梶井少年記 第4章 老人の宿題

少年記(第5話)

永夜 はまか

小説

1,023文字

老人から10冊の本を渡された少年。
いやいやそれを読みはじめた少年であったが‥‥

その後老人と話をした後、少年は家に帰った。何を話したのかはあまり覚えていないが、少年が老人に名前を尋ねたら、
「さぁ? 忘れたのお」
とわざとらしくカッカッカと喉を使って笑いながらしらばっくれられたのはそこそこ腹が立ったので覚えている。

さて、問題は老人から渡された10冊の本である。少年はあまり本を読んだことがない。 そんな少年にとって1週間で10冊の本を読むということはなかなかの苦行に感じられた。

 

しかし、受け取ってしまったからには読むしかない。少年は土曜日に本を返しにいって老人を驚かそうと考えていたから尚更読むしかない。
(梶井 宇宙とはこういう男である)

仕方がなく少年は紙袋から一冊ずつ本を取り出してみて床に並べた。

本には、宮沢 賢治や宮本 輝、夏目 漱石や村上 龍といった今昔の名だたる文豪の名が書かれていた。しかし本を読まない少年にはあまりピンと来なかった。
その中に少年が興味を持った本がある。
『檸檬』という本である。
何故少年がこの本に興味を持ったのか、読書が好きな皆さんにはもうお分かり頂けただろう。

 

この本の筆者の苗字が少年の苗字と同じ「梶井」であったからである。
少年はこの小説から読むことにした。

 

少年は結局金曜日までに全ての小説を読み切ってしまった。
それは何故か?
それは少年にとって読書が意外にも、とても楽しいものであったからである。

夏目 漱石の『坊ちゃん』を読んだ時には、自分に似たところのある主人公に共感を覚えた。
宮沢 賢治の『銀河鉄道の夜』を読んだ時には、カンパネルラの生き様に泣きながら賞賛を送った。
宮本 輝の『星々の悲しみ』を読んだ時には、自分が常に死と隣り合わせであると気付き、改めて死について考えた。

 

少年の中で特にインパクトに残っている少説がある。
村上 龍の『希望の国のエクソダス』という小説である。
この1冊が後の少年の運命を大きく考えたといっても過言ではない。

しかし、1冊だけ、少年がいまいち魅力に欠けると思った小説があった。
梶井 基次郎の『檸檬』である。

 

最初に収録されている『檸檬』と『桜の樹の下には』こそ面白かったが、それ以外の話は散歩をしている話ばかりで(まあ『檸檬』も散歩をしている話なのだが)当時の少年にはあまり良さがわからなかった。
当時の少年はまだこの本の本当の良さを知るには幼すぎた。

2017年6月29日公開

作品集『少年記』第5話 (全18話)

© 2017 永夜 はまか

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