理非道賛歌 リビドーサンカ 前章

理非道賛歌 リビドーサンカ(第1話)

大和柚希

小説

822文字

これは、空虚と人間の「記録物語」である。

前章

 

「自分を殺したい位に全てが怖い。消えてくれ早く早く早く何もかもが」

   その頃の私は、身体を売りながら大学へと通う日々を送っていた。二つの行動を並立させていた理由は、特に無い。身体を売って生計を立てるだけでも、国立名門校と言われるT大学の最終学年生として勉学に励むだけでも、支障は無かった筈だ。どちらか一つを必ず選べ、と強要された訳では無かったので、ひたすらに私は現実から逃避する方法を追い求めていた気がする。その方法の追求が、結局は逃避へと繋がり、反面にて底の見えない空虚も私に見せていた。
   卒業論文が早々に大学側へと受理され、卒業を待つのみ。
   後の予定が、私には、それしか無かった。
   就職活動が全滅状態に陥ったからだ。
   T大学文学部国文学科卒業予定、その肩書は数多くの企業に通用した。しかし、書類選考を経て面接、と進んだら、即刻に冷たい対応を取られる。結果として私が就職活動で学んだものは、履歴書の書き方と、ビジネスマナーのみ。敬語は遣えて当然、論外とすら自分で捉えていた状態だったのに、それでも一向に進まない。私は穴へと落ち続ける。幾ら自分の姿を振り返っても、落とされる要因は掴めず、私は何時しか就職活動を止めていた。
   夕陽に染まった喫茶店にて、私は左手で頬杖を突き、店内に流れる放送の中に漂う。これから相手にする男性を待っていた。放送の司会者の話は、自分の頭を通り抜ける。しかし、この音楽にだけは、耳を引き寄せられた。

「レフトライト、フィエスタ」

   話で紹介されたどちらの単語が曲名で、演奏者なのかは不明のまま、私は記憶の中で音楽を繰り返す。
   強烈に、行き場を失う自身と、それは重なって聴こえていた。

2017年7月29日公開

作品集『理非道賛歌 リビドーサンカ』第1話 (全4話)

© 2017 大和柚希

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