chapter two
屈託の無い笑顔で少女は海を見ている
潮風がセミロングの髪を靡かせ入道雲の隙間を縫って光が水面を照らしている
時折こちらに振り向き海を指さし喋りかけている
「もうすぐだよ」
何かが来るのを知らされているんだろうが海には何も見当たらない
彼女は目を瞑り潮風を受け止めて穏やかに呼吸をしている
水平線の上には夕凪と山吹色と途切れた雲が少し
どこかで見たような景色の中で目を閉じてみた
降り注いでいる光が薄くなり空を見あげると矢のような雨粒が降りてきた
雨が強くなるにつれ彼女は笑いだす
雨音が増すにつれ笑い声はけたたましさを帯びている
もうさっきの彼女の面影は消え去り不気味な物の怪のようだ
目も当てられない異様さに視界を外すと海には何かが浮かんでいる
「やっときずいたのね、それを忘れてはいけないのに」
物の怪と化した女を見ると顔のほぼ全体を闇が支配している
「あなたが欲しがった愛よ、もう手遅れだけど」
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