サイコサスペンス(3)

サイコサスペンス(第3話)

月形与三郎

小説

7,664文字

女流作家を取り巻く絢爛でイカれた人々、中心を喪失した精神の罅の多重奏(ポリフォニー)――

 

私はコーヒーと昼食を運んだ。窓際のキッチンテーブルへ、私はカップを置いて、ポットのコーヒーを注いだ。

「ほんとに、わたし、ここに居ていいの?」と少女は言った。おどおどした目を私へむけた。おとといの夜に町で拾った少女売春婦だった。

「言いつけを守るなら、しばらく居ていい」

そう低い声で、義務と権利について告げると、よそへ顔をやった私は、苺の図柄だけが赤く地の真っ白いマグカップに口をつけた。少女はうれしそうに肯いていた。

少女は、そっと乳房のあたりを掌で押さえた。ひらめいた左手には海辺の地図のような入れ墨があった。この入れ墨に興味を覚えて私から少女に声をかけたのが、こうなったきっかけなのだった。――ここまで書いてアリサは伸びをした。華奢な椅子がすこし軋んだ。今晩はパーティに招かれている、そろそろ支度にかからなければ。

この居間には天窓があって、とても採光がよい。漆喰の塗りも新しい壁が三方から弾く白さは目に栄える。金色の薄いインドシナ風カーペットが敷かれている。その上には正方形の大きなガラステーブルが置かれていて、周りに椅子が八脚あった。テーブルの真ん中で、けばけばしい色の熱帯花が照光を浴びている。目の前のフランス窓からは、庭裏が眺められる。その真ん中辺には小さな噴水がある。しぶきに虹がかかった。ユリは、夏の花々の咲く花壇の横のベンチに掛けていた。ベンチは厳つい青銅製で、娘はふかく背をもたせ、あさく組んだ膝の上で本を開いている。

ユリが読んでいた本、それは精神の移転(エイリアネーション)、また憑依(ポゼッション)とか分裂(ディヴァイド)とか、それに空虚(ヴォイド)、そんな事柄に関するものだった。アリサの本棚―参考文献だ―にあったのを、何の気なく抜き出して、ぱらぱらページをめくったら、興味が湧いてきて、はじめから読んでみた。これまで彼女はあまりその種の本を読んだ事がない、なにしろ耳学問だけで満腹気味だったので。それが熱中して読んだ。むろんある程度知っていたことだが、彼女を惹きつけたのは、自我の基底とは、首尾一貫したものなどではなく、複数、もっというなら、多数、そういう他のものの沈殿だという考え方だった。ずっと彼女はそれを、わたし(、、、)というものになるというのは、一つの自意識の奴隷になり固有の時空構造に仕方なく身を置くことで、記憶の群れがあちらこちらへばらけて、それらが収集不可能なほど散乱してしまうことに呑み込まれてしまわず、なんとかかんとか生存を維持するための安易な方法として、この様式が選択されたと考えていた。経験からその都度の新しさを根こそぎ奪い、あらゆる事が再経験で、いつでも出来事は何かしら知っているものとしてしか現われないように、この世界のあり方を変える。人が知っているのは、眼前に置かれたものでないのならば、行為しているものでもない。生きているかぎり道の途上にあるというのも、それを旅程だというのなら、ただの知ったかぶりなのだ。終わりに達するまで分からない、というのは、終わりには分かる、ということ、辿り終えた贋の情報を持っている未知の道行で、この上なく無数に枝分かれした道のりがあっても、着く唯一の目的地を知ったつもりでいる。それをそら恐ろしいことに感じてもいた。だがこの読書で、すこし考えが変わった。見せかけが一つであるかのような心は、多数の秘められた意味ともいえない意味、そういう奴隷どもの肩に担がれている。ルカによる福音書では、人にとり憑いていた大勢(レギオン)と名乗る悪霊が、イエスに追い出されて豚の群れへ乗り移り、水に飛び込んで溺れ死ぬ。しかし逆に、キリストみたいな正義の味方があらわれなければ、奴隷のレギオンが主人に勝つチャンスだってあるだろう。だったら、主人を殺すことができる力の数だけ意味が、生の意義というものが、たくさん可能なはずなのだ。彼女にとっての発見は、クローゼットの奥へ、おおむかしの誰かが仕舞い忘れていた、明るい色のスカーフや、くすんだ色のマフラー、かがやく生地のリボンなんかを不意に見つけたときの、別世界の(いろどり)や明暗の織り合わさった、そういう秘密の力を得た気がしたものだった。

