地獄からの復縁

物語の切れ端(第1話)

東峰 八重

小説

747文字

久々に「お題SSリレー」に参加しようと書いた微グロ・ホラー系。
お題「ドン底からの復縁」の解釈が、ちょっと無理矢理すぎた感でいっぱいいっぱい。
そのうち昔話テイストのちゃんとしたホラーに書き換えられたらなと思ってます。

村の外れに、いつからか枯れ朽ちた古い井戸がある。その遥か底にドンと落とされてからどれ程の時間が経っているかなど、俺には知る由もない。只管に遠い光を目指して土壁に爪を立て、ずり落ちる足を踏ん張り、あと少し、もう少しで此処から出られる高さまで上ってきた。

井戸の底は、文字通り地獄であった。それに比べれば、なんと我があばら屋の極楽なことか。無事に此処を出たら、女房とまた一緒になろう。共に売れない草履を作り、拾った野菜くずでこさえたマズイ汁を共に食らい、申し訳程度の藁布団で共に暖を取るのだ。――それとも先に、俺と女房の仲を裂いたあの男に同じ苦しみを与えてやろうか。

下卑た笑いを口の端からこぼす内、ついに井戸の縁に手が届いた。持てる力を振り絞り、俺はこの地獄からズルリと這い出す。そうしてうつ伏せでペシャリと潰れたまま思いきり息を吸った。久々に嗅ぐ土以外の匂いはどれもやけに美味そうで、空腹を思い出した腹の虫が大きく鳴き始めた。当然だ。井戸に落とされるずっと前からまともに飲み食いしていないのだから。

今の今まで忘れていられた空腹感を満たそうと、気だるいながらも上半身を起こす。ふいにどこからか香ってきたご馳走の匂いにギョロリと辺りを見回すと、食い物と〝目が合った〟。

考えるよりも早く地を蹴り、腕を伸ばし、獲物を掴むやいなや勢いもそのままに歯を立てる。甲高い鳴き声に混じってバキリと音が鳴り、生温かい汁が顔に飛んだ。

 

『ごめんなさい』

 

噛みちぎっては咀嚼そしゃくもそぞろに骨ごと飲み下し、あふれでる朱色をすする。その最中、懐かしい女の声を聞いた気がした。
[了]

初稿:2012.08.26
次稿:2015.02.24
三稿:2015.11.23

2015年11月23日公開

作品集『物語の切れ端』第1話 (全2話)

© 2015 東峰 八重

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