少年バタフライナイフ

少年バタフライナイフ/繭Vol.2(第3話)

瀧上ルーシー

小説

46,657文字

「繭」続編。サチコとコウイチの自堕落な生活。

今年も夏がやってきた。クーラーで涼しいが電子音でうるさい神楽坂のゲームセンターで、サチコはクレーンゲームで遊んでいた。生活保護費が出たばかりでプチ贅沢をしているのだ。もう三千円以上もクレーンゲームに投資していたが、熊のぬいぐるみは一向に取れなかった。アイスでも食べようと奥まった場所にある自販機コーナーに行くと、ニューヨーク・ヤンキースのキャップをかぶった少年が、複数の少年から順番にパンチを浴びせられていた。少し怖いので見て見ぬふりをしようか悩んだが、サチコは勇気を出して、「そのくらいで止めてあげたら? 鼻血出てるじゃん」と彼らに言った。彼らはもう三十代のサチコにうるせえ婆などと言うこともなく、その場から散っていった。床に膝をついてうずくまっているキャップの少年だけがその場に残った。ハンドバッグからポケットティッシュを出すと少年へ投げて寄越して、サチコは予定通り立ったまま自販機のアイスを食べた。もう午後七時を超えている。お酒も飲みたかったので、ゲームセンターから外へ出た。すると鼻血を拭きながら少年はサチコの後ろをついてきた。

「ついてこないでよ」そう言うと幼い顔をした少年は言う。意外と低い声だ。「あのさ、おれ行く所がないんだ。一日だけでもいいからお姉さんの家に泊めてくれないか」それは別に構わなかった。家に連れ込めばたぶんセックスができるし。少年の目は切れ長の一重で眉毛は細くて顔も細いいわゆる塩顔男子だった。身長は低めでサチコより少しだけ高いくらいだ。わりとタイプだった。サチコは考え込むフリだけして、「あんた歳と名前は?」と聞いた。

彼は「十九歳。コウイチ」と答えた。「わたしは村田サチコ」とサチコも自己紹介をした。

家に連れ込めばきっと彼とセックスするのだから、十八歳未満では困る。犯罪者にはなりたくない。神楽坂を下り、しばらく歩くとサチコが住んでいるぼろぼろのアパートに着いた。コウイチはとくに驚いたそぶりを見せずに、カンカン音を立てて外から丸見えの階段を上る。二階の部屋の前でドアを解錠すると、コウイチを先に入れた。彼は小さくおじゃまします、と言ってキャップを脱いだ。男としては中くらいの長さの黒髪だった。眠る場所は基本的にベッドしかないが、ほこり臭いのだろうが前に同棲みたいな生活をしていた男が使っていた布団一式が部屋の隅に丸められて置いてある。

「お腹空いてる?」

「少し」

小さな台所でコンロに薬缶をかける。お湯が沸くまでの間に4Lペットボトル入りの安焼酎を飲んだ。少年には麦茶で割ったそれを飲ませてやった。結構いい飲みっぷりで彼は一気飲みするとおかわりと言ってサチコにまたコップを渡した。お湯を容器に注ぎカップ麺を作るとちゃぶ台の上で二人で顔を突き合わせながらそれをすすった。煙草を吸いながら焼酎をがぶがぶと何杯も飲んだ。コウイチがくれと言うので彼にもメンソールの煙草を吸わせてやった。しばらくすると酔っ払ったコウイチが「おれ、もう寝ていい?」と言うので、「ダメ、今日はセックスするの」と言って二人はベッドへと移動した。近頃はセックスフレンドを作ってもすぐに関係を切られるし、久しぶりのセックスだった。酒臭い息でお互いの口の中を舌で掻き回した。少年の着ていたTシャツを脱がし、毛が生えていない乳首を吸ってやった。ジーンズとトランクスも脱がし、パクりとちんこをくわえる。コウイチが胸、触らせて、と言うのでちんこを一旦解放して彼の頭の前に大きくはない胸を持っていった。彼は下から胸を揉みながら乳首を吸った。たまに感じる女もいるらしいが、サチコは胸だけじゃ殆ど感じない。彼の顔から胸を離し、身体を反対に向けて彼の顔に跨がってちんこをしゃぶった。コウイチは恐る恐るといったふうに、サチコのまんこに舌を這わせる。サチコは膣でもいける大人の女だが、やっぱりクリトリスを舌で転がされるのが一番気持ちがいい。びりびりとして頭の中がとろけていく。そのまま一度いかされた。コウイチがそろそろ入れたいと言うので、彼の身体から降りてサチコが下になった。枕元のコンドームを投げてやることを忘れない。彼は正常位で少し腰を振ると、ちんこを抜いてサチコにお尻向けて、と命令した。言われたとおりにすると腰を掴んで力いっぱいコウイチはちんこを膣の中へと叩きつけた。ああ、ああ……気持ち良すぎて声を抑えられない。しばらくして彼はゴムの中に精子を出した。酔っ払っていたのでセックス後の煙草を吸う余裕もなく、一つのベッドの上でサチコ達は眠りについた。

