「随分と古風な食事ね」
スムージー片手に理沙が前の席に座って話しかけてきた
「大当たりでしょ、この企画」
「おまえの発案なのか?」
「試しに提案してみたら通ったのよ、褒めてよ古川さん」
理沙の発案か、プレゼンの上手い理沙の事だ
綿密なデータ収集からの朝食の良さを打ち出し
論理的を前面に掲げ最後に個人的感情で締める
口の上手い女は敵に回せば鋭利な凶器だ
「褒めてくれなくてもいいけど、そろそろ済ましてね」
「もう食堂閉まるのか?」
「横浜にお出かけよ2人で」
12階でエレベーターを降りた理沙が不思議そうな顔で此方を見ている
「何しているの、早くしてよ」
俺のオフィスは11階なのに何故なんだろう
朝食のせいで思考は鈍っているかもしれないが仕方ない
あなたのオフィスに連行ですか仰せの通りにお供しますよ
無言で金魚の糞のように付いて行くと1つの疑問が浮上した
「手ぶらでいいのか俺は?」
「必要ないわよ資料は全部こっちにあるから」
理沙のオフィスに入るとデスクに腰掛けおかしなことを言い出した
「しちゃう?社内SEX」
「朝飯急かした理由はそれかよ」
呆れた口調で言ったが感心したこともある
朝からよく回る頭と口だな
荷物をまとめ終わると着ていたジャケットをハンガーにかけだした
「本当にするのかよ?それとも朝飲んでたスムージーにヘロインでも入ってたのかよ?おまえもとうとう気が触れたか」
「堅物にしては面白いこと言うじゃない」
予想が外れてほっとした、流石にそこまではしないよな
気が触れてるのは俺なのかもしれない
「暑いから脱いで行くのよ、知ってた?梅雨明けしたこと」
今年も梅雨明けしたのか
夏らしいことをする予定もないのに必ず夏はやって来るんだ
隣で歩く女は、いつだって涼し気な表情でいるけど
ひどく蒸し暑い日々が始まる、気が狂うほどの
"Flash Back #27"へのコメント 0件