悦び

応募作品

瀧上ルーシー

小説

3,476文字

合評会2016年10月、応募作品。性的な内容を含んでいるため苦手な方は注意してください。

スミレへ。

こんにちはスミレ。今日も君が生きてくれているこの世界に感謝します。

こんなに人を好きになったのは初めてです。君もいつも僕に好きだと言ってくれてるね。ありがたいことだと思うよ。君の高校デビューみたいな茶髪のセミロングも、学校にいる間している透明ピアスも、付け睫毛もとっても素敵だよ。身長も胸の大きさも脚の細さまでも僕にぴったりだ。君は神様が僕のために作ってくれた女の子のように感じるよ。

君は美しい。

君は可愛い。

君が大切だ。

君のためならなんでもできる……気がする。

君と二人でなら一生教室で授業を聞いていてもいい。

ごめんね、気持ち悪いことばかり言って。

それではまた。フウスケより。

 

 

朝起きて準備を済ませたら学校までチャリで行く。教室に入ると、女女女、見渡す限り女しかいない。僕の通っている高校は今年度から共学になって、男子生徒は学校中を探しても僕一人しかいない。他に男は一部の教師や用務員のおじさんがいるくらいだ。

教室に入ってすぐに「おはよう!」と僕はハイテンションに挨拶するのだが、誰も返事をしてくれない。それはそうだ。僕には友達なんて一人もいないのだから。

午前の授業が終わって、鞄から弁当を取り出すと、スミレ達三人が僕のもとへとやってきた。「弁当もってこいよ」そう言われたので、弁当を持って彼女達三人についていく。今の時間なら他に人が少ない部室棟のトイレで僕は言われるまま、制服のブレザーを脱いでシャツとズボンを脱いで下着も脱いで上履きも脱いで真っ裸になった。スミレ達三人はクスクスと笑う。僕が性器を晒してもお笑いにしかならないようだ。

スミレが僕の弁当の蓋を開けてトイレの床にひっくり返した。そうして弁当箱を床から退けると、お母さんが作ってくれた弁当がまるで生ゴミのようにトイレの床に散乱していた。

「犬みたいに手を使わないで食え」

茶髪のセミロングで化粧をしているのだろうが、顔が整っているスミレが怖い表情でそう言った。他の二人はゲラゲラと笑う。僕は形だけでも「嫌だよ」と嫌がるふりをして、スミレに頭を抑えられると全裸でトイレの床に跪いて、汚れた弁当のご飯やおかずを犬のように食べた。床に落としても味はとくに変わっていなかった。トイレの床は濡れていて、僕は裸だし季節は春を越えていたけど身体が冷える。だが僕の性器は勃起してしまっていた。それを見つけるとスミレは嬉しそうに上履きを履いた足で僕の性器を小突くのだった。

箸で食べるより弁当を食べ終わるのに時間がかかった。スミレの友達のうち、一人が掃除用具入れから金属のバケツを持ってくると、下着を下ろして、三人は順番にじょろじょろと小便をした。僕に見られても全然平気らしい。男どころか人として見られていないようだった。

「飲め」そう言うので、僕は腹が下るくらいの量がある小便をバケツに口をつけて飲み干した。当たり前だが美味しいわけがない濃すぎる変な味だ。それでも僕の性器は勃起を保っていた。その様子を三人はスマホのカメラで撮影していた。

ちゃんと制服を着て午後の授業に出席する。スマホでスミレ達が更新しているツイッターを見た。そこには性器丸出しでバケツに入った小便を飲んでいる僕の写真が掲載されていた。コメントには「僕は女の子のおしっこが大好きです。今日も一リットルくらい飲ませて頂きました」などと書かれていた。

それを見て、僕は笑いそうになるのを堪えて悦んだ。女に虐められるのが目的で、僕は共学になったばかりのこの高校に入学してきたのだ。スミレたちが更新している僕が虐められている写真だらけのツイッターを見ていると、性器がまた勃起していくのが感じられた。

 

 

フウスケへ。

今日も飲んでくれてありがとう。愛してるよ。

本当はミウラやケイコにはフウスケを虐めさせたくないんだけど、一応親友だからね。我慢してわたしのフウスケを虐めさせてやってます。明日はどんなことをして欲しい? あなたが望むならなんでもしてあげちゃうよ。フウスケを愛しているスミレより。

 

 

いつものトイレでスミレたちに真っ裸にされて、その日は殴る蹴るの暴行を受けていた。女の子だって本気で殴ってくればそれは痛い。怪我すれば目立つ顔を殴られることはなかった。腹を殴られ、たまらず地面に丸くなると今度は背中を踏みつけるように蹴られて、余計苦しくなった。終始三人は笑っていた。僕を使ってよろこんでくれているのならそれは嬉しい。こんな取り柄がない自分にも世界から与えられた役割があるように感じた。いつしか三人は煙草を吸いだした。僕の顔に何度も煙を吐き出してくる。煙草のにおいは嫌いだったが、スミレの息を吸えて嬉しかった。また性器が勃起した。

