日夏少年記 第8章 駆馬兄さん〈中編〉

少年記(第17話)

永夜 はまか

小説

686文字

 恩人である駆馬兄さんが遂にガダルカナル島に出兵するという知らせをきいた日夏 轟は、兄さんの死を覚悟できずにいた・・・・

その後も、僕と駆馬兄さんの本の貸し借りは兄さんが僕より2年先に高等学校に入学するまで続いた。

駆馬兄さんは19歳で高等学校を卒業し、1939年、僕より2年早く東京帝国大学に入学し(工学部)、1941年に卒業した。(1年間だけ僕と被り、その間だけ本の貸し借りが再開した)

 

その後、彼がどうなったのか僕は知らなかっ た。

 

僕が次に彼の名前をきくことになったのは、『欲しがりません勝つまでは』が「国民決意の標語」コンクールで入選した1942年の7月の終わり頃のことである。

「駆馬兄さんのもとにも遂に赤紙(旧日本軍の召集令状)が来た」という内容の電報が母から送られてきた。その電報によると、駆馬兄さんはガダルカナル島というところに行くらしかった。

 

その時すでに、僕の近所の人でも何人もの人が戦争に行っていた。そしてそのうちの何人かが死んだという話を母から聞いていた。

駆馬兄さんが死んでしまうかも知れない・・・・?

 

そんなことはあまり考えたくなかったが、覚悟はしておかなければならない、と僕は思った。

しかし、現実から目を背けたがっている僕がいた。

いつも僕にあんなに楽しそうに話をしてくれた駆馬兄さんが死ぬわけがないと思っている僕もいた。

ラジオから聞こえてくる「連戦連勝」や「転進」という言葉に何処か期待している僕もいた。

 

しかし、現実は無慈悲で残酷なものだった。僕の期待とは裏腹に、僕が駆馬兄さんにもう二度と会うことが叶わなくなってしまった。

ー1942年8月、約3万の日本軍が、ガダルカナル島に上陸

2017年8月8日公開

作品集『少年記』第17話 (全21話)

© 2017 永夜 はまか

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