音もなく傍に立った管理人の妻が、

「支度をなさるようにとお母さんがおっしゃっています。六時半にはお迎えの自動車がまいります。パーティは七時からだそうですので」と言った。

真っ青で無限に澄んでいた空は、赤くなる前に、西のほうから曇り始めていた。穏やかだった海面も、ちょっとずつ波の丈を高くしているだろう。天火に焼かれながら静まっていた庭樹が、枝葉の緑を予感のようにさ揺らす、今夜は雨になる。

――アリサはジャンプ気味の二段抜かしで階段を上がり、夫婦の部屋と隣のユリの部屋を大またで往復して、衣装入れの戸を残らず開いた。彼女は階下を見下ろす位置に立ち、両手を腰にやる堂々としたポーズをとって管理人の妻を呼びつけてから、又すたすた夫婦の部屋へ入ると、普段着を脱いで裸になった。下着をつける習慣はない。

「しっかりお洒落するのよ」と娘へ言うと、アリサは鏡台の前に座った。

「ドレス着るの?」とユリが訊いた。管理人の妻が、ぎすぎすした手つきで少女の髪を梳かし始めた。

「もちろん。それから、メイクは入念にね。顔色が明るく見えるように。アイラインも、ルージュの塗り方も、雑にしては駄目」とアリサは言った、「ビロードのショールを忘れないで持っていきなさい、貂皮の裏打ちのある」真夏に毛皮、それには(わけ)がある。

「ほんとうは、わたし、エマさんのところなんか行きたくないんだけど」とユリはぼやいた。

「お嬢さんも十六になったなら来てくれっていうの」母はそう言いながら、いくらパウダーをはたいても、顔色が薄く、姿見に映る像の血色がよくならないのを気にした。

「小父さん小母さんの話なんか詰まらないから聞きたくない」と娘は生あくびして、ローブの裾から股間を曝け出させる大袈裟な仕草で膝を組むと、「時代を覆う価値幻想は、誰しもがそれから遁れたいと望んでいても、遁れようとするアイロニックな努力にアイロニーの応酬を積み重ねさせ、たとえ、そんな『不幸な意識』といえども滴らす真実の血を啜って生き延びるのです、さながら厚化粧の女僭主」と言った。

「よくわかっているわね。ただし、アナクロな俗悪文よ、やたらと長たらしいし」とアリサは娘のほうを向きながら言った。

「この悪文はママの戯曲の台詞、『マゾッホの毛皮の恋人』で男爵夫人に言わせたじゃない」

「あら、私が書いた台詞だったかしら…」そうアリサは笑ってみせたが、記憶が娘と微妙に食い違うのはなぜか?と思った、一年前のこと、それどころか、ここへ来る直前の記憶も符合しないことがある。このときはユリも同じ事を考えていた、母とは別の世界を生きてきたようだ、と。たち返ったアリサは、

「だけれど、男の子も来るのよ」と言った。

「どうせエマ小母さんの愛人でしょ」とユリは言った。

不意とアリサはこの夏が、ここでユリと過ごす最後の夏になるような気がした。なぜだかそう思える。だからパーティへは、ぜひ一緒に連れて行きたかったのだ。そうすることが、きっと母子である証に将来なる。

