Flash Back #15

Flash Back(第15話)

菊地和俊

小説

650文字

憂鬱と快感#12

♭2

定期的と呼ばれるものには中毒も含まれる
それが違法でなければ異を唱えても個人の自由が尊重される
土曜にしかカレーを出さない店に別の曜日も顔を出し
俺は、あの店の中毒者すなわち常連になった

異今都(いきょうと)それがこの店の名前
随分変わっていて捻くれた店名だけど背もたれのない椅子や
カウンターに置かれた青い林檎、黒魔術で使用しそうな柄の灰皿
奇妙な空間に迷い込んだ末の居心地の良さ

今とは異なる都、その名の通りの異空間でナポリタンを待っていた

一番奥の椅子はいつも不在で、あそこだけ背もたれのある椅子
時折女性が座っているように見えては残像が瞼にこびりつくことが
抗鬱剤を飲んでいた頃にあった
いつだったかその事をマスターに言ったら店を畳むことになったら奥の椅子をくれてやると笑われた

瞼にこびりついた女性は似ていた
生きていれば歳が同じぐらいのメグミに

 

帰宅し煙草をくわえながら本棚の前で聖書を読み返していた
心の病からのマリアとの遭遇後、勢いで買った聖書
あのころはキッチンで新約と旧約を読み比べた
コーヒーとタバコと聖書
酒浸りの創成期は克服と言う福音をもたらし
隠微な淫靡が溢れ出す終末がハードコアな夜を演出する

旧約聖書を棚に戻すと写真が落ちた
2枚ある写真は閉まっていた胸が苦しくなる記憶
1枚は画像の粗さが目立ち、その粗さが温かみを感じる
幼い二人の無垢で無邪気な笑顔

もう1枚は今時の繊細な綺麗さが技術の進化を表し
大人の二人が本音と建て前を絡めた笑顔のように見える

時が経つに連れ逆行する純粋を2枚の写真が物語っていた

2019年7月27日公開

作品集『Flash Back』第15話 (全29話)

© 2019 菊地和俊

読み終えたらレビューしてください

リストに追加する

リスト機能とは、気になる作品をまとめておける機能です。公開と非公開が選べますので、 短編集として公開したり、お気に入りのリストとしてこっそり楽しむこともできます。


リスト機能を利用するにはログインする必要があります。

あなたの反応

ログインすると、星の数によって冷酷な評価を突きつけることができます。

作品の知性

作品の完成度

作品の構成

作品から得た感情

作品を読んで

作者の印象


この作品にはまだレビューがありません。ぜひレビューを残してください。

破滅チャートとは

この機能は廃止予定です。

タグ

この投稿にはまだ誰もタグをつけていません。ぜひ最初のタグをつけてください!

タグをつける

タグ付け機能は会員限定です。ログインまたは新規登録をしてください。

作者がつけたタグ

ミステリー 純文学

"Flash Back #15"へのコメント 0

コメントがありません。 寂しいので、ぜひコメントを残してください。

コメントを残してください

コメントをするにはユーザー登録をした上で ログインする必要があります。

作品に戻る