月と蝉

応募作品

一希 零

小説

4,752文字

2019年5月合評会「善悪と金」参加作。僕が破滅派合評会に参加してから一年が経ちました。

 

 

「善と悪とは、自分の右手と左手が戦っているようなものだ。」

大人になって、多くのことを少しずつ学びながら、僕はそう確信を深めてゆく。誰かに直接言われたわけではないが、きっと僕が出会った様々な人の言葉が、僕にそんな一つの確信を形成させるに至らせた。

なんてことを、未来の僕は考えているかもしれないし、考えていないかもしれない。いつだって僕は、今この瞬間よりも、過去や未来に思いを馳せることが好きな人間であるはずだ。少なくとも今の僕は、そのようにして大人になった自分を考える。そして、ひどく憂鬱な気分になる。いつものことだ。

 

 

段ボール箱を開ける。ビニール袋を左右に引っ張り、伸びて、指でつついて穴を開けて穴に指を突っ込んで、穴を中心に再びビニール袋を左右に引っ張った。袋の中から黒色のスタンドライトを取り出して、コンセントに差し込み、きちんと灯りがつくかを確かめる。スイッチをカチカチ、と何度も押すと、円形の白い光が黒々とした、まるで魔界の夜の森を描いた絵画のような木目の床を照らし、消え、また照らした。

月三〇〇〇円のお小遣いを使って、スタンドライトを月にひとつ、購入してゆく。今では合計七つのスタンドライトが僕の八畳の室内を照らしていた。シーリングライトを消してストンドライトのスイッチを入れれば、部屋はライトに照らされた場所と、そうでない場所に分かれる。明暗。スタンドライトの数が増えるごとに、その明暗の比率は変化してゆく。

光が当たる範囲を善と呼ぶならば、当たらない場所は悪と呼ばれるべきだろう。少しずつ善が広がってゆき、悪は善に飲み込まれてゆく。そんな風に見えなくもない。僕はこの先もスタンドライトを買い増してゆくつもりだった。二十のスタンドライトがこの部屋を照らす様子を見たい、と僕は思っていた。八畳の小さな世界に、僕は真の平和な世界を築こうと考えていた。

僕がスタンドライトを買う理由を聞いた友人は、僕に尋ねた。

「厨二病ってやつ?」

「違う。断じて」

「ガチ感が、厨二くさい」

「なんでもいいよ」

「それは誰が決めたの?」

「何を?」

「スタンドライトが当たる範囲が善で、それ以外は悪だって」

「僕だよ」

「本当に?」

「聞かれると、自信なくなってくる」

「お前、誰の言葉なら耳を貸す?」

僕は基本的に人の話を聞かない。聞いたとしても、それは僕の内部に問いを生むための外部装置の一つとしてあり、すなわち、他人の言葉は常に疑問の発生源に時々投げつけられる石のようなものにすぎなかった。

僕は考える。

 

 

家族の話だ。

都心から少し離れた住宅地の一画に建つ、淡い水色の家に、父と母と僕とアナンの四人が暮らしていた。父は港区に本社のある会社勤めで、母はデザイン事務所で働いていた。僕は家から歩いて十五分の距離にある高等学校へ通っていた。アナンはカナダから留学生として僕の通う学校へやってきて、僕の家にホームステイをしていた。

地方都市の進学校に通い、東京の有名私立大学を卒業した父は、大手企業に新卒で入社し今年で勤続二十五年を迎えた。基本適当な性格をしているが、発想力や思考力に優れた父はどうやら優秀らしく、年齢のわりに良い役職に就いているようだった。家族に対してはいつも優しく、僕がやりたいことは何でもやらせてくれた。

東京出身の母は専門学校でデザインの勉強をして、卒業後、一般企業の一般職に就いたが、知り合いの紹介で僕の父と出会い、結婚したのちに転職し、それからずっとデザイン事務所に勤めている。母は厳しく、けれど、いつだって正しかった。僕が学校で優等生として存在できるのは、間違いなく母の教育のおかげだった。父も母も忙しく働き、夜遅くに帰宅し朝早くに出社する。

