小説覇王伝サガワ~創作イベント「ノベルGIG」に参加したら美しすぎる編集者とえっち三昧の挙げ句ノーベル文学賞を受賞した件~

童Q正伝(第4話)

佐川恭一

小説

14,280文字

あああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ

二月某日、都内――私は二泊三日の合宿形式で即興小説を作るイベント「ノベルGIG」に参加していた、私は十年ほど小説を書いているのだがほとんどその収入はなく、本業としてしょうもない会社で係長をしているのだった、しょうもない会社なので係員もやばく、「チース、ダルいんで、昼から帰りまーす」などといって昼から帰るので、私は課長にしばかれるのだった、「お前、あいつ昼から帰るいうて、納期わぇ!」「あ、それはすみません、私がなんとか」「あいつにやらせな意味あらへんやろがぇ!」それで私は係長として係員にせまったこともある、「きみな、これはきみの仕事なんや、きみが仕上げなあかん、それが社会人としての勤めやんか」すると私は個人として係員に訴えられパワハラで敗訴、五十万円の支払い命令をくらった、「裁判長!」私は叫んだ、「こんなアホな話がありますかいな、こんなアホな話が!」すると裁判長は「静粛に」といった、「なんや文句あるんやったら控訴しはったらよろしい、あんたの鬼の所業、わしは五十万でも安い思てますわ!」係員は中指を立てて舌を出していた、「お前の五十万で、ソープ百回いこ!」係員はそういって法廷に高笑いを響かせた、図に乗りやがって、百回もいけるわけないのに……私は腹が立って腹が立って、控訴したくてたまらなかったが、再戦にかかる労力や弁護士費用を考えるとできなかった、会社はぜんぜん守ってくれなかった、「お前の指導ミスやろがぇ!」というばかりだった、五十万円あれば、と私は思った、キャバクラで一晩ヒーローにもなれるし、十八頭立てレースの三連単も全通り買える、ソープ百回は無理にしても二十五回はかたいし、即尺×のあの子のおくちにいきなりINすることだってできたはずだ、それら無限の可能性をすべて係員に奪われたのだと思うと涙が出た、あの係員がキャバクラで一晩ヒーローになったり、三連単で爆勝ちして一等地に注文住宅を建てたり、ランキング嬢を札束でひっぱたいて即尺を愉しんでいるところを想像すると、私は気が遠くなるのだった、もう我慢ならん、こんな会社やめたらあ! と思いもした、だがそれは思うだけだった、やめたら生活がパーなのだ、絶対にやめられない、ここにいればなんとか生活はできる、それでじゅうぶんだと思っていた、ほかの方法を探るちからは私に残されていなかった、私はそういう生活のつらみなどを小説に書きつけたが、ほとんど黙殺されたといってよい、「うわあ、わかります、わかります!」そういわれることはあった、「サガワさんの小説、好きだなあ!」「かなりの腕前っすね!」「賞レース余裕っしょ!」などなどいわれることもあった、しかし少し値段をつけて差し出すと、誰も見向きもしなかった、結局のところ、私の小説はたんなる趣味としかいえなかった、元はといえばプロを目指し、仕事をやめる意気込みで書きはじめたのではあったが、十年もたてばその頃の気持ちは萎えていた、この十年、若い才能がたくさんデビューし、すでにベテランの凄みを備えた熟年者もたくさんデビューした、私はそのどちらでもなかった、私の小説は私の書いているあいだだけ存在した、そして私が書き尽くしたあと、それは誰にもみえない虚空をさまようばかりなのだ、何度か出してみた電子書籍も恐ろしいほど売れなかった、私はよくスマホでリロードしたものだ、自作のアマゾンランキングが上がってないかと思いリロードリロード、それでさんざんギガを食ったものだ、たまにピョコとランキングが上がっていることもあった、それだけで一日ご機嫌だったりもした、だがそんなことは何も人生を変えなかった、もっとも、いまではそのピョコすらないわけだが……そんなある日のこと、課長が私の机を蹴りつけながらいった、「お前、係員の教育も仕事やぞ? 誰も定着してへんやろがぇ!」私はそのとき虫のいどころが悪かった、それでつい反発してしまったのだ、「はあ? そんなら係長が育たんのは、課長の責任やろがぇ!」すると騒ぎにブチ切れた部長が部長室から飛び出してきて、課長を猛烈にしばきまわした、そして課長の薄くなった髪をつかんで吊るしあげた、「お前、ゴチャゴチャ抜かしとったらパチキかましたんぞ!」