正午を過ぎてサチコが起きると、コウイチが台所の下の戸棚を漁っているところを目撃した。

「ちょっと、勝手に人の部屋漁らないでよ」

「一緒にこれやろうよ」

コウイチは青いガラスパイプをくわえて片手にハーブのパッケージを掴んでサチコに揺らして見せた。

「何かあったとき責任取れないからダメ」

寝ぼけた頭でそう言うのだが、「いいからいいから」と言って、少年はパイプにお茶っ葉みたいな黄緑色のハーブを詰めると、ライターであぶりながら吸い込んでいった。半分ほど吸引するとサチコにパイプを渡してきた。

「サチコもやろうよ」

パイプの中の残りのハーブを全部吸引してしばらくすると世界が曲がった。嗅いだことのないようないい匂いを感じるし、どんどんまんこが濡れてくるのが感じられる。コウイチはやる気満々なようで全裸になっていた。サチコも負けじと全裸になる。幻臭なのだろうがコウイチのちんこからは焼けた肉のような匂いがした。乳首を吸われながらまんこの中に指を入れられただけで、頭がおかしくなるくらい気持ちが良かった。ハーブごときでこれなのだから、覚醒剤を使ったセックスをしてそこから抜け出せなくなる人間がいるのも頷けた。覚醒剤などのハードドラッグだけは絶対に使ってはいけない。お返しにちんこをしゃぶってやると、一分もしないうちにコウイチは口の中に射精した。それからいい匂いに感じるお互いの全身を舐め合って、コンドームだけは忘れずにつけてもらって、セックスをした。肉の棒に膣壁を抉られていく。若いちんこは硬くて鋭かった。ハーブのせいもあって、連続で何度もいかされてしまう。コンドームの中にもう一度射精すると、コウイチはちんこを抜いて、ベッドの上に寝っ転がった。ハーブの効果がまだ続いていてサチコはもっとセックスしたかったが、我慢して幻覚を楽しんだ。幸いバッドトリップはしなかった。

コウイチは三日経ってもサチコのアパートから帰っていかなかった。だが年下の男と同棲するというのは楽しかった。気分がいいので昼間から酒を飲んで、コウイチが掃除してくれたユニットバスに二人で一緒に浸かった。コウイチのちんこはずっと勃起していた。自分の裸を見ただけでこんなに若い子が興奮してくれるのかと思うと嬉しかった。

「コウイチってどういう女が好みなの」

「サチコみたいな女が一番好きだよ。同年代の女は喧しいし我が儘だし」

「ありがと。お世辞でも嬉しいな」

「サチコはどんな男がいいんだ?」

聞かれて少しの間悩んだ。自分のことを愛してくれる男なら誰でもいいと思ったが、そう言うと舐められると思ったのでサチコは、「ありきたりだけど優しい男かな」と答えた。答えてから一年前に亡くなったセックスフレンドでも恋人でもない、だが大切な男だったタケシのことを思い出した。彼もとてもサチコに優しくしてくれた。

コウイチはサチコを洗い場の風呂椅子に座らせてスポンジで背中を流してくれた。サチコは思わず「うわあ、気持ちいいわあ」などとおやじくさいことを言ってしまう。コウイチは嬉しそうに笑った。今度はサチコがコウイチの背中を流してやった。二人で風呂から上がる。

コウイチは暇さえあれば部屋の掃除や整理整頓をしてくれたし、絶好の話し相手になってくれた。あまり自分のことを話したがらないコウイチだったが、過去に高校を中退しているらしかった。性格が悪いような気もするが、大学中退のサチコより低学歴で、少し鼻高だった。楽しい生活だったが、煙草代も酒代も食事代も倍になって生活は苦しかった。生活保護費は貰ったばかりで、家賃と光熱費、電話代はもう振り込んであるとはいえ、手元には四万円しか金がなかった。煙草代と酒代とちょっとだけで終わってしまう。だが二人で並んでテレビを観るのも、一緒に煙草を吸うのも楽しかった。困るのは金だけだ。

 

