あいつの名前は何というんだ?」

「鳥人(ホークマン)族のカラロと言うそうです」

「じゃあ後日、サロと一緒に別邸に行こうかな」

——————

「ええ!?おいらが四天王!?」

羽をばさばさ鳴らしなら騒ぐカラロ。

騒ぐなって。で、この片方水晶、なんて名前付けよう。

「おいらたちはラジオと呼んでます」

「じゃそう呼ぶか」

「で、人間の雇用の受け皿にするにはいいが、どうやって運営を維持しよう」

「有料じゃ人間の困窮度を考えると」

「宿屋とか鍛冶屋の宣伝に使えないかな?」

「宣伝費をもらう」

「放送時間も朝-昼と昼-夜に分ける」

「それはいいですね」

「じゃあ、放送局は魔王城でやってもらうね」

「で、今日から四天王としてよろしくね」

(俺でいいの!?)

こうしてカラロは四天王になった。

放送局は4階に置かれた。時折鳥人は空を飛ぶのでなるべく高い階を希望したからだ。

 

第八章

 

「これが近隣の鉱山から取れた銅です」

コボルトのモコが言う。

「これにスズを混ぜると……」

「おお、なんて綺麗な硬貨なんだ」

「今や貨幣も貝ではなく黄銅貨の時代」

「いかがでしょう?」

「魔王様に許可を頂かないと分からんな」

サロはすぐに許可を出した。こうして貝に変わって黄銅貨が流通した。

黄銅貨はそれまで貝を通貨の替わりにしていたが安定してかつ綺麗ということで鋳造も楽ということですぐに広まった。

「通貨の単位を決めてください」

「今までは『カイ』でした」

「それにしても大きさで貨幣の価値が変わるんだな」

「ええ」

「金庫はどうしよう。今まで活用してない地下1階などを使用するか」

「それはいいですね。すぐに地下もリニューアルしましょう」

「ゼニ―」

「これはいい『銭』だ。通貨単位は『ゼニー』としよう」

「……」

「おおせのままに」

「どうした、シュクラ?」

「いいえ、別に」

なんとこうしてダジャレがそのまま通貨の単位になってしまった。

国庫はいざという時のための地下に作られることとなった。

もちろん防火扉も完備でいざ戦闘となった時も安心だ。

鋳造工場は魔王城の中に作られた。

両替商も誕生した。

「鉱山で働く人の住環境は大丈夫なのか?」

「あまりよくはありません」

「距離は?」

「ここからひとっとびです」

「じゃあ行ってみるか」

 

第九章

 

ほとんど無人になった村。

そこにロロは居た。

「おのれ、サロめ」

「まさか魔族の力を人間に与えるとはな」

「こいつは予想外だった」

ロロはかたくなに魔族の町に行くことを拒んでいた。

「これでは我が計画が失敗してしまう」

「魔王や勇者の死骸から出る魔石を取り込むという計画がな」

「見ておれ、サロ」

「お前の体からなんとしても『勇者』の光を出してやる」

「そうだ、南の遊牧民族にこの事情を説明するか」

「ゾクよ」

そういって現れたのはなんと羽妖精であった。

「人間たちは魔の虜となったと人間に吹き込むのだ」

「御意」

すると羽妖精はふっと消えた。

「ふふふ、くくく、ふくくくく」

ロロは笑っていた。

廃墟同然の町で。

いつまでも。

 

第十章

 

「薬用植物の畑がいっぱいあるといいんだがなあ」

「そっかー」

「売り切れだよ」

「もうしわけないね」

「畑があれば雇用がもっと増えるんだけどね」

リザードマンのミカははっとした。

「それ、どうにかなるかもしれない!」

「それってどういう……」

「店主、ありがとよ!」

ミカは買ってきた薬を仲間のリザードマンであるカミカに渡した。

「ごめんな、練習中にこんな傷負ったせいで除隊になるなんて」

「いいんだよ。あの傷、俺のせいなんだからな」

「薬用植物、ないんだと」

「だから薬が無い」

「そっかー」

「でも俺は近衛兵だぜ?シュクラ様にダメ元で言ってみる?」

「ありがとう……」

ミカは勇気を持ってシュクラに直訴した。一歩間違えたら除隊覚悟だ。

しかし、

「ほお、そんなに効くのかその人間が作った薬は」

「はい。間違いありません」

翌日、シュクラはサロと共に薬局にやってきた。

薬局・カルとある。

「いらっしゃ……貴方様は!」

「かしこまらくていいよ」

「薬の元となる畑が不足してるんだって?」

「はい」

「しかも新薬も作るのだとか」

シュクラの問いにはいと答えたカル。

「人間よ、名前はカルで間違いないのだな」

「はい」

「温室を増やそうぞ」

「そして研究室も作ろう」

「だから、四天王にならないか?」

「へっ!?」

「私は人間でございます。魔族ではございません」

「種族は関係ない」

「2度も魔族が戦に敗れたのは優れた人間を重用しないからだ」

「ここの店番はこいつがやってくれるそうだ」

「あ……あなたは」

「カミカさん」

「傷負って除隊したんだけど店番ならやっていい?というか薬学、覚えたいんだが」

「ええ、いいですとも」

「決まりだな!」

こうして魔族の歴史としては初となる人間族出身の四天王が誕生した。

 

第十一章

 

こうして町の規模はどんどん大きくなった。

極寒の地である。

冬の極寒に耐えるために町と城は一体化してるのである。

学校に警察署に裁判所……。気が付けば必要というものはすべてできていた。

住民は150名を超えた。

そんなシベリアに短い夏が訪れようとしている。

まもなく呪いの仮面をかぶって1年が経とうとしていた。

そんな時シュクラから提案が来た。

「せっかく別邸があるんだから休暇もかねて別邸にいかないか」

そう、旧第二魔王城のことである。

「ここはどうするの?」

「そんなときのための四天王だろう」

「もちろん、水晶で連絡は取り会うけどね」

サロ、長期休暇どうする?

「いっそのこと、プールでも作ろうか」

「プール?出来るの?」

「建設が必要だけどね」

「それって働いてるのと変わらないんじゃね?」

「一度出来たら温水プールだから入場料も取れるし冬場は体がなまるからいい運動場になるんだ」

「健康は大事だよ」

「そっかー」

「じゃあ行くか、別邸に」

こうして2人は数か月ぶりに別邸に行った。

プールは町の魔族が総出で建設した。

数日で出来たプールは町民の感謝の意味も込めて1か月タダとなった。

もちろん更衣室も完備だ。

5ゼニ―硬貨を入れると鍵がしまり鍵を開けると5ゼニ―硬貨が戻って来る

「すばらしい」

サロは感激した。

元々ここは服の工場もあるところである。水着も当然作れた。

水が苦手な魔族はともかくみんな大はしゃぎであった。

ほかには魔族の間で大好きな板玉返し、乗馬などを楽しんだ。

もちろん浴場も楽しんだ。

「ここではもう仕事の事は忘れてくださいね。日報の時以外」

「うん!」

「あ、でも魔王城にも作りましょうか、プール」

「うん!」

 

第十二章

 

モデルハウスから発展したニュータウンがどうなっているのかも気になった。

そして、あのメイドのエステルも……。

ニュータウンはきれいに整備されていた。別邸の魔王城とは異なる光景だった。

20戸あった。

エステルもニュータウンに住んでいた。

エステルが案内する。

そんなときであった。

「魔王様」

「オロ」

「知合いですか?」

「幼馴染だよ」

1年ぶりの再開であった。

「ごめん、ぼく、こんな姿になっちゃった」

サロが尾を揺らす。

「いいのよ。だってそのおかげでこんな最適な生活できるんだし」

「この娘さん凄いんですよ。自治会を作ったのです」

「へえ、自治会」

「ゴミの集積場にゴミ拾いなどですね」

「公園も作ってます」

「さらにゴミ焼却施設に木炭工場に木炭発電所も設置しました」

「へ?」

「え?」

「だって、ガスだけじゃ怖いでしょ、サロ君。だからバックアップになるものも必要だと思って」

なんと木炭ガスで発電もしていた。

「すごい」

「そっかガス管をやられたときの補助電源なのか」

「そうだよ、サロ。いつも大事なもの忘れてるんだから」

「うん」

(こりゃ四天王決定だな)

(そうですね、これ大物ですよ)

「オロ、君を四天王に迎えたい」

「えっ?」

「魔王城にあるようでなかったんだ。焼却場はともかく」

「その焼却場まで各自が運んでいったんですよ」

「しかも木炭なんて暖炉と消臭用途以外のものを思いつかなかったよ」

「サロ、私人間よ。それに弱いし」

「大丈夫。もう人間族の四天王がいるくらいなんだ」

「幼馴染ならサロの長所も短所も知ってるはず」

「もちろん、この家は魔王城がいったん買い上げて別の誰かに売るよ」

「買ったときの値段で」

「行く!」

「私、ここつまらないって思ってたの」

「決定だな」

「じゃあよいしょっと」

「サロ君!?」

「君は空飛べないでしょ。しっかりつかまってろよ」

こうして2人は空を飛んで魔王城に戻って行った。

 

第十三章

 

「熊魔族のカラ」

「はい」

「鳥人族のカラロ」

「はい」

「人間族のカル」

「はい」

「人間族のオロ」

「はい」

「四天王はこの城がいざ攻められた時守るために地下の守備位置が決められている」

「「はい」」

「カラは地下2階の大広間」

「カラロは地下3階の大広間」

「カルは地下4階に通じる階段の手前」

「オロは地下4階の大広間だ」

「オロは真の玉座の手前の大広間で戦うことになる」

「そして四天王と副官と魔王のみ通常時でも地下4階の謁見室に行くことができる」

「密談は特に地下4階の謁見室で行う」

「今地下4階の謁見室に通じる魔法陣を開通した」

「謁見室の後ろの部屋に作った。非常時はこの魔法陣の機能を停止させる」

「転移魔法陣は四天王と副官と魔王しか機能しない」

「シュクラすごい」

「じゃこちらに」

するとシュクラの姿が魔法陣の上に乗ると瞬時に消えた。他の4人も早速魔法陣の上に載って瞬時に移動した。やって来たのは地下4階にばる真の謁見室の後ろの部屋。部屋を出るとそこは真の謁見室。

「四天王はこの地下がちゃんと機能するように金庫としても使っている地下1階以外も定期的に修繕したりする義務があるんだ」

「ここは本来灯りをつけなくてもいいことになってるが人間族は夜や闇になると何も見えなくなるので灯りを付ける」

「さ、サロ。玉座に座ってください」

サロは玉座に座った。

「ここが真の魔王の玉座なり」

サロが言うと5人はひざまついた。

「四天王よ、この城で気が付いたことを言ってほしい。あ、もちろんここにもプールは作るからプール以外の議題が欲しい」

「城よね?お堀が必要だわ」

オロが言った。

「おお、いい提案だ。早速作ろう」

「跳ね橋も必要だな」

羽を鳴らしながらカラロが答えた。

「もっともだ」

「いざという時、私は戦闘能力が低い。武器防具は1流のものがほしい」

「もちろんだ。もちろん人間族には呪いなどの類のない装備にするぞ」

「この四天王と副官と魔王の会合ってどのくらいの頻度でやるんです?」

「月1回だな。あとは俺が『緊急で開く』と言ったとき」

「ほかにないか?」

「なさそうだな」

「じゃあみんな、守備位置を確認しようか。帰りは階段で帰るよ」

こうして四天王が本格始動した。

お堀も作られ跳ね橋も作られた。

しかし彼らはまだこの時は知らない。

南の方から大軍が攻めて来ようとしていることに。

<第二部 終>

 

第三部

 

序章

 

「なんと恐ろしい」

彼らが水晶でみたものは魔族が跋扈する姿であった。

そして人間が魔族と共に快適な生活を行っている姿も。

「はるか北方にございます」

「どうか人間の手に支配を取り戻したく、お願いに参りました」

「もちろん魔界の金品領土はすべて頂いて構いません」

「ふむ、進撃する価値はありそうだな」

「冬になる前に引き返せばよい」

「お前の望みは?」

「なにもございません。ただ人間の手に大地が戻ることを願うだけです」

(嘘だけどな。魔王の体内にある魔石が目的とは言えんわな)

「しかし、こんな高度な文明を持つ国の攻略なんぞ難しいですぞ」

「そこでこれよ」

「これは……」

「ただの砂にしか見えぬが」

「この砂に爆発魔法をしみこませている」

「この砂が入った玉に火を付けるとどうなる?」

騎馬民族が見た光景は強烈な爆発であった。

「魔法が使えなくても、これなら魔族を殲滅できる」
——————
騎馬民族は新興住宅地を襲った。

首を刎ね、犯し、金品を奪い、家々に火をつけた。

エステルは悲鳴を上げた。

爆発魔法が入った玉を次々投げる。弓矢でも飛ばした。次々爆発する。エステルは爆発に巻き込まれ動かぬものとなった。

この爆発は遠くの魔王城からも見えた。

命からがら魔王城に逃げて来た魔族は爆発の光景を見て大地に拳を叩いた。

第一章

魔族は急いで魔王城の周りに掘りを作り、水を入れた。

だが、ここは冬は凍土となる。

氷を溶かしても湯気が出るだけ。

「冬の対策を考えないとな」

そして、薬師のカルには新たな装備が与えられた。

血魔の帷子に血魔のローブである。ローブは表が闇に闇を塗り固めた色、内側は血のような赤色であった。

血魔の帷子もまるで血の色をしている帷子である。

カルはおそるおそる装着すると力がみなぎった。

「しかも、相手の血を吸うと自分の力に変えることができる」

「血魔のローブは闇や夜の中でも目が利くようになる。さらに夜、闇の中に居ると魔力を与えてくれる」

「ありがとうございます」

オロには黒闇の鎧に黒闇の兜、黒闇の杖、黒闇の面頬を渡した。

「この装備も闇や夜の中でも目が利くようになる。さらに夜、闇の中に居ると魔力を与えてくれる」

「両方とも人間に害をなすものじゃない。呪いの類も入ってない」

オロは暗黒戦士の姿そのものとなった。オロの可憐な顔も面頬によって闇に包まれた。

「御意」

オロの声も変わった。ドス黒い声となった。

「これで真の謁見室で密談するときはもう灯りが必要ない」

「それとサロ」

「真の謁見室の近くに生贄の祭壇を再建した」

「生贄から力をもらう事で魔王としての力もより向上する」

「シュクラ、ありがとう」

「場合によっては動物ではなく人間を喰うことになるぞ」

「うん」

「カルとオロはこれから攻撃魔法を急遽覚えてもらう」

「地下4階にまずは行こうか」

 

第二章

 

「来るぞ」

「来たぞ~」

上層階にいる鳥人が遊牧民の大群を確認する。

なんと弓矢を放つと爆発が起きる。

結界が爆破された。

城壁もどんどん崩れていく。

魔王城から放つ反撃も効果あるもののいかんせん爆発の雨である。

商人も総出で魔法で反撃する。

弓が届かない場所から鳥人が魔法で反撃するも効果が薄い。

跳ね橋に小さな爆発物を当てられた。

なんと上がっていたはずの跳ね橋が降りていく!!

城門も壊された。

こうして城内で戦いが繰り広げられることとなった。

魔王は地下四階の真の謁見室にいる。

軍隊の一部は地下1階にいる。

戦えない者は地下1階の金庫室に居る。もちろん灯りは消したままだ。

どんどん騎馬民族の軍隊が階を登っていく。

3階、4階、5階と制圧されていく。

騎馬民族の軍隊が王を探した。

「いない!」

「いないぞ!!」

(今だ!)

鳥魔族が空から放った珠から一斉に眠りガスが噴出する。

騎馬民族の軍隊がどんどん眠りに落ちた。

「眠り魔法無効化ペンダントは身に着けているか?進撃!」

鳥魔族が地上に降りて城内で眠っている敵軍をどんどん葬る。

形勢は逆転した。

騎馬民族の軍が引き返す。

「今です、彼らを追います」

地下3階の大広間にいるカラロに水晶で連絡が行く。

カラロはこの報告を急いで4階のサロに伝えた。

「カラロ、奴らの矢が届かないところからとっておきの攻撃魔法の命令をするんだ」

「はっ!」

「地下の入り口は敵に見つかってないな」

「はい」

「敵に制圧されたが奪い返したんだな」

「お前ら、反撃するぞ!」

「「おお~!」」

 

第三章

 

謁見室にものものしい音が鳴り響く。

玉座の後ろに階段が生じた。

地下1階の金庫室に隠れていた市民がぞろぞろと出てきた。

普段は市民の出入りが禁止されている場所だが、今回のように攻撃された場合は特別だ。

市民は瓦礫だらけ、死体だらけの城内に唖然とする。泣き崩れる者も居た。

(よくもやりやがったな)

(殺す!人間を喰う!)

