青春

応募作品

瀧上ルーシー

小説

2,183文字

俺の青春。合評会2016年12月応募作。

リョウマがコンビニで時間を潰している間にメイの膣の中でゴム射して、もう既に慣れ親しんだ味の煙草を吸っていた。小柄で胸が大きいメイのことはいつもリョウマと二人で順番に輪姦のようなセックスをしていた。彼女がリョウマも俺のことも等しく愛してくれていると思いたい。

もう今は冬なので遙か昔だが、今年の六月に俺は煙草で高校を停学になった。九月に新人陸上競技大会を控えていたので、問題を起こされたら不味いと俺は陸上部を辞めさせられた。リョウマや他の仲間達と酒を飲んで煙草を吸いながらやる徹夜麻雀はいつだって楽しかった。普通の高校生として夜遊びするのがこんなに楽しいだなんて思ってもみなかった。陸上部をクビになったことを今は後悔していない。どうせ俺程度が頑張ったってオリンピックには行けないし、一生陸上で食っていける訳でもない。これで良かったのだ。

今では親友のリョウマとは中学も一緒だったのだが、陸上部一筋だった中学時代に付き合いは殆どなかった。煙草と酒と麻雀の付き合いで高校に入ってから親交を深めていった。メイとセックスできるようにセッティングしてくれたのもリョウマだし、不良だが優しくて思いやりもあるいい奴だ。

この日の朝も徹夜麻雀明けだった。外は肌寒くコートが必要だが、空から太陽が覗いていて眩しかった。リョウマと仲間達と一緒に高校へ登校していく。徹夜明けで眠いはずなのに身体が疼いた。片脚で交互に前へ飛んでいく陸上の定番練習メニュー、バウンディングを俺は始めた。ぴょんぴょんと前へ飛んでいく。仲間達はやれやれ……といった顔で煙草代わりのガムを噛んでついてきてくれなかった。その中でリョウマだけは走って追いかけてきてくれた。

「陸上に未練があるのか? やめとけやめとけ。人生は楽しむためにあるんだ。マゾじゃいけねえよ」

「ならお前はなんで走ってるんだ? 楽しいからだろ」

「楽しくねえよ! ユウジに付き合ってやってるだけだろ。眠いし煙草吸いたいし、本当は学校だって行きたくねえよ」

「ああ、そうかい」

リョウマの息が荒くなって苦しそうだったので、俺はバウンディングを止めてゆっくりと前へ進みながら腿上げを始めた。コツがいるが正しい形で行えばかなりのトレーニングになる。その日は学校で昼休みにメシを食べて煙草を吸った以外、俺とリョウマはずっと机に突っ伏して眠って過ごした。夢の中でも俺は気持ち良くグラウンドを走ったり、麻雀をしたり忙しかった。

高校の午後のホームルームが終わる頃になると引き戸の前にいつも立っている若い男がいる。こいつがうちの陸上部の顧問で、毎日のように俺に説教を垂れるのだ。

「不良の生活なんてもう飽きただろ。煙草を辞めるならいつでも出迎えてやるから部に戻ってこい」

ここ三ヶ月くらいいつもこうだ。だから俺はいつものように、誰が戻るかバアカと答えてやるのだ。喫煙歴もまだ大したことないが、もう煙草を辞める気はなかった。

昔のことを思い出した。あの若い顧問の指導のおかげで高校に入ってすぐに俺の百メートル走のベストタイムは十秒台に入ったのだ。これからが楽しみというところで俺は煙草に手を出してしまったとも言える。

この日の放課後は麻雀をしないで、リョウマとメイと俺の三人で過ごした。親が殆ど家に帰ってこないリョウマの家でゲームをしたりテレビを観たりしながら過ごすのだが、殆どいつでもそのままメイとセックスすることが多かった。リョウマはいつも俺に先を譲ってくれた。この日もリョウマが外で時間をつぶしている間にメイの暖かい中でゴム射した。下着も着けないで乳首を布団につけて裸のままベッドの中でメイは言った。

「ユウジが校舎裏で煙草吸ってるの先生にバラしたの本当はリョウマなんだよ」

「そんなことして何になるんだ」

「リョウマはユウジと今みたいにつるみたかったんだよ。だから遊ぶのに邪魔な陸上は辞めて欲しかった」

「嘘だろ……」

「本当だよ。そしてわたしはユウジじゃなくてリョウマが好き。本当は好きでもないあんたとやるのは苦痛なんだよ」

メイは俺のことも愛してくれていると思っていたのだが、違うようだった。

なにか吹っ切れた気分だった。

「帰るわ。もうメイのことも無理に抱かない。これからはリョウマとも遊べなくなるって、メイの方から言っておいてくれ」

俺はそれから近場のドラッグストアでニコレットを買って禁煙しつつ、毎朝の学校前のジョギングに加え高校が終わってから地元の大型公園の広場で短距離走のトレーニングをして過ごすようになった。リョウマはたまに俺にちょっかいをかけてきたが、もう付き合う気はないと告げると、がんばれよ、と言って俺の前から姿を消した。しばらくしたある日リョウマが高校を自主退学したと俺の耳に入ってきた。

あの日、俺に陸上部を辞めてくれと頼んできた、それでも俺を見捨てないで陸上部に戻ってくるように毎日言ってくれた、若い顧問が学校の校庭で目の前に立っている。

「戻ってこないか、煙草はもう辞めたんだろう?」

「はい……俺、がんばるよ」

俺の目から何年かぶりに涙が出てきた。メイに拒絶されたことか、リョウマとつるめなくなったことか、また陸上で世界一を目指せるようになったことか、何が理由で俺の頬を熱い涙が伝うのかわからなかった。

 

2016年11月25日公開

© 2016 瀧上ルーシー

これはの応募作品です。
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"青春"へのコメント 4

  • 投稿者 | 2016-12-17 11:35

    短くまとまっていて、テーマの扱いも分かりやすく、端正な文章。今回の合評会では最も優れている作品だと思います。さらさら読めてしまうので少しくらい破滅した部分があった方がより強く印象に残るかもしれませんが、読み手の好みの問題です。

    欲を言えば、メイの気持ちの描写をもう少し詳しく読みたかったです。好きな男の指示に従って、苦痛を隠しながら別の男に性を提供する少女の内面の機微は掘り下げる価値のある内容だと思います。

  • 投稿者 | 2016-12-22 02:39

    高校生のガキとも大人とも言えない雰囲気が上手く出ている。友情も恋愛・セックスも過ぎ去って行き、最後にやはり自分の力だけが残る。幸せな結末では無いかも知れないが、一番良い余韻があると思う。メイを掘り下げられればなと言う点は前の方に同じ。

  • 編集長 | 2016-12-22 12:04

    お題のテーマである「恩師」の存在感が異様に薄いことと、友達の話が長すぎるので、「友情の話」になってしまっていた。
    が、それはそれで良い気もする。

  • 投稿者 | 2016-12-22 12:34

    冒頭からの「ゴム射」というフレーズに、笑った。またこのパターンかよという笑い。そして読み進めると、この作品は最終的に『限りなく透明に近いブルー』のオマージュだということが分かる。掘り下げない登場人物、均一的な登場人物、セックス三昧、タイトルまで『限りなく透明に近いブルー』→『青春』と似ている。『限りなく透明に近いブルー』は芥川賞の選考委員で読むのに半年かかった人もいるが、『青春』は読みやすい。だが、この簡素化の過程で、『限りなく透明に近いブルー』の個性やエネルギーも失われてしまった気がする。
     ともあれ、作者さんの村上龍さんへの愛を感じ星4つ。

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