メイド

南沢修哉

小説

3,518文字

伊能はパソコンの電源を切った。この十二時間ほとんど働きっぱなしだった。彼の書いた記事は今日だけですでに三回も上司の女から突き返されていた。彼女は先月、伊能の書いた記事を一本しか掲載しなかった。社員証を首から外し、ベージュの背広を羽織った。ノートパソコンを書類鞄に入れた。黙って新聞社のオフィスを出た。大手町からタクシーに乗って足立区の寂しいアパートに帰った。首都高の利用料を含めて片道七千円という交通費も千代田線で揉みくちゃにされるのに比べれば安いものだった。大通りに面したエントランスの前で車を降りた。そこは誰か怪しい人が出歩いていても誰も気にしない場所だった。一瞬どこかから聞こえた女の叫び声はひっきりなしに鳴らされるバスや車のクラクションの音にかき消された。

みすぼらしく薄暗い灯りで照らされた廊下を抜けて家に入った。彼は女中の田嶋を呼んだ。彼女はフレンチ・メイドの服を着ていた。明るく白い肌、長い黒髪は後頭部のやや高いところで縛られ背中に向かってぶら下がっていた。瞳は澄んだ榛色をしていた。十センチ近いピンヒールの上には、小さく行儀よくそろった脚をガーターに吊るされた目の粗いタイツが包んでいた。靴の踵は彼女の脚をいっそう長く見せていたが、その高さを含めても彼の背丈を越すものではなかった。彼女は小さくお辞儀して彼の靴に視線を落としながら挨拶した。

「おかえりなさいませ、ご主人さま」

そう言って彼女は跪き、彼の靴にキスをした。

「脱がせてくれ」と伊能は言った。

彼女がゆっくりと優しい手つきでドレス・シューズの紐を解く様子を、彼はずっと眺めていた。優美で流れるような身のこなしに見とれた。高校でチアリーダーとして大声を張り上げていた人間には思えなかった。しとやかな獣に成長した彼女が自分に奉仕してくれるのは彼にとって夢のようだった。

二人の関係はふつうの人に理解できるものではなかった。地元で行われる仮装パーティの夜に知り合ってから、二人はデートを重ねるようになった。彼女は気に入った相手に奉仕せずにいられない一種の病気だった。花盛りの大学一年目を過ぎると、彼女はとうとう我慢できなくなった。性欲を持て余した若い男のあつまる仮装パーティから彼を連れ出したのだ。なぜ自分が選ばれたのか未だに彼は知らなかった。しかしあの日の夜、自分に捧げられたものを彼は昨日のことのように覚えていた。

彼は書類鞄をテーブルの上に置き、上着を脱いで椅子にかけた。それから風呂に入った。田嶋は彼の上着と書類鞄を片付けた。浴槽にはいつも熱いお湯が張られており、一日の仕事から帰ってくる彼を待っていた。その横には赤ワインが用意されていた。彼は素早くシャツと下着を脱いだ。熱いお湯に全身を沈めた。筋肉がたちまちゆるんだ。天国にいる気分だった。赤ワインは彼の顔に心地よいぬくもりを運んだ。田嶋が家にきてすでに四年が経っていたが、自分の望みをこころよく受け入れてくれる彼女に伊能は少しも飽きなかった。風呂を上がると田嶋は彼にバスローブを着させた。彼のあとについてリビングに向かった。彼は背もたれのある椅子にくつろいでため息をついた。彼女はふたたび膝をついて深く頭を下げた。

「よろしいでしょうか、ご主人さま」と彼女は訊ねた。

「もちろん」

彼はそう訊ねられるのを心待ちにしていた。腰を浮かせた。彼女は自分の身体を移動させて、彼の股間のほうへ近づいた。彼はもうだいぶ前から勃起していた。彼女はペニスをつけ根からつかんだ。小さな口で先端を吸いはじめた。

「うーっ」彼は静かにうめいた。美しい口唇の潤いをそこに感じた。

彼女は少しずつ深く咥えはじめた。やがてペニス全体が彼女の口で隠れた。咽喉は狭かったが、彼女は最後まで飲み込んだ。入れるたびに彼女の咽喉の奥が閉じるのを感じることができた。彼の太いものを吐き出してしまわないようにコントロールしていた。口腔から咽喉の奥を行き来するのが速くなると、彼の陰嚢は徐々に身体のほうへ吊り上がってきた。彼は声をもらした。彼女の黒い髪を眺めながら、自ら腰を強くリズミカルに動かした。