「サロ、ここで立ち止まってる暇はありません」

「わかってる」

瀕死の敵兵士がいた。

「これはいい。生贄にぴったりだ」

サロは生贄に麻痺の呪文を唱えた。そして両の腕で兵士を掬い上げた。

生贄はもう呻き声しか上げられない。

「生贄ですか。私も賛成です。力を付けて相手を殲滅させましょう」

「ただ魔法陣の再開通はまだですし四天王と副官と魔王以外はどの道使えません。階段を使いましょう」

四天王も一階の謁見室に戻った。カラロはすぐに出陣する。

「すまない」

「魔王様。大丈夫です。それにとっておきの魔法を食らわせるんでしょ」

「そうだ、そのために生贄を喰らうのだからな」

「存分にお楽しみください。魔王様」

闇の面頬をかぶったままのオロは凍てつく声を発した。

「敵の瀕死の兵士は一か所に集めて燃やせ。一緒に住んでいた友の敵討ちとなる。敵の兵士の墓も作れよ」

「御意」

オロの表情は面頬でうかがい知ることは出来ないが嬉しそうな表情であることは声で分かる。

「味方の兵士と市民の手当てをたのむ」

サロが言うとカルは了解ですと言ってすぐに部下と共に手当てに取り掛かった。

魔王と副官は地下4階の生贄の祭壇にたどり着いた。シュクラは祭壇に灯りを灯す。サロは生贄となった兵士を祭壇に寝かせ兵士の装備をすべて外し服も切り裂く。

副官のシュクラが生贄の祭壇で呪文を教える。

サロはその通りに唱えた。サロは鉤爪で生贄の胸を抉り心臓を祭壇に置いた。

すると心臓が輝きだし、光の玉となってサロの体に入った。

次にサロは鉤爪で腹を裂き腸を引きちぎって呪文を唱えながら腸をゆっくり垂らしながらと聖杯に置いた。

呪文を唱えると聖杯にある腸は黒い珠に変わった。黒い珠はサロの掌に吸収された。

サロは祝詞を唱えたあと残った腸を喰らった。サロは自分が『魔王』であることを身をもって知った。そして人間の血肉は美味であった。牙がこんなに役に立つことも初めて知った。サロは思わず喉を鳴らした。

(これが、人間の味)

(なんておいしいんだ)

「力が漲って来る」

あまりのおいしさにサロは思わず尾で床を何度も叩いた。

「サロ、絶対に魔法を外さないでください」

祭壇の灯りをシュクラは消した。闇の世界に戻った。

「呪文はこうです」

シュクラの声が闇に鳴り響く。それは呪詛そのものであった。

「私の力では発動できません。幸運を祈ります」

「ああ、いくぜ、敵の本拠地へ」

「その前に私も生贄を喰らってもよいですか」

「私も魔力を増強したいので。喰い終わったら業火で生贄を燃やします。処理の件はご安心を」

「かまわないぞ。俺は地上に戻る」

その言葉を聞くとシュクラは三日月のような笑みを浮かべた。

この会話の後闇の中で咀嚼の音が響き渡る。

魔王は咀嚼の音を存分に味わいながら階段を昇って行った。

魔王が階段を昇り終えてしばらくすると業火とともに闇が消え、生贄は火に包まれた。業火の魔法は掌から放たれ生贄にさく裂した。

シュクラの白銀の鎧は血まみれになっていた。シュクラの白磁を思わせる面も血だらけとなっていた。

シュクラはそんなことはお構いなしに満面の笑みを浮かべた。

(久方の味。なんという美味。そうだった、これこそが人間の味よ)

業火はやがて消え、再び祭壇は闇に包まれた。

闇に包まれた祭壇にぐぐもった笑いがしばらくの間響き渡った。

「生贄よ、名誉として骨は特別な墓地に入れようぞ。感謝するがよい」

そう言うと闇に蠢く者は祭壇奥の引き出しを開け、生贄の骨を集めた。

祭壇からものものしい音がした。闇に蠢く者は「捧げられし者の扉」を閉めた。生贄の儀式はこうして終わった。

 

第四章

 

鳥人族が遠くから攻撃魔法を放ってる。

しかしそれはあくまで威嚇射撃である。

サロが空を飛んでやってきた。

「ここか、やつらの本拠地は」

たくさんのテントが見えた。

「はい」

カラロが答えた。

「でははじめるか」

空にどんどん光の玉が出来る。どんどんサロの手から力が放たれていく!

光の玉は巨大になった。

「離れていろ!!」

「ふん!」

光の玉を投げるサロ。

それは巨大な爆発魔法であった。

熱風であらゆるものが溶けていく。

「みんな無事か!」

「はい、鳥人族は無事です」

何百もあったテントはなく、ただのクレーターが出来ていた。

「我々の地を攻撃し、犯した罪よ」

「む?」

「うん!?」

なんとサロの体が光っている!!

「なんだこれは!!」

その光はどんどん輝きを増しサロの体が見えなくなった。

そしてその光の玉がサロの体から抜け別の方向に行った。

「大丈夫ですか、魔王様」

「ああ、あれはいったい」

「とりあえず帰りましょう。魔王様の体が心配です」

サロもカラロ率いる鳥人族も魔王城に戻る。魔王城は再建中であった。

シュクラにこの都の顛末を伝える。

「ばかな!?」

「防衛戦なのに、しかも人間にこれだけ恩恵を与えたというのに勇者が誕生しただと!?」

「ええ?」

「サロ、それは勇者の玉。魔王の力が分離して10歳の人間の子供に勇者として力を与える行為です」

「そして、勇者は魔王の倍の力を持っています」

「なんだって!?」

魔物がたたずんだ。
——————-

事の顛末を水晶で見ている者がいた。

「それでこそ魔王。勇者の誕生じゃ」

「それでは勇者が現れた村に行くとするか」

「ふふふ、くくく、ふふくくく」

 

第五章

 

トラは今日も薪を取りに森に来ていた。

その時、突然光の玉が空から襲い掛かった。

光の玉はカラの体の中に入った。

カラの体は光り輝く。

「何だよ、これー!?」

急いで村に戻るトラ。

父と母に突如光の玉に教われたことを教える。

すると父と母も仰天してトラを呪術師のところに連れていく。

「間違いない」

「そうなんですか。なんてこと」

「お前は勇者に選ばれたのだ!」

「え?勇者って何する人?」

「この世に生まれし魔王を退治する者じゃよ」

ピンとこなかった。この村も周りも平和ではないか。魔王って何だ?

村は総出で祭りとなった。

翌日トラは出立となった。

もうトラの体は光り輝いていなかった。元に戻っていた。

しかもトラが装備しているのは毛皮の服に短刀である。貧弱であった。

「仲間を見つけるのじゃ」

「はい」

「達者での」

みんなが祝いの言葉を述べて見送る

トラは馬に乗って村を去る。

村は村人の視界から消えていった。

すると両親が泣き崩れた。

「あの子、生贄よ!!」

父が慰める。

トラが馬にとって駆け抜けてるとき光の珠が襲い掛かった。珠に当たったが痛くない。思わず馬を止めた。

「あなたが勇者様ですかな?」

「1人での冒険は危険です。指南しましょう」

水晶を持っている呪術師がそこには居た。

 

第六章

 

真の謁見室に魔王と副官と四天王が居た。闇の中で会話が聞こえる。

「城の復興は順調か?」

「ああ、順調だぜ」

「墓も整備したか?敵のものまで含めて」

「もちろんだぜ」

「ニュータウンに居た死者を弔ったか」

「弔ったわ」

「ごめんよ、巻き込んでしまって」

「いいの、覚悟の上だから」

「結界石が爆発で破られたのはうかつだったな」

「しかし人間はなんで結界石の場所を知っていたのでしょう?」

「う~ん」

シュクラの問いにみんな黙ってしまった。

「邸宅のほうは、第二魔王城のほうは無事か?」

「無事だぜ」

「これから、勇者戦を対策しなければいけない」

「はっきり言って勇者は一騎当千だ」

「……」

「なにせ初代魔王は4人だけで魔王城の魔物を全滅に近い状態にさせられた上に魔王も私も討伐されたのだから」

「方法はいくつかある」

「まだ勇者は力の全てを発揮してない。そこで勇者を今のうちに抹殺する。魔王と私と四天王全員が直々に出向いて」

「そんなに簡単に探せるのか」

「簡単に探せたら苦労しない。周りが勇者様とほめたたえるようになって我々が気が付いた時にはもう手遅れだ。その勇者は既に相当強い」

「ですよね~」

「初代魔王は酷かった。我々の領土を半分与えるからとまで言った。そのうえで我が片腕となれと言ったのだ」

「副官の私は内心激怒した」

「ちなみに勇者の返事は『断る』だった」

「だから領土を与えるから引いてくれとか無駄だと思ってくれ」

「もう一つは徹底的に人間に文明を与えること。勇者に人間と魔族が調和していることをこれでもかと伝える」

「そこで提案なんですが」

「なんだ?カル」

「薬や医療を低廉な価格で提供できないでしょうか?」

「金持ちには相応の負担を、貧乏人にはタダで」

「さらに健康診断も」

「それはいい。でかした」

「人間にも居住者には保険料を払えば低廉な価格で提供できます」

「保険証制度を使って」

「しかも発見があったのです」

「実は人間の血液から凝固剤が作れます」

「それだけでなく人間の血液から病気を判明することまで出来ます」

「「すごい!」」

「公的保険制度導入をご提案します」

「それはいい。人間の寿命を延ばせる」

「そして勇者らに見せつけるのです」

「貧富の格差を縮小し、かつ誰でも受けられる医療制度を持つ国をお前は壊すのかと」

「勇者が非情な心の持ち主でなければ戸惑うはずです」

「それだ」

「公的医療保険制度を導入しよう」

 

第七章

 

ノック音がする。

サロがいいよというとそこに居たのはオロだった。

「ごめんね、忙しい時に」

「別に……」

「暇なときでいいんだけど今度2人で会わない?」

「え……」

「渡したいものがあるの」

「明日なら」

こうして次の日がやって来た。

この時期は白夜である。もう1年近く経とうとしている。時が経つのは早い。人間だった時、まだ自分が子供だった時はこういうときは母の子守歌で眠ったのであった。

次の日、オロがやって来た。

人の目があるので2人は地下にやってきた。

「これ……まずこれプレゼントね」

花であった。可憐な赤い花。ヒナゲシであった。北の大地に咲く花。闇の中なのに色まで分かるのは闇の者であることの証である。

「ありがとう」

「私、あのままニュータウンに居たら敵に犯された上に殺されたわ」

「私がこうして生きてるの、あなたが四天王にさそってくれたからなの」

「だから、これは気持ち」

「ありがとう…‥。でも僕は君を人間なのに闇の者にしてしまったも同然。だからこうして闇の中でも会話が出来、互いの姿も見れる」

そう、オロは黒闇の鎧に黒闇の兜、黒闇の杖、黒闇の面頬を装備していた。

「それとこれ…」

「人形……」

ウサギの人形だった。

「サロの机も部屋も殺風景なんだもん」

「飾ってね」

「私の心は闇に全部染まってないよ」

黒闇の面頬を外すオロ。声も変わった。元の声に戻った。

「私知らなかった。闇って恐れるものじゃないんだね。闇って温かみのあるものでもあったんだね」

「私の心は闇に全部染まってないけど闇が素晴らしいものだと気付かせてくれたのも貴方なの」

「あまり無理しないで。器は魔王でも心は11歳の人間なんだよ」

「子供に戻ってもいいんだよ」

「そうしないと私も、あなたも壊れちゃうかもって」

「ごめんよ」

サロはそっとオロを抱いた。

オロは子守唄を詠いだす。

この歌は……。

「貴方が眠れないときに母が歌ってくれた歌でしょ」

「私たちの部族では当たり前のように歌ってた」

「これから、そっと遊ぼうね」

「うん」

 

第八章

 

草原でゆっくり馬と共に歩む勇者と呪術師

「あなたの名前はロロなのですね」

「そうじゃ」

「冬は太陽も出ないという暗黒の地に魔王城があると」

「そうじゃ」

「ナキム=ハン国がやられたのも彼らの仕業」

「えっ?」

「それはけっこう大きな国では?」

そうじゃ。

「魔王城に行くには連れが必要じゃの?」

「じゃあ質問じゃ。連れはどう探す?」

「分からない……」

「そこのテントがあるじゃろ」

「そこの酒場に行くがよい」

「僕、まだお酒飲めないんですけど」

「大丈夫、牛乳でも」

「ここは……」

「ただの酒場じゃない。それによく見て見ろ」

「ナキム=ハン国の流れの者がいるだろ」

「あいつらを味方にするんじゃ」

「こんなひょろひょろの僕に?」

「よく見て見ろ」

「近い年齢の子がいるじゃろ」

「たぶん遊牧で爆発から逃れた子じゃろ」

「彼らを誘うんじゃよ」

「ぼく、弱いのに?」

「やれやれ」

「おまえ、勇者だぞ」

「強いはずだ」

「外に行こうか」

「そこの石を割ってみろ」

「できないよ」

「短刀で素振りするだけでよい」

素振りすると……なんと波動が出て岩を割った!

「すごい」

「こんなの序の口じゃよ」

「この力をあいつらに見せるんじゃよ」

国と家と親を失った子2人は半信半疑で外に出た。

「もう一度割ってみろ」

すると真っ二つに割れた岩がさらに割れた。

「「すごい」」

「すごいじゃろ」

すると呪術師は呪文を唱え、指から桃色の煙を吐いた

「なんか、ねむけが…‥」

「なんだこれは」

「おじさん、なにを……」

3人が倒れると自分の血肉を抉り、若者の体に埋め込ませた。

抉ったはずの場所はどんどん傷が癒えて無くなって行った

「これでよい、屈強な戦士や呪術師となるであろう」

「期待しているぞ」

そう言って呪文を唱えるとすっと消えた。

数刻後、3人は起きた。

2人は体の異変に気が付き、素振りしてみた。

すると波動が生じた。

3人はお互いの顔を見た。

 

第九章

 

「この鎧、盾、剣をもう一回地下2階のここに置く時が来ました」

「これが、2代目勇者のために作られた武器と鎧と盾」

「なんて神々しいんだ」

「我々は魔族で闇や夜の力を得る武器や防具を作る方が得意ですが、こんなことも出来ます」

「我々は一回勇者と魔王が手を取り合って共に戦った過去があるんです」

「なお、錆びていたり劣化していた部分は修復しました」

「さすがシュクラ」

「世界の半分ではなく我々の世界を共有する、それが真の答えではないかと」

宝箱に仕舞う音がする。

「重要なのは勇者も生贄という事です」

「毒殺されたり闇討ちされる前に彼らを救わねばいけません」

「うーん、でもどうすれば」

「人間がこの話を吹きこめばいんじゃない?」

「さすがオロ」

「ラジオでも流そっかなー」

「名案だ。カラロ」

「なあ、この剣、鎧、盾に使われる材質はどっから取ったんだ?」

「硬貨で使われる鉱山では別の金属も見つかります。それを使っています。ほら、私の鎧も」

そうだった。シュクラの鎧は白銀色の鎧だった。

「あ、忘れてた」

「鉱山のふもとの町を城塞化しないと」

「……」

「町の名前すら付けてない」

「……」

「サロの次の仕事が決まったな」

「俺たちも行くか!」

第十章

急いで鉱山のふもとの町に城壁を作る命令をサロは下した。

鉱員は魔法で採掘していた。ゆえに魔力の消耗が激しかった。

「せっかくガスで電化生活してるのですから、なんとかならないものですかな」

「ガスを貯めるボンベを作ってそこから直噴で点火してモーターを回すって事出来ないかな?」

カラが言った。

「それはいい」

「ガス管からボンベに供給する仕組みを作るんです」

「それでシャベルを作る」

さすが自動織機を作ったカラ。

鉱員の生活は大いに向上し、同時に砦も出来た。

「ここにも軍隊を置きましょう」

オロが提案する。

「もちろん農業も、そして花などの園芸もね」

「そりゃいいや」

今日のオロは黒闇の鎧に黒闇の兜、黒闇の杖のみで黒闇の面頬は懐に仕舞い外していた。

「流通もどうにかするか」

「倉庫を作ろう」

鳥人族のカラロが言う。

「賛成だ」

そう、物流は空輸であった。

「お、蝙蝠だ」

「ちょうどいいです。魔族にしましょう」

サロが力を籠めて蝙蝠に破を唱えると二匹の蝙蝠は羽魔族となった。

「鳥魔族以外の空部隊も作れそうだ」

「主上、仰せのままに」

羽魔族がサロの前にひざまつく。

「鉱山の町の名前を」

「そうだったシュクラ」

「ミサラス」

「どういう意味で?」

「大地の祈りだ」

「仰せのままに」

第十一章

勇者トラ、戦士キラ、呪術師ソラ
3人の行く先々の村で全く予想外の事が起きていた。

魔物が居ない。

3人は無駄に森に向かって波動を出してみた。樹が次々倒れた。

村に着いた。

そして村の宿屋で行われる先代勇者の悲嘆の物語の上演。

上質の衣類。どこで作っているんだ。

自分たちは果たして本当に「勇者」なのか。

「なあ、俺たちおかしいよ」

「うん……」

「北の大地は魔物が跋扈してるんじゃないのか」

「一匹もいない」

そんな中ようやく魔物を見つけた。

なにか運んでいるようだ。

しかし空高く飛んでいる。

「鳥人だ」

しかしそれっきりだった。

やがて広い農地に出た。しかし農地の周りが荒れ地のままだ。

農作業している人を見てびっくりした。

「人と魔物が共存している」

「すみませ~ん」

「旅の者ですが~」

すると人間も魔物も来た。

「旅の者とは珍しい」

「ヴォルドは結界で守られてるからな、見えないんだ」

「へ?」

「町に入りたいのか?」

「はい」

「じゃあ門番に聞いてみるから待ってて」

—————-
10分後

「はい、これ結界石」

「これ持って荒れ地に向かって」

おかしい。

「俺たちも同行するから」

「勝手に結界石を持ち去らないようにって意味での同行だから変な真似はやめてね」

魔物だらけの拠点に向かうのに何も緊張感が無い。

そして結界を抜けた先には、彼らを驚愕させる光景であった。

町の中で普通に魔物と人が暮らしている。

「はい、この街に来た理由を聞かせて」

「はい、ぼくはゆ……」

(ばかっ!)

