Flash Back #8

Flash Back(第8話)

菊地和俊

小説

1,105文字

憂鬱と快感#6

♭1

表通りの店を出て通い馴れた道を練り歩く
片手で8割程つまった紙袋を抱え
帰路につく途中で土曜の午後を迎えた
時折新緑が木漏れ日と影を彩り
深夜の雨を微塵も感じさせない五月晴れだ

自宅のパソコンの前で受注した仕事に取り掛かる
たまに視界に入るキッチンに置かれた茶色い酒瓶
あれを飲まなきゃ寝れなかった日や飲みながら仕事をしていた事
飲んでも寝れずに気付くと朝を迎えたこと
今では笑い話になる悲痛を忘れないための戒めとして
酒瓶は捨ててはいない

 

と言いたいところだが
仕事のしすぎでオーバーヒートした脳を冷やすため週の半分は冷却剤として嗜んではいる

 

フリーランスのWebデザイナーになって1年が経つ
クライアントは企業が3割、個人が7割
圧倒的に個人事業主が多いのは起業前からわかっていた
知り合いのつてで紹介してもらった女性個人事業主
彼女から派生した口コミや人脈でクライアントは女性が多い

エステにサロンに雑貨等、女性特有の美と可愛いの欲求が存在しなければ
俺は今頃、世捨て人か野垂れ死んでいるだろう
言い過ぎなんて言われるかもしれないが事実だ
仕事を失うとは別の失望が青天の霹靂として降り注いだ

フリーランスになって3ヶ月後に幸福に出逢い
その2ヶ月後にやってきた苦しみのサプライズ
このサプライズのせいで酒に溺れた

自我を保つには溺れるしかなかった

 

アル中気味の自分を救うためメンタルクリニックに通った
手の震えはなかったが心が崩壊寸前だった
いい歳こいて医者の前で泣き崩れ泣き止むと心は少し晴れた
話を聞いてもらうことがこれ程重要なんて思いもしなかった

抗鬱剤を処方してもらい正式に躁鬱病の仲間入りが確定した
担当医が女性だったので彼女がマリアのように見え
帰宅して薬を飲みながら聖母マリアの事を調べていた
その日聖母マリアの記事を見ながらパソコンの前で寝落ちしてしまい
翌朝に神よりも神の母にのめり込んだ自分が滑稽に見えた
キリスト教には入信せずに酒との闘いが始まった

酒を断つためにブラックコーヒーを摂取するようになり
通院から一カ月も経たない内に自宅には
コーヒー豆、ミル、ペーパーフィルター、ドリッパーが揃い
断酒のためにコーヒーで副交感神経を刺激する日々

 

酒に逃げても眠れなくなった時に病院に行き
過労による不眠症として処方してもらった
睡眠導入剤とは真逆のカフェインが心の支えとなった

大袈裟かもしれないが今だにコーヒーは必要不可欠になっている
摂取はしてないがナッツやドライフルーツを入れる瓶に抗鬱剤と睡眠導入剤を入れてある

泣き崩れた通院から2ヶ月ほどして抗鬱剤は飲まなくなった

 

しかし新しい間違えを起こしてしまった

2019年7月27日公開

作品集『Flash Back』第8話 (全29話)

© 2019 菊地和俊

読み終えたらレビューしてください

リストに追加する

リスト機能とは、気になる作品をまとめておける機能です。公開と非公開が選べますので、 短編集として公開したり、お気に入りのリストとしてこっそり楽しむこともできます。


リスト機能を利用するにはログインする必要があります。

あなたの反応

ログインすると、星の数によって冷酷な評価を突きつけることができます。

作品の知性

作品の完成度

作品の構成

作品から得た感情

作品を読んで

作者の印象


この作品にはまだレビューがありません。ぜひレビューを残してください。

破滅チャートとは

この機能は廃止予定です。

タグ

この投稿にはまだ誰もタグをつけていません。ぜひ最初のタグをつけてください!

タグをつける

タグ付け機能は会員限定です。ログインまたは新規登録をしてください。

作者がつけたタグ

ミステリー 純文学

"Flash Back #8"へのコメント 0

コメントがありません。 寂しいので、ぜひコメントを残してください。

コメントを残してください

コメントをするにはユーザー登録をした上で ログインする必要があります。

作品に戻る