お風呂掃除

日常(第11話)

瀧上ルーシー

小説

782文字

ぼくは母親に命令された。

今日も母親に命令されて、ぼくは風呂掃除をしていた。遙か昔は週に一回くらいで済んでいたのだが、ここのところ毎日だ。いくらぼくが高校を卒業してからもうすぐ三十歳の今までゲームばかりして働いていないからって横暴だ。……ということを会社から帰ってきたお父さんに陳情したら魔法の言葉を言われた。文句があるなら出て行け。

お風呂用洗剤をシュッシュと浴槽の外と中に吹き付けて、スポンジで擦る。大浴場ではないのだから、こんなのすぐだ。追い炊きできないユニットバスだ。ニートが故に、昼間から風呂に入りたくなるときもあるのだが、ガスと水道代が勿体ないとよく鬼ばばに怒られる。鬼ばばとは母親のことだ。なんだかクレヨンしんちゃんみたいだな、とぼくは思った。ここからが掃除は面倒だった。長い柄をした天井拭き用のモップで天井の水滴を残らず取り除く。今は冬だし水がぼたぼたと落ちてくるので、冷たくてしかたがない。風邪を引いてしまいそうだ、ニートだからそれでも問題ないけど。それが終わると、風呂場の壁を洗い、床と排水溝を洗うのだが、床には長い髪がぼちぼち散乱していた。自分で毛染めしている鬼ばばの茶色い髪だった。自分が一番風呂場を汚す癖してぼくに掃除させるとは。許せん。

排水溝は毎日掃除しているので大して汚くない。ただ鬼ばばの髪が結構絡みついている。気持ち悪いなあ、汚いなあ、と思いながら、それらを全部取り除くと、脱衣所兼洗面所にあるゴミ箱に捨てた。髪が手に絡まってなかなか捨てられなかった。長州小力だったらフンッと言ってエルボーを食らわせているところだ。

最後に風呂椅子と桶を洗うと、とにもかくにも風呂掃除を終えた。リビングに行くと鬼ばばがテレビを観ながら煎餅を食べていた。あんたも食べる? などと言ってくるので、ぼくも一枚頂いた。煎餅は醤油の味が香ばしくて美味しかった。

 

2016年9月16日公開

作品集『日常』第11話 (全12話)

© 2016 瀧上ルーシー

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