日夏少年記 第10章 学徒出陣

少年記(第19話)

永夜 はまか

小説

910文字

 駆馬兄さんの死の矢先、かの「学徒出陣」によって遂に日夏少年と晴立少年にも出兵のときが来る。
二人の間で様々な思いが交錯する中、日夏少年はある「けじめ」をつけておくことを決意する。

1943年、急にその日はやって来てしまった。9月21日のことである、学生にも出陣命令が出て、その壮行会を丁度1月後の10月31日に行うという知らせだった。

 僕は、理系ではなかったから、その例外ではなかった。
 この時になると、東京でも度々空襲が起き、度々、校内の防空壕への避難を余儀なくされていた。しかし、戦争に行くとなると話は違う。
 僕は不意に駆馬兄さんのことが頭をよぎって吐き気がした。僕は戦場で死ぬのか、と一瞬思ってしまった。僕は少し怖くなった。

しかし、嬉しいと思う僕もいた。遂に自分にも国のために戦える時が来たのだという気持ちもあった。

 そんな事を考えていると、新がやって来て、
「俺らも遂に戦争に行く訳やけども、実感沸かんな。そうや、お前、彼女にも話しつけとけよ。こんなこというのもあれやけど、俺ら、百パーセント生きて帰ってこれるとは限らんねんで」と僕に向かって呟いた。
 そうだった、と僕は思った。タイムリミットはもう1ヶ月しか無いのである。僕は彼女に伝えなければならないことがある筈だった。
 新は「百パーセント生きて帰ってこれるとは限らんねんで」と言ったが、実際は生きて帰れる人の方が珍しいぐらいかもしれないということは、僕には解っていた。
 そして、勿論、新も解っていた。解っていてもそう言わなかったのは、きっと、自分が死ぬかもしれないことを現実として認めたくなかったからだ。
     解っていても、目を逸らす新とそれを指摘しない僕。これは2人の間の暗黙の了解だった……。

そこまで、お互いの石が通い合っていた訳だが、1つ、わからないことがあった。

  結局のところ、彼は僕と彼女の間柄についてどう思っていたのか、である。
 彼は、結局、僕の背中を押してくれた辺り、彼は僕のことを応援している様な感じがする。
 しかし、そう言った時の彼の表情は悲しそうでもあった。しかし、今回ばかりは、戦争による自分自身の身の危険を恐れていたのかもしれなかった。僕には解らなかった。
 僕は、考えるのを止めた。そして、彼に言われた通り、彼女とのけじめを付けておくことにした。

2017年9月13日公開

作品集『少年記』第19話 (全21話)

© 2017 永夜 はまか

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実験的 少年 純文学 青春、戦争、死

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