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メラヌーチア探検譚(第7話)

犀川鉄世

小説

1,126文字

寝床を探して鬱蒼とした密林を歩いていると、やがて人によって踏み固められたと思しき小径に行きあたった。
小径は幾度か分岐しながら次第に大きくなり、しばらく進むと小さな集落にたどり着いた。集落は不気味なほどに静まり返り、生活の気配は感じられなかった。
辺りは既に数レーテルほど離れたクルーの表情さえわからないほどの闇に包まれていた。一刻も早く寝床を確保しなければ、生きて朝を迎えられる保証はなかった。我々はわずかばかりの希望を胸に、廃村とも知れない集落に足を踏み入れた。

 

我々は集落の出入り口からもっとも近い住居に目星をつけた。建物に忍び寄り扉のない玄関から室内の様子を伺うと、なにかやわらかいものが擦れ合うような微かな物音が聞こえた。さらにしばらく耳を澄ませていると、複数人――少なくともふたり以上の寝息が確認できた。
我々は室内で眠っているであろう人物に向かって恐るおそる声をかけた。
すると目を覚ましたひとりが我々の前に姿を現した。ドゥデュ族と思しきその男性は、事情を尋ねようともせず我々を室内に招き入れた。
部屋の隅には、男性の妻と思しき妙齢の女性が幼い子どもが抱くようにして立ち尽くしていた。

 

我々は警戒を解くためにこれまでの経緯を説明し、ひと晩の寝床を提供してほしい旨を伝えた。途中でルヴェドとムズについて言及したとき、彼らの表情が俄かに綻んだ。
訊けばこの集落こそがムズであり、彼らはルヴェドと親しいようだった。さらに尋ねると、ルヴェドの代わりにガイドを依頼する予定だったメルジがすぐ隣の住居で暮らしていることがわかった。

 

我々は夫婦を伴ってメルジの住居を訪ねた。夫婦が呼びかけるとメルジは間もなく玄関先に姿を現した。メルジは女性でありながらルヴェドにも劣らない屈強な肉体の持ち主だった。
夫婦の助けを借りながら事情を説明すると、メルジは快く我々を迎え入れてくれた。

 

メルジは我々のために食事を準備するといって住居をあとにした。彼女が食事の準備をしている間、我々は今後の予定について話し合った。
既に三名のクルーが命を落としていることからもわかるように、この度の取材の危険度は想像をはるかに超えていた。一般常識というものに照らし合わせて考えるのであれば、速やかに取材を断念するべきだろう。しかし我々には取材を続けて真実を掴むことこそが亡くなったクルーたちに対する唯一の供養であるように思えた。

 

食事を手に戻ってきたメルジにガイドとして雇いたい旨を伝えると、彼女は急な依頼にもかかわらず快く了承してくれた。
ツェミウスの一種とおぼしき生き物の丸焼きで空腹を満たして間もなく、我々は気を失うようにして眠りについた。

2019年3月1日公開

作品集『メラヌーチア探検譚』第7話 (全8話)

© 2019 犀川鉄世

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