手から力を(五)

手から力を(第5話)

海老川文香

小説

1,857文字

公園についた雄大と紗香。
物語が始まっていく。

公園に着くと、入り口には色とりどりの花で飾られた大きな花時計があった。その周りには、蜜蜂が一生懸命に花粉を集めて足に花粉玉を付けている。家族はいつもこの後に食事を取る為に右に曲がるが、僕は早く左の広場で昆虫採集したかった。僕はお母さんにお願いをする。
「駄目よ!まずは家族で過ごすの!さぁ、ご飯を食べにいきましょう。」
と言われて腕を引っ張られてしまった。紗香は既に右へ曲がり、広場にある屋台に駆け出していた。僕たちは海浜公園に来るとまず「魚(ぎょ)ロッケ」を食べる。この辺りで取れた魚をすり身にしてコロッケのように揚げたものだ。
熱々のかまぼこの様な食感で、周りにサクッとした衣が付いていてとても美味しい。「ギョッとする美味しさが」がキャッチフレーズだ。
そして一番のおすすめは魚ロッケにタルタルソースをかけてパンに挟んだ魚ロッケバーガーだ。熱々の魚ロッケの弾力感と卵の濃厚さとピクルスの爽やかさが香るタルタルソースの相性がとても美味しい。お父さんなんて魚ロッケバーガーを二つぺろりとたいらげてしまう。僕たちはいつも通り芝生にシートを引き、みんなで魚ロッケバーガーを食べた。僕は熱々の物を慌てて食べたので、舌を火傷してしまった。
僕は誰よりも早く食べ終わり、みんなが食べ終わるのを今か今かと待っていた。

「さぁ、行くか。」
とお父さんが合図をすると
「お母さん、行っていい?」
僕はお母さんにお願いした。すると
「ゆう、ちょっと今日はお父さんとお母さんで行きたいところがあるから、ジャンプ広場でさやと待っててくれない?」
とお母さんが困った顔をした。
「えー!」
僕は思い切り嫌な顔を表に出した。

「まだ13時だからいいでしょ?少しの間だけよ。終わったらゆうの好きなとこへ行っていいから。」
条件を突きつけられて僕は仕方なくうなづく。両親と離れて僕と紗香はジャンプ広場に向かった。
遠くからお母さんが
「ゆうー!お母さんの携帯電話持ってるでしょー?」
と大きな声で聞いた。僕は両手で大きな丸を作った。

 

紗香はジャンプ広場の真ん中のジャンプピラミッドの上で跳ねていた。
ジャンプピラミッドはその名の通りピラミッドの様に大きく、真ん中に大きな棒が突き刺さっている。その棒から下に360度ゴムの布が広がっていて、大きなテントの様な形をしていた。ゴムの布が真ん中の棒に引っ張られトランポリンの様に飛び跳ねることが出来るのだ。下の方には小さな子、上に行くにつれて大きな子が跳ねている。上の方は角度がキツく恐怖さえ感じる。紗香はやはり1番上で跳ねていた。僕はジャンプピラミッドが見える砂場を囲うコンクリートの上に座っていた。まわりには未就学児がスコップやバケツを使って遊んでいる。僕はその姿をボーと見ていた。

 

すると、その先の遊歩道を歩いているひとり人が目に止まった。
金髪の長い髪の女の人だった。とてもスタイルが良く、カッコいい。彼女は大きなサングラスをして、長袖の黒のTシャツを着ていた。
ズボンは黒と黄色のカボチャパンツを履いて、奇妙な事に背中に羽根を付けていて、頭には触角まで付けていた。しかしこの公園では、正義のヒーローや漫画のキャラクターなどのコスプレをしたコスプレイヤーを見ることは珍しくはなかった。彼らはSNSにあげるらしい。しかし彼女は僕の目を引いた。格好が奇抜だからではない。彼女の格好が、先程車から飛んでいった虫にそっくりないで立ちだったからだ。僕は思わず走り出していた。
何故か僕は彼女とあの虫は関係があると感じた。彼女はずんずんと公園の奥へと進んでいく。
僕は見失うまいと走って追いかける。
そして彼女は大きな桜の木まで来ると、ずっと続いていた生垣を超えて、草むらに入っていった。僕も慌てて生垣と生垣の間をすり抜けようとした時、
「お兄!どこ行くの?」
後ろから怒った顔の紗香に引き止められた。
僕は気にせず生垣を超えて、大きな桜の前に立った。見渡しても彼女はいなかった。
「何か探し物?」
紗香が僕の手を引いて聞いた。するとその時ポケットの中から着信音がなった。お母さんの携帯電話だ。
約束の場所に僕らが居なかったらお母さんは怒ってるにちがいない。
僕は慌ててポケットに手を当てた。しかし次の瞬間、ふわっとした風が下から吹き、草の上に散っていた桜の花びらが再び宙を舞った。そうかと思うと、先ほどの風とは反対側から思いっきり胸を掴まれた様に強い吹き戻しの風が吹いた。物凄い力だった。
僕は引きづり込まれると思った。
思わず紗香の手を引いていた。

2020年5月11日公開

作品集『手から力を』第5話 (全6話)

© 2020 海老川文香

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