Flash Back #32

Flash Back(第32話)

菊地紀寿

小説

1,664文字

迷走する奔走#3

ひたすらに、あの三文字を使った略語を探していた
浮腫、タンパク尿、高血圧、妊娠中毒症、エファプス伝達
マオウ、麻黄、エフェドラ
少しでも手掛かりになりそうな言葉を開いた状態にしタブを重ねていた

 

「古川さん……古川さん聞こえてる?」
「あ、…あぁ…すまない、何か見つかったか?」
あまりにも集中しすぎて周りの声を遮断していた
「EPH受容体の説明でエフリンってあってさ、エフリンに似た言葉で薬に関連するワードなかったっけ?」
「エフリン……ちょっと待ってくれ」
開いておいたタブを見直してみた、そこには1つ似た言葉があった

「エフェドラってのが近いんじゃないか」

二人でエフェドラを詳しく調べた結果が出た

エフェドラ・ハーブ系の薬品で中国に自生するマオウ科
シナマオウ、アイマオウ、キダチマオウなどの地上茎を乾燥したものが、生薬「マオウ」と呼ばれ漢字表記では「麻黄」

 

「2003年にアメリカではエフェドラ製品販売禁止の方針を打ち出したってことは、体にはよろしくないんじゃないか」
「アメリカでは痩せ薬で人気になったけど心臓発作や脳卒中で死亡した例が出てるけど日本では栽培禁止されてないし、漢方には使われてるね」
「サプリメントではダメで漢方ならいいのかよ、まさに毒にも薬にもなるだな」

俺らの脳はコイツでおかしくなってるのか、それとも違う成分が入っているのか迷宮入りが二乗、三乗し答えを惑わす裾野が広がりだした

 

エフェドラ、マオウ、サプリメント、漢方この4つを頭の中で復唱し
打開策が出てくるわけもないのに繰り返してる
あの錠剤にはエフェドラなんて入ってはいなくて俺たちが迷走しているだけ
そう思えれば気が楽になるだろうけど何かが引っ掛かっている

馬渕はこの迷宮入りしている状況に困惑している様子もなく
自宅で一人でいるかのように洗面所で歯を磨いている
もうこれ以上悩んでいても埒が明かない、帰って俺も歯を磨こう

 

「サプリメントってさドリンクってあるの?」
馬渕の急な質問に思考能力が低下している頭で考えてみたが
「製薬会社にいたことないからわからん」
「酒飲む前に飲むと悪酔いしないドリンクはサプリメント?」
「あれはウコンエキス入ってるだけだろ、知りたかったら作ってる会社に問い合わせてみろよ」

馬渕の呑気な質問にさっきの緊張感は衰退し眠気が襲ってきた
「日本は漢方にエフェドラ使ってるならエフェドラ入りのドリンクが出たら売れそうじゃない」
「痩せるドリンク剤なんて怪しくて外資系の会社でも躊躇しそうだな」

 

エフェドラのドリンクか……エフェドラドリンク、凄まじい安直な名前だ
エフェドリンクの方がましか、どっちにしても売れなさそうだな
そんな売れなさそうな名前が頭の中でループしている
キッチンで朝食を作ってる馬渕の隣で煙草の煙を換気扇に向かって吐き出していてもエフェドリンクは脳内でコーヒーカップの様に回っている

 

「朝飯食べていく?」
「いや、これ吸ったら、御暇するよ」
テフロンのフライパンの上でジリジリ焼かれる卵の音が朝を感じさせる
キッチン台に置かれたソーセージ、トマトが、ごく普通な絵面なのに
有り触れた食の日常に癒されてるのは俺はある意味病んでいるんだろう

 

「仕事で貰った栄養剤あるから飲む?」
「遠慮しとくわ、好きだねードリンク剤」
「野菜ジュースもあるよ」
「なんか飲まなきゃ帰してくれないのかよ」

さっきはエフェドラで今はドリンクのやり取りかよ
今朝の総括を一言で表すなら
エフェドリン……エフェドリン!!

「なぁーエフェドリンってなかったか?」
「そんなもん冷蔵庫に入ってないよ」
「違くて、エフェドリンって薬だよ」
「薬学部出身じゃないから知らんよ」
「もう一回借りるわ」

急いでタブレットを開いてエフェドリンを調べた

 

「おい、劇薬だぞエフェドリンって」
「そりゃーすげーな」
「含有量10%を超えて配合されたエフェドリンは覚せい剤取締法の対象」
「俺らシャブ飲まされてたのか女医に」
「だとしたら幻覚見てもおかしくないよな」

2019年8月14日公開

作品集『Flash Back』第32話 (全33話)

© 2019 菊地紀寿

読み終えたらレビューしてください

リストに追加する

リスト機能とは、気になる作品をまとめておける機能です。公開と非公開が選べますので、 短編集として公開したり、お気に入りのリストとしてこっそり楽しむこともできます。


リスト機能を利用するにはログインする必要があります。

あなたの反応

ログインすると、星の数によって冷酷な評価を突きつけることができます。

作品の知性

作品の完成度

作品の構成

作品から得た感情

作品を読んで

作者の印象


この作品にはまだレビューがありません。ぜひレビューを残してください。

破滅チャートとは

この機能は廃止予定です。

タグ

この投稿にはまだ誰もタグをつけていません。ぜひ最初のタグをつけてください!

タグをつける

タグ付け機能は会員限定です。ログインまたは新規登録をしてください。

作者がつけたタグ

ミステリー 純文学

"Flash Back #32"へのコメント 0

コメントがありません。 寂しいので、ぜひコメントを残してください。

コメントを残してください

コメントをするにはユーザー登録をした上で ログインする必要があります。

作品に戻る