ぼくの朝

日常(第10話)

瀧上ルーシー

小説

1,249文字

これがぼくの朝。

五時ぴったりにベッドから起きる。毎日欠かさず行っている朝一番の仕事と言えば歯磨きと洗面だ。その後は約三十分のジョギングをする。途中で雨が降っても大丈夫なように愛用しているパーカー付きのウインドブレーカーと下はナイロンのジャージに着替えると、スニーカーを履いてぼくはアパートを飛び出した。数歩進むとドアを施錠するのを忘れていたのを思い出したので、一度戻って鍵で施錠する。今度こそぼくは走り出した。外はまだ薄暗かった。

今の陽気は簡単に汗が噴き出してくるくらいには暑いが、ぼくは寒いのよりは暑い方が好きだ。別に雪国で育ったなどということはないが、寒くなると布団から出られなくなってしかたがない。鼻から空気を吸い込んで口からそれを吐き出す。吸って吐いて吐いて、吸って吐いて吐いて、それがぼくの呼吸でのリズムの取り方だった。ぼくが住んでいるアパートは繁華街の中にある。したがって少し走ればこの時間でも開店しているコンビニや牛丼屋の看板が視界に入ってくる。ギラギラ光っているのはあまり好きじゃない。貯金が貯まり次第、田舎に中古の一軒家でも買って中古の車に乗って余生をまっとうしたい。会社が近いという理由だけで繁華街の中のアパートに住んでいるのだ。早朝で人が少ない繁華街は廃墟を思わせて人類がどこかへ引っ越してしまったかのような錯覚がする。次第に身体が暖まってきて、ぼくは走る速度を上げてアパートへと帰って行った。

今一つ綺麗じゃないアパートの中に入ると電動ミルで粉にした豆をコーヒーメーカーにセットして、ぼくは手早くシャワーを浴びて髭を剃った。身体を拭きドライヤーで髪を乾かす。すぐに出社できるようにオフィスカジュアルの服に着替えると、コーヒーをブラックで飲みながら新聞を眺めた。朝食は中年太り対策のためとらない。インターネットが嫌いなわけではないが、新聞だけは紙で読みたい。それでなくとも仕事中はずっとコンピューターの画面を眺めているのだから、新聞までデジタルで済ませるようになったらぼくは発狂するかもしれない。そうして新聞を読み終わると時刻はまだ七時にもなっていなかったので、1LDKの部屋を掃除することにした。会社は八時半に家を出れば定時までに間に合う。テーブルを濡らして絞った台布巾で拭き、テレビや箪笥、冷蔵庫の上に溜まった埃をハンディモップで拭いていった。そうしてフローリングの床に近隣住民に遠慮して吸い込む強さを弱に設定して掃除機をかけていく。掃除機の音は嫌いで弱でもイライラしてくるが、部屋が綺麗になるのは好きだった。最後に素手でトイレ用洗剤をつけた雑巾で便器を掃除した。どこぞやの社長がやってる精神鍛錬としてテレビで紹介されていたので、この習慣をぼくはかれこれ半年は続けている。

洗面所で手を洗い戸締まりを確認すると、仕事に必要な物が詰まった鞄を手にとってぼくはアパートを出た。

今日はどんな一日になるのだろう。

神様なら知っているのだろうか、それとも知らないのだろうか。

 

2016年8月5日公開

作品集『日常』第10話 (全12話)

© 2016 瀧上ルーシー

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