「梳かすのはもういいから、セットしてあげて」とアリサは、この世の終わりまで髪を梳かしていそうな管理人の妻へ言った。

――アリサはリムジンの窓を開けた。風が髪先を鼻先で戯れさせるのをうるさげに抑えた。ユリも、かしげた首にからむ髪を邪魔そうに追いはらった。

道すがら、わずかな間、ライトに照らされて浮かび上がった人影は、このあたりでよく見かける家郷無き者(ホームレス)の男性だった。いつも何かを探している様子で彷徨っているのだ。彼を追い越す際、上向き加減だった対向車のライトが大きな網のようにかかって、まわり一面が煌然と明光へ吸い込まれた。灯りの塊が暗い時間の中を滑り、真っ白な、土地の人から城と呼ばれている巨大な邸が見えた。切り立った岬の上に建っている。

二人を乗せた車は、両側に松が茂る坂道を、ときどき小石を弾かせて疾走した。道が黒く夜らしく見えるよう水が撒いてある。木立の隙間から、一度隠れた建物が、たち現われてきた。近づけば近づくほど遠目よりもむしろ、横倒れた航空母艦に似た長方形を描く屋根の輪郭が、模様一つ沁み一つないスクリーンのような壁が、次第に現実感を失い、また内陸側に窓が一つもないせいで、疎遠な贋物めいて見えてきた。旧式な映写機がたてるような、砂利へ自動車の乗り上げる音がした。タイヤが踏みしめるその音は、かぼちゃの馬車にも負けないぐらい華々しく響いた。広壮な英国式庭園の隅から隅まで響いた。林の拓けている所には、すでに多くの自動車がとめてあった。

――ドーム形の天井にはフランドル派絵画みたいな天井画、床は黒や白の大理石で、ふかふか足首まで埋まりそうな年代物のペルシャ絨毯が広々と敷かれている。夥しい金の燭台が灯りを点し、たくさんの花瓶には個々に、二抱(ふたかか)()抱えもの花が生けてある。高価な夜の礼装に身を包んだ男女が大勢、立って挨拶を交わしていたり椅子に掛けて話し込んだり。ようするに、だだっぴろいホールは金に糸目をつけず設えられていて、そこに権力者や金満家や文化人や一流スポーツ選手などが集っている、という、ありがちな光景であった。一つだけ時節と不釣合いなのは、豪壮な石造りの暖炉で、今も焔が、ときおり軋み爆ぜる音をさせて、盛んに薪を燃やしている、真夏だというのにそうなのである。炉火に値打ちを持たせるため、大広間を冷蔵庫にしかねないぐらい、室温が下げられている。だから客には、ファーやらなにやら、毛皮つきの服を着ている人も多いのだった。

怪物的なほどに美しい老婦人が、客に囲まれていた。女主人は、薄紫のロングドレスに、柔らかすぎ豊満すぎる体を包ませ、髪から足首までを宝石で埋ずめてる。回春の情熱が、彼女の外観を飾り立ててはいる。それもアリサの目には、諦めどころを知らない執念がいびつに蝕んだ、老衰を不要に意識させる、もとから若さとは逆方向へ働いている力が傾かせた、贅沢きわまりない廃屋であるかに映る。虫の湧いた腐肉を包む派手やかな絹の覆いが漏らす悪臭はずっと、ぼろ布よりも不快な注意を引く。エマ夫人の度を越した美麗さも疫風に翻り、衰微の宿命へ抗う勇ましさの化身ではなく、その抵抗のなすすべのなさを無闇に誇張する、逆説的な擬態にしかならない気がする。夫人は、国で一、二の大富豪の未亡人である。この土地にしても、寂れた漁村だったのを、亡夫が高級リゾート地に作り上げたので、TV局や新聞社から総合病院から図書館や博物館、等々、大きな施設はことごとく夫人が長を務める財団の所有である。夫との間に子供はないが、結婚前はシングルマザーだったという噂がある。本人は噂を否定している。往年の大女優で大歌手である彼女も、いまは台詞といえば、大半が誰かの悪口か、でなければ愚痴で、そのうえ物言いは、唄う様、どころかたんに煩い。お天気屋で皮肉っぽいのが魅力的に見えたのも、だいぶむかしに幕が下りてしまっていることへ、夫人は気づいていない。周りの皆に感銘を与えようとする母性的なつもりの態度と気前の良さですら、いまでは反対に、権力の示威と財力の濫用になってしまっていることへも、たえず追従と世辞で糊塗されているせいで気づいていないのであった。そうした鈍感さがよりいっそう、パーティの騒々しさのなかで孤独を演出する。アリサも本意では、親しく付き合うのは勘弁願いたいのだが、何とは特定できなくとも、何かしらしがらみが、それも色々ある気がして、そうするわけにもいかないのではないかと思う。

