終業中、

途中の人間(第11話)

siina megumi

小説

1,071文字

母 ナデカ
息子 デン

この親子の「シゴト」は、この世に不要で無価値になってしまった人間を、社会的に追い詰め自殺させることだった。

ナデカはしばらく街を見下ろしていた。

 

 

 

客はもう居なくて、デンは一応酒を片手にしていた。開いたままの入り口から、ときおり車の音が流れてきていた。そこで楽にしている、その神聖なような美しい少年は何なのだろうかと、佐茄は一人考え込んでいた。
デン「・・・そろそろかな。もうちょっとで戻って来ると思うから」
「・・・うん」
デン「簡単でいいから、何か作っといて」
「何がいいの?」
デン「なんでもいいよ」
「あんまり材料ないよ」
デン「えーっと、じゃあ」

 

デン「サバのぬかだき一つ」

 

デン「あと、これもね」
言って空のグラスを揺らした。
「・・・まぁいいけど、お願いだからさ、普段の営業中に当然のような顔して来ないでよ?」
デン「大丈夫に決まってんだろ。そういうのは俺は大丈夫なんだよ」
「・・・慣れてるって?」
デン「無限に慣れてるから」

 

デン「にんにくの揚げたやつちょうだい」

 

「まぁ、あんた達がやってるのは、尊敬できるようなことじゃないってことくらいは、あたしにも分かるよ」
デン「そりゃそうだ。ただ、俺とアイツのシゴトによって、人類社会は未来に向かうんだけどね」
「何が未来だよ」
デン「例えば、佐茄ちゃんも、最近何か好転したことがない?」
「ないよ。娘を亡くしたのに」
デン「え・・・。あ、それはゴメン」
「いいよべつに」
デン「娘さん、どういうひとだったの?」
「わからないけど、彼氏が良く遊びに来てた」
デン「え? いや、娘さんはどういうひとだったの?」
「わからないけど」

 

デン「焼きナス食べたいな」

 

デンが何を考えているのかは分からない。ただ決まっているのは、そのとき、まさに自殺しているであろう人物については、デンの意識には一切よぎらなかったということだ。
いくら呑んでも、酔いをモノともしていないことに、佐茄は驚いた。
「お母さんはどういう人なわけ? 嫌味じゃなくて、ふつうに」
デン「まぁ、たいした人物像ではないんじゃないかな。何処にでも居るとは言わないけど」
「なにそれ」
デン「だから、分かりやすく言えば、単純なんだよ。俺が複雑ってわけじゃないけど」
「でも、その、なんとかいう『活動』は、あの人が始めたんでしょ」
デン「まぁそうだけどね」
「じゃあとんでもない人じゃないの?」
デン「でも何か中途半端なところがあるから・・・」
「えぇ。そうは見えないけどな。まぁまだよく知らないけど」
デン「中途半端そのものというか・・・」

 

デン「もろきゅう一つ」

 

デン「なんというか・・・」

2020年2月18日公開

作品集『途中の人間』第11話 (全15話)

© 2020 siina megumi

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