僕の家にホームステイをしているアナンは一年前に僕らの家にやってきた。薄い色素の髪の毛と、そばかすが特徴的な女の子だ。当時背は僕より少し高かったが、今はほとんど変わらない。運動神経が良く、勉強も真面目に取り組んでいた。仕事で忙しい両親に比べれば、きっとアナンと最も同じ時間を過ごしているのは僕だった。もっとも、僕とアナンの関係は良好とは言い難い。

アナンは僕のことをいじめていた。ホームステイ先の子供をいじめるなんて、アナンはとんでもないやつだった。僕がアナンにされていることを誰かに言えば、アナンは強制的に排除されるだろう。僕は両親に愛されているし、学校の先生たちからの信頼だって十分に厚かった。

けれど、アナンもまた学校でいじめられていることを、僕は知っていた。クラスの一部の女子グループがいじめの中心を担っていたが、いじめ自体はクラスメイト全員が知るところだった。彼女は差別を受け、罵られ、嫌がらせをされ、無視されて、そのことを知っている大人は多分いない。アナンのクラスメイトを除けば、きっと僕くらいだ。僕の両親は僕とアナンのことを正しく愛してくれたが、僕とアナンの双方がいじめられていることに気がつけない。両親は大人で、僕らは子供だ。それは世界の違いを端的に意味していた。

マジョリティとマイノリティの二種類が綺麗に分かれていると信じる人間が、僕は一番嫌いだった。パロールのうちに既にエクリチュールが忍び込むように、あらゆるマイノリティにはマジョリティ性が既に宿っている。イエスとノーの多数決の間に存在する無数の解を浮かび上がらせれば、あらゆる決定は不可能となるだろう。僕はその不可能のことを、善でも悪でもない、“正義”と呼ぶことにした。

カチカチと、僕はスタンドライトを点灯したり、消灯したりする。点灯すれば白い面積が大きくなり、消灯すれば黒い面積が大きくなる。白と黒が重なり、明暗のグラデーションを成す領域を、緩やかに回転する地球儀を見るようにぼんやりと眺めていた。

 

マンションや背の低い建物に囲まれて、窓から見える紺色の空は小さかった。ベランダの物干し竿の先に、優しく金色の光を纏った月が浮かんでいた。夜空には薄く、たばこの煙のような雲が漂っていた。ガラス越しに見える平凡な夜の景色が僕の胸にインクのように染み込んできて、何か、得体の知れない感情にゆっくりと染め上げられてゆくのだ。

窓を開けた。ガラスが除去された夜空は彩度を増す。月の光が、想像以上に強いものであることに僕は気がついた。あたかも自ら光を放射しているかのようだった。同郷の人間になれたと勘違いした観光客のような虚しい空気が、金色の光の届く範囲を浸していた。光があり、闇があった。僕は心の中でスタンドライトのスイッチを切った。カチ、という音が鼓動みたいに心を鳴らした。

カチカチカチカチ、と、連続的な音が、僕の外の世界の側から聞こえてきた。耳が痒くなるようなその音は、蝉の羽音だった。開いた窓から、僕の部屋の光量に誘われて入り込んできたのだ。蝉は室内を壁や天井にぶつかりながら飛び回り、窓から入る風に煽られ揺れるカーテンに時々引っ付いた。水中を悠々と漂うクラゲに魅せられ吸い寄せられた小魚のように。

僕は部屋のシーリングライトを消した。暗闇となった室内を、一匹の蝉は緩やかな飛行を試みる。開いた窓から外へ出ようとはしなかった。必要以上にうるさい羽音が闇に響いた。

部屋に置かれた七つのスタンドライトを、僕は一つずつスイッチを入れてゆく。カチ、カチ、カチ。暗闇の中に一つ、また一つと、白い光が灯る。カチ、カチ、カチ。僕はテンポの遅いメトロノームになったような気持ちでスイッチを押してゆく。カチ。最後の一つのスタンドライドを点灯させると、部屋は光と闇と影の部分が出来上がった。彩度は存在せず、明暗だけが表れていた。