ある日コウイチに帰って欲しいということを伝えると、彼は苦笑した。

「おれ、実はまだ十六歳なんだよね。何度もセックスしたよね。おれが警察に行ったらサチコ捕まるよね」

サチコは驚いた。若い若いと思っていたが、コウイチは自分の半分以下の歳だったのか。

「本当に知らなかったんだもん、大丈夫だよ」

「おれは、サチコに最初から十六歳だって言ってあるって嘘つくよ」

「……いつまでここに居たいの?」

「わからない。できればずっとがいい」

一人暮しの寂しさや虚しさが溜まっていたサチコは、「それでもいいから、アルバイトくらいはしなさい」と言った。

「えー、やだよ」

「しなさい! そして少しはお金を入れなさい。それがここに住む最低条件だよ」

「わかったよ」

言われてすぐにコウイチは街に仕事を探しに行った。タウンワークでもどこかに取りに行くのだろう。

サチコもサチコでこのままではとても暮らしていけないので、売春をすることにした。別に迷わなかった。セックスは好きだし、おじさん達のストレスを和らげられるなら社会的に貢献していることになるように思えた。本来ならお金を稼ぐと生活保護で貰えるお金が少なくなったり支給停止されたりするのだが、サチコはお上に内緒で稼ぐことにした。若く見えるように携帯で写真を自分で撮って有名どころの出会い系サイトに載せる。歳も二十六歳に鯖読んで、サチという本名とあまり変わらない偽名を使うことにした。出会い系サイトのサチのページに「二十六歳ホ別ゴ有りイチ@三也」と書き込んだ。二十六歳でホテル代別で一万円、コンドーム有りのプレイで池袋でどうですか、という意味の隠語だった。池袋は近いし、現在の売春の相場を調べて、サチコは女子高生でもないので代金は一万円にした。その日のうちに客はついた。ラビットパンチというハンドルネームの男だった。ラビットさんとでも呼べばいいのだろうか、それとも兎さんの方がいいのか。ホテルが多い池袋の東口で待ち合わせとなった。目印にドクターペッパーを片手に持った茶髪の肩までのセミロングの水色のキャミソール姿の女がサチだと事前に出会い系サイトを通して教えておいた。

実際に会うのは夜八時なので、それまではいつも通り暇だった。生まれて始めての売春ということもあって、緊張をほぐすために、焼酎を水みたいにがばがば飲んで結構酔っ払ってしまった。幻聴まで聞えてきた。サチコは統合失調症なのでこういうことがたまにある。サチコのヤリマン、サチコの売女、サチコの寄生虫、もうさっさと死んじゃえば? サチコは頭の中で幻聴に反論した。うるさい、生きていくってことは尊いんだよ、別にサチコが生きてたって、コウイチ少年くらいしか喜ばないんじゃないのお? うるさいなあ! 本当に。もうすぐ生まれて始めての援交なんだから黙っててよ。いや、黙らないね。売春なんかしようとして親に申し訳ないと思わないの? 思わないよ、お父さんだってわたしのこと厄介払いしたし、わたしはわたしで自由にやりたいように生きるよ。怖い目に遭わないといいけどね。大丈夫だよ、やばそうな相手だったらホテル行かないで逃げるし。そんな上手くいくと思う? サチコちゃあん、あー! あー! あー! 本当にうるさい、やめてほしいよ、あんたらこそ死んじゃってよ。そう頭の中で反論してサチコは幻聴止めの頓服薬を服用した。効くときと効かないときがあるのだが、今日はよく効いたようで薬を飲んでから三十分も経つと頭の中は静かになっていった。そのうちにコウイチが思った通り求人誌を片手に帰ってきた。「生活費厳しいからわたし売春するの」と彼にサチコは言った。少しだけ悲しそうな顔をしているようにも見えたがコウイチは「がんばれよ」と言うだけだった。時間が迫ってくる。この部屋の合い鍵をコウイチに渡して、「いってらっしゃいのキスは?」と言うとコウイチは言われた通りサチコの口にキスをした。

コンビニでドクターペッパーを買って池袋東口に行くと、すぐに「サチさんですか?」とおやじが話しかけてきた。小太りで頭が禿げ上がったおやじだった。正直、人違いですと言って帰りたくなったが、金のために「そうです、今日はよろしくお願いしますね」と言って少し歩いてホテルまで移動してラビットさんが部屋のパネルの下のボタンを押して二人で空いている部屋へと入っていった。安い部屋と高めの部屋があったのだが、ラビットさんは迷うことなく安い部屋を選んだ。大きなベッドと液晶テレビ、小さなローテーブルとソファー、シャワー室とトイレがある部屋だった。テーブルの上に灰皿が置いてあったので、サチコはラビットさんに断ってからまずは一服した。「ラビットさんは吸わないんですか?」と聞くと、「もう辞めて十年になるよ」と彼は笑いながら言った。

二人で一緒にシャワーを浴びた。ラビットさんの身体は毛だらけで腹はだぶだぶで気持ちが悪かった。ちんこも親指くらいしかなかった。だが、コウイチにやってあげたのと同じように椅子に座らせて毛が生えた背中も流してあげた。ラビットさんが「僕も洗ってあげるよ」と言うのだが、「恥ずかしいのいいです」と断った。本心を言えば気持ち悪いのでいいです、お金だけ下さい、となってしまうのだが。