課長は「すみません! すみません!」といっていた、ほどなく課長は元気をなくしうつ病となった、課長は休職し、私は部長の攻撃を直接受けることとなった、部長の攻撃は課長のものよりかなり厄介だった、課長は「係員の指導不足」の一点張りだったが、部長は強烈な左フックをはじめ、左ジャブから懐に入りこんでの右アッパー、正確無比なワンツーパンチ、左ジャブからの消える右ハイ、髪をつかみ上げての百烈ビンタ、毒霧から一歩引いての後ろ回し蹴り、さらには私を椅子にガムテープで固定した上でのかかと落としなど多彩な技を繰り出したので、予測も対策も不可能だった、そしてこういうのだ、「お前、納期わぇ!」もう全然間に合うはずがない、しかし私はいつも「すみません! なんとかします!」といった、そしてなんともならないのだった、私は、課長、と思った、私は課長に守られていたのだ、この部長の攻撃を、課長は何年もしのいできたのだ、係長の私に矛先が向かないよう、盾になってくれていたのだ……課長席には遺影が飾られている、部長が飾ったのだ、「会社休むようなやつは死んだのと一緒! 以上!」部長はそういった、遺影の課長はまだ髪がふさふさで、ラコステのゴルフウェアを着ていた、「いつの写真ですか?」ときくと、部長は遠い目をしていうのだった、「これはな、あいつが係長になったとき、課長やったわしとゴルフコンペ行ったときの写真や、この頃はわしもあいつも希望に燃えとった、会社の業績もよくて、よう一緒に遊びに行ったもんや、悪さかていっぱいした、もうあの頃のあいつは戻ってこん、そしてあの頃のわしもな……」部長は肩を落として部長室へ戻っていった、私が「ノベルGIG」なるイベントを発見したのはその夜のことだった、二泊三日で著者と編集者が集まり、チームを組んで小説で競い合う、私はノベルGIGに参加することで何かが変わるのではないかと期待した、しかし私の会社は事実上週休一日、祝日は無視のファイトスタイルなので参加は危ぶまれた、だが私は意を決して部長に打ち明けた、「じつは私、小説を書いているのですが、このイベントに私の人生をかけて参加したいと思っております、なんとか二月にお休みをいただけないでしょうか」部長はノータイムでにぎり拳を机に叩きつけていった、「お前、納期わぇ!」それで私は正攻法をあきらめ、インフルエンザの診断書を偽造して会社に送りつけたのだった、「マスクしてすぐにこい、サージカルマスクや!」そうメールが入ったが無視した、部長のメールを無視したのはこれがはじめてだった、続く無数の着信もすべて無視、決死の覚悟でノベルGIGの会場に入ると私と似たようなおっさんがウヨウヨおり、それ以上にたくさんの美女がいた、私の部署は男ばかりだからか、部屋の匂いを嗅いだだけでクラッときた、そして久々に勃起した、それだけなら良かったのだが、私は朝のトイレのあとうっかり社会の窓を全開にしていたので、息子がズボンの裂け目からニョキしていた、「うわヤベェ!」私は何事もなかったかのように息子をしまいこみ、チャックを閉めて席についた、誰にもみられなかっただろうか、この美女たちに勘付かれてはいないだろうか……噴き出す汗をぬぐっていると、隣のすさまじくフローラルなかほりを放っている超絶美女がいった、「ウフフ、結構いいモノもってるじゃない、あなたのおちんぽ、嫌いじゃないわよ」美女は編集者として参加しているのだといった、私は緊張して自己紹介もまともにできなかった、ぼ、ぼくは著者なんだな、ぼ、ぼくは、ちょ、著者なんだな……といっていると、優しく頭をポンポンされた、「フフ、ほんとかわいいわね、おちんぽぴゅっぴゅしたげようか?」そうしてノベルGIGが開戦した、最初に出版界では知らぬ者のない著名人がありがたい講演を行なったが、美しすぎる編集者はそのあいだ私の股間をまさぐっていた、よって講演の内容はすべて忘れてしまった、続けて編集者たちが「私と組んでみない?」的なプレゼンを行ったが、そのあいだも股間をまさぐられていたので内容はすべて忘れてしまった、股間をまさぐられていないときのプレゼン、すなわち美しすぎる編集者のプレゼン内容については、美しすぎる編集者にみとれていて覚えていない、つまり私は何ひとつ覚えていないのだった、「それでは組みたい編集者を選んでください」私は美しすぎる編集者一択だったが、やはり男どもがワラワラ群がった、「おれは美しすぎる編集者と組むぜ」「僕も美しすぎる編集者さんにもっとも可能性を感じました」「わいも美しすぎる編集者はんのプレゼンが胸に響きましたで!」