ヤク中の俺が異世界転生したら最強の薬剤師になった件(転生前3

ヤク中の俺が異世界転生したら最強の薬剤師になった件(第3話)

諏訪靖彦

小説

3,335文字

ソープ嬢のヒモ、エメーリャエンコ・モロゾフの日常。

 綾子がキャバ嬢の送迎に使っている黒塗りハイエースに紗香を押し込み、何処かに紗香を監禁するところまでは想像出来たが、それからの事をエメーリャエンコは知らない。エメーリャエンコは紗香がモスコミュールを飲み干した後に頼んだカルアミルクを半分ほど飲んだところで席を立った。綾子には二度、紗香に気付かれないよう言葉を選んで、紗香がどうなったのか教えろと伝えたが、綾子がエメーリャエンコに連絡してくることは無かった。だから紗香がその後どうなったか知らない。エメーリャエンコにとってキャバ嬢同士の争いなど、どうでもよかったが、仕事に影響が出ると困る。だからと言って、エメーリャエンコから綾子に連絡を入れることはしなかった。跡が付くと面倒だし、紗香が死んだのであれば新聞で知ることが出来る。それによって綾子が捕まったのであれば、同じく新聞に載るだろうが、一か月たった今でもそんな記事は載っていない。エメーリャエンコは桜子のヒモを続けていているし、綾子との繋がりは無くなったが、ブルーチアカクテルで宇宙との繋がりを保っている。二十畳以上あるリビングの真ん中でソファーに座り、背もたれに両腕を乗せて血管を冷やしているのだから、エメーリャエンコの知らないところで行動し、エメーリャエンコの知らない場所で綾子と紗香と黒服と、四人五人六人、何人が絡んだのか分からないが、手を取り合い踊ったのだろう。
 エメーリャエンコが座るソファーの後ろ、リビングから玄関へ続く長い廊下の先で、ガチャガチャと乱暴に鍵を回す音が聞こえた。桜子が返ってきたようだ。エメーリャエンコは桜子を迎えに行くことはしない。ソファーに座り何もない天井を見つめたままだ。ブルーチアをキメたばかりなので動きたくない。宇宙との繋がりを断ち切るような、ガチャりと二個目の鍵を開ける大きな音が聞こえたかと思うと、ドタドタと玄関が騒々しくなった。エメーリャエンコは目線を天井から外し、いや、元々天井など見ていなかったのだが、首をまわし玄関に目を向けた。
「今日のお客さん、指の爪切ってなかったんだよ。それも二人も。待合所の爪切りは何のために置いてるってのよ」
 桜子は帰ってくるなり、ヒールを玄関に散らかしながら愚痴をこぼす。そして玄関からリビングのソファーに座るエメーリャエンコの背後まで小走りで近づいてくると、一旦膝を立て、脱力したように尻から座る込む。ブルーチアを投入して気分よくなっているエメーリャエンコの背中から手を回し、へその上からTシャツを捲り上げると、長い爪をエメーリャエンコの浮き出たあばらから胸板にゆっくりと這わした。エメーリャエンコは現実に引き戻されるのが嫌で、その手を払いのける。桜子はエメーリャエンコが乗ってこないと分かると、白い革張りの悪趣味極まりないソファーを跨ぎ、エメーリャエンコの正面に移動してTシャツの中に頭を入れた。エメーリャエンコの身体からは覚せい剤中毒者特有の、柑橘類とアーモンドをハチミツで煮込んだような甘酸っぱい体臭がする。それが桜子の心を落ち着かせた。桜子は数秒間エメーリャエンコの胸に顔を埋めた後、メタンフェタミンによって敏感になったエメーリャエンコの左乳首を丁寧に舐めながら、上目遣いでTシャツの胸元からエメーリャエンコに顔を向けた。
 エメーリャエンコはこの女のヒモだ。生活保護受給者をそそのかして小銭を稼いでいるが、西新宿の高層マンションの家賃は桜子が払っている。桜子は職場に近いこの場所が気に入っているようだが、エメーリャエンコはあまり好きではない。再開発前のアンモニア臭漂う街の印象が強いのだ。だからといって文句が言える立場にはない。エメーリャエンコはここの家賃を一銭も払っていない。桜子は二十万以上する家賃の三倍をソープで稼いでくる。生理で一週間休んでもそれだけ毎月稼いでくる。もっと稼ぎたい時はピルを飲んで利用価値のない生理を捨てる。女の身体は売れるうちに売った方が良いと桜子は言うが、エメーリャエンコもその通りなんだろうと思う。
「私にも頂戴」
