Flash Back #20

Flash Back(第20話)

菊地和俊

小説

796文字

混乱と同調#2

#4

不意打ちな衝動がもたらした
キッチンには暖色のキャップが付いた瓶達

ヨーグルトに包まれた鶏胸肉
トマトのホール缶、玉葱、人参、じゃが芋、ミキサー
普段口にしない赤ワイン、生姜、ニンニク、林檎

 

昨日帰りがけに買った指南書を真剣な眼差しでコンロの前で読み返す
スパイスカレーの処女航海に出港した

 

事の経緯は、たまたまだった

会社のエレベーターで1つ上の階で働く女性が持っていた本に目が行った
表紙には今日からはじめるスパイスカレー
無意識にエレベーターの中でその本を食い入るように見ていたんだろう
スパイスカレーを家で作るのかと聞かれ唐突な質問に
お座なりな返事もできぬままエレベータを降りてしまった

 

それから退社するまで頭の中でスパイスとカレーの文字がひしめき合う事態
帰宅中に本屋を探して吸い込まれるように料理コーナーへ
種類の豊富さに面を食らったが、ここで引き返しては男が廃る
吟味もせずに表紙のインパクトで決めた一冊

 

「習うより馴れろスパイスカレー」

 

 

休日に料理をするなんて普段から外食で済ませる自分からは
想像もつかない行動だが切る、炒める、なじませる、煮込む
黙々と行うカレー作りは新しい嗜みとなりつつある

 

強い雨音を遠ざけるためラジオを流すが肉を焼く音に邪魔され
薄っすら耳に入るBGMとなった

 

パウダースパイスの香りを引き出す為に塩は重要
カレーにコクを出すため砂糖を入れる

思っていたよりも奥の深さに心打たれたスパイスカレー
白昼の土曜に、のめりこむ人の気持ちがわかった気がした

 

カレーの完成間近に重要なことを忘れていた、白飯を用意していない
米を探してみたが有る筈はない、普段料理なんてしないんだから
重大なミスが発覚したショックで米を炊く気力は消え失せた

 

コンロの火を止めパックの御飯を買いにコンビニへ向かった

2019年7月28日公開

作品集『Flash Back』第20話 (全29話)

© 2019 菊地和俊

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