アリサは炉方に居て、夫人とその取り巻きたちと談笑していた。ところで、夫人には若い愛人がいる。彼は外科医で、パーティのときには、虚栄心と自己顕示欲たっぷりに、スター気取りに振る舞った。その青年医師の嫌な癖は、大口を開けて話すことだった、人を嘲弄するように咽喉をみせびらかして喋る。幸い愛人の姿は見当たらない。ひっきりなしに黒服とボーイが、ぺこぺこしいしい眼前を往来する。プロゴルファーが向かいに立つ女性の容姿を誉めそやしていた。人気モデルらしい女は、はたで聞いているだけで歯が浮きそうな世辞を、いちいち真に受けている。過大な自己評価、つまり自惚れこそが彼女の属する社会では主要な素質であるとすれば、なるほど大器なのかもしれない。そのほか、ゴルフを観戦する以上につまらない?冗談や愛想笑いの声が周囲から聞こえる。

「あなたの新作、きょうから読みはじめたところですの」と取り巻き婦人の一人がアリサへ言った。彼女は会うたびにそう言い、読み終えたという話は、けっきょく一度たりとも聞いたことがなかった。かれこれ二昔(ふたむかし)も前から、小説を読む習慣がないのを知的な言葉遣いで強調するほうが、スノビズムに適っているということを、この婦人は知らないのかもしれない。小説を読むのが一応は教養の一部でありえたのも、このようにブルジュワジーのパーティを月並みなシニズムを以って描いていればよかった時代までだろう。

上から下までカウボーイ・スタイルの中年男性が後ろから、

「奥様、今晩は」と話しかけてきた。エマ夫人は振り向くと、

「あら、警部、今晩は。ようこそおいでくださったわ」と、挨拶した。警部はノロ鹿皮のカウボーイハットを胸に当て、

「お言葉に甘えまして」と、深くお辞儀した。彼がこの衣装を着けているのは、西部劇の勝利が、法の支配の番人の栄光だからである。

「きょうは弟さんもご一緒に…」と夫人が言いかけたら、

「わたくしが弟のほうです。兄は急な会議で本庁に行っておりまして。せっかくお招きいただいたのに欠席しますことを、奥様にお詫びしてほしい、と申しておりました」と警部が馬鹿丁寧な口調で言った。口上を聞き終えて夫人は、傍らに立つアリサを紹介した。

西の壁に備え付けられた大ヴィジョンの中では、マングローブの茂みに男が立っている。夫人と何度も共演した名優だけれど、とうに死んでいる人なのに、つい最近見かけた気がするのは…、そうだ、あのホームレスとそっくりなのだ、とアリサは思った。もう一人、つば広の帽子へ金色に染めた駝鳥の羽根飾りをつけ、紫色のチャイナドレスを着た絶世の美女が映っていた。若い頃の夫人だ。偽の楽園風景を背にした女は、ストリップティーズ用のバーに掴まると、足をY字に浮かせた。その横で、肩から先のない乙女二人が、左右から男の肩へもたれかかり、幾人かのフェアリーが女の周りで小さな翼を競わせてじゃれあい、足元から腰までをきらきら明るくする。ミュージカル仕立てのサイレント映画だった。何の気なくアリサが画面を指差し、

