梶井少年記 第1章 出会い

少年記(第2話)

永夜 はまか

小説

1,262文字

これは、梶井少年が生まれてから、師匠である老人に出会うまでの話である‥‥

西暦2001年、6月28日、

「梶井 宇宙」は日本という名の小さな島国に誕生した。
彼の両親は子供の時より、宇宙の人間には計り知れないような果てしなさに惹かれて育ってきたためにこの名前を彼に与えた。

    幼少期、彼は「死」という得体の知れない存在をとてつもなく恐れた。
「自分はいつか死ぬ」という現実を真正面から受け入れることは幼少の時分の彼にとってはまだ荷が重すぎたのだった。

今見えている景色がみえなくなって、何も考えることもできなくなって、自分という人間がこの世界のどこからも消えてしまう、そんな日が来ることを嘆いていた。

 

と、同時に周りの人間があまり「死」に怯えていないように見え、恐怖を抱いているのは自分だけだということへの不安感から周りとは深く関わりたくない、と思うようになった。

 

そんなことを考えながら小学生時代までを過ごしたため、友達は一定数できたものの、無意識に誰に対しても一線を置ていた。その為、周りの人間には彼が何を考えているのかがあまり伝わらず、「何も考えていない奴」と思われることが殆どであった。

 

そんな彼の人生が大きく動き始めたのは、彼が中学生になった頃のことである。彼はあまり利口ではなかった。よって、中学2年の頃から近所の学習塾に通うことになったのだが、ある日、彼は塾から帰る途中、毎日挨拶を交わしていた老人に声をかけられる。
「少年、わしの弟子にならんか」

 

少年はなにかの聞き間違いかと思い、もう一度老人に聞き返した。が、老人は全く同じことをいう。困った梶井少年は

「弟子って何をするんですか」

と呂律が上手く回らず、口をぱくぱくさせながら聞き返す。しかし、

「そうなあ、弟子になったら教えてやろう」

と老人は白を切る。梶井少年の頭中には、怪しいし断るという考えも勿論浮かんだが、彼は生まれつき人の4、5倍は好奇心の強い男であった。よって、好奇心に負けた梶井 宇宙はこう答えた。

「わかりました、弟子になりましょう」

それに対して老人はこう答える。

「その言葉に二言はないな」
梶井少年はこの時少し嫌な予感がしたが、彼は1度やると言ってしまったからには、やっぱり無理ですなどとは口が裂けても言えない男であった。よって、こう答えた。

 

「ありませんとも」

 少年がそう答えると、老人は何かをぼそぼそと呟いた後、少年の方に向き直り、
「よかろう、では次の日曜日、朝9時にわしの家で会おう。因みに、このことは口外禁止じゃからな」

とだけ言って帰ろうとした。

 

え、もう帰るのかよと少年は思った。弟子って結局何をするんだよ、とも彼は思った。しかし今それを尋ねてもこの老人はまた白を切るに違いない、少年にはなんとなくそれがわかった。

そんなとき、老人がいきなり振り返り、こう言った。
「少年、名前は? 」
「か、梶井 宇宙です・・・・」
梶井 宇宙は半ばパニックになりながらそう答えた。

 

 

2017年6月25日公開

作品集『少年記』第2話 (全20話)

© 2017 永夜 はまか

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