ベッドへ移動して照明を薄暗くすると愛のないセックスが始まった。愛のないセックスなんてサチコにとっては日常の一部でただ売春が初めてなだけだった。酸っぱい臭いのする口にちゅっと一瞬だけキスすると布団にもぐってちんこを口と手で愛撫してやった。ラビットさんはすぐにいってしまった。彼は「もう一度立たせるからちょっと待って」と言って、自分の手でちんこを再び勃起させた。前戯もそこそこにちんこにゴムをかぶせてサチコのまんこに入れてきた。まんこが緩くていってくれなかったらどうしようと思っていたのだが、勃起したラビットさんのちんこは平均より少し小さいくらいで、立派な大人のちんこだった。ラビットさんは二発目の射精をしてシャワーを浴びると、サチコにもシャワーを浴びる時間をくれて、服を着たサチコに一万円を手渡してきた。「また誘いたいから直接のメールアドレスを教えて」とラビットさんは言った。断ろうか悩んだのだが大事な金づるだと思いサチコはメールアドレスをラビットさんに教えた。無人の精算機でお金を払うと二人はホテルを出た。そうして別々の方向へと消えていった。サチコは電車の改札口をくぐるのだが、ラビットさんは池袋の町中へと消えていった。コインパーキングにでも車を駐めているのだろうか。

 

統合失調症を治療する薬を服用してコウイチの身体を押しのけベッドで眠っていると、ドアを開き誰かが中か出て行き外側から施錠する音が聞えてきた。それを無視してさらに眠っていた。クーラーの稼働音と窓から入ってくる日差しでこれ以上眠れそうになかったが、無理矢理寝た。そうして正午前になって、外から誰かが入ってきた。薄く目を開けるとそれはコウイチだった。出かけて帰ってきたらしい。彼は小さな玄関とも呼べないような玄関で靴を脱ぐと、歩いてきてベッドの上のサチコに抱きついた。

「……なに」

「おれ、アルバイト決まったよ。コンビニバイト。即決だった。これでこのアパートにいてもいいんだろ。毎月四万円は金入れるよ」

それを聞いた瞬間、なぜだか眠気が吹っ飛んでいった。

「やったね。お祝いということで今から飲もうか。いつから出勤?」

「明日から。二十歳だって嘘吐いてあるから深夜のシフトも入れてもらえる」

常備してある焼酎だけじゃ寂しいので二人でコンビニに行って、ウィスキーや第三のビールを大量に買ってきた。しばらく服の上から胸を揉まれたり、ちんこにさわりながら酒を腹が痛くなるほど飲んでいた。

「胸好きなの?」

「サチコこそちんこ好きなのか」

「うん、好きだよ。嫌いな女はいないんじゃない?」

「いると思うけどな。レイプ被害者とか」

夏の日差しも相まって心が熱かった。まだ始まったばかりだが温かいを通り越して熱い同棲生活だった。午後四時頃まで酒を飲んで、コウイチの服の替えがないということで近くのユニクロまで電車で移動してTシャツやパンツやジーンズや部屋着のハーフパンツなどを買ってやった。コウイチの服は出会ったときに着ていた服しかなかったので、大量に購入してお代は二万円を超えた。

「給料入ったら今日買ってもらった分の金返すから」

「うん、そうして」

アパートに帰ってきてまた飲んで、コウイチは早々と潰れてしまった。相手してくれる人がいなくなっても酒を飲んでいたのだが、どこか暇に感じていると携帯に出会い系サイトを経由して男からメールが入ってきていた。『今日会える?』と聞いてくるので『会えますよ』と答えてコウイチをほうってまた池袋に行った。そうして金と引き替えに魅力的とはほど遠い中年男にサチコは股を開いた。午後四時から午後九時頃くらいまでの間に身体を売って、夕食の弁当を二人分買って家に直帰するのはすぐに日課となった。

コウイチは居候ということもあって、嫌がらずに家事をしてくれた。外で買ってきたものを食べるのは一日一回で、朝と昼はコンビニバイトがないときならコウイチが作ってくれた。朝は目玉焼きやゆで卵、スクランブルエッグ、昼は納豆パスタやパスタに市販のソースをかけた物やチャーハンやインスタントラーメンなど、簡単だけど美味しいいわゆる男メシを彼は作ってくれた。アルバイトが休みの日はたまに出かけているようだった。友達にでも会っているのだろうか。

そんなある日、外からチャイムを鳴らされたので覗き穴から来客が誰なのか見ると、でっぷりとしたケースワーカーの佐藤の姿があった。サチコの生活をチェックしにきたのだ。午前十時頃のことだったのだが、この日は二人とも家に居て、しかもコウイチのアルバイトがもうすぐ始まる時間だった。十六歳の少年と同居していることを知られたらかなりまずい。小声でコウイチとどう口裏を合わせるか会議した。コウイチはサチコの友達として遊びに来ていたということにすると決まった。精神科病院の隔離室を思い出すような重く厚いドアの前でサチコは佐藤に、「友達が来てるんですけど」と言った。佐藤は「それでもかまいません」と言う。コウイチはわざとらしく、「邪魔みたいだからおれ、帰るよ」と大声で言って、佐藤が部屋の中に入ってくるときにアパートを出て行った。佐藤はとくに不審に思っていないようだった。見るからにコウイチの荷物といった物は既にクローゼットの中に隠してある。プライバシーの問題もあるので、冷蔵庫や収納の中までは佐藤も見ない。彼女はざらっと部屋の中を見渡すと、座布団もないちゃぶ台の前に座った。

