ヤク中の俺が異世界転生したら最強の薬剤師になった件(転生前4

ヤク中の俺が異世界転生したら最強の薬剤師になった件(第4話)

リーベンクイズ

小説

3,879文字

転生前はこれで終わりです。次話から異世界ハーレムチートが始まります。

「多剤服用が厳しくなったとかで、種類を減らされちゃったよ。その代わりに他の薬を試してみようって言われて、別の薬を追加されたんだ。追加された薬は多剤服用にあたらないんだって。なんて言ってたかな、タコだかエビだかそんな名前の薬」
 前歯が二本とも欠けた男がエメーリャエンコに向かって言った。男の欠けた前歯は根元からなくなっているわけではなく、中ほどからギザギザに欠けている。ペンチで折られたわけではないだろう。欠損部の黒ずみから想像するに、虫歯を治療しなかったため、こぼれ落ちたのだろう。
「エビリファイか。まあいい、いつもと同じ金額で買ってやる」
 エメーリャエンコはベルボトムジーンズのポケットから、千円札を数枚取り出し男に渡した。男からは頓服方法の書かれた紙が入ったビニール袋を受け取る。サインバルタとリフレックスとリーマスとデパスとマイスリーとエビリファイだ。どれも日本で処方できる最高容量を処方されている。エメーリャエンコはその中からリーマスだけを半分男に戻した。
「いつ血中リチウム濃度を調べられるかわからない。予防だと思って半分飲んでおけ。炭酸リチウムの吸収率は体質差が大きいから、予防的に毎日半分飲んでおけば、処方未満のリチウム濃度が出ても吸収しにくい体質だと思われれる。全く飲まなければ、簡単にばれるけどな」
「難しいことは良く分からないけど、これは飲んでおけばいいんだな?」
「そうだ。毎日二錠ずつ飲んで、診察のある日の夜は四錠飲め。多少ぼおうっとするかもしれないが、かえってそれがいい。うつ病特有の無気力感だと勘違いする。ぼおっとしたって生活に影響ないだろ?お前は仕事をしてないんだから」
 生活保護受給者は診療費だけでなく薬代も無料だ。エメーリャエンコは男に出来るだけ多く向精神薬を処方されるようアドバイスをした。
「いつも悪いね。助かってるよ。給付金だけじゃ競艇に行くことも出来ない、女も買うことが出来ない。ピンサロにすらいけないんだ。それって最低限な人間的生活を保障されていないってことだろ?生活を保護されてないってことだもんな」
「そうだな」
 エメーリャエンコは口だけで笑みを作った。それを見て男が立ち去ろうとしたところで、エメーリャエンコが声を掛ける。
「ちょっとまて。まだ終わってない。処方されているサインバルタについてなんだが、次の診療の時に変更してほしいと伝えてくれないか?サインバルタを飲んだ後に胸のむかつきを感じるとか、吐き気がするとか、腹の調子が悪いと言えばイフェクサーを処方してくれるかもしてくれない。イフェクサーなら一錠につき五十円上乗せして買ってやる。イフェクサーは今年認可されたばかりの新しい薬だ。薬効はサインバルタと大して変わらないが、新しい薬の方が欲しがる奴が多いんだよ」
「分かったそう言ってみるよ。しかし俺は役者になれるんじゃないかな?うつ病でもないのに医者は俺の事をうつ病だと信じ込んで色々と処方してくれる。役者でも目指そうかな」
 エメーリャエンコは医者も馬鹿じゃないから、詐病だと分かっていて最高量の向精神薬を処方しているんだと言おうとしたが、前歯のない男の笑い顔を見てると、別にそんなことを伝えないくていいと思い言いとどまった。男は千円札の束をポケットにねじ込み、エメーリャエンコに向かって右腕を上げてから去っていった。エメーリャエンコは男が見えなくなってから独り言ちた。
「虫歯で前歯の書けた役者なんていない」
 