「ぼくたち観光に来たんですけど」

ソラがカラの足を踏んだ。

「観光ね。じゃあ3日の滞在許可証出します」

「街に出るときは一旦結界石を返してください」

「この石はこの門以外から出ることが出来ないようになってます」

「お金は両替してください」

「それではよい旅を」

「は、はい」

キラがあっけに取られた。

宿屋はもっと凄かった。

電気が付く。トイレは水洗。ふかふかのベッド。浴室に出るのはお湯。そして上等のタオル。

「信じられない」

何もかも驚愕の世界であった。

翌日、街に出ると大浴場にも温水プールにも入った。板玉返しというスポーツで遊ぶことまで行った。

人間に聞いてみる。魔王の評判に。どれも「素晴らしいお方だ」という意見であった。

どうもここは魔王の別邸がある場所のようだ。

それだけでなかった。

「病気になっても貧乏人は無料で薬が買えるんだ。金持ちはそれなりの負担だがな」

この言葉に仰天した。薬屋に行くと保険証提示で負担額が決まっていた。もっとも自分は旅の者なので全額負担なのだが。

一般の家には洗濯機まであった。

温室まであった。特殊な薬草や野菜はここで育てているようだ。

箱から音楽が聞こえる。

「おやじさん、これは?」

「ああ、これかい。旅の者には珍しいだろう。ラジオだよ」

「魔王城から放送が流れるんだ」

それは娯楽の塊であった。

————————
そして観光旅行の2日目が終わった。

宿屋の店主にラジオを聞きたいと願い出たら追加料金を取られたが貸し出してくれた。

音楽だけでなくニュースも娯楽番組も流れていた。CMまであった。放送時間は夜8時までであった。1日の終わりの音楽が流れていく。そして何も音が聞こえなくなった。店主にラジオを返した。

ラジオを聞いてから会議となった。

「ねえ、旅の者として魔王城に行かない?」

「場合によっては、魔王に謁見するよ」

「俺たち、魔王倒しても殺されるんだろ?」

「で、この魔王どっからどう見ても悪人じゃねえよ」

「じゃあなんでナキム=ハン国の首都を消失させたの?」

「それも聞きたいよ」

「魔王に殺されそうになったら?」

「それはさすがに戦うよ」

「今の俺たちはそこらの軍隊よりも強い」

「魔王に願い出て、どうするの?トラ?」

「仲間になる」

「……」

「出来れば故郷にこの文明の恩恵を持ち帰る」

「だって蛇口ひねっただけで水やお湯が出て炎が出て灯りが付くんだぜ」

「だよね~」

「勘違いするなよ。俺たち『闇落ち』じゃねえからな」

「うん」

「明日、魔王城への行先を聞いてみるか」

夜9時頃になると街の明かりがどんどん消えていく。睡眠の時間だ。北国の夏の日は長い。ようやく日が暮れ夜になった。

「俺たちも寝るか」

——————-
翌日魔王城への行先を聞いた。

簡単に聞き出せた。

「魔王城の近所に農作業してる人がいたり物を運んでくる鳥魔族や羽魔族がいるから声をかけてごらん」

「それで魔王城に入れるから」

「じゃあ、結界石を返して」

「両替は済みましたか?」

「はい」

門番に結界石を返す3人。

「それではいいご旅行を!」

鹿魔族の門番の声と共に勇者らは町を後にした。

勇者らは魔王城に向かう。

目的は2代目勇者と同じ共闘の申し込みであった。

勇者の判断は正しかったのか。

この時点ではまだ誰にも分らない。

<第三部 終>

 

第四部

 

序章

 

「あ~よかったな~あの宿屋」

「いうなって」

「今は野宿だもんな~」

焚火の音がパチパチなっている。

「魔王城ってどんな感じなのかな?」

「やっぱ魔王城というだけあっておどろおどろしいんじゃね?」

「恐ろしい感じかな?」

「でも魔王城に行ったら真っ先に宿屋行くぞ~」

「魔除け魔法唱えておいた」

「サンキュー」

「これで熊も狼も寄ってこない」

「町の名前もサロで魔王の名前もサロかあ」

「俺たちとほとんど年齢変わらないって言うんだから驚きだよなあ」

 

第一章

 

数日かかった。

森林に突如現れた畑。

そして畑の中心部に荒れ地。

間違いない、ここだ。

近所の農家に話をうかがい、魔王城への入場許可をうかがう。

「入場目的は?」

「観光です」

「はい、これ結界石」

「この結界石はこの入り口しか入れない観光者用だから」

「許可証は携帯してください」

入場許可はすんなり下りた。

今度は城というだけあって街も大きかった。

極寒の地でも町が機能するよう町全体に暖房が行きわたるようにもなっている。

そのうえで1階に宿屋も薬屋もよろず屋も鍛冶屋も店という店はあった。

3人は一斉に宿屋に殺到した。まずシャワーを浴びて綺麗になる。

「ああ~、幸せ……」

3人はそのままベッドに直行となった。

翌日

「行くぞ」

(勇者の証明ってあるんだよな)

(力を開放したら光り輝くからな。一瞬だけな)

(それを門番の前で見せるんだね)

(失敗したら、ここの城下町の住民全員敵だぞ)

(それだけは避けないと)

「いくぞ」

「すみません」

「僕、勇者なんですけど、魔王に謁見を願います」

「これが勇者の証明です」

カラが力を開放すると周りに突風が起き、カラの体が一瞬輝いた。

周りの住民はどよめき、悲鳴があがった。

門番の一人は腰を抜かし「本丸にどうぞ」といった。

カラは力を解き放つことを辞めた。

もう一人の人間の門番は慌てて2階の魔王の執務室に向かった。

「大変です、勇者が、勇者が着ました!!」

「そうか」

「四天王を謁見室に呼んで来い。シュクラもだ」

「間違いないのだな」

「はい。全身が一瞬だけ輝きました」

「来たか……」

 

第二章

 

待合室で燻製茶が出た。部屋は森の香りが漂った。

「お待ちください」

エルフの女性は丁寧に頭を下げ扉を閉めた。

「おい、お茶に手を出すなよ」

「何入ってるか分からない」

「そうだね」

——————–
一方の謁見室

「来たか、勇者が」

「緊張します」

「もしうまくいけば、地下室も紹介するんだよな」

「もちろん」

「装備は整えたか」

「「はい」」

「ソミキよ、勇者らを呼んで来い」

ソミキと呼ばれたエルフは待合室に入って行った。

——————-
「謁見の準備が整いました」

「こちらになります」

3人が見た魔王は深い緑の皮膚。小柄ながら強大な魔力を兼ね備えていることがわかる。魔王は尾をゆらしていた。

「勇者トラと申します」

「戦士キラと申します」

「呪術師のソラと申します」

「四天王の1人、熊魔族のカラ」

「我は四天王の1人、鳥人族のカラロ」

「僕は人間族のカル。四天王で薬師だ」

「私は人間族のオロ。今面頬取るね。四天王よ」

「私が魔王の副官、シュクラだ」

「そして我が魔王サロ」

「どのような目的でここに来たのだ、勇者らよ」

「はい、私はあなた方の文明に感動しました」

「対立することは無意味と考えました」

「人間に恩恵を与えている魔王様と共に歩みたく思いました」

「もう勇者と魔王が血で血を洗う世に意味などありません」

「部下でもかまいません」

「本当だな?」

「本当です」

「2代目の勇者の話は聞いたな?」

「はい、魔王と勇者が共闘したと」

「でも最後は魔王が勇者に討たれることを願ったと」

「そのような最後にもさせません」

「勇者よ」

「我は勇者に逢いたかった!」

サロは勇者の手を握り締めた。

「実は2代目勇者の装備品を保管していたのだ」

「君のような勇者が現れることを待って……」

「共に歩もうぞ。世界を分かち合おう」

「はい」

こうして勇者と魔王は再び共闘することとなった。

勇者らは地下を案内された。

そして地下2階にたどり着いた。

「これが2代目勇者の装備品だ」

「神々しいだろう」

それは魔王の副官、シュクラが纏っている鎧に似ていた。

カラは鎧を身に纏って剣を装備した。

「さあ、地上に戻ろう」

「いざ、この城が攻められたときはこの地下道を守ることになる」

地上に戻った3人は改めて魔王の命を受けた。

「3人よ今日から『三光魔』と名乗るがよい」

「光と魔をつなぐ3人という意味だ。待遇は四天王相当とする」

「はっ!」

「『三光魔』の部屋は5階にそれぞれ作ろうぞ」

「今日は祝いじゃ!」

「「おお~!」」

 

第三章

 

魔王直々に門番のところに行き勇者らを「観光許可」から正式に居住者に変えた。

「はい、これが新しい結界石」

「これで城のどこからでも入れるよ。と言っても入り口はここしかないけどね。飛べない奴は」

「そしていよいよ重鎮会議に入る」

謁見室の後ろの部屋に入ると魔法陣があった。

魔法陣で転移すると地下4階にたどり着いた。

「灯りをつける」

サロが付けるとそこには真の謁見室があった。

「ここが真の謁見室なり」

魔王が座ると四天王も副官も勇者らもひざまついた。

「勇者の村に文明をもたらす前に我は勇者らに謝罪せねばならない」

「だから顔をあげて立ってほしい」

「ここに遊牧民族が攻めてきた。落城寸前だった」

「なぜここを攻めて来たのか、理由はわからないが、とにかく不意打ちで攻めてきたのだ」

「落城寸前だった」

「どうにか打ち勝つと彼らの1人を生贄に捧げて、喰い、その力でもって我の魔力を増幅させ彼らの町を、国ごと滅ぼした」

「ついてこい、これが生贄の祭壇だ」

同じ階に生贄の祭壇がある。

「我は、人食いだぞ?」

「勇者よ、この話を聞いても一緒に戦うか?」

「はい。魔王が人間の国を攻めた理由がよくわかりました」

「気持ちに変わりありません」

「そうか……ありがとう」

「じゃあ、謁見室に戻ろう」

謁見室に戻ってサロは再び座った。

「我が直々に勇者の村に出向こう」

「ありがとうございます」

「ふむ、サロがここを長期間開けるのはよくないと思います」

「なら乗り物籠でも作ったらどうか?」

「俺たち鳥人は物を運んでいる」

「同じ感覚で4人を載せる」

「場所についたらサロと俺と交互で行きかう事も可能だ」

「そっか、そういう手があったか」

「鳥人は念のために2人つけましょう」

「万が一籠から落ちそうな時は、サロにしがみつけ」

「サロは飛べるから」

「そうだな。万が一の時は3人を守る」

「決まりだな!」

「それと次回から、これを着てくれ」

「これは?」

「黒闇のマントだ。大丈夫だ。人間に害する類の魔法などは付いてない」

「着けたか?」

「消すぞ」

すると闇の中でもなんと見えるではないか。

「見える」

「すごい!」

「信じられない」

「次回から、闇の中で会議を行う」

「まあ、ありえないが万が一人間がこの城を襲い掛かった時は緊急配置に付くんだよ」

「それと三光魔の守備位置は『ここ』だ」

「つまり、ということは……」

「そう、副官と魔王と三光魔は一緒に敵と戦う。謁見室でな」

「じゃあ、勇者の町を作るか!」

 

第四章

 

「いくぞ!」

鳥人が言うと籠が持ち上がる。

「うわあ!」

「大丈夫だ、平然としてろ!」

勇者らが見たのは空の世界。

「で、お前の故郷ってどこだ?」

「向こうの方角!」

「おうよ!」

するとどんどん動いていく。

とても徒歩では成し遂げられないスピードだ。

「途中、どっかで休むぞ」

「はい」

「この距離じゃ君の故郷までガスパイプラインは引けない」

「でも木炭ガス発電ならすぐ引ける」

「四天王のオロが考えた」

「同じ人間で、幼馴染だ」

「町が完成したら木炭を定期的に供給しろよ」

「はい」

そして今日はそのまま野宿となった。

魔除け魔法も唱えた。

来た道を魔王と一緒に帰っている。なんか不思議だった。

籠を運んでいる鳥人はシムロとトムロであった。

何食べてるのか聞いたところ意外にも野菜であった。

中継局を置くとラジオが聞けることも分かった。

ただいきなり工事を進めると人間が恐怖におびえる心配もある。

「そこで、発電所は遠くに作って電線を引く」

「で、最初は新築で見せてみるよ」

 

第五章

 

勇者の故郷の村の近くにまで来た。

村の名前はナゴルという。

木炭発電所の仕組みは非常に簡単なのですぐに出来た。

ただ問題なのは木炭を作ることだ。

「俺が村に入ったら村が大混乱に陥る」

「そこで交代ではなくシュクラにずっと頼んでいこうかと思う。幸いシュクラは妖精の親戚だ」

「うん」

やがてシュクラが来るとサロは空へふわっと飛び、去って行った。

「ふむ、木炭発電所は出来てますね。引きますよ」

そういうと魔素でどんどん電線が出来てくる。

「幸い、俺は妖精で通せる。絶対に魔王の副官とかいうなよ?」

「うん」

「勇者?」

「あなた、トラじゃない?」

「ただいま」

「戦士キラと申します」

「呪術師のソラと申します」

「連れの方もいるのね、で戻った理由は?」

「魔王との戦いで実は妖精族に逢い、そこで人間の生活の向上につながるものを見つけました」

「あなたが精霊さん」

「こんにちは、精霊のシュクラです」

シュクラの服装は白銀の鎧に白銀の毛皮を着ていた。尖った耳意外ほぼほぼ人間の姿だ。

「実はこの設備に電気を通すと」

ぱっと明るくなった。

「それだけじゃないんだ。水道も下水道も作るんだよ」

「水道?」

「電気の力でポンプで水を通すんだ」

「うれしいわ、でも魔王との戦いは?」

「それなんだけどちゃんと人間が力を付ければこの戦い、勝てるんじゃないかと思って」

「それに不衛生で人間が死ぬのは見てられなくなって」

「それは悪霊の仕業ではなく、悪魔の仕業でもないよ」

「不衛生を無くせば『病魔』は消えます」

「まあ、お手並み拝見ね」

村人のトクが去っていく。

(迫真の演技でしたね)

こうして村の全ての家に電気が通った。数日かかった。

シュクラは森に魔力を回復して来ると言っては森で鳥魔族とあって食料をもらう。

「ガスがねえ生活は厳しい」

「お察し申し上げます」

シュクラはしんどそうだ。

さすがにたまらず水晶でほかの四天王に呼び掛けた。

オロは急いで水道建設の魔法を覚えて籠に乗ってやってきた。

「だめだ、もうたまらん」

「人間も魔族も一度便利な生活慣れると元に戻れない」

「風呂がいちいち釜炊きというのが」

そう言ってシュクラは籠に乗る。

「魔王城に帰ったら数日は食って寝るだけの生活するぞ」

そういってバテたシュクラは籠に乗って去って行った。

オロは急いで上下水道、合併浄化槽の建設を行った。

こうして22戸の村に電気と上下水道が完成した。

水汲みという重労働が消えたのである。洗濯もである。

さらに薬も持って行った。

「すごいわ!!勇者様!!」

「これなら世を救える」

村は勇者!勇者の大合唱であった。

「ちょっとこっち来て?」

オロがトラに呼び掛ける。

(いよいよね)

(魔王軍がここに来る時が)

(あんた、覚悟は出来てるよね)

(最後にラジオをプレゼントして、この文明が魔王城からのものって徐々に分かるようにもするんだからね)

(うん)

 

第六章

 

「いよいよだな」

「いくぞ!!」

カラロの命令にによって鳥魔族が一斉に籠を持ち上げる。

籠に乗ってるのは熊魔族や鹿魔族や狼魔族だ。四天王にして熊魔族のカラも乗っている。

「黒闇の鎧、黒闇の兜、黒闇の杖、黒闇の面頬も載せたか?」

「載せたぞ!」

「大事な四天王様の武器と防具だからな。大事に運べよ」

「2日でたどり着くぞ」

「「おお~!」」

村人はラジオを通じて流される音楽に感動し、ニュース番組にびっくりした。

(これって魔界の話?)

そしてその時はやって来た。

2日後。

一斉に空から魔族が籠に乗ってやってきた。

村人は恐れおののいた。

勇者達やオロに助けを求めた。だが勇者らもオロもは黙ったまんまだ。

「オロ様、武器と防具はこちらに」

「ふむ、確かに」

オロは黒闇の鎧に黒闇の兜を装備し黒闇の杖を持ち最後に黒闇の面頬を付けた。

「人間よ、それらの恩恵は魔族のもの」

その声は吹雪の声であった。黒闇の面頬によって声が変わった。

「三光魔の皆様、黒闇のマントでございます」

「ありがとう」

勇者らも全く魔族を恐れない。

「勇者……?」

「みんな聞いてくれ!!」

「俺は、俺は……」

「魔族と共存することに決めた!」

村人に動揺が走った。

「まだガス管がここに届いていない。だけどガス管を繋げたらもっといい生活ができる」

「だから、もう魔族との対立を辞めてほしい」

「この生活は素晴らしかっただろ」

「だからもう無駄な対立を辞めてほしいんだ」

戦士キラも土下座だ。

「お願いします!!」

呪術師のソラも土下座する。

村長はしばらく黙っていた。

そして重い口を開いた。

「あいわかった」

「村長?」

「魔族との共存を求める者はこの輪へ、魔族との共存を断る者はこの輪来るのじゃ」

村長は杖で2つの輪を地面に書いた。

「じゃが魔族との共存を断るものはこの便利な生活は出来んぞ。水道管も電線も洗濯機もラジオも撤去じゃ」

「村の者よ、どちらを選ぶ?」

村人に動揺が走った。

子どもたちは真っ先に魔族との共存を選んだ。次に主婦も次々魔族との共存を選んだ。

「お前!?」

「だって、2時間以上もかかった洗濯が楽なんだもん。みて、このあかぎれ。私楽な生活のほうがいいの」

最後に男たちがしぶしぶ従う。魔族との共存を断る者は誰も居なかった。

「勇者は、生贄なんかじゃない!」

黒闇の面頬を外したオロは悲鳴に近い声を上げる。

「ほら、勇者。両親のところに行って」

オロはトラに言った。

「僕、生贄なんかじゃない」

「運命は変えられる」

「それに、親孝行したかったんだ」

「ダメかな、こんな親孝行?」

両親は黙ってトラを抱きしめた。

「ごめんよ……」

「お前の気持ち、受け取るから」

「決まったようだな」

「魔族との共存を選ぶぞ!!」

村中は歓喜の声で包まれた。

 

第七章

 

「入れ替わり作業で出来るのだな?」

「出来ます。どうにか」

「ならば彼らに恩恵を与えようぞ。炎の恩恵を」

「相当の難工事だ。犠牲も出るかもしれない」

「それでも勇者の気持ちにこたえるぞ」

「「おお~!」」

こうして魔王城から勇者の故郷ナゴルまでパイプラインが急遽敷かれることとなった。

魔族は入れ替わり作業となった。

四天王も副官も今回のことでへとへとになった。

あらためて街を作るというのが大変という事が身に染みた。

もうすぐ冬がやって来る。

「せっかくだ、別邸で休むか」

カラとカルはそれでは魔王城が守れないということでカラとカルは残ることとなった。オロは鳥魔族が運ぶ籠に乗って遅れてやってきた。

「旅客用の航空便の設定も考えてよ!」

「発想、いただき!」

オロの一声でこうして旅客用航空便がスタートした。もっとも、短い夏の間だけだが。

今回のパイプラインの建設によって魔族の大半が魔素を使ってパイプラインを作る技術を習得したのである。

「ガスは、焔は偉大ですな」

シュクラがしみじみ語る。

「文字通り羽休みだぜ」

ゆっくり浴場に入って疲れを取るシュクラ、サロ、カラロ。

「今建設中の魔族には終わったらここで羽休めさせますか」

「シュクラ、さすがです」

「オロはよく人間なのに魔素化の魔法を習得出来たね」

「素質があります。まれに人間も習得できます」

そのころオロは大浴場で伸び伸びと1人で入浴していた。

4人は風呂を上がると牛乳を飲んだ。

「「やっぱ、これだな!」」

水晶で魔王城への連絡とナゴルへの連絡を行う。

「ナゴルはほとんどの鳥魔族も撤退して普段通りの生活だそうだ」

「もっとも結界石も渡したから、人間らに文明が渡ることもないだろう」

「ミニ板玉返しとかできねえかな。風呂上がりにぴったりとか思わない?」

「ボールとかどうするの?」

「これは樹だが、これに小さい魔素を入れると…‥」

サロが魔素を出すと小さいボールが出来た。

「で、テーブルで…」

「「おお~」」

「どうせなら板玉返しのようにネットとかも作ろうぜ」

「おいおい、俺たち疲れを取りに来たんだぞ」

抗議するシュクラ。

「翌日な!^^;」

カラロがなだめる。

こうして翌日、あっという間にミニ板玉返しが出来た。

「よし、サロ!勝負です」

「来い、シュクラ!」

最初の勝負はシュクラの勝利だった。

町の人も興味津々だった。

「新しい遊戯が出来た。この町の名物にしよう」

町は沸きあがった。

 