私は軽く勃起している男性作家たちをみて、品性下劣な豚どもめ、ものごとの本質をみようとしない、表層を撫でさするのみでじゅうぶんな満足を得るあわれな畜群どもめ、と思ったが、私もすでに美しすぎる編集者にぞっこんLOVEで、内なる声はむなしく響くのみだった、男どもは衝突をはじめた、「そんなら誰と組むか、どうやって選んでもらうねん」「公平にジャンケンにしましょうか」「なんやねんそれ、そんな運だけで決まるようなもん!」「どうでしょう、即興で二千字の小説を書くというのは」「うーん、時間がかかりすぎますよ」「ほんならここは腕相撲でどうや?」「あなたねえ、腕力で決めてどうするんですか、小説と腕力に何の関係があるんですか、私はね、高校生クイズだって知力だけで勝負してほしいんですよ、あれは知の甲子園なんです、変にマラソンとかカヌーとか、スポーツの要素を入れるべきじゃないんですよ、あなた、野球の甲子園の準々決勝でセンター地理を解かされたらどう思います? センター地理の設問に正解しなければバットを振る権利をえられない、などとやられたらどう思います? そんなの野球とは呼べないでしょうが!」おそらくこのクイズ男は開成高校の出身だろう、現役で東大文Ⅰに合格し法学部を卒業、順調に一流企業に就職したものの社会性のなさから挫折を繰り返しついにはリタイヤ、いまは親のすねをかじりながら小説で逆転しようと家に引きこもっているが、なかなか成果が上がらず藁にもすがる思いでこの企画に参加した、というところだろう……男はこう思っているに違いない、「この際、学歴で決めましょう、それがいいですよ、河合塾の出している偏差値表ならつねに携帯していますから!」美しすぎる編集者は、「そうね、それなら私が選ぼうかしら、あなたたち、ズボンを下ろしてくれる?」といった、私たちは秒でズボンを下ろした、すると美しすぎる編集者は白い手袋をはめ、ひとりひとりの息子と握手をはじめた、それが終わるころには全員がフル勃起していた、「そうねえ……」美しすぎる編集者がセクシーな指先を唇に当てながら考えているあいだに、開成高校がウッと呻いた、なんと開成高校は射精していた、もう触れられてもいないのに……開成高校は顔を赤くして、「すみません、すみません」といいながらラルフローレンのハンカチで精液を拭き取り、逃げるように部屋を出ていった、そして二度と戻ってこなかった、たぶん私の人生において、開成高校と話すのはこれが最初で最後だろう、あの男がほんとうに開成高校だったとしたらだが……そのあと美しすぎる編集者は、おもむろに私のくちびるにキスをした、男どもは、エッッッッッという顔をしていた、私は後にも先にもこれほど甘美な勝利に酔ったことはない、美しすぎる編集者はもうひとり、リスカ跡のヤバいメンヘラ女子を担当することとなった、メンヘラ女子は「あたしメンヘラ小説を書きにきたの、メンヘラ小説家は本谷有希子ひとりでじゅうぶん、そう思っていたころがあたしにもあったわ、でもいまの本谷有希子をみてよ、不器用に生きる人びとを滑稽に描きながら、じぶんもまたそれに寄り添いほとんど同化していた、あのすばらしかった本谷有希子は死んだ、ウェルメイドな大人の童話作家になった、そんなものは本谷有希子じゃない、そんなもの本谷有希子だなんて誰にも呼ばせない、つまりいま、あたしこそが本谷有希子なのよ!」と叫んだ、本谷有希子は「あたしブロンキメてきたの」といった、「フフフ、あたしヤク中なのよ、ブロンなしじゃ立ってらんないの、ha、ha、ha!」そういいながらさらに錠剤を追加しはじめた、「あんたあたしとセックスしたいと思ってるね、あたしにはわかるよ、ごまかしたってだめ、あんたあたしのまんこしゃぶりたいと思ってる、こういうメンヘラ女をグチャグチャに犯してみたいんでしょ? 狂わせてみたいんでしょ? でも結局それだけ、あたしとほんとに付き合いたいなんて誰も思わない、誰もあたしを愛してくれない、でもあたしは何も間違えてない、何かを間違えてこうなったわけじゃない! どうせあんたもあたしのこと、まんこ以外に価値のないキチガイだと思ってるんでしょ!」