「該者の身元が分かりました。胡垣准平(44)千葉県銚子市で宝石店のアルバイトをしていたようです。出身も同じく銚子です。」
「警部」
「ああ、間違いない。」
「お、悪い。聞屋だけどさ、写真一枚撮らしてくれや」
「駄目だ、駄目だ。」
「千葉新聞か?悪いけど、取材はもう一時間待ってくれ。」
「一時間?お洒落にカフェにでも居ろってんのか!無茶言うなよ、な。こっちはバス代もねえよ。分かる?」
「分かってやりたいところだけどな、こっちはそれを止めるのも仕事のうちだ。」
「かー、つまんねー話。いいよ、分かった。んじゃあキッカリ一時間で。」
「そう言われると、一時間ってのは、ちょっと言い過ぎましたかね。」
「どーせ三十分もすれば戻ってくるさ」
「宝石店で無くなった指輪は見つかっておりません。」
「高価な指輪か?」
「まあ、店主の話ではもっと高価な指輪はすぐに分かりそうなものだからと仰っていました。無くなったのは黒真珠の指輪で、多少希少価値はあるもののようですが」
「黒真珠、黒真珠、何かあるか?」
「分かりません。分かりませんが、それが犯行現場に無いということは、容疑者の特定に繋がるヒントになるかもしれませんね。」
「よし、一旦署に戻って捜査の洗いだしに取り掛かろう。」
「了解しました。」
「ん、新米!おまえも!」
「……了解しました。」
「なんだなんだ、まったく。」
「ほーっと、刑事さんたち行っちまいやがった。あんまり早和了されんのも腹立つなあ。」
「あー、もしもし。千葉新聞の坂口だけど。……」
「要件伝えるときはハキハキしてるよ。でも、ソレ以外が全く!聴取に出すのも考えちゃうな!要件伝えるときはハキハキ。な!」
「先程は少し引っかかることがあっただけで。」
「言い訳はいいよ、刑事なんだから、黙って聴くのがセオリーってもんだろ。」
「わ、わかりました。」
「全然だなー」
「了解致しました。警部殿!これだ!言ってみろ!」
「了解致しました!警部殿!」
「犯罪に巻き込まれるぞ、お前」
「この辺がね、水田になるんですよ。」
「水田ですか?」
「そう、水田。」
「山の住宅地じゃないですか、」
「地質調査が来てさ、土地が良いってさ。珍しいから、バスも走らせるってさ。」
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