路地裏、

途中の人間(第17話)

siina megumi

小説

1,689文字

母 ナデカ
息子 デン

この親子の「シゴト」は、この世に不要で無価値になってしまった人間を、社会的に追い詰め自殺させることだった。

向こうの方にあのパチンコホールがあることは、無論デンも分かっていた。そんなものはデンにとってどうでもよく、むしろ多少気に障るという程度のものだった。そこでわざわざ立ち止まるワケは何一つなかった。もっと向こうの方から、確かにデンは何かを感じ取る。そこにこそ居場所があるだろうと思えた。では隣を歩いているこの人物は何なのか。母と二人で歩いているこの位置が、自分の居場所ではないのだとしたら。デンは何処かへ帰っていく。それだけがデンの確信だった。未来へ帰っていくのだ。デンはそういう人物だった。その場所まで、ナデカがついてくることは出来ないだろう。その未来にはナデカはもう居ない。だが、ナデカは取り残されるのではない。その時、もうナデカは別のところに居るのだ。未来ではないところで、ナデカにはしなければならないことがあるようだった。

 

デンは思った。いつ死んでもいいし、永遠に生きてもいい。

 

見上げた。どこまで見渡しても、建物がいくらでもあった。

 

だから、結局のところ、感じるのだ。まったく別のところに居る、言われてみれば自分の居場所はそこだったような場所で、焦ることなく居る自分の様を。ナデカが導いてくれているのではないかというのが、今のところの考えだった。ナデカにはそんなことはどうでもいいのだが、しかしナデカはその場所へ向かっている。デンはそこは確信があった。だから自分は着いて行っている。それだけだった。

 

ナデカ「よくわたしから離れようとしないねデンは」
デンは半ば冗談だと受け取ったらしく、
デン「あんたから離れてどうするんだ。あんたに自殺させられるだけだろ」
ナデカ「いや放っておくだけでデンは自殺するでしょう?」
デン「・・・」
(何が言いたいんだ)とデンは思う。
ナデカ「ショウみたいなやつはわたし達を憎ませないと自殺しないけどね。ショウみたいなのは漫然と無欲に生きてるから」
デン「信じられないしまさかとは思うが、それは俺を褒めてるつもりなのか?」
ナデカ「? ただ言っただけだけど」
デンに、強烈に呆れる感情が湧いた。
ナデカ「誰もがそう。自殺するとき、全身でもってわたし達のせいにしながら死んでいく」
デン「実際俺とあんたで自殺させてるんだから、そうなんじゃないの? 知らんけど」
ナデカ「自殺するのは、当人がこの世の住人に成りきれなかっただけなんだけどね。住み家を見つけられなかっただけ。でも自殺するのにも理由とか原因が必要で、それをわたし達に押し付ける」
デン「わたし達じゃなくて、あんたな」
ナデカ「気づいていると思う?」
というのはおそらく『この自殺させていく活動をデンとナデカがしていることを、当の自殺者達は気づいているだろうか』という意味で言ったのだろうとデンは思ったが、一応聞きなおす。
デン「何が?」
ナデカは考えている。
ナデカ「自殺はするものじゃなくてさせられるものだということ」
デン「はぁー。どうでしょうーねー」
ナデカ「前回のolからは感じた」
「今回の話はいいのか」とデンは言おうとしたが、もう黙っておいた。
ナデカ「でも何のつもりなんだろうね。わたし達を憎んで自殺までして、そこまでして望んだものって何だろう。ちょっと不思議だな」
デン「そんなの明らかやん」
ナデカは少し驚く。
ナデカ「へぇ。ちなみにそれは? 言ってみて」
決まりきったかのようにデンは答える。
デン「あんたが居ない世界だよ」
ナデカ「わたしは永遠に居るよ」
デン「永遠には居ない」
ナデカ「永遠に居るよ」
デン「あんたは世界に取り残されるからな。おそらく」
ナデカ「人類が迷子になるだけ」
デン「まぁどうだろうかね」
ナデカは静かに笑顔だった。それで話すことはなくなる。

 

ショウはいつもの路地裏を歩いていた。家とギター教室の往復の通路。奈央と同じ時に面接を受けるということを聞いた。今社会とは、個人を孤絶するためだけにある。人生などというものは端からない。人間はただ都市に捨てられるだけだ。だが本物の人生は何処かにあった。目の前の予感はそれだけだった。傍にオープンテラスの店がある。入る。

2020年5月9日公開

作品集『途中の人間』第17話 (全21話)

© 2020 siina megumi

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