第八章

 

「しっかしサロがさ牛や馬や豚を魔族化しない理由がよくわかるよ」

「共食いになりますからね」

「ほら、焼けたぞカル」

カラがせかす。

2人は豚肉が焼けるいいにおいがする。豚肉をたれにかけて喰う。

「もしサロが熊の肉を提供するとか言ったら俺たち反乱起こしてたかもな、ここだけの話」

「こっそりサロがいないときに言うけどな」

「やっぱ熊魔族はそう思ってしまうんですね」

「そうよ、だから魔王城は熊肉・鹿肉厳禁だしな」

「燕や隼などの猛禽の鳥も禁止だ。食えるのは鶏だけ」

「鳥食うってなったらカラロも激怒するでしょうね」

「今度、勇者の村に住む人間族にも言わないといけないんだ」

「鹿肉、熊肉、鶏以外の鳥肉厳禁って」

「だよねー」

「よっぽどの時以外、つまり生贄の時以外は喰うの厳禁だからな」

「馬魔族が仮に居たら馬に乗って酷使される姿、見たくねえしな」

「それにしても俺が熊の時とえらい違いだ」

「だって餌が無くて飢え死にする心配がほぼねえんだからな」

「しかも、簡単な病気で命を落とすことも無い」

「いくら人間の成人平均寿命の約5倍と言っても実際ほとんどの魔族はそこまで生きないからな本来は」

「俺たちも、簡単な病気で死ぬ」

「だから本当、人間にはとくにカルには助かってるのよ」

「ありがとう」

「薬って偉大だな」

「ところでカラ、実は勇者の村なんですが」

「卵を生で食ってたそうです」

「マジかよ!?」

「病気になるでしょうね」

「食中毒になるわ」

「禁止しないと」

「お!野菜もおいしいねえ」

2人の焼肉タイムはこうして静かに続いた。

「あ、ガスが付かないぞ」

「電気も消えた」

「おっと、すぐに電気は付いたな。非常用電源だけだが」

「始まりましたな、最後の仕上げが」

「さて、食事も引き上げますか」

「何が起こるか分からないですしね」

「おねえさん、これ勘定」

カラが伝票をもって言った。

 

第九章

 

「ナゴルまで届いたぞ!!」

「バルブを一旦全部閉じろ!!」

「閉じたか!?」

―閉じたぞ

音飛び石から声が聞こえる。

「城のガスを止めろ!」

―止まりました!

「いくぞ、最後の仕上げだ」

「各家庭にガス管を供給するぞ!」

「「おお~」」

そして鳥魔族、熊魔族、犬魔族、狼魔族などがどんどん各家庭にパイプラインを引く。

風呂用のボイラーも、ガスコンロも作っていく。

三光魔はただただ驚くばかりだ。

そして勇者の実家にもガスがやって来た。

「全部敷いたか?」

「敷いたぞ!」

「OKです」

「終わったぞ!」

「行くぞ、供給開始!!」

すると閉まっていたバルブがどんどん開けられる。

「すべてのバルブが開いたか?」

―開きました!

「勇者、ガスの点火スイッチをひねってください」

するとなんと青い炎が!

「よし、次にお風呂だ」

するとどんどん水が温かくなっていく。

「これが、ガス」

「そうだ」

「発電所のタービンを回せ!」

―了解

すると今まで不安定な補助電源だけだったものが安定的に供給されるようになった。

「補助電源用の発電所の出力をゼロにしろ」

―了解

すると木炭発電所から煙が消えた。

「勇者、これで終わりです」

村人が歓声を上げる。

「村長、これで終わりです」

「最後に、今日から鹿肉、熊肉、鶏以外の鳥肉、生卵は厳禁です」

「鹿魔族、熊魔族、鳥魔族にとって共食いになるので」

「生卵は衛生面からダメです」

「承知した」

「では、三光魔の皆様、籠でおかえりいただくことになってます」

「トラ、行くのかい?」

「ああ」

「もう新居もあるんだ」

「大丈夫だよ。いざとなれば航空便もあるんだし」

「たまには実家に帰っておいで」

「うん」

「この村に居るのは鳥魔族2名ほどです。それ以外は人間族になります」

「なにか、不具合とかありましたら鳥魔族に聞いてください」

「勇者、魔族のみんな~、ありがと~」

「「ありがと~」」

子どもたちが一斉に声を上げる。

「お前らも魔王城に来いよな~!」

勇者が泣いている。

魔族の集団は空の彼方へと消えた。

「キラ、ソラ、お前たちの故郷もどうだ?」

「やってみる!やってみるよ!!」

「勇者って魔王を討つことだけが勇者じゃねえんだ」

「文字通り世の中を変える勇気のある奴が、真の勇者なんだよ」

泣きながら言うトラ。

周りの魔族もキラ、ソラも思わずもらい泣きした。

 

第十章

 

はるか南方の遊牧民が行きかう草原。

ろこにロロは居た。

「いかんなあ」

「いかんなあそれは」

水晶見ながらロロは独り言を発している。

「それでは魔王の魔石が手に入らないではないか」

「魔王の魔石があれば何度もこうして転生できるというのに」

「これでは我の体内にある魔王の魔石が弱ってしまうではないか」

(ふむ、そういえば初代魔王の体内に複数ある魔王の魔石を1つ取った奴がいるんであった。奴の名はシュクラと言ったかな?)

(奴も魔王サロに近づいて復活したとみるべきだろう)

(このままでは精霊に戻ってしまう)

(これでは勇者の体内にある魔王の魔石も取れなくなってしまう)

(このままでは誰かの胎内に入り転生を繰り返すということが出来なくなってしまう)

(四天王の誰かを裏切させるということも今回はできなさそうだ、前回は奴の劣等感をうまく引き出せたのだったな。今回の四天王にはそんな奴は居ないようだ)

(どうすれば……?)

(そうか)

(その手があったか)

(我は魔王の魔石を4つも持っていた。うち2つはまだ体内に残ったまま)

(ならば我が魔王になればいいのだ!)

(そして役割を放棄した偽勇者と偽魔王を討ってしまおう)

ロロは顔を伏せた。

小刻みに体が揺れる。

「くっくっくっくっくっくっくっくっ」

(それでは物は試しだ)

近くの村まで浮遊魔法で行き呪文を唱えると墓から骸骨がどんどん出ていく。

悲鳴は村から次々上がった。

骸骨に殺されていく村人たち。

「心配せんでいい、命を与えようぞ」

ロロは破を唱えると死体がむくりと起き上ががる。

村人は次々と屍鬼となった。屍鬼は人間だった時の記憶を失い、額とくるぶしからは角が出ている。もう心臓は動いていない。屍鬼は光の当たる場所に行くと焼けただれて死ぬが夜や闇のある場所にさえ行けば半永久的に生きられる。

「ロロ様、ご命令を」

屍鬼が周りにひざまついていた。

今まで裏でこっそり動いてきたのだ。

だが今回勇者は勇者の役割を放棄し、魔族は魔族の役割を放棄し、魔王は魔王の役割を放棄した。

ならば魔王の代役を自分が行わなければならない。

表舞台に出るということは危険性が伴う。最悪自分は討たれるかもしれない。体内にある魔石を取られるのかもしれないのだ。しかし、このままでは魔王の魔石は取れない。

「お前ら、魔王城を作るのだ」

「屍鬼のために地下王宮は特に強化しろ。もちろん地上部分もな」

「死の王国を、作るのよ」

「生贄の祭壇も作るのだ」

「御意」

屍鬼や骸骨たちは早速魔法で石を集め建造物をどんどん作り上げていく。自分がかつて住んでいた家をも囲む城が輪郭の段階ながら出来ていく。

そしてロロは転移魔法を唱えると仮面が収められている封印の間に出た。

仮面の封印を解くと、魔王の仮面を自分で付けた。

(住民に風習と言って洗脳させ、十数年に一度確実に魔王を出させるというこの仕組み、失敗したのは痛手)

(まさか最後の手段を使うとは)

その仮面は赤闇色の仮面で鱗が一面ついていた。竜の鱗であった。ザムドとは明らかに違う別の神。竜神であった。魔の竜と言われし古代の神の仮面。

(生贄も一杯食わねば、そうすれば強大な魔王になれる)

ロロは転移魔法を唱えると順次に消えた。

ロロが戻った場所は建設中の魔王城。

「魔王様、建設は順調です」

ロロはこの言葉にぞくっと来た。思わず快感を覚えた。

<第四部 終>

 

第五部

 

序章

 

戦士キラの故郷ナコロ村が襲撃されていた。

村人という村人が屍鬼となりさらに別の村に襲撃していく。

そうしてどんどんロロが支配する死の国は領土を拡大していった。

この知らせを受けた戦士キラは大泣きした。

そしてサロたちが最も恐れていたことが起きた。

パイプライン襲撃。

バブルの栓を慌てて閉める鳥魔族や熊魔族

それらの獣人に襲い掛かる骸骨兵や屍鬼

サロらは窮地に立たされた。

ガスが無い生活。

それは皆が思っているよりも想像以上に苦しいものであった。

ナゴルはガスの無い生活に逆戻り。

そして魔王城やヴォルドは照明器具を抜いての節電生活となった。

木炭ガス発電はあくまで緊急用。生活を満たすためのものではなかった。

ミサラスに至っては電気が無くなった。

ナゴルはさすがに元から木炭ガス発電で満たせるようになった設計だが、お湯は釜炊きに逆戻りとなった。

そして結界の外は骸骨兵だらけとなった。

 

第一章

 

「まず、ガス田に近いヴォルドから結界の領域を広げていく」

「だったらガス田そのものに結界張ればよくね?」

「それやったら結界の中にガスが充満してこっちが中毒死だ」

「だから距離の短いガスパイプラインだけ結界の外に出す」

「ガス田も警備する」

「ヴォルドはそれでどうにかなる」

「ここは?サロ城は?」

サロが聞く。

「残念ながら……」

「このままでは極寒の季節に耐えられない」

「死者続出です」

「……」

「おい、外がもっとヤバいことになってるぞ」

「失業者であふれている」

「そりゃ~電気の通らない工場を稼働するわけにはいかないからな」

カラが言う。

「む?これは……」

シュクラが驚いた。

「価格がどうかしたの?」

「前回や前々回の魔王様の時代にはこんなことあり得ませんでした」

「物の価格が激減している」

「なのに農作物の価格だけ急激に伸びている」

「そりゃ結界の外は骸骨兵がうじゃうじゃいるからな」

「城門の前に人が押し寄せてます」

「金が無くて物が買えないと」

「やむを得ない」

「サロ?」

「食堂を開放しろ。農作物をうちで買うぞ」

「金がいつまでもつか」

「カル?」

「だって彼らは保険料も払えずに無保険者に落ちてるんだぞ」

「だったら雇いませんか?」

「ソラ君、どこに職があるの?」

「あるさ!冒険者ギルドを結成する」

「冒険者ギルド?」

「そして求人はガスパイプラインの保護と薪の確保、農地の安全さ!」

「あったなあ!冒険者ギルド」

キラがなつかしそうに言う。

「三光魔のみんな、力を貸してくれ。冒険者ギルドとは何なのだ」

「「おまかせください!」」

「そんなことしたら金が持たない!」

カラロが言った。

「放送局も電気が無い以前に広告枠が無くなって閉鎖状態なんだぞ」

「金庫の金も尽きようとしている」

「だって、俺たち水道料金とガス代で食ってるようなもんだぞ!」

「鉱山から限りなく掘れ」

「金は作るものだ」

「なにか嫌な予感がしますがやってみましょう」

「シュクラ?」

「私たち魔族にとってもこの文明で暮らした文明の人間にとってもみんな初めての現象なのです」

「それでもやるしかない」

 

第二章

 

「へえ、これが冒険者ギルド」

サロは驚いた。

「これが求人ボードなんだ」

「そうなんです」

勇者が誇らしげに言う。

「じゃあ、魔王の俺様が求人出そうかな」

『骸骨兵・屍鬼兵討伐!夜は屍鬼も出る。腕の立つ者を求む! 結界の拡張業務込み サロ魔王城城主 サロ』

討伐クエストも4つも出した。魔王城の周り、ヴォルド、鉱山、そして勇者の故郷。

「ほお、いい出来だ」

「求めるランクも出してください」

「ランク?」

「ええ、冒険者はS級、A級、B級、C級、D級、E級、F級と別れています」

「冒険者は誰もが最初はF級からです」

「これってさ、自分も応募できるの?」

「出来ますよ。前いたところは族長も直々やってたし」

「じゃあ、俺も応募っと」

「えっ?魔王様!?直々で!?」

ギルドマスターが狼狽える。

「悪いか?経費節減だ」

「で、ではこちらのメダルを……」

「これはなんだ?」

「F級メダルです。俗にいうFランメダルです」

「最低ランクって意味です」

「とりあえず。農地の部分も結界を拡大して農作物確保だな」

「あ……はい、魔王様」

「名簿のご記入を」

「こうか?」

「へえ、これって四天王も登録できるってこったな!」

カラロが嬉しそうに言う。

「はい、カラロ様」

「四天王全員にF級メダルを渡すのは……」

マスターは声が震えていた。

「ルールだ。俺様がF級なんだからな。ルールはたとえ城主であっても守る。お前らもFラン登録しろ」

「いえーい!」

オロがうれしがる。

(Fランで喜ぶ人、初めて見た)

ソラがこっそり言う。

(まったくだ)

キラもうなずく。

「仲間を集めてください。パーティーは4人まで」

「出会いも別れもここで行います。パーティーの再結成も可能です」

マスターはやっぱり声が震えていた。

「で、ここで飲むんです。酒の一杯を交わす」

「じゃあ、お前と組む」

「トラ、ほら酒だ」

「魔王様?」

「魔王は辞めろ。サロでいい」

「勇者と組むので?」

「いけないか?」

「もちろんですとも!」

トラはビールをぐびぐび飲んだ。11歳である。人生初めての酒となった。

「うまいか?」

悪そうな笑みを浮かべるサロ。

「おえっ!」

吐いてしまった。

「義兄弟の契りみてえなもんだな」

ぐいっとサロはビールを飲み干す。

「カル、来い。薬師が必要だ」

「町の外には天然の薬草があるだろ。それも集めて栽培しよう。医療の向上に役立つ」

「喜んで!」

カルはビールを飲み干した。

「カラロ、一緒に組もうぜ。空から奴らは攻撃出来ない。鳥魔族は貴重な兵力だ。」

「おう!サロ!」

「いい返事だ」

カラロはビールを飲み干し、カップを机に叩きつけた。

「ではパーティーメンバーの登録をこちらに」

「ヴォルドで解散、結成する際はここでも確認いたします。この飛び声石で」

「了解」

「じゃあ、やるか、雑魚狩を」

「「おお~!」」

「遅くなりました」

「シュクラ」

「俺たちも、冒険者になったぜ」

サロがうれしそうに言う。

「四天王だけ偉そうに椅子に座ってるってわけにもいかねえしな」

「それに放送局、ダメになって暇だしな」

カラロが言う。

「では、私も」

「そう来なくちゃな、シュクラ」

「これって魔王と副官のパーティーも出来るってわけで?」

「そうです、副官様」

「F級メダルです」

「ほお、これがF級。これで私もいっぱしの冒険者になったという事か!」

(誰か教えてやれ、Fランは恥だと)

ソラがこっそり言う。

(言えるか!バカ!)

キラが切り返した。

(俺たちも、このギルドではまだFランなんだからな)

「私とサロが冒険に出るときは国の事四天王のだけかに頼みますよ」

「「はいっ」」

こうして冒険者ギルドは前代未聞のスタートとなった。

 

第三章

 

「ほお、これが例の骸骨兵」

「人の骸骨だけでなく当然動物の骸骨もいますね。というか動物出身の骸骨兵のほうが多い」

「まずは勇者のお手並み拝見だな」

「わかった」

そういうとトラは魔法を唱える。

「爆雷呪!!」

「竜巻滅刃呪!!」

強力な爆発魔法と巨大な竜巻に風の刃が次々食らっていく骸骨兵。

「竜波斬!!」

なんと剣からも強力な風の刃出してくるではないか。骸骨兵は粉々になった。

(なるほど勇者は魔王の2倍の能力を持って魔王を退治しに来る。まさにその通り)

(だが、まだまだだぜ!)

粉々に砕けたはずの骸骨兵はどんどんくっついて蘇ってくる。さすがに鎧と兜は壊れたままだが。

「そんな」

「あの小さいコアを倒さないとダメなのさ」

掌に焔を載せるサロ。

「行くぞ!!」

「獄焔呪!!」

強力な焔のの柱が骸骨兵を襲う、そして……。

―ピキっ!

骸骨兵の胸にあった小さな紫色のコアが崩れ去る。

「高温でコアを焼かないとな」

「じゃ、次々倒すぜ!!」

こうしてサロは高速浮遊術で骸骨に近づいては骸骨兵が持つコアを獄焔呪で粉々にする!