本谷有希子がすごい勢いで迫ってきたので、私は思わず「えっ、はい!」といった、「ファーーック!」本谷有希子は突然炎に包まれた幕末の亡霊のように笑い出し、カッターナイフで思い切り手首を切った、ピュッと血が飛んで私にかかった、テメェ、クリーニング代出せや! 二千円でええわ! といおうとするやいなや、本谷有希子はカッターナイフとエスエスブロン錠の瓶を取り落としてぶっ倒れ、スタッフに担架で担ぎ出されていった、そして二度と戻ってこなかった、ありがとう本谷有希子、さようなら本谷有希子、ほどなく主催者っぽいひとがいった、「今日のテーマを発表します! テーマは、『平成』!」周りをみると、家からもってきたプロットにどう平成をこじつけるか悩んでいるやつや、私は小説を書くとき、ただひたすら待つのだ、感覚を研ぎ澄ませ、小説の走る滑走路を丁寧に整備する、そして待つ、やがて、あれがやってくる、小説の魂とも呼べるあれ、それなしではなにものも小説と呼べない、そのようなあれがね……といっているやつもいた、私はノープランでソッコー執筆をはじめた、むしろノープランでないと書けないのだ、美しすぎる編集者はまだ支離滅裂なはずの私のテクストをみていった、「私、あなたにBETするわ、あなたにはすばらしい才能がある、私が保証するわ!」美しすぎる編集者は後ろからぎゅっと抱きついてきた、私は背中におっぱいを押しつけられると小説が書けないたちだ、「すみません、ちょっと、集中したいんで……」いつもの私ならそういって振りほどいていただろう、しかしどういうわけか、美しすぎる編集者のおっぱいは私の脳を逆に活性化させた、私はかちんかちんに勃起した、これだけ勃起したら一発抜かねば何も手につかなさそうなものだが、私の海綿体に流れ込んだ血液はそのまま小説を書くエネルギーへと変換された、私は筆を止めることができず、なんと初日で初稿を上げてしまった、美しすぎる編集者はそれをみていった、「なんてすばらしいの、直すところは、ないわ!」よってそれがそのまま最終稿となった、まだ午後の三時にもなっていなかった、その後血まなこで原稿を書いたりデザインに腐心したりしている参加者を尻目に部屋を抜け出し、ホテルでめちゃくちゃセックスした、私は美しすぎる編集者にむしゃぶりついた、美しすぎる編集者はあらゆる性技を駆使して私を悦楽の海に溺れさせた、私は何度もぴゅっぴゅした、我慢しても我慢してもぴゅっぴゅしてしまうのだった、息つく間もない快感のなかで私は思った、よし、おれはもう、ホテルを出ないぞ! ノベルGIGなんて知ったことか! 私はそれが暗黒の社畜生活から脱出するための重要なイベントだということを、ここに来る前に固めていたはずの悲壮な決意を、もはや思い出すことができなかった、この美しすぎる編集者とあと二日間くんずほぐれつできるのなら、おれの人生は大成功だ、以後あの重くつらい労働の日々が死ぬまで続こうが、おれはこの三日間のために人生の成功者を名乗ろう、どうだ、おれは至福の三日間を過ごしたぞ、お前ら全員の人生をすべて足し合わせても、おれのこの三日間にはかなうまい! みずみずしい禁断の果実を囓ってしまった私は一日に九回の射精を達成した、高校時代に記録した七回をなんと三十一歳で塗りかえたのだ、私はじぶんの内にねむるパワーが解放されてゆくのを感じた、私は二日目もセックスし、三日目もセックスした、最終日の午後を前にして、美しすぎる編集者が「結果発表を聞きに行くわよ」といった、しかし私は行きたくなかった、少しでも長く天国に住んでいたかった、そして――どういう経緯でそのような言葉づかいになったのかわからないが――「やだモ! もっとここにいるモ!」といった、美しすぎる編集者は「こんなこと、いつでもできるわよ」といった、「いいから行きましょう」私は卒倒しそうなほどうれしかった、このイベント期間を過ぎても美しすぎる編集者が関係を継続してくれる、そのように聞こえたからである、会場では主催者っぽいひとが激怒していた、「これから結果を発表しますが、はじめにひとつ断っておきます、ひと組だけ一日で作品を書き上げて遊んでいたようなのがいましたが、それは到底真摯な姿勢とはいえません、文学への冒涜とさえいえるでしょう、よって、その作品のみ外して審査を行いました」私は思わず立ち上がって「なんやと!」