Flash Back #23

Flash Back(第23話)

菊地和俊

小説

823文字

混乱と同調#5

周囲の喧騒よりもさっきの事で頭が疲れている事に気づいた
時間にして数秒の事がこれほどまでの疲労感

そんな疲労感の中、視線を右に逸らすと斜向かいにさっきの自分と同じように立ち尽くす男が目に入った

茫然と立ち尽くす男は、もう1人の自分のようでならなかった

 

斜向かいの男の視線の先はアイツがいた場所に思えた
彼はもしかしたら同じ幻影を見たかもしれない

 

放心状態に見える彼は我に返り来た道を戻って行く
肩を落として落胆したような足どりの彼を急ぎ足で追っている自分がいた

 

追われている彼は俯いた姿勢で自分と相反する鈍い足取りだった
距離は瞬く間に縮まり彼の肩を叩き話しかけた

 

「すいません今さっき、おかしなもの見ませんでしたか」
驚いた顔でこちらを見る彼は天候とは真逆の曇った顔をしている

「誰だか知らないですけど、あなたが1番おかしな者に見えますよ」
「すいません急に話しかけてしまって、でもさっきあなたは事故が起きた現場とは反対の歩道を見ていましたよね」

今の一言で彼の顔つきが変わったのを見逃さなかった
明らかに動揺しているのが視覚だけではなく肌を伝って感じとれた

 

「宗教の勧誘なら他をあたってくれ、こっちは神に祈る趣味は無いんだ」

語尾が上ずっている何かを隠しているのは明白だ
微妙な声の震えも聞き取れた

 

動揺が隠せない台詞を吐き捨てるように言った後、彼は再び歩き出した
放っておいてくれと言わんばかりに鈍かった足取りを早めて歩く

「あなたも見たんじゃないですか、あの男を」

 

足を止め振り向き
呆れたような顔で言葉を突き返した

「じゃーあんたの勘違いだな俺が見たのは男じゃないんだわ」

その顔からは、さっきまでの動揺は消え
声には震えはなく妙な落ち着きがあった

 

小さくなっていく男の後ろ姿を見ながら忘れていたビニール袋の重みが片手から伝わってきた

無意識に追いかけた男の様に落胆し俯いた姿勢で自宅に引き返した

2019年7月28日公開

作品集『Flash Back』第23話 (全29話)

© 2019 菊地和俊

読み終えたらレビューしてください

リストに追加する

リスト機能とは、気になる作品をまとめておける機能です。公開と非公開が選べますので、 短編集として公開したり、お気に入りのリストとしてこっそり楽しむこともできます。


リスト機能を利用するにはログインする必要があります。

あなたの反応

ログインすると、星の数によって冷酷な評価を突きつけることができます。

作品の知性

作品の完成度

作品の構成

作品から得た感情

作品を読んで

作者の印象


この作品にはまだレビューがありません。ぜひレビューを残してください。

破滅チャートとは

この機能は廃止予定です。

タグ

この投稿にはまだ誰もタグをつけていません。ぜひ最初のタグをつけてください!

タグをつける

タグ付け機能は会員限定です。ログインまたは新規登録をしてください。

作者がつけたタグ

ミステリー 純文学

"Flash Back #23"へのコメント 0

コメントがありません。 寂しいので、ぜひコメントを残してください。

コメントを残してください

コメントをするにはユーザー登録をした上で ログインする必要があります。

作品に戻る