高架下、

途中の人間(第14話)

siina megumi

小説

1,136文字

母 ナデカ
息子 デン

この親子の「シゴト」は、この世に不要で無価値になってしまった人間を、社会的に追い詰め自殺させることだった。

どうしても、自分を導いてくれるモノがこの世にはなかった。ショウはモノレールを降りて、帰りながら思っている。田舎とは違うが、こんな地方都市の隅っこで、価値のない人生を送っている。どうしてこうも日々には逃げ道がないのか。どうして周りの人がみんな敵に見えるのか。
毎日たくさんの人が自殺している。自分の番が近づいている気さえする。自殺しない方がいいのだろうか? それさえ分からない。
ルリエの居なくなった夜と、まだ同じ夜だ。
ナデカはもうショウの家の前に居た。対面の高架下のところに座り込んでいたのだが、なかなかに大きな家だった。ショウは甘やかされて育った金持ちの息子という一つのタイプでしかない。どうでもいいことをデンは考えるが、つまらない人間はつまらない。そして簡単に自殺してくれる。
家の対面に座り込むナデカは、何かおかしいようにショウには思えた。休憩しているようではあるのだが、タバコも携帯も持っていない。それなのに、なにか充実しているような感じというのがあった。ナデカは自殺させた人間のことを思っていたのだが、
「なんですか」
ショウは言った。家に要があるかと思って言ったのだろう。
ナデカ「ごめんなさい、そこでダンスの練習してて、休んでるだけ。ここの家の人?」
「ここの家です」
ナデカ「友達といつも練習してるんだけど、うるさくない?」
「うるさくはないですよ」
ナデカ「ありがとう」
衣装とか雰囲気とかの感じから、プロでやっている人たちという感じがした。
入社面接に来る前に少し仲良くなっておきたかった。ここで誘っては警戒心を持たれそうだが、顔くらいは覚えてもらいたかった。なので、
ナデカ「ねぇ! キミは・・・。あぁ、まぁ、やっぱりいいや、ごめんね」
「え?」
ナデカは謎に迷っているふうに見えた。
「なんなんですか」
聞こえていないかのように答えない。
「なんなんですか」
ナデカ「いや、なんでもない。また」
戻っていくナデカは、自分とは全く無縁の人のように思えた。だからこそ『また』という言葉が、ショウに異様に響く。間違いなく初めて会った人だ。確かに異様な雰囲気の人だった。まるで自分はゲームの中のnpcで、ナデカがそのゲームのプレイアブルキャラクターであるというような感じがした。そんな人間に『また』と言われたというのは、不気味どころか恐ろしささえ覚えた。
これで顔くらいは覚えてもらえたのだろう。

 

練習仲間は先に帰らせた。敷いたブルーシートとかを片付けていた。ナデカは踊らないで準備の手伝いをしていただけなので、そこまできつそうな感じはない。ルリエが居なくなった夜が終わろうとしている。それは恐ろしい朝といえた。一人の人間の死など、全くなかったことにする。しかしナデカは構わないようすだった。

2020年3月11日公開

作品集『途中の人間』第14話 (全21話)

© 2020 siina megumi

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