「俺つええええええ!!!」

こうして広大な農地にいる骸骨兵はすべて除去した。

「すげえ!さすがサロ」

カラロが空からうきうき声で言う。

「この結界石、聖魔法も帯させたら、骸骨兵や屍鬼は何もできないのでは?」

「それだ!」

「カル出来るか!」

「やってみます」

カルが呪文を唱えると結界石は白い色を放ち始めた。

「結界石のエリアを拡大させるぞ」

こうして農地が結界の内側になるようにした。

「ようし、この調子でヴォルドも救えそうだな」

「その前に城に戻るぞ」

「なんで?疲れたの?」

「いいから、黙って見てろ」

そしてサロらは魔王城に戻った。

着いたのはガス発電所。

「まだガス管直してないぞ」

「それに夜は屍鬼が来る」

「黙って見てろ」

「係員、上下水道が使えないんだったな」

「ええ、電気でポンプが動くことをいまさら実感してます」

「補助電源じゃ足りねえって話だよな」

「はい」

「獄焔呪!!」

タービンに向かって焔を出すサロ。

すると。

タービンが動いた。

「で、電気が!!」

「水道から水が出る!!」

「今のうちにトイレの水を流しとけ。もって10分だな」

「係員、伝えておけ!」

「はっ!!」

こうしてサロは10分間とは言え、街の電気を復活させたのであった。

 

第四章

 

冒険者はギルドに向かうとFランメダルを返しEランメダルをもらう。

クエストに成功したのだ。

依頼者が自分で依頼をこなした場合2割の報酬額がカットされたうえで依頼額がもどっていく仕組みになる。なので通常は依頼主が自分で請け負うなんてことはしないが、今回は国庫の事もある。やむをえなかった。

「次はヴォルドだ」

もうだいぶ寒くなっているので籠に乗って移動することが出来ない。地上から行くしかなかった。

ヴォルドに着くとどうも骸骨兵が復活することに悩んで結界の拡大ができないようだ。

サロたちは結界の拡大をした上に結界に聖属性付与を行った。

「これでヴォルドはもう大丈夫だ」

「さ、帰るぞ」

「お、この花は?」

と、その時風を切る音がした!

カルが倒れる。

「ヒット~!」

骨を揺らして笑う骸骨兵。なんと弓矢を装備していた!土の中に隠れていたのだ。

「ソノドクハモウドク、タスカラナイ」

「何を!!」

サロは業火で骸骨兵を葬る。

「サロ、私はもう…‥だめ…‥です」

「そんなことない。今ヴォルドに帰って手当するからな」

「先にヴォルドに戻るぞ」

そういってカルを抱えて高速浮遊術で帰るサロ。

しかし、治療のかいむなしく、翌日……

四天王カルは息を引き取った。

泣き崩れるパーティー。

カルは王城に帰ると言ってそのまま高速浮遊術で亡骸となったカルを抱えて帰った。

王城では葬儀が行われた。

葬儀の時、髪を少しだけ切り取ってから埋葬する。埋葬物にはもらったばっかりのDランクメダルも一緒だ。

城下のかなりの者が泣いた。なにせ国民皆保険制度で命を救われたものも多いからだ。

実は魔王と副官と残りの四天王にはもう一つの葬儀があるのだ。

転移魔法陣で地下の祭壇に向かう。四天王と同格の三光魔らも一緒だ。

「マジか、本当にシュクラ、そんなこと言うのか?」

カラロは驚いた。

「本当です」

「四天王と副官と魔王のみ参加できるもう一つの葬儀でそのように言います」

「四天王と同格の身分の者は参列のみ許されます」

「一般国民には知らされない密儀です。知られたくないが正しいですが」

三光魔らはこの言葉を聞いて言葉を失った。

「残酷すぎる」

オロが戸惑った。

「でも、それが任務途中で命を落とした四天王への言葉なのです」

「四天王という身分はそれだけ重いのです」

「四天王は何百という命を載せた重責な職なのです」

「わかった……」

サロが聖杯に髪を置き、呪文を唱える。

すると聖杯から光の粒子が出ていった。

「奴は四天王の中でも最弱」

熊魔族のカラが言う。

「骸骨兵ごときにやられるとはサロ四天王の面汚しよ」

鳥人族のカラロが言う。

「だがたった今、四天王の重責は解かれた」

人間族のオロが言う。闇の面頬から凍てつく声が発せられた。

「安らかに眠れ」

人間族のオロが締めくくった。

その言葉を聞くと光の粒子がふっと消えた。

「終わったぞ」

「サロ、新しい四天王を入れますか?空席にしますか?」

「1年間空席にする」

「喪に服すようなもんだな」

「承知しました」

 

第五章

 

「これが生贄」

「はい、魔王様」

骸骨兵が答える。

「仮死状態にとどめております」

「生贄の祭壇に捧げるのだ」

「御意」

「生贄の服を切れ」

「御意」

ロロは身が清められた生贄の前に来た。

ロロはまだ手に鉤爪すら生えてない。そこでロロは生贄の祭壇に捧げられた人間を己の牙で切り裂き、そして貪るように食った。

既に人間の頃の味覚と変わっていた。人間の血肉はほのかに甘く、うまさが伝わる。

(ふふっ。魔王はこんなおいしいものを食べていたのか)

(そういえば自分は前世「ガザ」と呼ばれた時生贄が魔王の仮面を引き当てることが出来ずそのまま寿命を迎えたこともある。やむなく母ムロロの息子ロロとして転生したのだった。魔王は82年も不在だった。まさか今自分はこうして真の魔王を復活させようとしているとは)

しばらくしてロロが身に着けている仮面からどんどん血肉が流れていく。

血肉が仮面から流れ行く音はまるで咀嚼と吸血の音であった。いいや違った。ロロは仮面に食われているのであった。さっき生贄にしたことを今度は自分がされているのだ。咀嚼と吸血の音そのものであった。

体内にある魔王の魔石がロロを覆う血肉に増幅効果をもたらす。ロロの服は破れどんどん己の躰が大きくなる。だんだん息が苦しくなる。呼吸も激しくなってきた。

突然ロロの首が根元から折れるような音がした。肉が首から流れるせいで一時的に首を支えきれなくなったのだ。己の顔が真横に曲がる。

あまりの激痛にロロは意識を失いそうになった。

だが、首も持ち直すようにどんどん伸びていく。仮面をかぶった顔も正面の位置に戻りながら仮面が大きくなっていく。仮面の口がより裂け、牙が伸びた。ロロは思わず声を上げた。その声は既に獣の咆哮であった。

(どうだ、我は生きているぞ!)

ロロは急速な変化に耐え切れず絶命するリスクを負ってまでまだ標準体になってないにもかかわらず人間を喰らった。ロロの賭けは成功に終わった。

(台本通り我はついに表舞台の支配者になる)

そう思った。すると己の顎が前に迫り出した。ロロは己が被った仮面の形をも骨音と共に変えていく。骨音は己が前に進む覚悟と意思表示の証となった。今度は悦楽と激痛が同時に走る。骨音はやがて止んだ。仮面の形など変えることは出来ないはずなのにロロはそれをも変えてしまった。体内にある魔王の魔石の力が仮面にも及んだのだ。

ロロが肉の塊に徐々に喰われていく。肉塊はとうとう足のつま先まで飲み込んだ。ロロは仮面に喰らいつくされたのだ。肉塊は咀嚼と吸血を続ける。肉塊は中の肉と骨を溶かし、喰らい尽くし、吸い尽くし、血肉と骨を再構成した。

己がどんどん喰われていく様を嬉しそうに確認している。そう、ロロと言う人間の死を見届けるのだ。そして自分は新たな命に生まれ変わる。

しばらくして決意した。

(我がこの力でもって世の秩序を守るのだ)

そう思ったとたん、咀嚼と吸血の音が止んだ。すると今度は肉塊の全身に赤闇色の鱗が覆い、さらに仮面から供給された2つの大きな瘤は翼が内包されていた。瘤が破れると赤闇色の帳が降りる。肉塊を突き破った鉤爪は絶望を塗りつぶしたような黒色となった。最後に己の躰と仮面が一体化した。

(我こそ福音をもたらす者)

そう思った。今度はなんと尾が生じたではないか!尾はどんどん大きくなっていく。敵をなぎ倒すのに十分な大きさだ。そして先端部分に毒針が生じた。毒針から毒がしたたり落ち床を溶かす音がする。針は尾の中に仕舞えるようになっていることを確認した。この毒針は人間や魔族にとっては死に至らしめる毒だが屍となった者にとって福音となる「薬」である。

こうしてロロは赤竜となった。標準体の姿となった。

本来、仮面をかぶって半年を経ないと標準体にはなれない。

だが例外がある。それは魔王の仮面をかぶった後に人の肉を積極的に食う事である。

「まだだ、まだ小さい。我の姿は真紅の巨竜。もっと生贄を寄越すのだ」

声も変わった。

「御意」

「それと我に四天王や副官など要らぬ。そんなものは3流の魔王がすることよ」

「御意」

「おお、そうじゃった。標準体になったら前の名前を捨てるんだったな」

「我の名はチュリュグディ、魔王チュリュグディじゃ!」

「「「御意」」」

 

幕間

 

「下界は大変じゃのお……よ」

「はい、ジャブダル様」

ジャブダルと言われたものは黄金の竜の姿であった。

「……よ、そなたと共に小さな島を大地に変え、この凍土に世を作った」

人間にはとても聞き取れない言葉の名を持つ者はマンモスの姿をしていた。

「果たして人間を救う魔が勝つのか、人間を亡ぼす魔が勝つのか」

「本当によろしいのですか、何もしなければ人間が滅びますぞ、この大地が死の大地になる」

「今はまだよい」

「お前らも手出しするなよ」

「「はっ」」

天使が一斉に答える。

 

第六章

 

「いくぞ、3・2・1・点火!!」

すると灯りが次々と付く。

「電気が付いた!!」

「蛇口から水道が出る!!」

ヴォルドが一斉に歓喜の渦となった。

そして……。

「魔王城もガス管は復旧した」

サロの街並みも次々電気が付き、蛇口から水道が出る。もちろんボイラーによってお湯も。

日常を取り戻した。ただ、代償は大きかった。

「ところで、鉱山から鋳造用の鉱物が全然届かないのだが」

「このせいでとうとう金庫は空っぽだ」

そう、この国の財政は破綻寸前であった。

「この国は税金を取らない代わりに電気代、水道代、ガス代、保険料、衣服の販売代金、家賃で動いているんだからな」

「保険料や家賃の未払いがキツイ」

その時空から羽魔族が来た。

ボロボロの姿だった。

「だれか、魔王様を……」

蝙蝠の羽はあちこち破れ、満身創痍の姿であった。

「ミサラスは、鉱山ごと、屍鬼族に取られた」

そう言って息を引き取った。

歓喜の渦は一斉に悲鳴が上がった。

——————–
「ごめんな、勇者。次はお前の村を守るはずなのに」

「今は鉱山を取り返すのが先です」

トラはきっぱりと言った。

「勇者らしい顔つきになったじゃねえか」

サロが思わず褒めた。

「まずは冒険者ギルドで1人追加だな」

「我こそはミサラスに行くという者!」

「行くぜ!」

声に答えたのはカラだった。

「そうだ、カラにプレゼントがあるんだ」

それは熊魔族にふさわしい武器であった。黒き禍々しき爪。

「本当に遅れて申し訳ありません」

シュクラが頭を下げる。

「防具は後から揃えます。とりあえず武器だけでも」

「変わってるだろ。闇熊の爪という」

「これが、闇熊の爪」

熊魔族は魔族になった時に手は人間そっくりなものに変わってしまったため熊が持つ武器としての爪を失っている。

「強力な鋼鉄の爪だ。これに闇の呪いが付いている」

「敵を引き裂くには十分です」

カラが喜ぶ。腕に装備するとぴったりだった。

「一緒にギルドに行って飲もうか」

こうしてカラは改めてメンバーとなった。

カラのみ冒険してないのでFランク、3人はDランクとなっていた。

Eランクのメダルを返し、Dランクのメダルを受け取る。そして自分が出した報酬分の2割をカットされて戻って来た。

「パイプラインの警備と結界石の聖属性化も順調のようだな」

「今度こそ、パイプライン爆破ということにはなりません」

「しっかし財政どうしよっかなあ」

「サロ、借用書書いちゃったら?」

「カラロ、簡単に言うなよ。酒代のツケじゃねえんだぞ」

「ないものはないだろ」

「その報酬代ぐらいなもんだ」

「うっ!」

「肩たたき券みたいなもんね、サロ!」

「オロはいつの話をしてるんだ」

「前借にするんだよ」

「その代わり1年後は1.03倍にして返すってな」

「借用書……」

「ずっしり重く来る」

「そりゃ~な?」

「シュクラと相談する」

「おう、でもあんまり時間はねえぜ?」

「このボロボロの再スタートの時に税金なんてやったら」

オロが言うと酒場中の会話が止まり酒場の全員がサロの方向を向いた!

「なんだよ、お前ら!」

サロが睨むと酒場の全員がさっと視線をそらした。酒場中で会話が再開した。

「今の空気で分かる通り、無理ね」

「借金……」

「大丈夫だって、鋳造増やせば借金なんてチャラに出来るって」

「サロは自分でお金を作れる側の人間なんだぜ、自信もてや!」

「うん……」

「おかわり!!」

カラロは飲み続けた。

「俺もおかわり!!」

「サロ、お前まだ子供じゃね?」

「魔王になってから不思議と酒は強くなったのさ」

「だめ!!」

オロはサロのジョッキを取り上げる。

「サロの体を想ってのことだから。いくら魔王の体になったとはいえ飲み過ぎはダメ」

「やさしいねえ、幼馴染は」

サロに替わりに来たのは牛乳であった。

「……」

「大人になってからだよ」

サロは無言で牛乳を飲んだ。

 

第七章

 

「ここが、ミサラス」

ゴーストタウンであった。

「やべえ空気が伝わって来るぜ」

「どうも結界は何回も爆破して割ったみたいだね」

「簡単に壊れるものじゃねえんだがな」

「それどころか、見ろよ」

なんと住人がアンデッド化していた

「それと鉱山」

「日光が当たらないから屍鬼の格好の住処になってる」

オロが指摘した。

「味方を殺すのか」

「それも二度と生き返れない方法で」

「それしかねえだろう。アンデッドだぞ」

「やむをえない。いくぞ!!」

「獄焔呪!!」

サロは次々業火を骸骨に浴びせる!!

「焼けた家から屍鬼が!」

カラロが空から警告する。

屍鬼が炎を纏って逃げようとしている!

「しゃーねーな。リフォームしようぜ」

町全体が炎になってる有様を見て嬉しそうに言うサロ。

「獄焔呪!!」

まだ残ってる家ごとサロは焼いた。

「奴ら、まだまだこんな数じゃないんだろ?」

「そうよ、この時点で結界石を作っても内側に閉じ込めるだけ」

虎魔族の骸骨も居た。サロが命を与えたはずの魔族。

「悪りいな。永遠に眠れ」

サロの獄焔呪によってコアが砕かれる。亡者特有の断末魔が響く。

「鉱山はガスが充満してるか?」

「そうだ」

「獄焔呪はそう簡単に使えないぞ」

「カラの爪で、坑道の外に持って行くしかねえな」

「俺の出番だな」

「屍鬼も倒したら一定期間おとなしくなるんだよな」

「その隙に坑道の外に持って行くと」

「そうだ。面倒だな」

「闇熊の爪よ、頼むぜ!!」

カラは自分が装着してる闇熊の爪をそっとなでた。

「ああ…‥日が暮れる」

「野宿か……」

「そりゃだめだな。鉱山から屍鬼が数の暴力で攻めて来るぞ」

カラロが言う。

オロが闇の面頬を外す。

「せめて燃やした町は聖属性の結界石を置いて失地回復ね」

「それがいい。帰るぞ」

サロの命令で4人は帰る。魔王城に着いた頃には深夜であった。

「だめだ、お風呂!!」

オロはまっしぐらに風呂場を目指す。

「次は朝一で行かないとダメですな」

「じゃなければ町にもう一回拠点を作るか」

「それだ」

 

第八章

 

「なりませぬ」

「なんで!?シュクラ!!」

「サロ、だってそれ借金ですよ」

「返せなかったらどうするんですか?」

「それは…‥」

「両替商の融資だって審査もあるし担保も取るのですよ」

「国が借主の場合、担保は設定しませんが」

「しかし、通貨の信用を失い、物価が極端に跳ね上がる気がするんです」

シュクラは懐から効果を取り出す。

「ご存じの通りこのゼニ―は『20ゼニ―コイン』です」

「これが『20000ゼニーコイン』になったらどうするんです」

「国民は苦しむんですよ」

「けどよー、副官。無いものはないんだぜ」

カラロがサロを擁護する。

「だって金庫にお金ないじゃん」

オロも言う。面頬は付けてない。悲鳴に近い声をあげた。

「そもそも保険料と家賃の未払いが多すぎるのです」

「シュクラ、民草から、やっと停電から立ち直った人から保険料を徴収するのか」

「これは公的保険です。保険料払ってなければ本来は全額負担のはず」

「あるいは前代魔王のように物品税をかけるか」

「鬼だ……」

カラが言う。

「ええ、私は今でこそエルフで魔妖族ですが、巨鬼族になることも出来るのです。私はたしかに『鬼』です」

「副官。今回ばかりは従えない」

「今回に限り、停電期間の保険料と家賃は全額免除だ」

「「うおおおおお!」」

周りの衛兵も四天王も三光魔もサロの言葉にどよめく。

「この国は賭博禁止だったよな?」

「サロ!?何考えてるんです!」

「2月だけ賭博を認めようじゃないか」

「賭博の利益を2割寄越せ。臨時の公営賭博場でな」

「そんなことしたら民が賭博を覚えてしてしまいます!」

「賭博依存に犯罪も多発します」

「副官、あきらめてくれ。無い袖は振れない」

こうして魔王は異例中の異例ともいえる副官反対の元、賭博を2か月だけ認めることとなった。

 

第九章

 

「サロ様」

「なんだ?ソラ」

「実は私呪術師ですが」

「そんなことは知っている」

「死霊系の魔物を消滅する魔法をやっと習得することに成功しました」

「結界石の聖属性付与も」

「マジか!!」

「本当です」

「なので、鉱山の奪還、私にもやらせてください」

「トラの替わりにパーティーに入ります」

「でかした!!」

「じゃあそうするか!!」

こうしてトラの替わりにソラが加わった。

「死魔消滅という魔法です」

「コアを瞬間で殺します」

「炎も火花も出ないので鉱山でも安心です」

「すばらしい」

「じゃあ、おまえら行くか、鉱山に!」

「「おお~!」」

—————-
ソラの「死魔消滅」は絶大な効果であった。

こうして鉱山はサロ側に取り戻した。

家を建て直し、パイプラインの周りにも聖属性結界石に変えた。

もう骸骨兵も屍鬼もパイプラインに手出しできなくなった。

発電所から町の復興は始まった。

幸いにも魔王城に居た失業者の雇用の受け皿にもなった。

何よりガス代、水道代、電気代、保険料の収益がもどったことがうれしかった。

復興に半月もかかってしまった。

「これで復興と!」

「ソラ、ありがとう」

「三光魔の故郷、取り戻す」

「お前の故郷もやられたんだろ」

「だから必死に術を習得するべく猛特訓してたんだろ」

「どうしてそれを」

「俺は城主だぞ。いろんな人からうわさは聞くよ」

「今度は俺が恩を返すから」

「ありがとう……」

「なんだよ、泣くなよ」

「泣くのは故郷を取り戻してからな!」

「はい!」

鉱山の町ミサラスはこうして奪還した。硬貨の供給も再び始まった。

 

第十章

 

「ぎゃ~また負けた~」

「はい、没収ね」

係員は冷酷だ。

「お前は本当運が無いな、カラロ」

ここは臨時賭博所。あと約一か月は開催される臨時の場所である。

あろうことか兵士の訓練所に開設した。

なんで兵士の訓練場なのか。

そう、模擬戦をそのまま賭博の対象にしたのだ。

冒険者ギルドでCランク以上の腕の立つ冒険者が参加資格だ。

剣や盾は樹である。もっとも不慮の事故でそれでも死ぬ場合があるが、そのような状況にはさせないように心掛けている。呪術師の場合は魔術合戦となる。

カンカンカンカンカンカンカンカンカンカンカン―!