といってしまった、「一日であかんのが、三日やとええんかい! そんなんいうんやったら、三日で急いで書いとんのも冒涜やろがぇ! そんな中途半端なもん書かす、このイベント自体がなめとるっちゅうことになるんとちゃいますか? あんたら三日でこの完成度はすごいとかパネェとかゆうて盛り上がっとるみたいやけどな、金払って読むほうからしたらですよ、お前らが何日で書いたとか、知らんわって話ですやん!」美しすぎる編集者はケタケタ笑っていた、主催者っぽいひとは「いますぐ出ていきなさい、きみは失格だ!」といった、私は失格した、私は人生をかけて参加したこのイベントで、部長のお怒りメールを無視してまで参加したこの闘いで、ただただ失格したのだ、私は真っ青になって会場を出た、「二度とくんなよ、チンポマン!」参加者のひとりが私の背中に向けていった、私は振り返る気力もなかった、私が駅に向かってトボトボ歩いていると、美しすぎる編集者が追いかけてきてこういった、「あなた、気にすることないわ、あなたの才能は必ず花開く、私が開かせてみせるわ!」それから私たちはノベルGIGで書いた作品をもって出版社を回った、美しすぎる編集者が私の作品の魅力を語る準備を整え、万全の態勢で臨んだのだが、出版社どもは例外なく私たちを門前払いした、新人賞に出してください、新人賞に出してください、新人賞に出してください、新人賞に出してください、新人賞に出してください、五連撃を受けたとき私はめまいがして倒れてしまった、「すみません、少し気分が……」しかし出版社は顔色ひとつ変えず「お帰りください」といった、「新人賞に出してください」出版社というのはAIか何かなのか? 私はひどく落ち込んだ、しかし帰りみち、美しすぎる編集者が「大丈夫よ、あなたの才能を認めてくれるところがきっとあるわ、おちんぽぴゅっぴゅする?」といってくれたので、たまらずセックスした、美しすぎる編集者がベッドに寝そべり口を開いたので、私はそこに息子をあてがった、すると美しすぎる編集者はねっとりと息子をなめあげ、ゴールデン・ボールまでもぬるぬるとお掃除してくれた、私はぎちぎちにそそり立った息子を後背位で突き入れた、美しすぎる編集者の背中には翼が生えてみえた、私は、私はいま、天使を犯している! 私は簡単に射精してしまった、しかし美しすぎる編集者が「もう♪」といいながら息子をつんつんすると、なんと数秒で復活したではないか! その日は八回戦まで行った、それで次の日仕事に遅刻してしまったのだ、「お前、なめとんか?」部長は猛スピードで詰め寄ってきた、「こないだは勝手に休みやがって今度はあれか、寝坊ってか? ブチ殺したろかぇ!」部長は琉球古武術において使用されるトンファーを携えて本気の目をしていた、かつての私ならば金玉ごと縮み上がっていただろう、しかし私の金玉はいきいきと躍動していた、「ぼく、金玉!」といって飛び跳ねていた、きっと天使がなめてくれたからだ、鼓動も平常時と変わらなかった、それは、私には天使がついているがお前にはついていない、そういう圧倒的な優越感によるものだっただろう、私は寝坊を謝ってからいってやった、「しかし、入社からこれまでのサービス残業ぶんを考えれば、私にもいいたいことはありますよ!」すると部長はものすごいコンビネーションを繰り出してきて、気づけば私は右足の靭帯をやっていた、病院に行くと全治半年で、「治ってからも階段を一段とばしとかはやめた方がええね」といわれた、私はこれまで、上るときも下りるときも、必ず階段を一段とばししていたのに! それでさめざめ泣いていると、美しすぎる編集者が私の右足をおっぱいではさみながら「そんな会社は辞めなさい」といった、「私が面倒みてあげるわ、だから辞めてしまいなさい」願ってもないことだったが、さすがにそこまで世話になるわけにはいかない、そこはまともな人間としての最後の一線であるという気がした、「それはできないモ、金はじぶんで稼ぐモ」すると美しすぎる編集者は私にすさまじくえっちなキスをしながら、両乳首を中心にフェザータッチしはじめた、息子は一瞬で制御不能となり、これ以上の勃起は無理だ、というところからさらに勃起するということが続いた、勃起に次ぐ勃起に私は恐怖さえ感じた、「ウッ、ウアァッ、や、やめるんだモ、頭がおかしくなるモッ!」美しすぎる編集者はかまわず続けた、いったい乳首をどのようにさわっているのか? まるで十人の天使に一度に触られているようだった、私は「モホァアーッ!」