 そう言って桜子は舌を出す。桜子はエメーリャエンコと違ってポンプを使わない。注射針の痕が残ると客の付きが悪いそうだ。だからタトゥーも入れていない。生来の色素が薄く白く透き通った肌で体を売っている。真っ白な肌に青い血管を浮かび上がらせ。綺麗な体で体を売っている。だから桜子がメタンフェタミンを摂取するのは経口か炙りだ。
 エメーリャエンコは自分のTシャツの中に手を突っ込み、両手で桜子の栗色の髪を掴むと、Tシャツの外へ押し返す。前髪を作っていない栗色の髪は天然ものだ。色素が薄ければ髪の毛も明るくなるんだろう。桜子は気に入ってるようだが、エメーリャエンコは気に入ってはいない。エメーリャエンコは桜子に「お前は黒髪が似合っているよ」と何度か染めるように勧めたが、桜子は「そのうち染めるよ」と言うばかりで染めることは無かった。エメーリャエンコは外見を桜子の好みに合わせ必要はあるが、桜子がエメーリャエンコの好みに合わせる必要なんてない。エメーリャエンコは桜子の装飾物だ。連れて歩くのにはそれなりの格好をしていなきゃならない。だからエメーリャエンコは桜子の買ってくる服を着て、桜子の勧める外見だけで髪を切っているような軽薄そうな美容師に髪を切って貰う。どうせ長い髪は後ろで縛るのだから、どこで切ってもらおうと大した違いはないはずだが、桜子のしたいようにしている。
「ねえ、エメーリャエンコ。乱暴にしないで。もうちょっと優しく扱ってよ……」
 桜子はエメーリャエンコの膝に乗ると、左瞼の付け睫毛が斜めにズレた顔でエメーリャエンコを見つめる。エメーリャエンコの胸元に入ってズレたのだろう。メタンフェタミンを取り込んでる人間はとにかく発汗する。エメーリャエンコの汗でつけ睫毛の吸着剤が取れてしまったようだ。エメーリャエンコは桜子の睫毛を優しくつまみながら言った。
「そうだな、ごめん。だけどそうされると、毛穴からクスリの成分を持っていかれる気になるんだ」
 そう言うとエメーリャエンコはテーブルに置かれたガラスケースから、青みがかった透明の塊を取り出し、桜子に渡した。二十mg程度だが測ったりはしない。桜子はそれを受け取り半分に割ると、大きい方の結晶を口に含み、テーブルの上に置かれたシングルモルトで流し込んだ。桜子の口からシャリと何かが崩れる音が聞こえる。それがウィスキーと一緒に含んだ氷を砕いた音なのか、メタンフェタミンの結晶が崩れた音なのかまでは分からない。桜子は舌を出して大げさな仕草で飲み込んだことをアピールすると、もう一つの結晶を舌下に収めた。口径摂取するからと言って、なにも胃粘膜だけで分解するのではない。舌下粘膜と同時に吸収するのが効率的なんだ。
 桜子は目を瞑る。そしてエメーリャエンコの膝に乗せた尻を上げ足を前に投げ出すと、エメーリャエンコの太ももに跨ぐように座りなおした。桜子の足の間から湿り気を含んだ生暖かい感触が伝わり、エメーリャエンコもその気になってくる。
「これなら舌下で吸収しなくてもいいだろ?」
 そう言いながらエメーリャエンコは桜子の鼠径部から下着に手を入れる。桜子は元々薄いにも関わらず、仕事がしやすいとの理由で下腹部の毛を全て剃っている、そのためエメーリャエンコの指先は桜子の形をはっきりと捉える事ができる。エメーリャエンコは桜子の滑らからな筋に指を這わせると、粘度の薄い分泌液をすくい出し、下着から指を引き抜いた。人差し指と中指に纏わりつくテラテラとした分泌液を桜子の目の前に差し出すと、桜子は尊いものであるかの様にぼおっとそれを見つめた。
 エメーリャエンコに足の間をなぞられた程度では桜子は声を上げない。メタンフェタミンの方が強い刺激をもたらしているのだろう。エメーリャエンコは桜子の顔を左手で包むように支えると、分泌液で濡れた指を口へ突っ込んだ。そして唾液と混ざり合いクチャクチャと音を立てながら指先を器用に動かし、桜子の舌下から半分ほどになったメタンフェタミンの結晶を取り出す。桜子は虚ろな目で軽くエヅいた。
「さて、これはどこに入れようか?」

2018年10月20日公開

作品集『ヤク中の俺が異世界転生したら最強の薬剤師になった件』第3話 (全4話)

© 2018 諏訪靖彦

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