 向精神薬より眠剤の方が高く売れる。そりゃ眠らせると名前が付いた薬の方が効くと思うだろう。だからマイスリーやアモバン、ハルシオンといった眠剤は高く売れるが、向精神薬の方が使い方によっては眠剤よりはるかに意識を失わせる効果が高い。眠剤をいくら飲ませても二十四時間ぶっ続けで眠らせることは出来ない。その点抗うつ薬はノルアドレナリンやセロトニン、ドパミンをコントロールできるために、眠らせる以外にも色々と役に立つ。四環系NaSSAとイフェクサーなどのSNRIを同時にキメれば媚薬にもなる。所謂カルフォルニア・ロケットやトウキョウ・ロケットだ。男であれば射精後の冷静期間を短くできるし、女であれば冷静にすらならなくなる。だからこの組み合わせを求める顧客からは定期的に依頼が来る。逆に統合失調症患者用の薬は扱いが難しい。ドグマチール程度であれば、ある程度を予想を立てられるが、それ以外は面倒なので積極的には勧めない。欲しいと言われれば渡すが、薬効の説明はしないし出来ない。どこかで、この薬がいいと聞いたからこそ依頼してくるわけだから、それを聞いたやつに使い方を聞けと言って、エメーリャエンコは何の説明もせずに渡している。
 覚せい剤は扱わない。自分と桜子が使う分を買うだけだ。覚せい剤を売買すると捕まった時に面倒だ。向精神薬や大麻を売買するリスクと比べ覚せい剤取締法がいかに面倒かエメーリャエンコは知っている。だから覚せい剤は必要な分だけ買って容量を守って摂取している。メタンフェタミンを炙りで数回摂取したからといって、気が狂うような気持ち良さが味わえるわけではない。食欲が無くなって眠気が無くなり、活動的になるくらいだ。そこに快楽なんてもの付いてこない。耐性を作った後に大量摂取するか静脈注射をして初めて、毛穴から射精する感覚が味わえる。
 大麻は覚せい剤とは全く違う。幻覚を見る事はないし、肉体的に気持ちよくなるわけでもない。饒舌になり多福感を覚える程度だ。この手の感覚はアルコールの方がずっと強い。しかし大麻の方が優れている事もある。饒舌になり多福感を覚え、異性を誘ってセックスすることになっても、アルコールのように男性器が機能不全に陥ることがない。それに他人との一体感を感じることが出来る。タバコより高額だから何人かで吸い回す。それが他人と一体感を感じる原因かもしれない。それにアルコールのような中毒症状も起こさない。タバコのようにニコチン中毒になることもない。その昔、麻農家の人は麻酔いと言って、麻を収穫する時の独特な高揚感を感じてていたらしい。その名残か、大麻取締法では大麻を吸うこと自体は規制されていない。大麻で捕まるやつらは皆所持していたから捕まるんだ。大麻を吸うだけなら何の罪にも問われない。パイプを貸してもらい吸うだけであれば何の罪にもならない。しょせん大麻はその程度のもんだ。東京でも生えている場所はたくさんある。知らないだけだ。アルコールは強い依存度があるから規制するのは分かるが、大麻に依存性なんてものは無い。だからそのうち諸外国のように罰則制定がなくなるだろう、未成年が酒やタバコを吸っても罰則規定がないのと同じだ。七十年代のフラワームーブメントのライブ会場では誰しもが大麻を吸っていた。最近ではヒップヒップ系ライブではハコの中で当たり前のように売買しているし、フェスでも芝の匂いに混じって大麻の匂いをよく嗅ぐ。もう大麻解禁は止められられないところまで来ているのだろう。
 エメーリャエンコは生活保護受給者と別れた後、新宿駅前のタリーズでコーヒーを飲みながら、そんなことを考えていた。そろそろ丸ノ内線に乗り桜子のマンションへ向かおうかと思っていたところで後ろから近付いてきた二人組の男の一人に肩を叩かれた。
「エメーリャエンコ・モロゾフだな?」
 エメーリャエンコは後ろを振り返ることはせず、額を右人差し指で二回搔いた後、静かに言った。
「そうだけど、お前は?」
 そう言い返した途端、一人の男がエメーリャエンコの肩を掴んだ。
「名乗るわけないだろ。そのまま後ろを向かずに席を離れろ。席を立ったらツレの背を見ながら出口に向かえ。絶対に振り向くなよ」
 男が肩から手を離すとエメーリャエンコはハイスツールから腰を上げる。そして肩を叩いた男を背に、ゆっくりと振り向く。店内は寒い位にエアコンが効いている。効きすぎている位だが、それでも不似合いな、暑苦しいダークグレーのスーツを着た男の背がエメーリャエンコの目に入った。男はエメーリャエンコが立ち上がったのを確認できたのか、入り口に向けて歩き出した。エメーリャエンコがそれを眺めていると、もう一人の男が後ろからエメーリャエンコのTシャツの裾を引っ張った。エメーリャエンコはそれを歩けとの指示だと受け取り、肩幅の広い男の後ろについて店を出た。男は店の入り口付近に止めたバンのドアを開け中に入る。その様子を眺めていると、背後の男がまた裾を引っ張った。声をあげることは出来るが、そんな事で警察の厄介になるのはごめんだ。エメーリャエンコはこのまま男たちの指示に従った方が得策だと考え、そのままバンの乗降口に足を乗せた。
「薬が欲しいならやるよ。仕入れたばかりで沢山ある」
 バンに片足を掛けながらエメーリャエンコは振り返ろうとしたが、後ろから頭を小突かれ男の顔を確認することが出来なかった。
「お前はバカか?そんなことで拉致するわけないだろ」
 男はそう言いながらエメーリャエンコの右腕に注射針を突き刺しポンプの中の液体を押し込んだ。エメーリャエンコは右腕から冷たいものが全身を巡るのを感じた。視界から色がなくなり、ハレーションを起こした世界が鼓動に合わせて点滅する。そして、ゆっくりと筋肉が弛緩していった。
「何を打った……ケタミンか?、俺は獣かってんだよ……」
 エメーリャエンコは崩れるようにシートに倒れ込んだ。

2018年10月29日公開

作品集『ヤク中の俺が異世界転生したら最強の薬剤師になった件』最新話 (全4話)

© 2018 リーベンクイズ

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