と叫びながら射精した、一度も触れられていない息子は大量の精液をぶちまけ、「なにが起こったのかわからない」というような顔をしていた、「どうして、乳首だけでこんな……」私はその道に詳しいAV男優の友人にきいてみた、「じつはこないだ乳首だけでいっちまったんだ、そういうことはじっさい、ありうるのだろうか?」AV男優は腕を組んでしばらく考えこんだ、そしていった、「もしかすると、そいつはMARA先端科学技術大学院大学の卒業生なのじゃないか? 乳首だけでいかせるってのはMARA先端科学技術大学院大学のプログラムのひとつだ、しかしそこで扱っているのはあくまでも理論だけだ、実践にたどり着くことができるやつは百年にひとりいるかどうかだと、おれは聞いているがね」AV男優はiQOSを吸いながら続けた、「そんな女がいるなら、ぜひ一緒にAVをつくりたいね、乳首責めだけでいかせるなんて、前代未聞のAVがつくれるぜ! 画的には地味かもしれないがね、芸術としてのAVというのをおれは考えているんだ、いいかね、AVはもっとも規制に縛られない映像表現なんだ、規制に屈している商業映画なんてぜんぶクソだ、あんなものは映画と呼べない、むしろ映像界で最低辺をなしているAVにこそ最高の芸術をやれる素地がある、おれはそう思っているんだよ」「ふうん」私は急いで帰宅した、そして美しすぎる編集者のSNSを調べてみると、しっかりMARA先端科学技術大学院大学卒と書かれているではないか! 私はMARA先端科学技術大学院大学のサイトを調べてみた、すると美しすぎる編集者が神武以来の天才としてトップページで紹介されていた、美しすぎる編集者はあらゆる《先端》を扱うための最高峰の技術を完全に習得し、現在世界中で争奪戦が行われている、世界水準のテクノロジーを次々に開発する多くの国際的企業や研究機関が、もはや彼女なしに《先端》を扱うことは自殺行為だ、とまでいっている……私は愕然として、そのページをモノクロ印刷した、そして美しすぎる編集者にみせながらいった、「きみがこんなにすごい人間だとは知らなかったモ、おれみたいなごみに時間を割いてもらって悪かったモ、おれにかまわず、きみはきみの人生を生きてほしいモ(泣)」すると美しすぎる編集者は、私の息子にローションを垂らし右足の親指と人差し指の間にはさみこんだ、「アッ、アッ、それダメだモ!」私は三、四度コかれただけで情けなく果ててしまった、美しすぎる編集者はそれでも飽き足りず、すぐさま私の息子の先端にヴァギナでキスの雨をふらせた、そうしてバキバキに勃起した息子をズルリと飲み込まれた瞬間、あまりの快感に意識が飛んでしまった、美しすぎる編集者とからみあった指は気づけば会社への辞表を書いていた、美しすぎる編集者に丁寧に舐めぬかれた足は気づけば超高級タワーマンションへ向かっていた、なんと天使はその最上階、七十階の部屋を一括で買ってくれたのだ、「ここで同棲しましょう、そしてあなたは思う存分小説を書くのよ、ほかのことは気にしなくていいわ」五十五階にはジムが、六十七階にはレストランがあった、トレーニングによる筋肉への心地よい刺激が、一流シェフによるさまざまな国の工夫に満ちた料理が、創作に疲れた頭を癒してくれた、そしてまた、私はテクストの海へダイブする活力を得るのだ……私は毎晩ガラス張りの一角で壮大な夜景を眺めながら、美しすぎる編集者を立ちバックで突いた、美しすぎる編集者はそれが好きだった、「なんだか、世界に私たちふたりだけ、という感じがするの」「ああ、おれもだモ……」ジム通いで筋力を増した私のセックス技術はうなぎ上りで、セックスが楽しくて仕方なかった、住人たちとパーティを開くこともあった、私はアルマーニやヒューゴ・ボスのスーツを着て、エレガントな貴婦人たちと肩を並べオシャレな会話を楽しんだ、私は、これが一流ということだ、と思っていた、これこそ一流の生活、と思っていた、そしてとにかく小説を書き続けた、そんな生活が三年続いた頃、私はすっかり一流のマナーを、一流の仕草を身につけていた、だがそれはすべて美しすぎる編集者のおかげだった、じぶんのちからでは何も為していなかった、小説もさっぱり芽が出なかった、なんと三年ものあいだ、私は一円も稼がなかったのである! これはかなりきついものがあった、そしてあの底辺の会社でがんばっていた数年間のことが思い出された、あの頃おれは会社がいやだとばかり思っていた、こんなひどい会社はほかにないと思っていた、しかしなぜあのクソみたいな日々が、こんなにも懐かしいのだろう……それから間もない春のことである、美しすぎる編集者が帰ってくるやいなや服を脱ぎ捨て、いきなり私の息子をジョイントしすばらしい形の桃尻をパンパン打ち付けはじめた、そしてひどく興奮しながら「あなたの小説がアメリカの文芸誌に掲載されるわ!」