「何度も言ってますけど、作業所に行く気はないですか?」作業所とは障害者が仕事の真似事をする施設のことだ。

「ないです」

「村田さんには社会復帰できるように努力する義務があると思いますけどねえ」佐藤の嫌味な物言いにもサチコは動じなかった。いつものことだ。

「それでも嫌です。わたしだって普通の人が経験しないような嫌な思いをしてきたんだから、生活保護でゆっくりと暮らす権利があります」

「じゃあ嫌な思いをしたら人を殺していいんですか? 万引きしていいんですか? 嫌な人だったら殴ってもいいんですか? 違いますよね」

「人殺しや泥棒と一緒にしないでくださいよ」

「人殺しはともかくとして泥棒とはあまり変わらないんじゃないですか? 善良な国民が支払った税金で暮らしているんですから」

泣けてきた。自然と涙が出てきた。本当だったらサチコだってこんな生活嫌だった。誰もサチコのことを愛してくれないから、こんな生活をしているのだ。

「ひどい……わたしだって出来る範囲で頑張ってるのに……」

サチコがしゃくり上げて泣くと、佐藤は「もう行きます。お邪魔しました」と言ってアパートを出て行った。

部屋に一人になってからサチコはがぶがぶと焼酎を飲んだ。そのうちに携帯に出会い系サイトからのメールが入る。二人も金を払ってまでサチコとセックスがしたいという男がいるようだった。とても嬉しい。時間をずらして池袋でどちらの男ともセックスをした。この仕事が好きだった。殆ど働いたことがないが、サチコは売春を自分の天職のように思った。女に相手されない男達の怒りや疲れを和らげてやるのはとても意味があることに感じた。それに今は自分の帰りを待ってくれている人がいる。それが嬉しかった。そして夜の電車に揺られてアパートに帰ってくると、コウイチが知らない女とセックスをしていた。二人の下半身が繋がっている。女はサチコの姿を視界に入れると小さく悲鳴を上げ、急いで服を着てアパートを出て行った。コウイチは何か言い訳をしようとしているのか、口をもごもごと動かした。サチコは大声で「出て行け」と言ってコウイチの身体を引っ張ってアパートの外へ出した。サチコがベッドで眠ろうとすると、「サチコごめん、もうしないよ。中に入れてよ」とコウイチの声が聞えてきた。だがそれを無視してサチコは酒を飲んで眠った。翌朝、さすがにどこかへ行っているだろうと思い、玄関のドアを開くと外から丸見えの廊下で土下座の姿勢のまま眠っているコウイチの姿があった。なんだかおかしくて「部屋入っていいよ」と彼を起こして中に入れてやった。

 

その日の客は普通ではなかった。シャワールームでサチコが放尿しているところを見て、にやあっと笑っていた。その後でベッドへ移るのだが、男は指一本もサチコに触れなかった。「お前は雌豚だ。雌豚が実況しながらオナニーしろ」などと男は言った。サチコは男の前で股を開いて「ここがクリトリスです。よく知らないけど男の人のちんこに似た場所のようで、ここを擦ると女はすぐに……」「女じゃないお前は雌豚だ」「はい! クリトリスを擦ると雌豚はすぐにいっちゃいます」それからサチコは喘ぎながら自分で自分のクリトリスを弄った。男はサチコの声が気に入らなかったらしく、「あんあんあん、じゃなくて、ブーブーブーだろ。お前は豚なんだから」怖くてそして屈辱で自分の目が潤んでいくのがわかる。だがサチコは「ぶう! ぶうぶう! いっちゃうぶう!」と言って絶頂を迎えた。身体がびくびくと痙攣する。男はジッパーを下げるとちんこを取り出して、サチコに小便をかけた。男が小便している時間が早く終わって欲しいのに、永遠にも感じられた。男は一万円とホテル代をベッドの上へ捨てるように投げると、先にホテルを出て行った。サチコも男の小便の臭いがするこんなところに長く居たくはなかったので、手早くシャワーを浴びてさっさとホテルを出た。

薬が切れそうになっていたので掛かり付けの精神科病院に行った。待合室の壁には入院患者が書いた物と思われるへたくそな絵が飾ってあって気分を憂鬱にさせた。独り言をぶつぶつ言っている患者や、女性看護師に怒鳴りつけている患者もいた。いつものことなのでサチコはとくに気にしない。ブックオフで百円で買ったまだ読んでない小説が何冊かあって、それを持ってきたので一時間近くも待たされたが、とくに退屈には感じなかった。

診察室でサチコは担当医に沢山薬をリクエストした。毎日朝昼夕寝る前に飲む薬の他に、抗不安薬や幻聴止め、副作用止め、睡眠薬を少し多めにもらった。サチコは生活保護受給者なので医療費は全額無料だ。それを少しは人様に悪いことだと思ってはいたが、生きていくために仕方がないことだともサチコは思った。