本物の剣戟ではないが十分迫力が伝わる。

「みろ、シュクラ。訓練にもなって同時に収益にもなったぞ」

「……」

シュクラは黙っていた。

2か月の賭博特別公認開催期間を経て、無事サロ魔王城の財政問題は解決した。

貨幣は供給でき、電気代、ガス代、水道代、保険料も徴収できるようになった。

どうにか地下の金庫も少量であるが貯まって来た。まだすっからかんであるが。

「最後の失地回復戦だな」

「はい」

「三光魔の故郷を取り戻す!!」

「「おお~」」

四天王も副官も三光魔も一斉に声を上げた。

彼らはまだ知らない。魔王チュリュグディの恐ろしさを。

<第五部 終>

 

第六部

 

序章

 

連鎖爆発を止めたのは奇跡であった。

尊い犠牲が魔王城を守ったのであった。

犠牲を無駄にするわけにはいかない。

聖属性の結界石を置き、パイプラインを作り直す。

勇者の故郷ナゴル村はこうしてガスが復旧した。

それまで簡易の竈で風呂に入っていたというのだから驚きだ。

発電所にガスが届き電気も供給される。

この村は何度木炭ガス発電に救われてきたかわからない。

まだここは結界によって守られているので骸骨兵も屍鬼も襲って来ない。

しかし結界石を破られたらアウトである。結界石を聖属性にした。

4人は鳥魔族の宿舎に泊まった。

今回はサロ、キラ、ソラ、カラロというメンバーである。

「まず、トラの村は無事だった」

「次はいよいよキラの村だ」

「敵にお前の親や兄弟が居ても恨むなよ」

「うん……」

「もうそいつは親でも兄弟でもなんでもねえ。アンデッドだ」

「覚悟は、出来てるよな?」

「俺の獄焔呪で滅ぶ姿見ても泣くなよ?」

「サロ、分かってる」

「この村のように人間の手に取り戻すぞ」

「ソラの村はそのあとだ」

「はい」

「ソラ、今はお前が一番の戦力だ」

「死魔消滅頼むぞ」

「はい」

「精神力使い切って呪文使えなくてアンデッドに囲まれるという目には合うなよ。その時点で終わりだ」

「カラロ」

「おうよ」

「空から指示を頼む」

「任せろ」

「これで以上だ。何もないな?」

「「はい」」

「じゃあ寝るか」

こうしてキラの村とソラの村の奪還作戦が始まった。

 

第一章

 

4人は鳥魔族によって運ばれる籠の中に居た。

「ねえ、おかしいよ」

ソラが言う。

「何がだ」

「こんだけ骸骨兵、屍鬼兵倒しても一向に減らない」

「そういえば……」

「そもそも敵の本拠地はどこなの?」

「それも気になる」

「見えて来たぞ、お前の故郷サトラ」

それは無残であった。骸骨が蠢いていた。

「お前の故郷、取り戻す」

「近くの森に降りてくれ!」

「魔王様、了解です」

近くの森に降りると4人を降ろした。

「覚悟はいいな」

「「おう!」」

「いくぞ、奪還に!!」

獄焔呪が次々炸裂する。死魔消滅も。

そしてとうとう見てしまった。故郷の家に居た者。

「あの服装は……」

「お父さん!!」

「おかあさん!」

ソラの死魔消滅がさく裂し、コアが砕け散り骸骨が崩れ落ちる。

キラは泣き崩れる。

「町に屍鬼はもういないか!」

サロが確認する。

「居ないぞ!!」

カラロが空から言う。

サロはキラを平手打ちした。

「言ったはずだ。覚悟しろと」

「ソラ、聖属性の結界石を」

「了解」

「遺骨はちゃんと葬るから安心しろ」

「ごめん、サロ」

「この町はガスパイプラインも引くし、発電所も作る」

「お前の家は燃やさなかった。ソラに感謝しろ」

「ソラ、いよいよだよな」

「次はお前の村の奪還だ」

「うん」

「覚悟しろよ」

「その前に、ここにインフラ作って魔族も元精霊つまり魔妖族を中心に置く」

周りの動物は全て骸骨兵は屍兵にされていた。

このため魔族化は魔妖族以外出来なかった。

「とりあえず、水道と電気は確保と」

発電所は例の如く木炭発電所である。

「ちょっと前の勇者の村みたいにまた竈でお風呂?」

「しゃーねーだろ、カラロ」

「カラロ、この村にも鳥魔族を移住させてほしい」

「了解!」

「パイプラインはこれから極寒の季節となる。春になってからだな」

こうしてサトラ村は再出発となった。

 

第二章

 

「あれが、ソラの故郷」

キラの替わりにオロがパーティーに入っている。

鳥魔族によって運ばれる籠のなかで4人が見たもの。

遠方に巨大な城があったことだ。

「あんな建物、あったか?」

「あるわけない。あんな巨大な城があったら買い物とかに行く」

「間違いねえな」

「あれが敵の根城なのかね」

「そういえば屍鬼兵も骸骨兵も身内のボスの名前言わねえな」

「早く片付けないと極寒の季節が来るぞ」

すでに雪が舞っていた。

「ソラの故郷、オキミ村で間違いねえな?」

「はい」

城の向こうに見えるのは……

「塔だ……」

「割と近い」

「塔なんか作って何しでかすつもりだ」

「わからん」

「ともかく、ここは重要拠点になるぞ」

「みんな籠から降りるぞ!!」

——————–
ソラの故郷も奪還に成功した。

「丁重に葬るぞ」

「うん」

「電気と水道は出来たけど、ガスが無い」

「電気も弱弱しい」

「それどころか冬は薪を取りに行きづらい」

「最悪、停電生活になる」

「ここから先は、攻略は難しい」

サロは魔妖族を作り出し、ここを拠点とする。

「一旦、魔王城に帰るぞ」

 

第三章

 

その頃魔王チュリュグディは屍鬼兵と会話していた。

「お前は屍鬼だが、昼間も歩きたいと思わぬか」

「はい、もちろんでございます」

「屍鬼兵の全身に闇の鎧と兜を覆う事を考えた」

「もちろん鎧の下には闇の衣に闇の手袋、闇の靴下をな」

「それで戦えるだろう、昼間でも」

「ありがたき幸せ」

「さてお前も見ておれ。ちょっと挨拶しようと思うのだ」

「開けろ」

そういうと謁見室からものものしい音がする。天井が開いた。

魔王チュリュグディは謁見室から飛び立ち塔の最上階に降りた。

「よく見ておれ」

竜になってからというもの千里眼の能力を得た。遠くのものを捉えることなど容易。

「むっ!」

そう言いながら目標を捉えると口腔に閃光がたまっていく。

チュリュグディが吐き出すとそれはサロ城に向かった!

サロ城の結界によって閃光は跳ね返った。

チュリュグディはヴォルドにもミサラスにもナゴルにもサトラにもオキミにもそれぞれ閃光を吐いた。閃光は結界によって全て跳ね返った。

(まさか、あれほどダメな子だったサロがここまでやろうとは)

「よし、合格だ」

「ならばこれはどうだ?」

千里眼の能力をもってすれば遠くに飛ぶものを捉えることも容易である。

「ぬっ!!」

千里眼で獲物を捉らえた。

チュリュグディの口腔内に蒼い閃光がたまった。

閃光が向かった先は物を運んでいる鳥魔族であった。

閃光を浴びたのに鳥魔族はなんともない。

鳥魔族は閃光に驚いたものの何事も無かったのでサロ城に向かった。

(では、第二幕だな)

(サロがどこまでやってくれるか、見てみようではないか)

(中から崩壊すればこちらのもの)

魔王チュリュグディは塔から飛び立ち根城に帰った。

 

第四章

 

「ごほっ ごほっ」

鳥魔族のポロカが謎の閃光を浴びて1週間後……。

ポロカは咳するようになった。

それまでポロカはヴォルドにも出て物を運んだりした。

ポロカの症状は悪化し、たまらず薬局に行った。

もちろん3割負担だ。

これでダメな場合は薬局の上にある医務室に通う。

もっとダメなら本丸の中にある重症患者用の病院に行くのだが。

ポロカの全く症状がよくならないどころか自分と同じ症状の魔族も人間も増えてきた。

そして、高熱にうなされながら、ポロカは死んだ。

サロ城もヴォルドもパニックに陥った。

「薬が全く効かない!!」

問題なのは患者がサロ城本丸にも及んだことだ。

「どんどん死んでいく……」

「風邪薬も試したがまったく効かないぞ」

せっかく経済が復興した兆しの中で大量に死人が出た。

————————-

サロとシュクラと四天王と三光魔はいつも通り地下四階で密会を行った。

「どうすればいい、シュクラ」

闇の中で声が響く。

「まず、病院を大規模に新設しましょう。大規模病院も3割負担です」

「隔離病棟と一般病棟を」

「隔離病棟は町から離れた場所に」

「俺、同じ鳥魔族だけど平気だぞ?」

カラロが言う。

「そりゃ~まだうつってねえだけだろ」

カラが突っ込んだ。

「魔法も利きません」

ソラが言う。

「隔離病棟患者って死ぬの待つだけなの?」

オロは吹雪のような声で言った。闇の面頬を装備した姿はまさに死神だ。

「待つだけだ」

サロが言った。

「まず、病棟だな」

「でも、病棟職員も感染する」

オロの声は冷酷だった。みんな黙り込んでしまった。

「……」

「サロ、私お人形好きって言ったじゃない?」

「人形に命吹きこむって事、出来ないかな?」

「それだ」

「だが、もって数日だぞ。数日後にもう一回命を吹き込む、吹きこんでも単純作業しかできない」

「それで十分よ!」

「サロ、物流ネットワークを切るぞ」

「おう、カラロ」

「それと謎の閃光も気になるな」

「あれは敵の合図だったのでは」

「トラ、さすがだな。俺も同じ意見だ」

玉座に座っているサロはうなずいた。

「あの……」

「なんだ、キラ?」

「みなさん、健康診断は受けてるんですよね?」

「それがどうかしたか?」

「その時、血液を抜き取りますよね?」

「そうだが、何か?」

「血液から病変を調べられないでしょうか?」

「キラ、大したもんだぜ!」

サロが手を叩いた。

「その意見は貴重だ、ぜひとも実行しよう」

シュクラがうなずいた。

「キラ、名誉挽回のチャンスだな」

トラが言う。

「サロ、今回は通貨の流通は増やせます」

「今回は大量に流通しましょう」

「そうだな。シュクラ」

「通貨に使う鉱物以外の物流をカットだ」

 

第五章

 

病院がこうして作られた。

一般病棟は城下町と一体化した場所に。

そして感染病棟は、町の外に。

サロは人形に命を吹き込む。

配膳、投薬などは人形が行う。

いちいち魔王であるサロが命を吹き込むのは疲れるので魔法を伝授した。

もちろんオロにも伝授した。

ヴォルドにも同じよう一般病院、感染病院に分けた。

感染病院に入院したからと言って死ぬわけではない。

症状が無くなり退院する者も多い。

血液から見つかった。魔法顕微鏡で見たものは信じられないものが映っていた。

「これは、なんだ?」

「さあ……」

「菌ではないぞ」

「鍵のようなものが先端についている」

彼らが見つけたもの、それはウイルスである。しかし「ウイルス」という概念を正式に認識したのははるか後世である。今の魔族や人間には未知の領域であった。

その後、薬は効かないのではなく症状を抑えることによって免疫が付くことが分かった。よって解熱剤などが重要なのと隔離病棟が必要であることも分かった。

それからこの手の『菌』を「鍵菌」と呼ぶこととなった。

 

第六章

 

いざという時のためにわざと魔王城の周りの精霊を魔妖族にしなかったサロ。

これで万が一の時の人口減の対処を行った。

あとは、もう遠方に行って動物を魔族化するしかない。

聞くところによるとこの時期、海の向こうが凍って島が渡れるらしい。

敵の支配が及んでいなければ島に行ってかたっぱしから動物を魔族化するのも手だ。

そうだった。病院建設だった。

自分は王なのだ。魔王だからと言って味方を見捨ててはいけない。

(じゃないと寝首をかかれる)

こうして非感染症患者と怪我の患者は本丸に隣接する城内にある病院に行くことになる。

感染症患者は城外の病院を建設した。

オロが作った人形は本当便利だ。

人形なら感染しない。

幸い数人の魔族が「人形操呪」の呪文を覚えてくれた。魔石を埋め込む必要があるが。

しかも戦闘にも使えそうだ。

サロとオロは人形隊を結成した。

これでパイプラインの警備はもちろん、普段の警備も可能だ。

しかも不審者の画像記録機能付きだ。

サロはまたしてもピンチをチャンスに変えることに成功した。

 

第七章

 

敵の根城を横目にサロとシュクラは高速で空を飛んだ。どんどん東に飛んでいく。

いくら魔族でもこの時期の高速飛行は凍てつく寒さが襲う。サロとシュクラの防寒装備に抜かりはない。

たしかに、この時期遠くに島が見え、しかも氷で覆われている。海を渡れそうだ。

「たしかに」

「どうも敵はここまで及んでなさそうだな」

「どうでしょう?油断は禁物です」

「気候も内陸と変わらない感じだな」

「あれが南端か」

「あれは……」

「島だ」

「いや大陸か?」

「海峡の向こうにさらに島が……」

「しかし、サロここまで来ると遠すぎます」

「むう、しかしここまで南に下るとちゃんと冬でも太陽が出るぞ」

「もったいないが、遠すぎか」

「まずは鳥魔族です。空路でサロ城に戻れる種族から魔族化しましょう」

サロは鳥魔族を増やし、根城に帰った。疫病による人口減少問題はこうして乗り越えた。

彼らが見たもの、それは後に宗谷岬と呼ばれる場所であり後の「北海道」である。

 

第八章

 

「音飛び石を有料販売にする」

「しかも専売だ」

「音飛び石が埋め込まれているラジオは引き続き無料だ」

「サロ、仕方ありませんね、この状況じゃ」

そう、敵の襲撃による停電被害、そして疫病。もちろん疫病に回復魔法は効かぬ。金庫は再びすっからかんである。

「そもそも音飛び石だって中継基地局あるんだしな。でないとラジオだって受信できねーんだし」

「シュクラ、通話料って取れないのか?」

「無理でしょう、いつ、だれが通話したのか音飛び石じゃわかりません」

「水道や電気やガスのようにメーターがあるわけじゃありません」

「そうだよなあ」

「音飛び石本体価格に通話料金込みってことかな」

カラが言う。

「そうだな」

「今まで持ってる人にも申し訳ないけど料金を請求しよう」

「新しく持つ者だけ負担じゃ不公平だしな」

「水晶玉はもっと貴重だけどこれも有料だな」

「音声も聞こえて像も映るしな」

「水晶玉は事実上王城の独占とするか」

「いざというとき無いと困るし」

「で、だれが料金を徴収するかだ。すでに持ってる人のな」

「……」

「そういうことだよ。だから負担は事実上新規購入者のみだ。冒険者ギルドと鳥魔族や羽魔族の物流業務についてる者はともかく」

こうして音飛び石は有料となった。費用は中継基地局の設置と維持の負担費用に充てられた。

—————-
「これがサロが魔族化した羽魔族」

「離せ!!」

屍鬼に連れて来られた羽魔族は物流業務の途中だったようだ。

「大丈夫だ離してやろう」

「離せ」

屍鬼が離す。

チュリュグディは瞬時に羽魔族に向かって波動を出した。

「な……苦しい」

羽魔族は泡を吹き、もがき苦しんで死んだ。

そして生き返る。

「お前は今日から吸血族よ」

「見た目もそっくりだ」

「ふむ、結界石も持ってるな」

「御意……」

羽魔族だったころの記憶は無くなっていた。

「これは……」

「これは魔石の一種では?」

―ミコロ、おい、ミコロ。物が届いてないぞ。サボってるのか?

なんと石から声が聞こえてくる。

「これはいい。こちらも同じものを作ろうではないか」

「「御意」」

 

第九章

 

吸血族は本来昼間行動が出来ない。

しかし太陽が出ないこの季節は自由に動ける。

まして闇装備を完璧にすれば昼間でも動けるのだ。

吸血族はサロ城に入り次々魔族を吸血族にしていく。

そして実行の時はやって来た。

三光魔の1人である戦士キラ。

サロ城はめったにガラスを使わない。窓も石で出来ている。しかし窓は通路側も部屋側も壊され、ドアも壊されていた。周りが気が付くはずだがなんと眠り魔法をかけられていた。三光魔こと残りの2人であるトラもソラもまんまと呪文にかかって熟睡していた。

キラは外に連れ出し、吸血鬼は首に牙を立てる。

その目論見は成功した。

それだけではなかった。吸血鬼はサロ城もヴォルドも城下の情報はしっかりキャッチしたのだ。

キラは根城に連れていかれた。

翌日サロ城は恐慌状態となった。

キラが居ない!!