といった、私は尻と話している格好だった、私は、挿入したまま相手の尻の穴もうまく舐められる方法があればなあ、とぼんやり思った、それで小説のことは忘れていたが、二か月後ほんとうにアメリカの文芸誌に載ったようだった、英語だったのでじぶんの作品なのかどうかよくわからなかったが、名前はたしかに私だった、アメリカは私の小説に熱狂した、エクセレントとかワンダホーとかいっていた、アメリカ人がインタビューしに来たこともあった、アメリカ人が「ペラペーラ」というと、美しすぎる編集者は「あなたにとって小説とは何ですか?」といった、私は困って、「小説は、うーん、小説ですわな」といった、美しすぎる編集者は「ペラペーラ」といった、それでインタビュアーは満足していた、アメリカの文芸誌が届くと、私のインタビューはかなり大きく扱われていた、美しすぎる編集者に訳してもらったところこういうことが書いてあった、「日本の奇才、キョーイチ・サガワにとって小説とは小説である、それは一見無意味なトートロジーにすぎないが、キョーイチ・サガワの意図するところはおそらく違う、かれは小説を定義することの無意味を鋭く見抜いている、かれの作品の圧倒的質量そのものがかれの『小説』であり、それは作品の外で語るいかなる言葉によっても補完することのできないものなのだ……」私は、何いっとんやろ、と思ったが、悪い気はしなかった、するとすぐにイングランドやフランスから取材が押し寄せ、ロシアや中国もその噂を聞きつけた、イタリアとポルトガルもやってきて、ナミビアとインドネシアも熱心だった、そしてついに日本からの取材がきた、それはもうめちゃくちゃきた、私は忘れていなかった、あの屈辱の五連撃を、怒涛の「新人賞に出してください」を……私はあのときじぶんをコケにした文芸誌のすべてに対して取材をお断りした、私は貴様らに黙殺された、私を評価してくれたのはアメリカだった、いまさら貴様らの紙面を埋める手伝いをする気はない、貴様らに私の活躍を喜んで欲しくなどない! 私はすべての作品を海外で発表した、もちろん日本語で書いて、美しすぎる編集者が訳すのである、美しすぎる編集者の語学力は圧倒的だった、海外では美しすぎる編集者が美しすぎる翻訳者として注目された、アメリカのゴシップ誌を翻訳アプリで読み解いたところ、「あらゆる言語を自由自在に操る気鋭の翻訳者であり、同時にキョーイチ・サガワのフィアンセでもある、われわれはキョーイチ・サガワに嫉妬を禁じ得ない」とかなんとか書かれていた、フィアンセ? と私は思った、私は美しすぎる編集者にきいた、「あの、おれたちは、婚約してるのかモ?」すると美しすぎる編集者は顔を朱に染めたのだった、「あ、あの、ついフィアンセっていっちゃったのよ、同棲もしてるし、あなたが私のことをどう思ってるのか、あまりよくわからないけど、あの、私はあなたと、その、け、結婚したいと思っています……!」私たちはその夜夢中で交わり、ありとあらゆる体位で絶頂を繰り返した、そして翌朝に婚姻届を提出した、私は妻をもった人間として恥ずかしくないはたらきをせねばならなかった、それまで以上に死力を尽くして小説を書き続けた、すると私の原稿料と印税はなかなかのものとなり、やがて世界じゅうの文学賞にノミネートされるまでになった、そしてかなりの確率で受賞した、フランツ・カフカ賞、エルサレム賞、ブッカー賞、ネリー・ザックス賞、ヤヌシュ・コルチャック賞、ロータス賞、カンピエッロ賞、ゴンクール賞、李箱文学賞、ビブリオテーカ・ブレーベ賞をとり、私は世界最高の作家のひとりに数えられるようになった、世界の名だたる作家たちと対談する機会にも恵まれたが、私は相手の繰り出してくる難解きわまる話をまったく理解できなかった、美しすぎる編集者がかみ砕いてくれてもなお理解できなかった、それであいまいに相槌を打ちながらふわふわしたことをいっていると、相手が「キョーイチ・サガワ、あなたはやはり恐ろしい作家だ!」