宙を飛行し続けていた蝉は、七つの白光のうち一つに、誘き寄せられるように飛んで行った。一つ目のスタンドライトに止まり、やがて飛び、二つ目のスタンドライトへと飛んでゆき、また止まる。蝉は、一つずつ光に吸い寄せられては離れて、を繰り返した。僕は最後のスタンドライトの前で、殺虫剤を構えて待っていた。蝉が目の前のスタンドライトに止まった。長い時間、僕と蝉は見つめ合った。目と目が合い、けれど、何一つ理解することができなかた。

僕は殺虫剤を吹きかけ、蝉を殺した。

 

ドアをノックする音が聞こえた。

アナンは帰宅すると、その日自分が学校でされたことを僕に向けてする。学校で腹を殴られたら、僕の腹を殴る。消しゴムを千切られたら、僕の消しゴムを千切る。自分がやられたことを再現し、確かめるのだ。自らの内部に溜め込まれた毒素を、正確に、全て、僕の方へと流し込むように。

僕は蝉を殺し、七つのスタンドライトが照らす部屋の中心で立っていた。勢いよくドアが開かれ、アナンは無言で僕を睨み、それから部屋を見渡し少し笑った。彼女は僕の左手首を強く握り、部屋の外へ連れ出し、トイレに連れ込んだ。アナンは便器の蓋を開けて、僕の頭を掴むと便器の中へ押し込めた。

僕はアナンが学校で何をされたのかを察知した。学校のトイレと違い、家のトイレは水位が低く、便器に頭を突っ込んでも陶器に頭をぶつけるだけだった。アナンは考え、一度トイレから出て、バケツにたっぷり水を入れて持っていた。アナンは再び僕の頭を掴み便器に押し込み、そのままバケツの水を僕の頭の上からぶちまけた。

冷たい水がぶつかり、滝のように流れ、大量の水によって便器の水位が上がり溢れた。僕は水の中に潜る。目を開けると、冷たい白色の中に、黒々とした円形の穴が見えた。僕は白光に引っ付いた蝉を思い出した。淡い、水中の揺らめく視界の中、便器の中央の穴だけが深淵のように僕を惹きつけた。深淵はこちらを見つめていた。僕は深淵を何一つ理解することができない。

 

僕は自分を被害者だと思わない。アナンを被害者だとも思わない。アナンが被害者ぶった態度をとったときが、僕がアナンを排除するときだ。部屋に迷い込みスタンドライトの光に寄っていった蝉を粛々と殺すように。

僕とアナンが向かい合い握手をすることは無い。けれど、並び立つことはきっとできる。僕が彼女を承認して、彼女が僕を理解しようとすれば。僕らは同じものを共有している。そのことだけが、とても大切なことのように思われた。

僕は部屋を光で、善で、満たしたいわけではない。ただ世界に影を作りたかったのだ。一つでも多く。ゆえに僕は、光と闇の境界に生まれる影を生み出すために、小さな箱の中の暗闇にスタンドライトを設置してゆく。世界の全てを、一度影にする必要があった。本当の光も、本当の闇も、すべて欺瞞にすぎないのだから。

影、あるいは正義。そう名付けた瞬間に、名付けられることによってこそ、影も正義も欺瞞に陥る。影とは何か。正義とは何か。何かを名付けることで、僕はその問いに答えを出しているようで、結局は問いを別の問いへとズラしているに過ぎない。僕は未だ何も掴んでいない。まるで空に浮かぶ雲を綿菓子のようなものと捉えたままの小学生のように。僕は未だ雲の正体を知らない。

「善と悪とは、自分の右手と左手が戦っているようなものだ。」

僕は、右手と左手を動かすものの正体、「脳」について、それが何なのかをずっと考えている。それは単一の綿菓子のようなものではなく、水滴や氷の粒一つ一つの集積のようなものに違いない。僕は名付ける。名付け直す。何度でも。いつか、正しい答えに辿り着くまで。今はまだ影と呼ばれているその、来るべき解答へ向けて。

ゆえに、スタンドライトがまた一つ、部屋に増えてゆく。

 