トラもソラも涙を流した。

———————–

「キラよ、お前も私も姿が変わり果てたな」

声の主はチュリュグディであった。

「この姿でかつてはロロと名乗っていた呪術師と言われてもにわかには信じがたいもの」

「お前にはあえてその装備のままで我に忠誠を誓うのだ」

「御意」

「そうだ、お前にはあるきっかけで記憶をよみがえらせるとしよう」

そういうとチュリュグディは手から波動を出した。だが波動を食らったキラは一見何も変化が無かった。

思わずにやけるチュリュグディ。

(術は成功のようだな)

「お前は吸血の戦士キラとしてサロ城を攻めるのだ。軍勢も与えようぞ」

「御意」

「そしてお前には特別に福音を授けようぞ」

そういうとチュリュグディの尾がキラをそっと巻き付ける。そして先端部分の尾にある毒針を出すとキラに打ち込んだ。打ち終わるとチュリュグディは毒針を尾に仕舞った。

変化は起きた。キラの背中から羽が生じた。キラの羽はまるで羽魔族のような蝙蝠の羽だ。

「我の毒は人間や魔族にとって毒だが既に死した者にとっては福音となる。ありがたく思え」

「ありがたき幸せ」

「それとこれを持っていけ」

「これは?」

「培養箱だ」

「我が発明した」

「魔族や人間の肉を培養できる」

「この肉、人間や魔族に埋めると増殖して人間や魔族を死に至らすもの」

「しかし培養箱に入れると肉や血が増殖する」

「何の役に立つものかと真剣に考えた。屍鬼が飢えないようにすること以外でな」

「吸血族が飢えずに行軍できる道具という事に思いついたのよ」

「これを培養すればいつでも血液を確保できる」

「これさえあれば吸血族をどんどん増やすほど我らの勢力は増す」

「ありがとうございます」

「キラよ。まずはテストだ。サトラ村を攻め、サトラ村の村民全員を吸血族に変えよ」

「御意」

「これを付けるがよい」

「もってこい!」

屍兵らが持ってきたもの、それは吸血族にとって最強ともいえる武器と防具であった。

「これは……」

「吸血族の最高の武器吸魔の鎧、吸魔の兜、吸魔の剣、そして昼間でも移動できるよう闇の面頬だ」

「ありがたき幸せ」

「ではさっそく準備にとりかかります」

そういってキラは謁見室を後にした。扉が閉まる。

「ふふ」

「ふふ、くくくっ」

「ふふふ、くくく、わーっはっはっはっ」

チュリュグディの高笑いが謁見室に響いた。

 

第十章

 

吸血戦士キラは吸血族を少数で連れてサトラ村を襲っていた。

悲鳴と吸血の音はキラにとって何よりの美味。キラも魔妖族の首に牙を立てる。

やがて魔妖族がどんどん吸血族へと変化する。

サトラ村の結界は既に破っていた。

部下のサトラ村攻略完了を聞き、キラはここを足掛かりとする。

と、その時。なぜか涙が出た。

吸血族はめったに涙が出ない。悲しいという感情はめったにわかないのだ。

「キラ様、大丈夫ですか?」

「大丈夫だ。なぜか涙が出た」

キラは己を顔に闇の面頬をかぶせる。キラの表情は冷酷で無表情なものに変貌した。

実はここサトラ村が自分の故郷であったことをキラはもう知らない。キラのもう記憶は消えてしまっている。

なのに、なぜか涙が出た。

骸骨兵は水道も発電所の復旧方法も知らない上に必要も無かった。というよりも設置の意味も分からなかった。これらの施設は破壊され、放置されることとなった。骸骨は水は飲まないし、屍鬼や吸血鬼が求めるものは水ではない。生き血だ。なのに、これらの設備を見てキラはさらに涙を流したのだ。闇の面頬の内側は涙が止まらない。しかし、その涙はやがて枯れ果てた。やがてキラから悲しいという感情は急速に薄れていった。

気概を取り戻したキラは軍勢の前に出た。

「行くぞ、ここを拠点にサロ城へ!!」

「「おお~!」」

「城内に潜んでいる奴と連絡は取れているか?」

「大丈夫です。抜かりはありません」

「中から結界を破ればこちらのもの」

「そうか、次はオキミ村も攻めるぞ」

吸血の軍勢はこうして友の故郷、ソラの故郷であるオキミ村をも攻め、占領した。急襲の連絡を取る魔妖族を真っ先に吸血族にする。もちろんオキミ村の水道も発電所も破壊した。

こうして吸血鬼の数はどんどん増えた。

南方の騎馬民族もすでに吸血鬼になっている。

馬もだ。馬は吸血馬となっていた。

獲物が無い場合は培養肉の血を吸う。実に便利なものだ。これがなければ吸血鬼は行軍すら出来ない。

吸血鬼は万が一太陽の光が当たらないよう全面闇装備である。キラも太陽が出るときは闇の面頬を顔に当てている。

太陽が、沈んだ。キラは闇の面頬を外す。

合図とともにサロ城内の発電所が爆破され、吸血鬼たちが正体を現す。

「今だ、偽の魔王サロを討つ!!」

「「おおお~~~!!!」」

一気に吸血鬼が城内に入っていく。結界はもう中から無効化されていた。

「爆裂斬!!!」

キラの剣は爆風をももたらす攻撃である。次々爆発するサロ城内。

吸血鬼は城内のものどもを次々吸血鬼に変えていく。

キラは己の羽を使って高速で瞬時に移動し次々とサロ城下の民を切り込む。

獲物の首に牙を立て吸血するキラ。

「き、キラ様!?なぜ!?」

(キラ様、だと!?こいつは俺を知っている!!)

キラは吸血を終えた。獲物はどうと床に倒れた。

キラは倒れた獲物に嬉しそうに言った。

「さあな?ただ吸血したいから俺はここを襲っただけだぜ?」

獲物はやがてけいれんを起こしはじめた。死にゆく命を嬉しそうに見つめるキラ。キラの顔は血だらけだがお構いなしだ。やがて獲物は絶命した。しかしかっと突然獲物は眼を開いた。獲物は吸血族となった。獲物はもともと鹿魔族であった。牙が伸びて眼が朱に染まる。

「キラ様、ご命令を」

「本丸を攻めるのだ」

「御意」

「ここが本丸だな?」

すでに門番も吸血鬼化していた。サロ城に先に潜んでいた吸血鬼も集まる。彼らは地下下水道をアジトとしていた。

病院は格好の襲撃場所となった。しかも血液を保管する場所まであった。それは人間だった時のキラが発案した血液製剤所なのだが。キラは記憶を失ったままだ。

「いくぞ!!本丸へ!!」

「「おお~!」」

敵を吸血すればするほど味方はさらに増えていた。

(こいつらは俺を知っている。なぜだ)

吸血鬼は本丸をどんどん攻略していく。

吸血鬼を殺すには聖属性魔法で消滅させるしかない。

いつのまにか死んだと思われていた吸血鬼がむくりと起きる。貫かれたはずの胸の穴が埋まっている。

そして吸血鬼たちの牙の餌食となり、敵に回るのであった。

4階の部屋を見てまたなにか心に突き刺さるものがあった。

それは三光魔という高位の官僚の部屋だという。

「うっ!!頭が……」

「大丈夫ですか、キラ様!!」

そう、その部屋は三光魔時代のキラの部屋だった。

「キラ様、危ない!!」

突然、人形がキラを切りつけて来た。キラは攻撃をかわし、別の吸血鬼が人形兵を葬る。

「油断も隙もねえな」

キラは部下の吸血鬼たちに支えられ、部屋を後にする。キラたちはこうして1階から5階までを制圧した。

キラは1階の謁見室までまで戻って来た。

「情報に間違いないのだな」

「はい!!」

「2階の魔王の執務室も副官の執務室も四天王執務室も人がおりませんでした!」

「このレバーを下に引くのだな」

キラが引くと謁見室の後ろの玉座が轟音を立てながら階段が現れた。

「四天王も副官も偽魔王もここだな?」

階段の下は闇が広がっていた。

「おそらくは」

「行くぞ!!最後の決戦だ!!」

「「おお~!」」

吸血鬼たちは地下に突入した。

(地下に行けば俺は誰なのか分かるのではないか?)

どんどん地下に突入する吸血鬼を見ながらキラは別の希望を抱いた。

<第六部 終>

 

第七部

 

序章

 

「来るぞ、いいか?」

「人形兵が送ってくれた画像見て奴の姿分かっただろ?」

「かつての友と思うなよ。奴はキラじゃない。吸血鬼だ」

「サロ、わかった」

トラが言う。

「キラはもう死んだんだよ」

ソラが答えた。

オロ、戦力が1人かけてしまった。君はこの玉座の前で俺と戦ってくれ」

「わかった」

「カラロ、カラ、頼んだぞ」

「カラは地下2階の大広間」

「おう!」

「カラロは地下3階の大広間」

「うむ」

「……死ぬなよ」

「俺様が死ぬわけねーだろ」

「この爪で奴を葬る」

「トラップ発動!」

「「トラップ発動」」

するとなにやら不気味なあぶくの音や電気の音がした。

「生き残った軍隊にも言う」

音飛び石に向かってサロは言った

「死ぬなよ」

返事が返って来た。

「「おお~~~!!」」

「トラ、ソラ」

「万が一俺の本性見てもこれまで通り接してくれよな」

「少々、醜い姿だけどな」

「分かってるよ」

「聖属性魔法で彼らを葬ります」

「シュクラ」

「サロ…‥」

「的確なアドバイス頼むぞ」

「承知」

「行くぞ、生きるか、死ぬかだ」

 

第一章

 

「くそっ!開かねえ!!」

「この向こうに人間と魔族が居るのは確実なんだがな」

金庫を開けるのは諦め、地下2階に向かおうとする。

残った魔族の首にを次々牙を立て吸血鬼化する。

吸血鬼らは地下2階に進んだ。

大軍勢となった吸血鬼らが見た光景は電気トラップに毒トラップであった。

「行けないぞ!!」

無理して渡ろうとすると電撃により動けなくなる。既に死んでるのでこれ以上死ぬことは無いが電撃のショックで体がどんどん焦げていく。

「今だ!!」

カラが地下2階の大広間で号令をかける。

サロ軍は一斉に聖属性魔法を唱えた。

所詮彼らはアンデッドである。どんどん利いて呻き苦しみなんと消失していくではないか!!

「毒トラップにも聖属性魔法をかけろ!」

彼らはアンデッドのため毒攻撃が利かない。しかし毒に聖属性を付与したら……?

どんどん吸血鬼は消失していく。

吸血鬼の中には同僚、友人も含まれていた。

「許せ……」

(これなら勝てる)

そう思っていた。甘かった。

なんと吸血鬼は浮遊魔法を唱えていくではないか!!

後から吸血されて吸血鬼になった者はともかく元の軍勢には浮遊魔法を唱えられるものが居たのだ。電撃トラップも毒トラップも乗り越える。

聖属性魔法で消えゆく者も多かったがなにせ数の暴力である。

残り少ない軍勢もどんどん吸血鬼の牙にかかる。

「吸血鬼になる前に聖属性魔法で殺せ!」

(だめなのか)

(これまでなのか……!)

「お前ら3階に下がれ!!」

「呪術師兵、お前だけ残れ」

「万が一俺が倒れたら吸血鬼になる前に俺を殺せ!!」

カラが命令する。

「来い、四天王カラが相手だ!この闇熊の爪でお前らを葬ろうぞ!!」

カラは特攻した。吸血鬼は次々倒れる!!

さらに呪術師兵の聖属性魔法によってカラが倒した幾人もの吸血鬼が消えた。

だが。

風が吹き抜けたかと思った。

しかしそこには剣が。

自分の胸に剣が。

キラだった。

「死ね」

「虎牙斬!!」

なんとカラは上から、次に下から真っ二つに切られた。虎の牙の如く。

断末魔が地下迷路に響く。カラだったものが2つに割れた。血しぶきが上がる。

さらに呪術師兵の首に牙を立てる。呪術師兵は死にやがて吸血鬼となった。

「お前ら、地下3階に行くぞ!」

「「おお~!」」

カラだった屍を乗り越えて吸血鬼らは地下3階に行く。

「四天王カラ、破れたり」

キラはカラに礼をすると地下三階に降りた。

 

第二章

 

地下3階に吸血鬼軍は到達した。

今度は溶岩トラップであった。

早速浮遊魔法ができる吸血鬼が友軍に浮遊魔法を次々唱える。

しかし、この個所は下からマグネットの魔法効果も付与されていた。

「ぐああああ!」

溶岩で溶ける吸血鬼。さすがの不死の吸血鬼も聖属性魔法を喰らわずとも死ぬ。

(カラ、死んでしまったか)

(軍隊がここまで来たということはカラは…‥)

「今だ、聖属性魔法を奴らに浴びさせろ!!」

カラロの号令で一斉に聖属性魔法を唱えるサロ軍。吸血鬼はここでも多数が命を落とし「浄化」された。

「どけ!」

キラは羽を使って高く飛ぶ。天井ギリギリまで飛んで一気に高速移動する!!なんという無謀な行動。しかしその無謀な行動は吉と出た!

溶岩トラップもマグネットも高速空中移動の前には無力。キラは聖属性魔法攻撃を潜り抜ける。万が一正面に来た聖属性魔法は刀で切り返した。

「風神斬!!」

キラはサロ軍を一気に切りつける。

「蛇牙斬!!」

まるで蛇がうねるかのごとき一撃。腕や足を失うものが大勢いた。

呻き苦しむ敵軍を見下しながらキラはレバーを降ろした。なんと溶岩が引いていく!!

そして敵軍の先に居た者……。

「お前も、四天王か?」

「おうよ!俺の名は鳥魔族のカラロ!四天王が一人!!」

キラはその声を聴くとまるで飢えた獣ような声で喉を鳴らす。

「燕返斬!!」

(なっ!!予測できなかったぜ!!)

キラは急に反転しカラロを斬った!!

カラロが呻く。

吸血軍の軍勢が到達した。カラロを吸血鬼にしようとする。

「やめろ!!」

キラは援軍を制止した。

「お前は吸血鬼にはさせぬ」

「せめてもの情けだ、受け取るがいい」

キラの願いはカラロの胸に届いた。届いた願いを引き抜くキラ。

カラロの胸は破れ頬が膨れ血を吐いた。崩れるようにして倒れるカラロ。

(やっぱ強ええよなあ。さすが勇者のお供の戦士だぜ)

「さすが……だぜ。勇者様の……戦士よ」

「勇者様の戦士?どういうことだ!」

「さあ……な?答えは地下4階にある……じゃ……ねえの?」

「強いや……つと戦えて、幸せだっ……た」

言切れた。

吸血鬼はもう15名ほどしか居ない。

「地下四階に行くぞ!!」

キラはカラロの屍に頭を下げてから階段を下る。

 

第三章

 

「ここが地下四階」

「何もないぞ」

吸血族が灯魔の魔法を唱える。紫色の炎がダンジョンを照らす。

「周りは水が溜まってるだけだ」

「広場も誰も居ない」

「ここは、祭壇のようだ」

「直近で使われた形跡はない」

そして、彼らが見たもの……間違いない。謁見室だ!!ここが真の謁見室なのだ!

闇の面頬を付けて聖属性魔法を唱える者、エルフの長のような姿の者、青年呪術師、キラに劣らぬ勇壮な顔つきの青年戦士、そして玉座に居るのは毒々しい緑の皮膚を持つ青年。

友軍はあっという間に消えた。吸魔の剣で跳ね返さなければ自分もここで消滅してたことだろう。

「久しぶりだな、キラ」

「俺は勇者トラ、お前と一緒に冒険したことを後悔するぜ!」

(何!!)

「僕は呪術師ソラ。僕も一緒に君と冒険して来た。残念だよ。君が死んで亡者になるなんてね」

「我は魔王の副官シュクラ」

「もう君の軍隊は居ない。君以外全滅だ」

シュクラが冷徹な声で言う。

「我は四天王が一人、オロ」

「その証拠に援軍は来ない」

闇の面頬を付けて全面闇の福音に守られた者が吹雪の声で言った。

「残念な知らせだけどヴォルドは我々の軍隊によって守ることに成功したよ」

玉座に座った者が言う。

「我こそ、魔王サロ」

「もう一つ残念なお知らせだけど地上に居る君の軍隊は殲滅した」

「ミサラスから来た援軍をなめてもらっては困る」

「ばかな……」

「吸血鬼を増やせば増やすほど我らの勢力は増えるはず」

「でもこうして死魔消滅の魔法唱えたら、ね」

ソラはキラに向かって死魔消滅を唱えた。キラは吸魔の剣によって魔法を跳ね返し無効化する。

「俺がお前たちの仲間だった、と」

「残念だなあ、覚えてないのか」

勇者が残念がる。

「じゃあ、始めるか、宴を」

サロは嬉しそうに言って玉座から立ち上がった。

 

第四章

 

「死霊斬!!」

キラが放つ剣は一斉に死霊をまとわりつかせる恐るべき剣である。

「爆裂斬!!」

爆発で玉座が吹き飛ぶ。サロは余裕でかわした。

キラは傷を負うもののすぐに回復していく。さらに小さなパックで血を飲み干し、体力を回復させる。

吸血鬼独特の威嚇で高速で移動するキラ。

そしてトラやソラに切りつける。

5対1だというのに全くの互角、いやそれ以上だ!!

「闇黒呪!!」

サロが呪文を出す。

一瞬にして殲滅するはずの呪文が効かない!!

「あいにく、俺も闇の者なんでね!」

「虎牙斬!!」

カラを葬ったキラの剣術がシュクラに炸裂する。

シュクラは膝をつく。後一瞬回復魔法を唱えるのが遅かったらシュクラは死んでいた。

「風神斬!!」

オロの闇の面頬がズタズタに切り刻まれる。闇の面頬は鱗が剥がれるように落ち、オロは素顔を晒した。

シュクラは回復魔法を全員に唱える。致命傷とまでも行かなくとも全員が相当の傷を負った。

トラもソラも満身創痍だ。

「死ね!」

勇者トラに剣が向かう。慌ててサロが獄焔呪を唱える。

キラは業火を高速でのけぞりそのままなんとサロの脇腹に剣を刺した!

(手ごたえあり!!)

だが、血が出ない。キラは剣を引き抜いた。

「やめろ!」

「友を傷つけて、何がおもしろいんだぁぁぁぁぁぁ―!」

サロの怒りは爆発した。どんどんサロの体が大きくなり緑の血を流しながら腕がさらに2本生えていく。サロの腕は4本になった。尾がどんどん巨大になっていく!!

