鶺鴒(せきれい)(1)

応募作品

狐塚月歩

小説

1,028文字

元をたどれば戦前のこと。真夜中、繁華街にて全裸の男性が焼死体となって発見された。
―赤虫。彼は果たして被害者なのだろうか。それとも・・・

激しい夕立は馬の背を分けるようで、ついに止むことはなく真夜中まで降り続いた。

豪雨、そう。轟くまでの雨は柔らかな地面に残された足跡を消して色褪せたコールタールと干からびたセメントにて舗装された道路を黒く濡らしたのだった。

日本における都会というのは主に、やがて焼け野原となるだろう首都圏のみといえよう。東京大空襲のち終戦を迎えた昭和という時代を著しく述べたててもなおのこと。

やがて咲いては散るだろう有終の戦後は、華々しい経済的進歩を遂げるかのような風合いを見せつけながら灯りに飛び交い焼かれる羽虫のような進歩を見せつけつつも主な部分は発展しつつあった。

真夜中、繁華街にて出没するとの噂がある存在。群を抜いて新宿、歌舞伎町にて娼婦たちの間で有名になっていた事件があった。

夜、暗くて人気のない道に全裸の焼死体が放置されている現象が多発しているのだという。なぜだかそれは、上背があって体格のよい男性に限っているのだった。

当初、二、三体目までは警察も偶然と見做していたのだが、五体、六体。と連続するうちに何らかの形での殺人事件なのではないかという疑惑が持ちあがり捜査が進められていた。

身元の割れた被害者のうち全員がほぼ喫煙癖があるくせにライターを所持していなかったところに着目されたことから、旧式のマッチを偶然所有していたがゆえに何らかのかたちで燐が懐あたりで偶然自然発火したのではないだろうかということだったけれども決定的な証拠は未だに見つからず。

風俗街という立地から疑われたのはまず娼婦や店の経営者たちだったが、決定的な証拠は見つからずに捜査は難航していた。繁華街より少し逸れた場所にある小路で多発した傾向があり、富裕層の男性が被害者の多くを占めていたことから警察は事情によく通じた者を徹底的に洗おうとしたようだった。

焼死体は皆、発見時におなじような姿勢において倒れて素裸で死後硬直におよんでいたこともあり、個人の特定が難しかったことがその場に駆けつけた刑事や鑑識たちに印象付けられていたようで、警視庁における捜査一課彼等の脳裏にはまさしく。といったふうにある特定の人物の像が脳内にあったに違いなかった。

―赤虫。

彼ならば何らかの形で、事件と深く関わっているかもしれない。

一体、二体と死体が出てきた当初、上背があり全身に火傷の痕がある赤虫という通り名で呼ばれている阿藤悠馬という名の青年がむしろ、焼死体である被害者として候補に挙がっていた。

2016年4月13日公開

© 2016 狐塚月歩

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