 

友達は僕に問う。

「お前、誰の言葉なら耳を貸す?」

僕は答える。

「家族、かな」

2019年5月19日公開

© 2019 一希 零

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"月と蝉"へのコメント 12

  • 投稿者 | 2019-05-23 13:30

    アナンがいじめを受容しているのは主人公を痛めつける手段を日々仕入れるためなのではないかと錯覚した。異様な部屋の風景と、きめ細かな便器描写など素晴らしいポイントがいくつもあった。またいつかアナンの話を読んでみたい。

  • 投稿者 | 2019-05-26 13:52

    テーマ、キャラ設定、哲学的考察、とてもらしいなと好感を持ちました。
    「深淵を覗く時深淵もまたあなたを覗いている」はニーチェでしたでしょうか、主人公の仄暗さも良いと思います。やはり字数的に厳しかったのだと思いますが、アナンには何か話して欲しかったし、主人公の独りよがりな感じを際立たせる意味でも父親と母親との会話も欲しかったですね。十二分に長編として成り立つ内容だと思いますので、期待しています。

  • 投稿者 | 2019-05-26 15:56

    「僕の両親は僕とアナンのことを正しく愛してくれたが、僕とアナンの双方がいじめられていることに気がつけない。両親は大人で、僕らは子供だ。それは世界の違いを端的に意味していた」というのがなにか人知れず僕とアナンの共犯関係のようなものがあるなと読み進めていって「僕とアナンが向かい合い握手をすることは無い。けれど、並び立つことはきっとできる」からのあたりでこれはお互いが人質なのだと思った。人質というのが正しい表現か、難しいのですがそのように思いました。そして夜の蝉も印象的にちりばめられていてよかったです。

  • 投稿者 | 2019-05-26 17:44

    「善と悪とは、自分の右手と左手が戦っているようなものだ。」、Baileyの『Festus』という詩の「Evil and good are God’s right hand and left.」というのを思い出しました。何かを手探りしているような語り口が良かったです。主人公の思想や、手探りしているものについてのカギになるような、哲学的な一文も多かったので、枚数制限さえなければまだこれから存分に掘り進められそうな話だと思いました。すでに皆さん言及されているように、私もアナンのことがもっと知りたかったなと思いましたが、それらも含めて作者には長編化の展望があるのかも?と思いました。

  • 投稿者 | 2019-05-26 19:04

    右手と左手、の時点で1年ほど前、一希さんが初めてここに現れた『内戦の起源』を思い出してニヤリとしてしまいました。
    曖昧なもの、明暗のはざまに浮遊しているような感覚が心地の良い作品です。何気なく見える文章の端々に切実なものが感じられて、なおかつあくまで静かで内的な世界観。
    「僕の両親は僕とアナンのことを正しく愛してくれたが、僕とアナンの双方がいじめられていることに気がつけない。両親は大人で、僕らは子供だ。それは世界の違いを端的に意味していた。」正しく愛するとは何か、それでいて気がつけないというのはどうしたことか。世界の違い、なるほどそうかもしれない。
    「僕は自分を被害者だと思わない。アナンを被害者だとも思わない。」ここでも互いが闇であり、光である、そのわずかな、あらゆる関係性におけるグレーな境界を書こうとしたのかな、と思いました。
    このお題であえてグレーなものに焦点を当て、しかもさりげなく描こうとする一希さんのポテンシャルを感じました。
    個人的には、アナンの続編は必要ないんじゃないかと思います。主人公と表裏一体なのだから、この作品の中であくまでひとつの装置に過ぎないと、そう感じました。
    そのことについても当日訊いてみたいです。

  • 投稿者 | 2019-05-27 06:04

    観念を中心として展開する手法は一年前から変わることのない作者の特徴であり、魅力でもある。最初のころはいくら読んでも話の筋がまったく分からないものばかりだったのに、最近では話の内容が分かるようになった。これは作者が成長(?)したのか、私が作者の作風に慣れただけなのか、ちょっと判断がつかない。