「第二形態だ」

シュクラが懐かしそうに言う。

「これが俺たちの主君の第二形態」

勇者は頼もしそうに、同時に恐怖を覚えた。

もう勇者も呪術師もオロも副官も立ち上がることすら出来ない。

「おまえら、下がってろ!!」

声もどす黒くなった。

そう言って4本の掌から爆裂呪を唱える。なんと4倍の威力であった。

尾でキラをなぎ倒し、拳で叩きつける。キラは壁に打ちつけられた。

キラは血だらけであった。

キラの体はそれでも修復を開始しようとしている。

サロは巨大な腕でキラを拾い上げた。

「あれ、ここは……」

「俺はいったい何を?」

「お前、気が付いたのか?」

「ここは、地下の真の謁見室」

「俺は……」

そしてキラは察した。自分の牙は禍々しく伸び、翼も生えていることに。

自分は、もう人間ではなくなってしまったのだということを。

「うがあぁぁぁぁぁぁぁぁ!」

頭を抱えるキラ。

「ようやく気が付いたようだな」

サロが言う。

「俺は魔王チュリュグディ、かつて呪術師ロロと名乗っていた奴、そう、あいつだよ。あいつに高位吸血鬼としての命を吹き込まれた」

「そしてせっかくサロに奪還してもらった故郷を襲い、村人を吸血鬼にした」

サロはあまりのショックで思わずキラを降ろし手を離した。

「「ばかな!!」」

「「ロロだと!!」」

「俺に魔王の仮面をかぶせた呪術師ではないか!!」

「俺が勇者になった時にいろいろ伝授した呪術師!!」

「なるほど……」

血だらけのシュクラが立ち上がった。

「すべては、彼が裏で糸を引いていたということだ」

「彼が思い描いた台本通りに行かなかった」

「だから彼は自分で魔王になった」

「そうか……」

突然高笑いしたキラ。

そして涙を流す。

「魔王様」

キラはひざまついた。

「どうか、私めを殺してください」

「キラ、俺はうれしいぜ」

「だってこんなに戦うことが楽しいなんてな」

「そしてやっぱ勇者らを引き入れて正解だったよ」

「お前1人だけでもこんなに強いんだからな」

「勇者3人と戦ったら、俺は死んでたな」

「いい戦だった。ありがとう」

「お前の罪、焔で浄化してやる」

「ありがとう……」

キラは涙が止まらない。キラの顔は感謝の表情であった。

サロの4つの掌から閃光の珠が生まれる。

「獄焔呪!!」

キラは炭のような姿になった。

それでもキラの体は修復が始まっていた。

(これが、吸血鬼……)

「ソラ!!死魔消滅だ」

ソラは泣きながら最後の力を振り絞って死魔消滅呪文をキラに与えた。

キラの体がまるで小さな星粒に分解しながら消滅していく。

「終わった」

そのまま意識を失い倒れるソラ。

「ごめんよ……」

そう言いながらどんどん自分の体が縮小していくことが分かった。サロは元の第一形態に戻っていく。2本の腕がわきにどんどん戻っていく。尾は小さくなる。敵を倒すとどうもこの体は第二形態を解除するようだ。

キラだった者は焦げ付いた吸魔の鎧、吸魔の兜、吸魔の剣、闇の面頬だけ残っていた。もう鎧も兜も剣も面頬も元の原型をとどめていない。

「みんな、死んじまったな」

「キラもカラロもカラも、敵の兵士も、自軍も、民も弔うぞ」

「サロ、ここで立ち止まっては……いけませぬ」

「うがっ!」

脇腹を抱えながら話すシュクラ。

「分かってるぜ、でもそれじゃお前も戦えないだろ」

「この調子じゃ、次こんな敵が来たら今度こそ終わりだ」

「体を回復したらこちらから攻めるぞ、軍隊無しでだ!」

「シュクラ、オロ、ソラ、トラ」

「一緒に魔王討伐の旅に出るぞ」

「5人でだ」

「副官代理は犬魔族のケン、あいつにしよう」

「ありがとう」

トラが答えた。

「幼馴染として、うれしい。ありがとう」

オロは思わず泣いた。

「光栄です」

シュクラは頭を下げた。

「ソラ、寝てる場合じゃねえぞ」

サロは二の腕でソラを抱える。

こうしてサロたちの真・魔王討伐の旅が始まった!

 

第五章

 

サロ城は見るも無残であった。

とはいえ地下一階に逃げた人が少ないとはいえ居たのが救いだった。

必死に国民は発電所を作り上下水道を作り直し電線も作る。

ソラは翌日目を覚ました。

生き延びた者の傷は深かった。

葬儀も頻繁に行われた。

四天王カラと四天王カラロの葬儀も……。

そして四天王最弱と言わねばならない密儀も。

キラの葬儀はひっそりと行われた。地下2階にあった勇者の装備を保管してあった場所に墓を作った。

キラを恨む人は多い。ゆえにとても地上に出すわけにはいかなかった。とはいえ遺体はもうなく聖属性魔法で消し去ったので遺品しかもうない。もう原型をとどめていない遺品を納め、墓を作った。

「汝 この城を攻めし者」

サロが言う。

「汝 誠の勇者なり」

シュクラが言う。

「安らかに眠れ」

オロが言う。

「お前はもう戦士じゃねえ。立派に勇者だ」

トラが言う。

「ロロを絶対倒してやるからな」

ソラが言う。

墓碑には『吸血の勇者 ここに眠る』とある。

今回は冒険者ギルドも通さない。

そもそも冒険者ギルドは4人までなのだ。

犬魔族のケンがやってきた。

「ヴォルドも大変なのに、済まない」

「いいえ、魔王様のご命令をあれば」

「ここを、副官代理として勤めてほしい」

「カルの死から1年がまもなく経つ、副官代理を終えたら、お前がカルの後の四天王だ」

「ありがたき幸せ」

「水晶玉で毎日確認するぞ」

「正直、この状態で国を後にするのは心苦しい」

サロ城もヴォルドもようやく電気が通り水道も復旧したばかりであった。

まだまだシベリアの地は凍土である。城門を開けると寒さが襲う。

「この寒さで行軍すれば空を飛べる私とサロ以外、困難です」

「そこでだ、この旅客用の籠を徹底的に防寒対策を施した」

「小さいが、窓もあるぞ。開かないがな」

「サロ、さすがです」

「俺とシュクラがが鳥魔族の役目を負う」

「行軍中は徹底的に回復に努めろよな」

「奇襲をかけるんだからな」

「「はい!」」

5人は空を飛んだ。

国民に見送られ、彼らは出発した。

キラの奇襲を受けて一週間後。

いよいよ今度はこちらが攻撃する番となった。

 

第六章

 

サトラ村、オキミ村を三度奪還した。しかしもう精霊もほとんどおらず、村というには苦しい状況となった。さすがに発電所と水道は復旧したが。サトラ村の住民は2名、オキミ村の住民は2名となった。

ここを拠点にする屍鬼や骸骨兵、吸血鬼がサロ城をもう一回攻めたらひとたまりもない。予防策は打っておいた。サトラ村、オキミ村を攻略しながら体力を回復させる。傷は癒えていた。

「オロ、あと少し遅かったら顔に傷跡が残ったぞ」

「サロ、心配してくれてありがとう」

「お前にまで何かあったら!」

「もう何も失いたくない!!」

そういってサロはオロを抱きしめる。

「ありがとう……」

「これ、新しい闇の面頬」

「付けてみて」

するとオロの顔にぴったり付いた。声も変わった。前の闇の面頬と全く同じだ。

「明日、いよいよ魔王城の攻略だよ」

「うん」

「生きて帰ろうな!」

「帰ったら言いたいことあるんだ」

(えっ?)

————————-
翌日

そしていよいよ敵の城に乗り込む。

「これが、魔王城」

「ずいぶんとサロ城よりも魔王城してますな」

暗雲が立ち込め雷が鳴っていた。

「結界!!」

「入れないぞ!!」

結界を壊す魔法を唱え結界を壊す。

サロらはさらに門番を倒し、門を開けた。

「ばかな!!」

そこはサロの故郷タム村だった。

「サロ、おかえり」

「あら、オロも」

「あらまあ、お友達をたくさん連れて」

近所のオキマおばさんだ!

城壁もある。天井もある。しかし村の配置はサロの人間時代の故郷そのものだ!!

「俺の、こ、故郷!!」

「人間時代の故郷だ!」

「おとうさん」

「おかあさん」

そこに居たのはサロの父と母であった。

なんとオロのお父さんにおかあさんまで!

オロは闇の面頬を取って頭を下げる。

「おかあさん!」

「よく頑張った」

「お前の旅はここで終わるのよ」

「魔王として生贄になった試練の旅はここで終わるの」

「おまえの試練の旅も終わるの」

「サロ、オロ!!一旦街を出るんです!!」

「シュクラ、でも」

「サロとオロを城門の外に出すぞ」

3人がかりでサロとオロを連れ出す。

「サロ、オロ。見てください。」

「あの、塔」

「光が……」

「おそらく幻影作ってるのはあの塔!!」

「あの塔から攻略するべきです」

「そうだな、ここに俺の故郷があるわけない」

「ごめんよ、みんな」

サロが頭を下げる。

「ごめんなさい」

オロも頭を下げ、そして闇の面頬を付ける。

「敵もなかなかだな」

トラが言った。

「それとこの城の1階から2階に上がる階段が無かったよ?」

ソラが言った。

「幻影を壊すと階段が現れたらいいがな」

「塔の攻略に行くぞ」

「「おお!」」

 

第七章

 

塔に居たアンデッドはもはや敵ではなかった。城に向かって発射している魔石を壊す。

そしてもう一回城内に入った。

「なんだよ、これ」

「どういうことだよ」

それは確かにサロやオロの故郷に似たものであった。

しかし、そこで蠢くのは精霊体であった。もうサロの力でも元に戻すことが出来ない。なぜなら、その精霊は一回死んだ者の肉体を宿した精霊だからだ!

もう会話も出来ない。

「まさか……」

「俺の故郷は……」

「もちろんサロ城に行った人やニュータウンに行った人もいるんだろうけども」

「おそらく。アンデッドにもされずここで生活させたのでしょう」

「ない。ないぞ」

「上に行く階段がない!!」

そんな時、精霊らが集まってなにやら示した。

「仮面が収められてる家……」

60の仮面が収められている家であった。

地下に行くと仮面の替わりに杖があった。

先端は碧眼、碧腕、隻手で赤竜の魔神像の杖。

「あ、また精霊が示している!!」

「今度はどこを紹介するんだ」

魔神像の杖をもって示したのは2階から光が出ている場所だった。

「まさか、これはアンデッドだけしか使えないのでは?」

魔神像の杖をサロがかざすと5人は白い光に覆われた。

「まさか。この状態でこの光を浴びると……」

トラが言った。

トラの言う通りなんと2階に出た!!

2階にはアンデッドたちの部屋がある!!

アンデッドたちが攻撃するも5人の敵じゃなかった。

今度は階段もある!!

3階、4階と上がっていく。

すると巨大な部屋に出た。巨大な部屋に祭壇も設けられている。謁見室だ!!

「サロ、オロ、トラ、なんと懐かしい」

そこにいるのは真紅の巨竜!!

 

第八章

 

「おまえらの実力、実に惜しい」

「どうだ、我の片腕とならないか?」

「断る」

「お前はもう終わりだ、ロロ!」

「なんせ、アンデッドはもう俺たちがほんと消滅させたんだからな」

その言葉を聞くと高笑いした。

「何を言うかと思えば」

「生きてる人間や魔族なんて世に無限大に居るではないか」

「ならば生きてる人間を骸骨や屍鬼に変えればいいだけ」

「それに我の名はロロではない!」

「我の名はチュリュグディ!」

「この地を統べる真なる神よ!」

咆哮が城に響き渡る。

「知らんな、そんな名前は。お前はただの醜い呪術師ロロでしかない」

こうして戦いが始まった。互いに強烈な爆発魔法が繰り広げられる。

城壁が壊れ、床が陥没した。

巨大な尾がサロを叩きつける。

トラが光壁呪を唱え衝撃をやらわげる。

業火の炎が口から放たれる。

いくら斬っても電撃魔法や爆烈呪を唱えても、ほとんど傷がつかない!!

何十回目となったであろうか、トラがとうとう片腕を切り落とした!!

「やったぞ、こいつは不死身じゃない!」

「こいつはアンデッドなんかじゃない!!」

「その証拠に死魔消滅の呪文は全く効かなかったんだしな」

しかしトラの希望を打ち砕く。

なんとさらにロロの体が巨大化し片目を吸収しながら眼は巨大化し、片方の腕は巨大化する!!

「くかかか!」

「ある意味我は不死身。我が傷つけば傷つくほど我の体内にある魔王の魔石によって進化するのよ!」

巨大な腕が城を叩き潰す。

5人はとうとう1階にまで落ちた。

サロが壊れた城壁に叩きつけられる。

「お前なんか『魔王』の名に値しねえんだよ!!」

そういうとサロもどんどん大きくなり腕が2本生える。第二形態だ。

「そうこなくては」

「さあ、本気を出してくれサロ」

「我が欲しいのはサロとトラの体内にある魔王の魔石」

「それさえあれば世は我のもの」

「お前なんか魔王の器じゃねえ!!」

巨大な尾と尾がぶつかり、牙で応酬しあい、魔法がたがいに炸裂する。

「回復を頼む、俺の後ろにいろ!!巻き込まれるんじゃねえ!!」

その時巨大な片腕がサロに炸裂する。槍のような指先になっていた。

「がああああ!」

黒い悲鳴があがる。

サロは思わず体の防御反応を起こした。

尾はさらに大きくなり額には眼が生じ背びれが生じる、緑の鱗が覆う。

「なんてことだ。第三形態になった」

「これがサロの最終形態」

それは緑の竜-!

「魔王ってのはな!!」

4つの拳が次々ロロの体に炸裂する!

「魔族や人間のことを思って」

尾がロロの体をなぎ倒す!

「支配する王の事をいうんだよ!」

4の掌から爆裂呪を放つ。

そしてサロの口腔から閃光がたまる。

「お前ら、なるべく地下に潜れ!」

サロは吐き出した。

閃光は巨大なクレーターを作る。

チュリュグディことロロがほんの少しであるが溶けていく!!

サロは閃光を放ち続ける

地面を掘る呪文をソラはとっさに唱え、爆風から4人を守る。

「ばかな!我の体が!!」

どんどんチュリュグディの体が溶けていくではないか!!

どんどんチュリュグディだったものが崩れていく!!

そして肉塊から姿を現したものは、ロロ!!

人間のロロに戻ったのだ!

「不幸は終わらせる!!」

巨大な拳でロロを何度も叩きつぶす。
もうロロだったものは跡形もない。

ロロの体から魔王の魔石が2つもあった。

サロは閃光で魔王の魔石を破壊した。

「終わった」

そういうと巨体のサロもどんどん体が小さくなっていく。

そしてなんと魔王の体ではなくなんと人間の姿に戻っていくではないか!!

「俺は……」

「この姿は、人間の時の……」

そう言って崩れ落ちた。

仲間がサロのもとに集まる。

「「サロ!!」」

 

第九章

 

サロは目覚めた。

「ここは……」

「サトラ村だよ」

オロが答える。

「ぼくは‥…」

「ああ、やったんだ。ロロを倒した!!」

「だけど僕が人間に戻ったという事は……」

「そう、もう体内にある魔王の魔石を使い果たしたということです」

「定期的に人間を喰わないと魔王の魔石は強大なエネルギーを使うと消滅すると聞いていたんですがまさか本当だとは」

「俺って、もう魔王じゃねえんだな、シュクラ」

「もう魔族化する能力も、それどころか初歩的な魔法も唱えられません」

「そうか」

「そいつはいいや。俺退位する」

「だって、魔王じゃねえんだからな」

「オロ、お前に伝えたいことがある」

「一緒に、一生共に生きたい」

「ダメかな?」

「……」

「ありがとう」

「もちろんよ!」

こうしてサロたちはサロ城に向かった。

人間としてのサロを始めて見る民や兵士は驚いた。

速やかに魔王の退位を行う。

魔王の位を授かるのはシュクラであった。

「サロの偉業を引き継ぎます」

四天王は犬魔族のケン、鹿魔族のギン、熊魔族のポポラ、魔妖族のサーシャが任命された。

そう、オロも四天王から正式に降りると宣言し、新たな魔王となったシュクラに認められたのだ。

サロ城は戦勝祭りで大賑わい。

花火が上がり人々が踊る。

その翌日。

「本当に行くのか」

「うん、故郷を目指す」

「2人で故郷を再建する」

「いつだって会えるよな」

「会えるよ」

「せっかくだ!!サロの故郷も街づくりするか!!」

シュクラの声に城内は一斉に声をあげた。

廃墟同然のサロの故郷。

サロは2人でこの村に住む。

サロもオロもまだこの時13歳。

翌年、儀式を終え成人すると同時に婚姻の儀も行われた。

サロとオロはこの地で静かに幸せに暮らしたという

<魔王の仮面 終>

 

その後

 

魔族が築いた文明はシュクラが魔族化する能力を持ってないため徐々に衰退した。

持っていた文字は失われ、シベリアの諸部族は元の原始生活に戻る。

そしてサロもオロも天寿を全うし、あの世に旅立った。

サロの魂はなぜか天高く昇って行った。

天界に居たマンモスに魂が吸収されていく。

「ありがとう、サロ」

「これから創世神サロとして天界を見守ってくれないか」

声の主は創世神ジャブダルであった。黄金の光の竜!

「はい、よろこんで」

エヴェンキ族の神話に登場する蛇の神ジャブダル。

マンモスと共に世を作ったとされるがマンモスの名は知られていたい。

しかし凍土の中から発見された女真文字によってマンモスの名前はサロという事が分かった。

そしてサロの冒険譚も、魔王の仮面の話も後世に伝わったのだ。

 

あとがき

 

いかがでしたでしょうか?

今回マイナーなシベリア神話を舞台にファンタジー作品を書き上げました。

シベリア神話は動物と人間の境があまりなく動物の魂は人間に、人間の魂が動物に生きてる間でも転生するという世界観です。熊の毛皮を着て樹の周りを三回周ると熊人になるなど独特の世界観を持っています。

またエヴェンキ族の神話に登場する創世神にして蛇の神ジャブダルとなぜか名前が欠けてる創世神のマンモスの正体とは何か。それをエンターテインメントの中で表現することに成功しました。

この作品をきっかけにシベリア神話が広く日本に普及することを願い、この物語を終えたいと思います。

読者の皆様、本当にこの作品をお読みくださいましてありがとうございました。

 

2020年8月28日公開

© 2020 lantan2015

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