Flash Back #22

Flash Back(第22話)

菊地和俊

小説

839文字

混乱と同調#4

#5

後悔とは消せぬもの何故なら後になって悔やむものだから
悔やんでも悔やみきれない失敗では無いが心に米粒程の痛手を負った彼は必要最低限の物を持ち部屋を後にした

エレベーターを降りエントランスホールを颯爽と通り抜け歩道に出ると外は快晴だった

 

燦々(さんさん)と輝く太陽に入道雲
空を彩る七色の放物線が彼の足早を落ち着かせる要因となった

久しぶりに見た虹は幻想的な美しさがあり
さっきまでの焦りが無意味な事を教えてくれる
時間に縛られる訳でもなく死をもたらす空腹に直面もしていない

 

ゆっくりと歩けばいい歩幅は無理のない間隔で

 

コンビニでお目当ての物を調達し交差点で信号待ちをしていた

表通りは人通りが多くなりさっきよりも陽射しは強く太陽は肌を照りつけている

信号待ちの間、向かいを何気なく見ていると知った顔が視界に飛び込んできた
相変わらずこちらを笑顔で見ている名前も知らぬ神出鬼没なアイツだった

 

最後に車のバックミラーで見た時のような緊張感はなかったが不思議な安心感があった
なんであんな奴を見て心を落ち着かせているんだろう
ビニール袋片手にそんな自分に疑問を覚えた

 

向かいで信号待ちをしているアイツは左手の親指を突き上げ人差し指を伸ばし残りの3本を握っている
肘は伸びきらない程度に腕を伸ばし俺に狙いを定めた
肘を起点にして左腕を90度上げた
聴こえるはずはないが擬音を発したのが見えた

 

次の瞬間バスが目の前を通った
一秒もしないうちにブレーキ音はけたたましく鳴り響いた
悲鳴が聞こえ通行人は野次馬に変わり
現場に押し寄せはじめる人の群れ
そんな大衆に取り残され茫然と歩道に立ち尽くしている

 

体全体が鉛のように重く信号を渡らず去って行くアイツの後ろ姿を見ていた
向こう側の影に消えた男は何のメッセージを伝えたかったのか
そもそも深い意味なんてなく、ただ俺を嘲笑いたいだけかもしれない

 

徐々に体の重みは無くなり横断歩道の信号機は点滅していた

2019年7月28日公開

作品集『Flash Back』第22話 (全29話)

© 2019 菊地和俊

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