アパートに帰ってくると、コンビニバイトが休みだったコウイチとソフトSMのようなセックスをした。口と手で彼のちんこを愛撫して、もう少しでいきそうだというところでぴたりと愛撫を止めて、わたしのを舐めなさいと命令した。「わたしがいくまで入れさせてあげないから」そう言ってサチコは悶えた。そうしてサチコは自分の半分も生きていない少年にいかされる。コンドームをつけて入れようとしてくるところで彼の腹を蹴っ飛ばして拒んだ。コウイチは「もう我慢できない」などと言う。サチコは「もう一度舐めなさい」とまたまんこを舐めさせた。もう一度いかされると、「今日は入れさせてあげない」と言い、彼のちんこを手で扱いて射精させた。少年を翻弄しているようでそれはそれは快感だった。

コウイチがアルバイトを初めて一ヶ月以上が経ち、この日は給料日だった。彼はアパートに第三のでも発泡酒でもない本物のビールを一ケース抱えて帰ってきた。Lサイズのピザを二枚も注文して、二人でまだ冷えていないビールを飲みながらピザが来るのを待った。

「いつもありがとうな」そう言って彼は約束の四万円とこの間買った服代の二万円の合計六万円をサチコに支払った。週に最低二、三万円は援交で稼げたし、それがばれていないようで生活保護費も減額されていないし、少しは贅沢な暮らしができるくらいの小金が手元に残っていた。

 

しばらくの時が立った。ある日コウイチは少し緊張した様子で「サチコ、十万円くれないか」と頼みながら背中に抱きついてきた。全然余裕でそれ以上の金額を箪笥貯金していたが、「馬鹿も休み休み言いなさい」と断った。一回払ってしまえば何回でもおねだりされると思ったのだ。「来週までに先輩に十万円用意しないとボコられるんだよ、サチコ助けてよ」「どういうこと?」そう聞くと、「理由なんて殆どないよ。先輩がおれとか他の奴にもとにかく十万円持ってこいって命令するんだよ」と泣きそうな顔で言う。「そんな先輩と付き合うの辞めればいいでしょ」コウイチは依然泣きそうな顔で「だめだよ、そのグループの中には小学校から一緒だった親友もいるんだ、あいつらとつるめなくなるのは辛いよ」サチコは説得を諦めた。「なら一度くらいボコボコにされてくれば?」そう言うと、コウイチはズボンのポケットからバタフライナイフを取り出して、金属音を鳴らしながらナイフを回転させるように振って刃を出した。それを見てサチコの心臓が凍りついたが、コウイチはすぐに元通り刃をしまって、バタフライナイフをポケットに突っ込んだ。

「ごめん……へんなもんだして。おれがどうかしてた」彼の台詞を聞いて、サチコは気にしてないよと言いたかったが、言う前にコウイチはアパートを出て行った。

この日は売春の予定がなかったのでテレビを観ながら酒を飲んでいると、アパートの外が騒がしくなって、大勢がボロい階段を上る音が聞えてきた。そうしてサチコの部屋のドアは解錠された。コウイチが泣きそうな顔で立っている。その後ろにまだ十代に見える少年達三人が立っていた。金色の肩までの長髪でサングラスをした少年が一番えらそうにしていた。その少年がコウイチを押しのけ、その点は行儀良く靴を脱ぐと部屋に入ってきた。

「あんたが十万円払わないとこいつがボコボコになるけどいい?」

サチコは怖かったが言い返した。「警察呼ぶよ」

金髪の少年は丸いサングラスをしていてもわかる下卑た笑みをこぼした。「あんたがここにいる俺達全員いかせられるなら、少しくらい待ってやるんだけどなあ」言うが早いか金髪の少年はTシャツにジャージ姿で化粧もしていないサチコをベッドの上に押し倒して、自分の口をサチコのそれに押しつけて舌を入れて掻き回した。コウイチにも見られてしまっているわけだが、サチコの気分はすぐに助兵衛なモードに入った。自分から金色の頭を抱えて長いキスをした。少年はサチコの上半身を裸にし胸を愛撫した。そうした後でへそを舐めて、ジャージとパンティを脱がすと、少しの間指と舌でまんこにも愛撫をし、勃起したコンドームもつけていないちんこを入れてきた。それは嫌だったがコウイチを助けるためには仕方がないことのように思えた。それにこの少年達も人生が上手くいっていないのかと思うと、妙に憎めないで悪者には思えなかった。金髪の少年は正常位で腰をふりながら、「お前らもやってもらえよ」と言い、別の少年が下半身だけ裸になって、ベッドの横からサチコの口にちんこをねじ込んできた。喘ぎたいのを我慢しながら顔を上下させてちんこをしゃぶっていると、金髪の少年より先にサチコがフェラチオしていた少年が射精した。口の中がどろどろになって飲み込むのもしゃくだったので、ベッドのシーツの上に口から精子を出した。そして最後に残った少年のちんこは手でいかせてやった。その頃になって金髪の少年はやっといって、サチコの白い腹に精子を出した。