最後にスミレたち三人は僕の乳首の下辺りに一回ずつ火の点いた煙草を押しつけて、火傷を作った。

熱くて涙が出てくるが僕がスミレを愛していて、彼女もまた僕を愛してくれている証拠のように思えた。

僕にとってはキスマークのようなものだ。

いや、聖痕だ。

 

 

フウスケへ。

今日もわたしのためにストレス解消させてくれてありがとう。大好きだよフウスケ。煙草で作った根性焼きは痛くないですか? 止めてほしいならもうそんなことしないよ。ただわたしは愛情表現としてフウスケを虐めているのです。昨日の夜は何を食べましたか? 勉強は遅れていないですか? 寝る前にオナニーはしましたか? 本当ならわたしがさせてあげたいんだけど、セックスはまだ怖いからダメです。オナニーで我慢しなさい。

スミレより。

 

 

スミレへ。

好きなだけ煙草を押しつけていいよ。あのくらいへっちゃらさ。寝る前にオナニーしたよ。もちろんオカズはスミレだよ。いつかセックスしたいね……コンドームも付けないようなさ。まだ一年だから気が早いけど、大学も同じ所に行こうね。そして大学に入るまでにはちゃんとセックスをしよう。いつも僕がスミレに爪痕をつけられているんだから、そのときがきたら僕がスミレの身体に傷跡を残してあげる。

フウスケより。

 

 

いつものように高校の帰りにお気に入りのファミレスに入って、一人で自作自演の交換日記をスマートフォンのメモ帳に書き込んでいた。本当なら紙のノートに書きたいのだけれど、他の誰かに見られたら嫌だから肌身離さず持っているスマホに大切な交換日記を書き込んでいた。

すこぶる良い気分だ。スミレはきっと自分がオナニーのおかずにされていることも、勝手に交換日記を書かれていることも知らない。あれだけ殴られて火傷を作られて、小便まで飲まされても好きなのだから、僕は大概マゾなのだろう。スミレのように僕を虐めてくれる女子が出来ただけでも通っている高校に入学した意味はある。欲を言えばもっと大勢の女子にリンチのように虐められたい。骨の一本や二本折られてもいい。誰かにそのときだけでも必要とされるのは嬉しかった。

一段落してふと、自分が座っている席から前の方のボックス席へと目をやると、見間違うはずがないスミレが他校の制服を着た男子と隣同士に座っていた。スミレの短いスカートを穿いた膝の上で手は重ねられている。次に二人は周りを気にすることなくキスをした。長いキスで、こちらまで唾液の音が聞えてきそうなキスだった。

そのとき僕は現実を知った。自分で書いた交換日記の中で彼女に何回愛していると言わせてもそんなのは自作自演だ。本当にスミレが好きなのは今彼女の隣に座って、胸に手を触れているあの男なのだ。

僕は二人に見つからないようにファミレスを後にして、家に帰ってきた。

そうしてある所に電話した。

 

しばらく経ったある日、朝のホームルームでスミレたち三人が退学になったことを担任の教師が生徒達に報告した。

スミレ達を退学に追い込んだのは僕だ。僕の裸が大量に載っているツイッターのアカウントを学校に密告したからだ。せっかく共学になったばかりなのに、たった一人の男子生徒が虐めに遭っているとなれば、体裁が悪い。学校のこれからのためにスミレたちは退学にされたのだ。

僕は授業中に教室を見渡した。次は誰が僕を虐めてくれるのだろうか。美人でもブスでも関係ない。虐めてくれる女は多ければ多いほどいい。それが僕の性癖なのだから。

 

2016年10月3日公開

© 2016 瀧上ルーシー

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"悦び"へのコメント 10

  • 投稿者 | 2016-10-23 06:16

    描写が生々しくて、いい感じです。トイレの床に全裸で跪く冷たさや、濡れた床で汚れた弁当の味など五感に強く訴えかけてくる表現が本作の魅力だと思います。高校入学後、主人公が女子たちの辱めを受けるに至った経緯についてもっと詳しく知りたくなりました。彼の中の生まれつきの何かが攻撃を誘発してしまうのか、それとも何らかのきっかけがあったのでしょうか? 背景をもっと語ることで、主人公を単なる特殊な性的嗜好の症例(という言葉はおそらく不適切ですが)としてではなく、奥行きのある人間として描きだすことができるのではないかと思います。