「奥様、来る途中、あの俳優さんと似た人を…」と口にした途端、夫人は険もほろろに、

「とんでもない、似てなんかいるものですか!」と、振り払うかに首を振った。どうやら気も動転している。夫人は涙ぐんでいた。呆気にとられたアリサが口をつぐんだその瞬間、画面が切り替わって厨房が映った。ミートパイの皮にシェフが自らナイフを入れた。獣の胆汁のような黒ずんだ緑色の液体が噴き出して大皿に飛び散った。部下の料理人たちが拍手喝采した。パイ料理を切り分けながらシェフはカメラへ昂然とした顔を向けて、

「モノクロ画面なら、カルト風味になるでしょう」と言った。

――まだ魅力がある、と客観的にはともかく、自分でそう信じてはいる男女の幾らかは、下心こみのにこやかさでそれなりの相手と談笑し、性的魅力の面ではさすがに諦めている男女の大半は、政治経済文化の話題―近頃ここでは地球環境問題、言い換えるなら、いわゆる公共財の一部をいかにして資本主義的市場化するかという話、が流行っている―でなければ、辛らつな噂話に専念するという、そんな頑なに伝統的な夜会の有様は、このパーティでは毎度のことで代わり映えなく、代わり映えしないまま進行していく。なぜなら似非ではない正真正銘のエスタブリッシュメントだからだ。広間の隅に居るユリの前では、女同士がキスしていた。長いこと粘り気のある音をたてて、あれやこれやと飲み比べた酒でアルコール臭くなった唾液を、ごちゃごちゃに混ぜ合わせて、執拗に口を吸いあう。

ホールの中はざわめいている。客の話し声はひきもきらない。その混雑のなかでも、ヘテロセクシャルの男とレズビアンの視線はユリへ吸い寄せられる。とはいえ、脱力と没価値観、ユリが男性―年頃の青年とはかぎらない―を見返す視線は、いつでもそれだった。とくに体験豊富でもないのに、歳相応の好奇にかられた関心も乏しく、地位には、当の相手に残酷なくらい無頓着だった、互いに求め合っている相手は、探さなくとも、稲光が鋭く(ほの)青く伝わるようなインスピレーションを介して、必然的にめぐり合うのだという信念を、彼女は疑ったことがなかったので。このところの読書のせいか、ますます可視的な表面には関心がなくなり、可視性に眩まされたために見えなくなっただろう何かに―そんなものがあればだが―惹かれ始めており、そして、よくあることで、そういった現実味の欠如が、クールな雰囲気を醸し出し、彼女の性的対象としての値打ちを高めている。その彼女も、今晩は内心気もそぞろになっている、それはなぜか。――いつ果てるとも知れないほど長い城の大回廊からは、いくつも廊下が枝分かれしている。そこを大広間に向かってひとり歩いていたユリの耳へ、ギターの弾き語りが聞こえた、男の歌声、「真心がたくさんあって、殺し合ったら」と少しの間奏のあと、「たいへんだ。愛の誓いは、いったい、どいつのものになるんだろう」 声のした所は、夫人がオフィス代わりに使っている、唯々がらんとした、吹き抜けの広い部屋だった。ユリは厚い陶製ドアの前に立ち止まった。純金のプレートが嵌め込んであって、そこには《自己を保つ能力を有するものは、また、自己を創造する能力を有する》という浮き彫りがある。聞き耳をたてようと彼女が寄りかかったその途端、ドアが開いた。支えを失ったユリの体が倒れこむのを、男の腕がふんわり抱きかかえた。腕の主は、カラー付のTジャケットを着た青年だった。彼はびっくりしつつユリの顔へじいっと見目を注ぎ、そうして下りた視線が、ビロードの耀きに打たれて、はっと止まった。前に彼女の乗ったタクシーが轢きかけた男の子だった。「そのショール、貂皮なんだね。とっても似合うよ」と彼は言った。火が重なり合うように、視線が交錯した。――ついさっきの出来事だった。

2010年1月26日公開

作品集『サイコサスペンス』第3話 (全4話)

© 2010 月形与三郎

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