金髪の少年はコウイチも連れて外へ出て行った。サチコはベッドの上でぐったりとした。

翌日も少年達はサチコを抱きにきた。変な話だが、それに備えてサチコはあらかじめ化粧を済ませておいた。「十万円払うまで毎日くるからな」そう言って、乱暴にサチコを抱いていった。次の日も、その次の日も、サチコは三人を同時に相手した。中で出させたことはないが、彼らはゴムを使ってくれないので妊娠するかどうかが不安だった。

ある日ことが終わると、金髪の少年がコウイチに、「サチコに根性焼きしろ」と命令した。コウイチは「嫌ですよ」とそれを拒んだ。だが金髪の少年はにやにやしながら、「嫌でもやれ」と言った。サチコは何度かいかされて疲れて頭の中がぼーっとしていた。コウイチはしばらく煙草を吸い続けると「ゴメン」と言って、短くなった煙草をサチコの二の腕に押しつけてきた。悲鳴を上げる暇もないくらい熱さは一瞬で通り過ぎていった。それを見て他の少年達はげらげらと本当におかしそうに笑った。そうしてコウイチ以外の少年達はアパートを出て行った。二人きりになってもサチコは恨み言を言わなかった。

「おれがさっきやったのと同じことをしてくれ」と怖い顔でコウイチは言った。

「別にコウイチは悪くないじゃん。わたし気にしてないよ」

「いいからやってくれよ!」

悲鳴みたいにコウイチは叫んだ。サチコは緊張しながら短くなるまで煙草を吸うと、恐る恐る袖を肩までまくったコウイチの二の腕に押しつけた。その儀式のような出来事が終わるとコウイチは何も言わずにサチコの身体をきつく抱きしめた。

 

出会い系サイトを通してメールが入ってきた。『援交女子達で女子会を開きませんか? 今のところ三人が参加を決めています』メールにはそんなことが書かれていた。マルチ商法や宗教の勧誘だったら嫌だが、面白そうだと思い、サチコはメールへ返信した。サチコが住んでいる新宿の居酒屋で女子会は開催されることとなった。開催される日まで、いつも通り売春やコウイチの先輩達に股を開いて過ごした。サチコが待ち合わせの居酒屋まで行ってメールを入れると、女が一人入り口まで迎えにきてくれた。彼女のハンドルネームはカナ。この女子会にサチコを誘った張本人である。歳は聞かないが、サチコより歳上そうに見える彼女は、肩にかからないくらいの茶髪のショートヘアでサチコより身長は低いが胸にかなりのボリュームがあった。顔はナチョラルメイクがよく似合う整った顔をしていた。堀りごたつ式の席でカナの隣にサチコが座ると、向かいに座ったミーナとキョウコが挨拶をしてきた。キョウコは長身で長いストレートの黒髪をしていて、ミーナはバンドでもやっているのか、セミロングの髪の右側がピンクで左側は金髪だった。サチコとカナが生中、キョウコがグレフルサワー、ミーナがウーロンハイを注文した。ファーストドリンクが揃うと四人は乾杯をした。カナが皆に聞いた。

「最近どうですか? 客は入ります? 危ない目にあったりしません?」

「この間、豚になってオナニー実況したけど、それくらいかなあ。客入りはまあそこそこ」サチコはそう答えた。ミーナが「僕はフツメンかイケメン専門だから、そういう目には遭わないね。やっぱりキモメンは頭の中もキモいよ。一日一人客取れれば良い方かな」ミーナは女なのに自分のことを〝僕〟と呼ぶようだった。キョウコは何も言わずに酒を飲みながら頬笑んでいた。四人は鶏の唐揚げや軟骨揚げ、刺身、焼き鳥、フライドポテト、卵焼きなどを男性店員に注文した。その店員は割とイケメンだった。すぐにテーブルの上が美味しい食べ物でいっぱいになる。酒が進んだ。サチコはどうせ割り勘なのだからたくさん飲まないと損だと言わないばかりに生中ばかりを飲んだ。ビールは原価率が高いらしい。

幹事のカナが、「皆さんは何のために援交なんかでお金稼いでいるんですか? 私は子持ちのシングルマザーだからですけど。他に実入りの良い仕事を知らなくて」と聞いてきた。ミーナは「僕バンドマンだから。スタジオ代とかライブハウス代でいっぱいいっぱいだよお」やはりバンドマンだった。彼女はもう少し酔っ払っているようだ。キョウコが高いアニメ声で爆弾発言をした。「浮気する旦那への復讐ですね。それだけです」キョウコの見た目は若い。十代ということはないのだろうが二十代前半に見える。「わたしより若いと思うから聞いちゃうけど、キョウコさん何歳?」サチコがそう聞くと彼女は「もう二十八歳ですよ」と言った。サチコが鯖読んだ年齢より上だった。更に生中を飲む。ビールばかりもう五杯もサチコは飲んでいた。だが普段焼酎で鍛えているのでそれくらいでは大して酔っ払わない。飲む酒をウィスキーのロックにシフトして、さらに飲んだ。ミーナが面白がって、もっと飲んでもっと飲んで、と言った。カナとキョウコは心配そうにしている。「そんな沢山飲んで大丈夫なんですか?」「大丈夫、大丈夫ー、わたし普段もっと飲んでるから。酔ってないときの方が少ないくらいだよお」サチコは酔っ払って気持ち良くなってしまっていた。