    • 投稿者 | 2016-10-23 08:08

      コメントありがとうございます。
      主人公が女子たちの辱めを受けるに至った経緯についてもっと詳しく……というのは盲点でした。雰囲気だけで押し切ろうとしてしまったのかもしれません。今度書く時は登場人物の行動を起こす動機をもっと考えたいと思います。

      著者
  • 投稿者 | 2016-10-23 14:42

    とても陰湿、とてもグロ、とても胸の奥がダウンする作品。
    主人公の行為を、「どこかで誰かがやってそう」とか「誰でもこんな気分になった事がある」なんて言葉では説明を付けたくないが、不気味な快感に同情したくなる。現実と自己満足の越えられなさのせいか?
    前のレビューに同じく、経緯の描写がもう少しあれば良いと思う。

    • 投稿者 | 2016-10-23 18:55

      コメントありがとうございます。

      >主人公の行為を、「どこかで誰かがやってそう」とか「誰でもこんな気分になった事がある」なんて言葉では説明を付けたくないが、不気味な快感に同情したくなる。現実と自己満足の越えられなさのせいか?

      現実と妄想どちらが上なんでしょうね。僕にもわからないです。そもそも上下の問題ではないのか……ぐぬぬ。とある漫画だと「三次元が二次元に勝てるかあ!」なんて台詞もありますけど(苦笑)

      >前のレビューに同じく、経緯の描写がもう少しあれば良いと思う。

      やはりそこですか……これからは善処したいです。

      著者
  • 投稿者 | 2016-10-26 13:46

     私がすべての作品を読み終えた上で、一番印象に残っていたのは、実はこの作品内の「床に散乱した弁当を犬のように食べバケツにされた女子高生のおしっこを男子が飲む」イメージだった。強烈だ。(∩^o^)⊃━☆゜.*その意味では成功している。だけど、そういう虐待をする女子たちの衝動や、それで悦ぶ男子生徒のその気持ちの、掘り下げが足りないよー。直接的にそれを表現する必要はないんだ。それを間接的に文学の手法でもって表現できればもっといい作品になると思う。タイトルにある「悦び」は全然伝わってこなくって、伝わってきたのは「作者はピスマニアなの?」ということだけだよ~”φ(・ェ・o)~メモメモ
     星4つ!

    • 投稿者 | 2016-10-26 14:48

      コメントありがとうございます。

      >私がすべての作品を読み終えた上で、一番印象に残っていたのは、実はこの作品内の「床に散乱した弁当を犬のように食べバケツにされた女子高生のおしっこを男子が飲む」イメージだった。強烈だ。(∩^o^)⊃━☆゜.*その意味では成功している。

      ありがとうございます。インパクトを重視するくらいの狙いはあったので、そう言ってくださると嬉しいです。

      >だけど、そういう虐待をする女子たちの衝動や、それで悦ぶ男子生徒のその気持ちの、掘り下げが足りないよー。直接的にそれを表現する必要はないんだ。それを間接的に文学の手法でもって表現できればもっといい作品になると思う。

      そうですよね……考えが足りなかったと反省しています。例えば加虐している側の女子も別の場所では虐められているなど、そういう所が書けたら、もっと違った印象になったのだと思います。

      >タイトルにある「悦び」は全然伝わってこなくって、伝わってきたのは「作者はピスマニアなの?」ということだけだよ~”φ(・ェ・o)~メモメモ

      それはないです(苦笑)
      星4つもくださってありがとうございます。とても嬉しいです。

      著者
  • 編集長 | 2016-10-27 13:58

    ストーリーに変化があってよかった。描写については好き嫌いの分かれるところ。
    が、周りが全部女子という設定があまり生かされていないように思う。

    • 投稿者 | 2016-10-27 22:16

      コメントありがとうございます。
      そうですよね……設定が活かせてないですよね。次回はもっと作品を練りたいです。

      著者
  • 編集者 | 2016-10-27 18:03

    読者への裏切りを序盤と終盤に二度もってきた点がよかった。
    気になったのはいじめの描写の部分。いくら男として扱われていないとはいえ(だからこそ)、思春期の女が目の前で小便をするというのは不自然に感じられた。小説においてリアリティが必ずしも重要だとは思わないが、全体を通じてリアルな肌触りの作品であるだけに、そこの部分で物語の外側へ引き戻されてしまう。

    • 投稿者 | 2016-10-27 22:21

      コメントありがとうございます。

      >気になったのはいじめの描写の部分。いくら男として扱われていないとはいえ(だからこそ)、思春期の女が目の前で小便をするというのは不自然に感じられた。

      こんなこと書いて大丈夫か?と少しは考えたんですが、リアリティよりケレン味を取ってしまいました。今度不自然な(浮く)シーンを書く時は作風と相談したいと思います。

      著者
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