「こっちを見ろよ」彼が命じると、すぐさま彼女は無垢な瞳を彼のほうに向けた。そのままペニスを吸いつづけた。

「田嶋……」と彼は言った。椅子のアームレストを両手で強くつかんだ。「いきそうだよ」

彼女は慣れた手つきで陰嚢の先へ伸ばした指を肛門に入れた。ペニスを深く咥えながらゆっくりと指先を腸壁に押しつけた。咽喉の奥で締めつけられながら前立腺の外側を指で圧迫された彼は悦楽の真っ只中にいた。ゾクゾクする感覚がペニスの先端にこみ上げてきた。彼はふたたびうめいた。身体の緊張がさらに高まっていった。そろそろ限界だった。いまにも口の中に射精してしまいそうだった。彼女はおかまいなくさらに深く咥え込んだ。伊能は彼女の肩を押して自分から遠ざけた。彼は自分のペニスをつかみとった。手の上で弾ませて落ち着かせた。いく用意がまだできていなかったのだ。

「顔にかけていいかな?」彼は声を昂らせて訊ねた。

彼女は固く目を閉ざして囁いた。

「ダメです、ご主人さま」

「それは残念だな。こっちにおいで」

彼はバスローブの腰紐を解いた。立ち上がるとそれは彼の背後に自然と落ちていった。彼女は牝犬のように四つんばいになって彼のほうに近づいてきた。

「横になれ」と彼は命令した。彼女は素直にそれに従った。

彼は田嶋の手首をテーブルの脚のそばに置き、ローブの紐でそこに縛りつけた。コーヒー・テーブルは釘で床に固定されていた。彼はテーブルの上に手を伸ばしてナイフをとった。彼女のスカートを正面から切り裂いた。ガーターの下には何もつけていなかった。彼女の艶やかで美しい性器が露わになった。彼はナイフを床に置いた。彼女の両脚を手で抑えながらヴァギナをなめた。仄かに酸っぱいその匂いで目眩がした。

「んーっ」彼女はため息のようなうめき声をあげた。両脚を大きく拡げ、膣に舌を入れた。陰核と膣を交互になめた。彼女は背をのけ反らせて感じていた。彼は円を描くように舌で愛撫しつづけた。甘美な声をもらした。彼は人差し指をヴァギナに滑り込ませた。彼女の艶やかな性器が濡れているのをたしかめた。彼のペニスはふたたび勃起してびくびくと上下に動いていた。フレンチ・メイドを襟のところからナイフで切り裂いて脱がせた。彼女のCカップの胸と生命力にあふれたピンク色の乳首が彼の目の前にあらわれた。左側の乳首を指でつまんだ。

「んんっ」彼女は目を閉じながら悦楽のため息をついた。彼は膣口をかきわけて中に入った。すぐにペニスがきつく締めつけられた。なめらかな絹のような心地だった。彼はさらに深いところまで入っていった。

「あっ、あーっ」彼女はやや大きな声で喘いだ。彼は乳首を強くつまんだ。

「静かにしろよ」

右手で乳首をつまんだまま、反対の手の親指で陰核を刺激した。二人は正常位で接していた。彼女が声を抑えようとすると、ヴァギナの締めつけはさらに強まった。

「はーあ、いいよ、田嶋」と彼は言って腰の動きを速めた。彼女の膣からは白く濁った淫水があふれはじめた。彼女が芯から感じているのを彼は見抜いていた。彼女より先にいかないように全力で集中していた。堪えるだけの価値があることを彼は知っていた。そうした努力にもかかわらず、ペニスの先端にふたたび絶頂の感覚がこみ上げてきた。円を描くように弾んで揺れる美しい乳房から目を背けようとした。彼が興奮の熱を冷まそうと試みているときも、彼女のヴァギナは彼を強く強く握ったままだった。彼は親指をなめた。唾液で湿った指で陰核をこすった。

「あっ、あん」彼女は喘いだ。「あんっ!」

口唇をきゅっと閉じて声を抑えようとしていた。ヴァギナは先ほどより一段と強く、最大限の膣圧で彼を締めつけた。彼はもう堪えきれなかった。

「田嶋っ!」彼は叫んだ。「ううっ」

彼はペニスの先端を子宮の入り口に強く打ちつけ、絶頂の脈動を完全に解き放った。田嶋もまた絶頂に達していた。ヴァギナを絞りつづけたまま失禁の飛沫で彼を濡らし、その生ぬるい感触が彼をさらに興奮させた。互いの脈動が相乗的に強まっていった。彼女の中は完全に精液で満たされていた。

「ふう……」彼は静かにうめいた。

コーヒー・テーブルの脚に縛りつけた手首の紐を解いた。伊能は床に尻を下ろした。ペニスは全体的に淫水と精液で覆われていた。田嶋は裸のままふたたび四つんばいになって彼のほうに近づいてくると、ペニスについた液体を一滴も残さずなめ尽くした。

2016年9月17日公開

© 2016 南沢修哉

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