それからもどんな客が嫌だとか、どんな客が怖いだとか、ラブホテルはどこどこのホテルがアメニティが充実していてルームサービスの食事が美味しいだとか話した。そうして午前三時くらいになってお開きとなった。皆で乗れば行く順番によっては安く済むのに、全員が別々のタクシーに乗ってその場を後にした。根本的には出会い系で取った客と同じでその場限りの友情だ。だがそれでも仲間がいるようでサチコは嬉しかった。

 

またコウイチの先輩達とやっていた。彼らは一通りサチコの身体を弄くり回して、射精した。金色の長髪でサングラスのコウイチの先輩だという男が言った。

「もう飽きた。明日には十万円払えよ」

「無理。警察呼ぶよ」

「十六歳のガキ囲って、警察呼ばれたら困るのはあんたじゃないか?」

「近いうちに用意できたら連絡するから連絡先教えて、今日は帰って」

金髪の少年と携帯の番号を交換すると、「早くしろよな」と言って少年達は帰って行った。どうしようどうしよう……金はあるのだが一度払ったら必ず二度目もくる。部屋にいるコウイチもイライラしているようでずっと煙草を吹かしていた。こんなに困っているのにサチコには頼れる人間がいなかった。いや、一人いた。祈るように携帯を操作して前に喧嘩別れした男に一年ぶりに電話をかけた。番号が変わっていたらアウトだが電話は繋がった。

「もしもしジョウジ?」

「もしもしサチコ? そうだったら久しぶり」久しぶりに聞く元彼氏で元セックスフレンドの声は力強かった。懐かしさがこみ上げてきて目に涙が溜まってくるのがわかる。

「うん、サチコだよ」

「どうかしたか? 近々結婚する予定だったからこっちから連絡するつもりだったんだ」

世間話もほどほどにサチコは用件を切り出した。ジョウジは静かに聞いてくれた。

「そいつらガキなんだろ? なんとかなる。助けてやるよ」

電話で最低限の打ち合わせをするとサチコの方から電話を切った。他の女と結婚するとはいえジョウジの気持ちが嬉しかった。

次の日、スーツを着た強面の男とジョウジがアパートにやってきた。ジョウジの頭は昔みたいに似合わない金髪ではなかった。もう大学四年生なので就職活動でもしている時期だろうか。アルバイトが休みだったコウイチは緊張しているのか喋らない。ずっと手元のスマートフォンを見ている。家出をしても携帯電話の料金は親が払ってくれているのだろうか。サチコは電話をかけて金髪の少年達を呼び出した。彼らはすぐにアパートまでやってきた。「金、本当に用意したか?」部屋に上がってすぐにジョウジと強面の男の顔を見て、金髪の少年は緊張した顔をした。強面の男が有無を言わさずに金髪の少年の頬を殴った。

「村田さんに二度とちょっかいかけるんじゃねえ。コウイチにもだ。俺はこういうもんだ」男はスーツの内ポケットから名刺入れを取り出すとそこから一枚抜いて少年達の方へと投げた。「お前らの住所も家族も割り出そうすれば割り出せるんだからな」金髪の少年達は声を出せないようだった。「土下座しやがれ、クソども」男に命令されて少年達は土下座する。男は表情を一転させにこりと笑って「村田さん、こんなもんでいいですか?」とサチコに言った。サチコは「もう少し鬱憤を晴らしていいですか?」と男に聞く。男はどうぞと了承する。

「お前ら全員裸になれ」

サチコは少年達に男みたいな言葉で命令した。戸惑いながらも少年達は服を脱いで素っ裸になった。三人ともパンツは派手な柄のトランクスだった。ちんこは萎縮していた。サチコは玄関で右足にだけ靴を履くと、少年達のちんこを順番に靴を履いた方の足で踏みにじった。痛い痛い、と言って少年達は悲鳴を上げ、泣いている者もいた。少年達のちんこはゴム人形のようにぐにぐにとしていた。ジョウジと男はげらげらと笑っている。しばらくちんこを蹂躙すると、気分が晴れてきたので「お前ら帰れ、二度とくるな」と命令する。脚を振わせながら少年達は服を着ると、逃げ出すように部屋から出て行った。

後日ジョウジに聞いたのだが、強面の男は彼の大学のOBでブラック企業勤めのサラリーマンだった。会社自体はやくざとの付き合いがあるが、強面の男自身にはそんな繋がりはないらしかった。

 

2016年8月4日公開

作品集『少年バタフライナイフ/繭Vol.2』最終話 (全3話)

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© 2016 瀧上ルーシー

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