    本作は、観念のレベルと具体的な描写や物語のレベルがうまく呼応しあっている良作である。Ananはヘブライ語で雲を意味するから、夜空にかかる「薄く、たばこの煙のような雲」によって彼女の灰色の翳りを表現しているのだろう。月光よりは暗く夜空の闇よりはほの明るい夜の雲は、いじめられている一方でいじめてもいる彼女の倫理的な曖昧さを的確に描出している。また、名前から彼女をユダヤ人であると仮定した場合、「アナンが被害者ぶった態度をとったときが、僕がアナンを排除するときだ」という一節は思わぬ歴史性を帯びて慄然とさせられる。

    アナンという名前が女性っぽい名前でないこともあってか、私は彼女が女性である必然性をあまり感じなかった。「僕」が彼女を異性として意識しているような部分はあまり見られず、殴る蹴るの暴力が行われているのに男女の体力や体格の差が問題になるわけでもない。むしろ「僕」とアナンは分身のような存在に感じられてくる。アナンの側の物語が十分に語られていないのは、二人が同一のものと見なされているからではないだろうか?

    あと「あらゆるマイノリティにはマジョリティ性が既に宿っている」ことの喩えを示すのであれば、エクリチュールのうちに既にパロールが忍び込むように、としたほうがより適切ではないかと思う。

  • 投稿者 | 2019-05-27 21:54

    光が当たる範囲を善と呼ぶならば、当たらない場所は悪と呼ばれるべきだろう。

    のところで?
    となったが、その後の「僕の真に平和な世界」をつくるため、で納得した。
    友人との会話が軽くてリアルでとてもいい。

    ただ、なぜ最後、家族が出てくるのかいまいちわからなかった。

  • 投稿者 | 2019-05-27 22:14

    私も谷田さんと同様、「内戦の起源」の右手と左手のじゃんけんを思い出しました。切って捨てられないのにケンカをするもの、今まで良かったものが急に嫌になったり、美しかったものが醜くなったり、光あふれる世界が暗黒になったり。繊細な語りの芯がしっかりとしていて良い作品だと思いました。「家族」ってなんなのでしょうね。一番近くにいるのにとんでもなく遠くにいるように思ったり、愛しているはずなのに殺したいほど憎んだり。

  • 投稿者 | 2019-05-27 23:45

    アナンと主人公の関係性や、それによる主人公の心理的な部分が丁寧に描かれていてよかったです。
    ただ、物語が進む前に作者の考えがどんどん語られるから、先を読みたい、という気持ちにあまりなれず、全体的に物語と言うよりは作者の印象を読んだ感覚になりました。
    文章自体はうまいと感じたので、そこが惜しかったかな、と思います。

  • 編集者 | 2019-05-28 02:44

    そうか、あの言葉が再びここで生かされるのか、と思った。
    恐ろしいくらい異質で具体的なアナンの存在、脅迫的なライトなどによって善悪は一旦可視化されるが、割り切りは出来ない、そこが中々興味深く、日々そこらで起きている行為を再び意識させる。
    あえて言えばアナンに近しく感じなくもない。

  • 投稿者 | 2019-05-28 16:09

    「マジョリティとマイノリティの二種類が綺麗に分かれていると信じる人間が、僕は一番嫌いだった」。ここが一番感心した一文でした。
    テーマが『善悪と金』ということもあり、多少哲学じみた内容もありかなと思いました。月に3000円の小遣いで善と悪を作り出すのなら、それは戦争に他ならないという主張のありそうな表現だなと思いました。善でも悪でもない光の境界線を正義とすれば、その正義線を動かすのはやはり金ですね。

  • 投稿者 | 2019-05-28 16:49

    一つ一つの情景描写意味を探りながら読んだので知恵熱が出そうになりました。繊細な感性と私のようなホームラン級のバカでもグイグイ読ませる確かな筆力に勉強させていただきました。ひとつ、私に文学的素養がないのが原因だと思いますが「アナンが被害者ぶった態度をとったときが、僕がアナンを排除するときだ」の意味を考えるもエンタメ的な思考で解釈していいのか悩んでしまいました。

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