くずかごから酒場まで(5)

くずかごから酒場まで(第5話)

アサミ・ラムジフスキー

小説

4,612文字

特集*住石彰 ……稀代の天才・住石彰に迫る特集連載。第5回はミュージシャンの野崎信による住石との思い出。

彼は、魔法使いだった。

野崎信

 

五つ上の姉の影響で、幼いころは少女趣味の渦中にいた。外で走り回るよりおままごとに付き合わされた記憶のほうが多く、特撮ロボットのデラックス超合金よりもサンリオキャラクターの縫いぐるみで遊ぶのが専らだった。年の離れた姉を持つ男の大部分が経験しているように、スカートを履かされたり、化粧品で顔を真っ白にされたりしたこともある。遊びにきていた姉の友人たちに体をいじくり廻されたことさえあった。空想上の「姉」しか知らない人からすれば羨ましいのかもしれないが、当事者としては性の目覚めどころではない。あのトラウマとしか形容しようのない記憶は実に根が深く、今もって僕は年上の女性が苦手である。その意味では、姉の呪縛からは依然として逃れられていないのかもしれない。

そんな僕の最初の音楽体験も、おのずと姉の支配下にあった。

いつから姉がその人を追いかけるようになったのかは覚えていない。男である僕には、少女期特有の白馬の王子様的願望を慮ることさえできないが、気づいたときには、姉はもうあの人の虜だった。下敷きからクリアファイルからカレンダーから、その人のプリントされている日用品は一頻り揃っていた。ポスターなど、平気で一時間以上見つめていた気がする。なかでも鮮明に思い出せるのは、朝から晩まで、手書きの歌詞カードを見ながらその人の歌を口ずさむ姉の姿だ。

2011年2月7日公開

作品集『くずかごから酒場まで』第5話 (全11話)

くずかごから酒場まで

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© 2011 アサミ・ラムジフスキー

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