とかなんとかいって、キョーイチ・サガワ論を書きはじめたりした、世界じゅうのキョーイチ・サガワ論を美しすぎる編集者ができる限り訳してくれたが、私にわかるレベルのものはひとつもなかった、だが、そうした博覧強記の作家たちのどの作品を読んでも、なぜか私は負けていない、そういう思い上がりじみた確信だけは私のなかに強く芽生えていた、私はそうしてやっとじぶんに誇りをもつことができたのである、やがて私はノーベル文学賞を受賞した、三十七歳になる年のことだった、これはイギリスの作家ラドヤード・キップリングの最年少記録を大幅に塗り替える偉業だと大きく報じられた、私はノーベル賞の受賞記念講演で人生を振り返りながらいった、「作家としての私のスタートは、やはりジャパンで行われたノベルGIGという創作イベントです、あのとき、もし私の息子がニョキしていなければ、いまの私はなかったでしょう、これは私だけでなく、良き理解者であり世界最高の翻訳者である妻、ならびにあのときニョキした私の息子に与えられた賞でもある、そのように思います」ブラボー! ブラボー! 私はストックホルムで熱狂的な拍手を受けた、聴衆のなかには私の話に興奮してニョキしてみせている者さえいた、私はあの日のじぶんをみているような気がしたものだ、帰国すると空港にはマスコミがすし詰めだったが、私はまともに取り合わずに歩いた、「受賞おめでとうございます!」「G7の話からしたほうがいいんじゃないか?」「このよろこびを誰に伝えたいですか?」「G7の話からしたほうがいいだろう」「それでは、G7をすべてお答えいただけますか?」「えー、日本、アメリカ、イギリス、フランス」「はい」「中国……」「ブー!」「え、ちがうの」「ちがいます」私と記者どもの激闘は小一時間にわたった、それはあまりにも苛烈だったため、私はしまいにはG20まですべて答えられるようになっていた、大変苦労して空港を出ると、そこにはなんと、かつて勤めていた会社の課長と部長がいた、そしてあのときの係員も……もはや怒りの気持ちは湧いてこなかった、ただただ懐かしさが胸に満ちて自然と笑みがこぼれた、課長が「元気そうやな」といったので、「課長こそ、元気そうで何よりです」といった、部長は「お前も、なんやえろうなったな」といったので、「部長に鍛えられたおかげです」といった、係員は「これ、四十八万二千円返します」といった、「あのとき結局、ソープ一回いったら、性病になったんで……」その夜、私たちは飲みに飲んだ、そして昔話に花を咲かせた、なんだか私も会社員に戻ったような気分だった、しかし私は会社員としての人生を二度と取り返すことはできない、会社のなかで不条理に耐え、歯を食いしばり、たまの休みがたまらなくうれしかった、あの感覚をもう二度と味わうことができない、私は作家としての人生を選んだのだ、ふたつの未来を真に同時に選ぶことは誰にもできない、しかし全霊を注いでひとつの道を選択しひとつの道を捨てる、そこには胸を締め付けるような寂寞だけでなく、光輝ある黄金の陶酔もまた同居していよう……私は今日も原稿を書いている、じぶんの信じた道を突き進んでいる、そしてかたわらにはつねに私を理解し、励まし、愛してくれる、世界最高のバディがいるのだ、こんなに幸せなことはない、私は私の人生を心から愛している、仮にこれが私の妄想だったとしても、私がまだノベルGIGに参加せず、ブラック企業で上司に殴られている段階にとどまっているのだとしても、私はこのような未来を自在に想像できる、そのことのみによってすら、じぶんの人生を愛することができる、あなたがたはどうだろうか? このテクストはいま私の想像/現実の《先端》に限りなく近づいたため、もはや私に語るべきことはない。

2018年12月9日公開

作品集『童Q正伝』最終話 (全4話)

童Q正伝

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© 2018 佐川恭一

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"小説覇王伝サガワ~創作イベント「ノベルGIG」に参加したら美しすぎる編集者とえっち三昧の挙げ句ノーベル文学賞を受賞した件~"へのコメント 0

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