Flash Back #16

Flash Back(第16話)

菊地和俊

小説

1,008文字

憂鬱と快感#13

「久しぶりだな元気してたか」
声の主は学生時代一緒にバイトしていた前田だった
店のインテリアデザインのアシスタント
今時の言い方をすれば空間デザイナーのバイト仲間でその時の経験が功を奏し
前田は今、福岡で空間デザイナーの会社を経営している

2年ぐらい前に頼まれて福岡で仕事を手伝って以来疎遠になっていた

「実は今東京に来てるんだ、空いてるか今から」
「相変わらず急な奴だな」

一般的には不躾な呼び出しだが懐かしさが嬉しかった

「福岡はコンパクトシティで快適だけど東京のごった煮な感じはたまに来ると痺れるな」
久しぶりの前田は陽気そのものだった
「馬渕ニューヨーク行ったことあるか」
「ないけど旅行で行くのか」
「実は仕事でニューヨークの店を手掛けることになったんだ」

でかい仕事が舞い込みテンションが高い前田はタブレットを出して説明しだした

 

東京、アメリカ、香港の三社が出資してニューヨークに和をテーマとした飲食店を出店するらしい

蕎麦に天ぷらに日本酒に焼酎なんてベタな物から
季節の山菜、土用の丑の日には鰻等、日本の食文化を丸ごと押し込め
内装は甲冑や番傘、花札などこちらも和だらけ
トイレの近くには壁一面に巨大な般若や能面がディスプレイされている

「凄まじい金のかけ方だな」
「和が持っている造形美を惜しみなく注ぎ込むんだ空いてたら手伝ってくれよバイト代弾むぜ」
「辞めとくわ手伝いながら目眩しそうだわこのでかい般若見たら」

前田は好景気な笑い声を響かせた
「こっちで千円で食べれるチェーン店の定食があっちじゃ安くて二千円、三万の日本酒が馬鹿みたいに売れるのがニューヨークだよ」
「俺に出資する金は無いぞ」

前田がマルチ商法のプロに見えてきた

 

一頻り演説を終えても話は尽きなかった
「タバコもらっていいか」
「いいけど辞めたんじゃないのか」
「お前の顔見たら吸いたくなったわ」
「俺がニコチンに見えてきたか」
呆れたような顔で二人は一服をし始めた

「二回目の結婚で辞めたんだけどな」
「タバコ辞めた後に結婚も辞めるなんてせわしない奴だよお前は」

「そっちはどうなったんだ、したのか結婚」
「東京に戻ったら破談した」

「俺のせいか」
「お前のせいにできたらどれだけ楽なことか」

あの日から壊れ始めた自分を懐かしく思えるほど俺は変われた
元に戻れたことよりも、ぶり返す心配は隣にある
向かいの煙を見てるとマリヤの顔が浮かんだ

遠くない思い出を振り返る 女々しさの表れかもしれない

2019年7月27日公開

作品集『Flash Back』第16話 (全29話)

© 2019 菊地和俊

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